PR 2.0の現場から
あえて社長ブログを選択しない理由とは/ワイキューブの場合

PR 2.0の現場から
ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ

多くの企業ウェブサイトのオーナーが広報部であるというのは、ご存知のとおりです。

従来の広報の仕事に新しくサイトの運営が増えたと同時に、インターネット時代のPR活動としてマスメディアが対象の広報活動からインターネットを通じたあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションへの変化にも対応しなければなりません。

広報のプロフェッショナルがウェブサイトのオーナーのプロフェッショナルになるためには、大きな意識改革が必要です。

この連載では、試行錯誤の中、成功のルールを発見しつつある企業の広報担当者から、成功のルールを導き出すまでのプロセスやノウハウをレポートしてきます。

神原 弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)

株式会社ワイキューブ

「PR2.0の現場から」連載第2回は、ユニークなオフィスや広告のクリエイティブで有名なワイキューブさんにお邪魔しました。オフィスに入るとまず目に飛び込んできたのはワインセラー! このオフィスも広報のネタにしてしまう広報担当の池田さんにお話を伺いました。

広報の位置づけ
~無形の商品をどう伝えるか

大学生の就職したい企業ランキング上位の常連企業のワイキューブ。学生への人気の高さは、すなわち企業の認知度の高さといえます。今では想像できませんが、2003年に池田さんが広報の専任になるまでは、ワイキューブの企業としての認知度はとても低かったそうです。

弊社ではPRと宣伝広告を広報課とマーケティング課に分けていますが、もちろんPRとマーケティングが連携して活動しています。売り上げ計画と必要な問い合わせの数をチャネルごとに分類して計画を立てるマーケティングに対して、その効果をあげるための支援活動を担当しているのが広報。社外向けのワイキューブの知名度を上げることによって営業活動との相乗効果を高めていくというのがミッションだということです。

とはいえ、情報の内容や量をコントロールできないのが広報の難しさ。その辺のバランスをどう考えているのでしょうか?

池田 園子氏
池田 園子氏
株式会社ワイキューブ
広報課マネージャ

会社の存在、そして採用・人材系のコンサルティングといった無形のサービスを理解してもらうのがPRの目的です。無形のものだからこそ、お客さまに当社のブランドイメージを抱いていただく必要があります。ただ単に売りたいものの広告だけをやっていても、イメージはできません。

質を追及するためには、(情報の)量は絶対に必要なんですよ。広告以外で社名がでるようになったのは、広報ができてから。まったくの無名=ゼロからのスタートでしたので、その成果は大きかったです。」(池田氏)

私自身、「犯人は、社長です。」という過激なキャッチコピーに、思わず手にとってしまったタクシー広告からわかるように、広告のクリエイティブには定評のあるワイキューブ。広告と広報がうまく連動したからこそ、短期間での企業認知の大幅な向上が実現できたわけです。

スポークスパーソンとしての社長の存在

ワイキューブのスポークスパーソンは、安田 佳生社長。

まじめで、固い事業をどうアピールするか。それには(社長の)安田を突破口にするのが一番カンタンそうだ」(池田氏)ということで安田社長を広告塔として立てることにしたワイキューブ。スポークスパーソンである安田社長とのコミュニケーションはどんな感じで行われているのでしょうか?

「広報戦略への同意が大前提にあります。優先順位の高さも含めて、全面的に協力をしてくれます。明るい色の服を着ましょうとか、考えるときに難しい顔をしないでくださいといったことを最初に伝えた以外は、すべて安田と相談をしてやっています」(池田氏)

安田社長はベストセラー『千円札は拾うな。』など多くの書籍を執筆しています。こういった著作の出版もPRプランにおいては重要なポイント。出版時期や内容については、企画会議で事前に相談しているという池田氏。本の出版にあわせて露出の山を作ったりと、PRサイクルを生むさまざまな仕掛けを考えるそうです。

企業の顔がみえることで、企業の認知を促進させる。「ワイキューブ=安田氏」という構図は、「会社=社長」といったベンチャー企業の広報としては王道の1つだといえるでしょう。

本以外にも、メルマガや雑誌の寄稿も多数ある安田社長ですが、どうして社長ブログを書かないんですか?と聞いてみたところ、「週1回メルマガをやっているんですが、それが続いているのが奇蹟なんです(笑)。他愛もないことを書くということをしたことがないんで、ブログは難しいんですよ」と池田さん。特に安田社長の場合は、本の読者の方々が持っているイメージがブログによってブレてしまわないようにしたいという考えもあるようです。

社長の情報発信のツールが多様化してきたネットPR時代。どんなツールを選ぶかは、自社のPR戦略はもちろん、社長の個性も含めて検討していく必要がありますね。

インターネットは、波及効果の怖い媒体

ワイキューブのウェブサイト
ワイキューブのサイトはシンプルだが情報が整理されていて非常に使いやすい。

とてもシンプルでユーザービリティに配慮したワイキューブのウェブサイト。ウェブサイトに何でもかんでも情報を詰め込むのではなく掲載する情報量を絞り込んでいるという池田さんは、その理由を「目的を広げすぎないため」だと言います。現在、ウェブサイトのコアターゲットはセミナーを申し込む、あるいは書籍を買うという目的の方々。

