PR 2.0の現場から
リリースはだれのもの? コアターゲットへの情報提供の新スタイル/バンダイの場合

PR 2.0の現場から
ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ

多くの企業ウェブサイトのオーナーが広報部であるというのは、ご存知のとおりです。

従来の広報の仕事に新しくサイトの運営が増えたと同時に、インターネット時代のPR活動としてマスメディアが対象の広報活動からインターネットを通じたあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションへの変化にも対応しなければなりません。

広報のプロフェッショナルがウェブサイトのオーナーのプロフェッショナルになるためには、大きな意識改革が必要です。

この連載では、試行錯誤の中、成功のルールを発見しつつある企業の広報担当者から、成功のルールを導き出すまでのプロセスやノウハウをレポートしてきます。

神原 弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)

バンダイホビーサイト
バンダイホビーサイト
©創通・サンライズ・毎日放送

これまで企業全体の広報を担当されている方に取材させていただいてきた「PR2.0の現場から」ですが、連載第3回でお話を伺ったのは、あのバンダイホビー事業部。ウルトラマンやアンパンマンのオブジェが目を惹くバンダイ本社ビルで、事業部に関するアクションをされている河野さんに、インターネット時代のマーケティング広報の視点からお話を聞いてきました。

ターゲットはネットにいる!~ホビー事業部の選択

バンダイは事業ごとの事業部制になっています。みなさんご存知のとおり、さまざまなキャラクタグッズがあるわけですが、ボーイズトイ事業部やガールズトイ事業部、キャンディ事業部やアパレル事業部など、ターゲットや取り扱う商品によって事業部は違います。河野さんの所属する「ホビー事業部」は、東京に約40人、静岡の工場に約100名で、合計150名程度が所属しています。数ある事業部のなかでも、最も年齢層が高くこだわりをもつ人たちに向けての商品を開発、販売している部門。この世代は、まさにインターネットユーザーが多い世代です。

河野 由紀子氏
株式会社バンダイ ホビー事業部 事業戦略チーム

「情報発信は基本的に事業部が中心です。各事業部は、すべての商品に命をかけてやっているので、PRは独自でやっていく必要性があります。もちろん、予算もすべて事業部にゆだねられています」

発信する内容については、「本部へのチェックや調整など、ほとんどありません」とのこと。子どもから大人まで、幅広い層に対して、あらゆるカテゴリで商品を提供しているバンダイの情報発信は徹底した現場主義。事業部ごとに大きく権限委譲されていることに驚きました。

部門からの情報発信と広報部からの情報発信の違いは?

今年秋にテレビアニメとしてスタートするガンダムの最新作「ガンダム00(ダブルオー)」に関するリリースは本社が主導。事業部をまたいだ全社的なイベントは広報から、「バンダイ」として情報を発信するそうです。

広報部との関係や情報発信の内容のチェックなど、事業部と本部との切り分けについてはどうなっているのでしょうか?

「広報はもとより、テレビCM、雑誌広告、販促物まで、基本的には事業部で担当しています。自由な社風なので、事業部単体の判断でいろんな情報を出すことができるんです」

特に会議で調整するわけでもなく、全般的に事業部の判断になっている一方で、他社とのタイアップ関連については広報から情報発信することが多いそうです。ホビー事業部では、グリコとのタイアップで実現した「ガンプラポッキー」に関する情報は、本体が発信した一例。また事業部から依頼して、発表会を実施するケースもあるようです。

通常の広報と異なる評価指標があるのでしょうか? 「広報の評価基準として決まったポイントはありません。取り扱う商品の売り上げなどで、事業部全体で評価されます」。まさに、現場と一体となったマーケティング広報を実施しているようです。

リリースは毎日出すのが目標。英文リリースにも挑戦中

以前はPR会社を利用して業者や雑誌社にプレスリリースを送付してもらっていたこともあったが、旧来の方法では情報を届けられる先が限定されてしまうということで、ネットを活用した情報発信に注目したという河野氏。

「毎月10商品くらいあったのですが、当時は毎月3本くらいしか(プレスリリースを)送っていなかったんです。(インターネットを利用することによって)商品に関わる方だけでなく、関心をもってくださる方に、(ニュースリリースを)直接、読んでいただきたいです」(河野氏)

工夫している点は? との質問には、「月曜~金曜まで、必ず1日1件のリリースを出すのが目標。内容を読んでもらうためには、タイトルが一番重要ですね。“あれ?”と思わせるようなインパクトのあるタイトルを考えて形にしていきたいです」とのことでした

現在取り組み中の英文のニュースリリースのターゲットは、実は国内にいる外国人とのこと。海外でも商品展開をしておられるため、海外の方に情報が届けるためかと思っていたのですが、その点は意外でした。現状の英文リリースは「まだ、発売日と料金、商品仕様や写真といった基本的な情報だけになっています。今後は、アニメの背景なども追加していきたいですね」(河野氏)

マスとネットの関係性は?

