PR 2.0の現場から
ユーザー参加メディアの広報リリース情報源はユーザーから/フォートラベルの場合

PR 2.0の現場から
ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ

多くの企業ウェブサイトのオーナーが広報部であるというのは、ご存知のとおりです。

従来の広報の仕事に新しくサイトの運営が増えたと同時に、インターネット時代のPR活動としてマスメディアが対象の広報活動からインターネットを通じたあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションへの変化にも対応しなければなりません。

広報のプロフェッショナルがウェブサイトのオーナーのプロフェッショナルになるためには、大きな意識改革が必要です。

この連載では、試行錯誤の中、成功のルールを発見しつつある企業の広報担当者から、成功のルールを導き出すまでのプロセスやノウハウをレポートしてきます。

神原 弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)

ユーザーのクチコミ情報を中心に構成されているサイトも随分増えてきました。その代表的なサービスの1つが、今回お話を伺ったフォートラベル。

インターネットでユーザー参加型のメディアを運営することは、メディア運営はもちろん、サービスの運用という視点もとても重要です。特にこの数年のインターネットユーザーの増加と同時に、フォートラベルでもユーザー数はもちろん、クチコミによる情報量も飛躍的に増加しています。その急成長の中、Web 2.0の注目企業として、多くのメディアに注目をされているフォートラベルのPR活動についてお話を伺いました。

旅行のクチコミサイト フォートラベル
旅行のクチコミサイト フォートラベル
ユーザーが書き込む「旅行記」「クチコミ情報」「旅行写真」「Q&A掲示板」のほか、ツアー・航空券の比較・検索サービスなどの多種多様な情報が掲載されている旅行情報サイト。
旅行者の「知りたい」「伝えたい」「買いたい」という欲求と、旅行業界の「伝えたい」「知りたい」「売りたい」という要望を交換するための、コミュニケーション空間の構築を目指している。 http://4travel.jp/

サービスもPRもインターネット上で勝負する

フォートラベルで広報を担当しているのは、営業、ユーザーマーケティングと広報部長を兼任している請川氏と、昨年までユーザーマーケティングと広報の兼任だったという矢野さんのお2人。

昨年1年間はPR会社へ外部委託していたそうですが、今年は一転、ネットに集中してやろうと自分たちで取り組み始めたとのこと。

矢野 智美氏
フォートラベル株式会社
広報部 広報担当
矢野 智美

PR会社の提案は、4媒体のうちテレビやラジオ、新聞、雑誌を総花的にやろうというものでした。いろんな雑誌に載るんですが、その雑誌を見ている人がインターネットをよく使っているのか疑問がありました。そこで、ネットユーザーがいるところに集中するために、まずネットを使ってみようと考えました」(矢野氏)

昨年はちょうどWeb 2.0ブーム。その中心にいたのが「76(ナナロク)世代」といわれる1976年前後に生まれた経営者たち。フォートラベルの創業者で現会長の津田氏も76世代としてクローズアップされることが多かったそうです。

サービスの中身よりも、そちらのほうで注目されることが多かったので、今年は、サービスを使ってくれる人にフォーカスしたいですね」(矢野氏)

CGMやUGCといった話題のキーワードの事例として紹介

Web 2.0や76世代と同時に、急激に広がった言葉として「CGM」「UGC」(ユーザーが作るコンテンツ/メディア)があります。フォートラベルは、まさにユーザーのクチコミによって成立するサービス。そのためCGMの具体的な事例として、雑誌や書籍で紹介されることも多かったそうです。

CGMの成功事例として紹介されるときには、どういう点をアピールしているのでしょうか?

ユーザーが楽しんでくれることを重視している点ですね。ユーザーがコンテンツをアップするときにも、その人がさらにモチベーションを上げることができるように、たとえば(該当するコンテンツの)地図が塗りつぶされるような仕掛けを作っていたりします。

ブログをやれば人が集まってくるという時代ではないですから、カテゴリによって打つ施策は違うと思います。フォートラベルでは、地図にマッピングされるとか、書いた方に知りたい人がいることを教えるなどの機能が重要です。それから、ビジネスとしても成立している点もしっかりアピールしますね」(請川氏)

収益が上がっていないWeb 2.0関連ビジネスが多い中、フォートラベルではすでに旅行業界を中心に広告主もしっかりついて、ビジネスとして回っている点は注目すべきところです。

インターネットの成長を肌で感じながら

2003年創業のフォートラベル。フォートラベルも最初は、津田さんと請川さんのたった2人でのスタートでした。企業の成長はそのままインターネットの成長、ユーザーの増加と一緒といえます。そんな中、旅行業界のインターネット対応についてはどのような変化があったのでしょうか?