ウェブサイトは、ターゲットを広げれば広げるだけ、訪れる人の満足度は下がってしまいます。当社のウェブサイトは、アクセスしてほしいと当社が考える人たちにとって使いやすいサイトでありたいですね」(池田氏)

ワイキューブのメインターゲットである40代50代の中小企業の社長の行動を考えると、ネットよりもまだまだ雑誌や新聞のほうがリーチが高かったため、あえて積極的にネットを活用していなかったそうです。

一方で、昨今の就職活動はインターネットでの情報収集がメイン。学生の人気企業であるワイキューブも採用の時期になるとインターネット上での自社の情報量が一気に増えます。自社の情報はGoogle アラートを活用してチェックするなどの取り組みもしています。

現状のネットのコミュニティでは、どうしても悪い話題が先行してしまいがち。誤解が生まれたときに、正しく認識してもらうための手段が確立されていないのが怖いですね。ずっとアーカイブが残るという点では、紙よりも影響力が強いかもしれないですから。広報的には、ネットはもっと強化していかなければならない媒体の1つです」(池田氏)

最近は、セミナー情報だけでなく、ワイキューブならではの社内のイベント情報などをニュースリリースで積極的に発信しているのも特徴。ニュースリリースでオフィス見学受付を表明したところ、すぐに問い合わせがあったそうです。

また、セミナーに参加した人が書くブログのパワーにも注目しているとのこと。

一般の方のブログで自社やサービスを紹介いただくのは、自社が直接情報を発信するよりも効果が高いと感じています」(池田氏)

部屋ごとに内装が違うというミーティングルームも素敵でした。
部屋ごとに内装が違うというミーティングルームも素敵でした。

自社でトライ&エラーを繰り返して成果を確認

ワイキューブは、オフィスはもちろんユニークな福利厚生でも有名です。

たとえば、毎週木曜日は「おやつの日」。社内に専任のパテシィエがいて、内勤の人たちがリラックスしてくれるようにと、毎回いろんなおやつを作ってくれるそうです。おやつというのは、別に無くても困らないけど、あったらうれしいし、楽しみにする。大事なのは、「木曜日」のように特別なイベント性を持たせることだと池田さん。たしかに、こういうものは常時当たり前にあるよりは、木曜日限定のほうが、そこへの期待が高まりますね!

そのほか、ワイキューブの社員向けに落語のイベントを開催したりと本当にユニークです。このようなアイデアはどこから生まれ、どうやって運用されているのでしょうか?

基本的に、自社を実験場にしていますね(笑)。当社はコンサルティングということでお客様に『こんなことをしてはいかがですか』と提案する立場ですから、お客様に無責任な提案は出せません。自社で実験をして成果があった企画をお客様に提供することにしています。

トライ&エラーを繰り返しているのですが、ほとんどがエラーですよ。ただ、社員が楽しくなるという視点で考えると、成功はあっても失敗はありません。あったらいいことはまずやってみるのが大事ですね」(池田氏)

こういう施策を導入したいというお客様からの相談も多いそうですが、実は、お金よりも運営の手間がかかるということは忘れがち。実際にワイキューブでも、お客様に検討してもらう前には、「導入は簡単だがオペレーションが大変」だということをしっかり伝えているということです。

池田氏と奥村氏
右は池田氏と同じく広報課の奥村 朋代氏

社員一人ひとりの自発性が企業文化

現在、ワイキューブの正社員は約180人。ベンチャーとして自社を振り返ってみると「社員が100人以下と100人以上では会社の仕組みが丸ごと変わる」(池田氏)とのこと。その段階はすでに通り越したワイキューブの当面の課題は、今のワイキューブというものを全国9か所の営業所のスタッフにを正しく理解してもらうための仕掛けだそうです。その方法も安易に社内報やイントラネットを使った情報発信にはしないと決めているとか。

広報が発する言葉は、社外的にはワイキューブが主語になりますが、社員にとっては広報の発言でしかないんです。社内広報という形にすると、それが現在の課題に対する『答え』として届いてしまう。これではワイキューブらしくない。誰が発するかは、とても大事なことです。だから広報としては、『ワイキューブはこれです』ということを経営者からのメッセージとして伝えるための後押しに徹しています。みんなが考えるワイキューブがワイキューブなんです」(池田氏)

イントラネットで社員が積極的にニュースを伝えたり、イベントのお知らせを提供したりしているワイキューブ。広報としては、内容そのものよりも、情報を発信することに意味があり、その情報と情報をつなぐような施策に取り組んでいく予定だということ。

基本的に、社員の自発性に任されている。だからこそ、社内では影武者でいたいですね」(池田氏)

◇◇◇

採用のプロのワイキューブは、実はコミュニケーションのプロ集団。

社内のいろんな活動やイベントを軸にしたニュースの切り口は、現場と広報のリレーションがあってこそですし、自由なワイキューブの企業文化を感じます。特に、自社のクリエイティブの部門をアピールするために、さまざまな広告賞にエントリーし、それが受賞に結びついているというのは、現場と広報のリレーションがあってこそ。

自社の特徴をうまく生かして、マーケティングとPRを連動させた戦略は参考になる点も多いのではないでしょうか?

PR 2.0の現場では、ビジネスブログや企業の公式SNSの開設といった話題のツールにチャレンジすることだけではなく、それぞれのターゲット(ステークホルダー)に対して、より効果の高い情報流通経路を確保することも大事なんだと改めて感じました。

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