請川 貴之氏
フォートラベル株式会社
取締役COO
請川 貴之

2003年当時は、旅行業界でアフィリエイトをやっていたのは数社だった。業界大手でさえも、まだ自社のロゴがどこに掲載されているかわからないのは困ると考えていた時代です。ちょうど楽天トラベルがアフィリエイトを始めたので、そこをビジネスチャンスだととらえたんです」(請川氏)

フォートラベルは、2005年1月にカカクコムの子会社になっています。東証一部の上場企業の子会社になったということで、営業的には大きな変化があったそうです。

広告ビジネスという意味では、広告代理店やクライアントの出稿、特にナショナルクライアントからの広告がいただけるようになった。スタッフとしても、注目されているんだという点が、営業チームとしては、大きかったですね」(請川氏)

現場を知り尽くした人の思いをサービスに

私は添乗員を6年やっていました。そうすると、たとえばローマでフリータイムがあって、集合時間の5分くらい前に戻ってくるお客さんなどは、いろいろと旅行話や体験談を話してくれるんですよね。みなさん非常に熱心に(笑)。私は旅行に興味があるからいいんですが、そういう方々が家に帰ると家族にも同様に話をしたくなりますよね。でも、旅行に興味がない人にとっては、そんな旅行談を聞かされてもおもしろくないんじゃないかな、と思ったんですよ(笑)。でも、インターネットだったら、その“だれかに話したい”が発散できる。インターネットは必要な人が見に来てくれるメディアなので、そんな旅行話が役に立つ場になるだろうと考えたんです」(請川氏)

サービス開発への思いを、旅行者とのさまざまなエピソードを披露しながら語ってくれる請川さん。現場の一人ひとりの生の声を受け止めてきた請川さんならではの着眼点がベースになって、現在のフォートラベルのサービスへとつながっているのですね。

年2回のオフ会には開発者も参加して、ユーザーからの要望を直接聞き、サイトを改善しています。でも、参加者(ユーザー)が増えると、次の手を打つにも(サービスの)いろんなところに影響が出てくるので、対応のスピードが落ちてしまいます。昔はその日のうちに対応できたのに今は難しい。そういったのが寂しいなぁと感じますね」(請川氏)

ユーザーと開発現場のコミュニケーションの場を設定するなど、サービスの向上のための工夫も続けてきたフォートラベル。一方で、大勢のユーザーがいるからこそ、サービスを提供しながら機能を強化していくのは慎重にならざるをえません。この辺りの矛盾は、多くのオンラインサービスに共通の課題だと思います。

請川氏と矢野氏

予想外の反応が新鮮なユーザー調査のリリース

フォートラベルでは毎月1回のペースでユーザーアンケートを実施して、その中で、ユニークな結果が出たものをニュースリリースとして発表しています。調査のテーマはどのようにして決めているのでしょうか?

新聞で、若年層は購買力が低く外出しないという記事があり、いろいろ調べてみると、旅行業界でも20代はあまり旅行に出かけていないというデータがあったんです。フォートラベルでも、アジア圏のソウルや台湾など、安くて近いところしか行っていないんです。そういう場合に、ユーザーさんから投稿いただいた旅行記の傾向を見ながら『20代はこんな旅行をしていますよ』と発信すればいいんじゃないかと考える。

ニュースリリースを考える場合はそういうことが多いですね

行ってみたいロケ地ランキングのニュースリリースは予想以上に反応がありました! その地方の人や映画好きな人で、フォートラベルユーザーじゃない方が反応しているのを、ブログ検索でチェックしてびっくりしました」(矢野氏)

こちらが予想しているものじゃないテーマで、人が動く」(請川氏)のがニュースリリース。オンラインはもちろん、一般紙や業界誌に取り上げられることもあります。テーマを絞り込んだサービスだからこそ見えてくるユーザーの実態やユニークなデータの魅力は、メディアを超えて流通するのです。

類似サービスの登場も、サービス全体のPRにつながる

フォートラベルでは、オフ会のときには参加された方が旅行先で配れるようにオリジナルの名刺を作って配布しています。ある程度一定の距離で、旅行後もコンタクトを取りたいというニーズにブログはちょうどいいかなということでスタートした企画。

オリジナルの名刺

マイページで、オリジナル名刺を作成してPDFでダウンロードできるようにしようという案は立ち上げの時からあった。ある程度、伸びてきて、投資ができるようになって06年9月に正式にスタートしました」(請川氏)

利用シーンにについて聞いてみると、請川さんらしく、さまざまなシーンを紹介してくれます。会社を退職された方をはじめ、旅行の際に個人の名刺をフルネームでやり取りしたくないというニーズに応えたということ。旅先で「お店のこと、ブログ書くから、見てください」といって渡すという使い方も。

競合他社が似たようなサービスを提供し始めているようですが、「他社が同じようなサービスをやってくれることで、マスメディアで特集して紹介されるなど、フォートラベルのPRにもなっています。ありがたいことです(笑)」(請川氏)とのこと。

請川さんのこれまでのキャリアや経験が大きく貢献しているこれらのサービス。背景にストーリーを持ったサービスを提供しているという自信を感じます。

CGM成功のポイントは、コンテンツの質とボリューム

神原 弥奈子氏

これまでの運営の中で重要な転換となったのは? という質問の答えは、意外にも登録者数の伸びよりも、投稿量の伸びのほうが高くなったタイミングだそうです。2004年の1月にできた投稿機能のサービス提供後、半年。ユーザーが数百人規模になり、コミュニティができたときに、最初の変化がありました。

登録者数の伸びは、最初は1日数件だったのが、2桁になり、3桁になりという感じで増えていました。登録者数の増え方は、友だちから友だちへのクチコミだったと思いますが、そのうちの10人に1人ぐらいが、なんとなく旅行記をアップしてみようという感じだったのではないかなと思います。じわじわ、じわじわ……といった感じですね。一度にドンと増えたわけではないんです。

その後、ユーザー獲得のマーケティングはやっていません。登録者数の伸びを数字で意識しすぎると無理な勧誘をしてしまうので、数字はおいていないんです。もう1つ、コンテンツ(=旅行記)の質やボリュームという問題もあります」(請川氏)

CGMにおいては、単なる登録者数ではなく、コンテンツを生んでくれるユーザーがいること、特に良質のコンテンツを継続して提供してもらえることが重要なんですね。

クライアントやユーザーの情報を自然に集める

ユーザーを中心に考えている姿勢が顕著なフォートラベル。一方で、広報部としてステークホルダーに情報発信をするためには、どんな工夫をしているのでしょうか?

(広報としては)やっぱりプレスの方がステークホルダーですね。いまはオンラインに重きを置いています。ユーザーマーケティング部、クライアントマーケティング部、システム部、ウェブ制作・運営部……それぞれの担当から、適時情報が入ってくる体制になっています」(矢野氏)

とはいえ、創業時から比べると、ユーザー数も、会社の規模も大きくなっています。情報伝達のルールに変化は?

ユーザーマーケティング部の部長が私の隣の席なので、ほぼ毎日ミーティングをやっているという状況(笑)。私1人で何かを出そうとすると、メディアが好きそうなネタでしか考えられなくなっているけど、ユーザー側の発想から見てくれる情報がくると、それもニュースとして出そうという話になりますね」(矢野氏)

公式なミーティングは、1週間に1回の部門間のミーティングでルールを決めているそうですが、こういうオフサイトの情報がフォートラベル発のユニークな情報の源になっているようです。

◇◇◇

トレンドや機能偏重ではなく、あくまでもユーザーの視点で、自然体で成長してきたフォートラベル。PRの考え方も、「無理のないところで」(請川氏)という発想で、考えてきたようです。

CGMの場合、ユーザーが提供してくれているコンテンツから、どんな切り口を見つけるかがPRのポイント。ユーザー自身によるクチコミはもちろん、その先にいるネット上のクチコミを生み出す情報を「無理のないところで」提供し続けることが、成功の秘訣ですね。

PR 2.0の大きなポイントは「すべての人がスポークスパーソン」。CGMの世界は、まさにユーザー自身がクチコミを生み、それが情報流通していくことで、サービスの成長サイクルが生まれてきたということを、フォートラベルさんのお話から実感しました。

既存のマスメディア偏重の視点から脱却し、ユーザーの提供してくれている情報や、ユーザーと直接やり取りをしている現場の担当者の声に耳を傾ける。PR担当者の視点の広さが、いま、求められているんだと思います。

請川氏と矢野氏
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