メインターゲットはネットにいるとはいえ、「マスメディアに大々的に取り上げられるとネットのリリースのアクセス数がすぐに伸びるといったように連動していると感じています」(河野氏)

一方で、会社側としてイベントなどの仕掛けをしていなのに突然アクセスが増えることも。他部門にキャンペーンやイベントの実施状況などを確認しても、特に要因が見つからないというケースもあるようです。そういうときにログ解析などを使って原因究明をするのが常だと思うのですが、「リンク元のチェックなどはほとんどしないです」という意外な発言が。さらに、オンライン広告についても「自社のウェブでの告知で十分」(河野氏)ということで未経験なのには驚きました。

月間535万PVを越えているホビー事業部のウェブのアクセス数では、1か所からのリンクの集中でPVに大きな変化が起こるということはあまり考えられないようです。

ニッチな情報を届けるというインターネットの活用とマスメディア的なパワーをもつ自社ウェブサイトの関係は複雑そのもの。キャラクタや作品そのもののパワーに、ユーザー一人ひとりの情報発信などさまざまな要素が有機的に結びついているのが、現在の現状なのかもしれません。

タイムリーな情報提供はブログを活用

ホビー事業部のウェブサイトの統括担当者は2名。各カテゴリの担当者が、自分たちの予算内でウェブサイトを展開しているそうです。

「現在は、2つある公式ブログを活用した情報発信と交流に力を注いでいます」

このブログ、もともとは1つだったものを刷新して2つにしたもの。従来は、事業部のリリースの紹介やお客様に対してのお知らせ、質問集をまとめて1つのブログに出していたのだが、今回新しく「お客様向け」と「情報発信」に分けて運用することになったそうです。

もともとは、担当コーナーのタイムリーな更新を実現するツールとしてブログを導入しており、「ニュースリリースと同様に、どんどん情報を発信していきたかった」という河野氏。実はホビー事業部では海外チームが英語版のブログを運営しています。海外のファンにとっては貴重な情報源となっていることでしょう。

UGCへの大きな壁

ガンプラ(ガンダムのプラモデル)に代表されるように、プラモデルなどを作ってそれをウェブサイトで公開しあうのもインターネットならではのファンのコミュニケーションの1つ。

このようなUGC(ユーザーが作るコンテンツ)について、バンダイではどのように考えているのでしょうか?

「事業部としては(公式に認めることは)できないが、ユーザーが(私的に)やっている部分については問題はないと思っています。たとえばケロロの写真コンテストでは、スワロフスキーをつけたかわいいケロロの写真などもお寄せいただいていますし、ご自分が作ったガンプラの写真などをお送りいただくこともあります」(河野氏)

これまでもウェブでモニター登録を受け付けてレポートや意見を交換するという試みもしていたり(現在はリニューアル中で一時中止)、新商品についての意見を募集してそこで集めたコンテンツをプロモーションビデオや商品に入れる読み物で活用したりするなどの取り組みも。

とはいえ、バンダイの展開しているキャラクタビジネスとして肝心なのは、キャラクタの権利をもっている版元さんとの信頼関係。そのため、オフィシャルサイトで大々的にUGCを取り込む動きは難しいということのようです。「当社は、版元さんのお手伝いをする立場。事業部としてのチェック後、商品ごとのプロモーション担当から版元へのチェックは必ずしていますし、広報は版元がOKであれば問題ないというスタンスなんです」(河野氏)

今後は「テレビで流れるCMとは違うバージョンをネットで提供するなど、映像をもっと活用してみたい」ということです。

版元とユーザーとの間に位置するバンダイ。逆にいえば、版元では実現が難しいことにもチャレンジできると考えられるのかもしれません。

◇◇◇

「バンダイ」といえば、会社そして商品の知名度どちらもとても高い企業です。リリースポータルNews2u.netのランキングでも上位ランクインの常連になるほど人気の高いバンダイのニュースリリース。テレビや雑誌の広告はもちろん、ネットでの話題にも事欠きません。

取材前に考えていた、バンダイほどの知名度になると取り扱っている商品やキャラクタの力でSEOなど関心がないのではないか、という仮説が見事にあたっていたのですが、一方で、顧客にダイレクトに情報を届けるという徹底したユーザー視点に驚きました。

事業部発信だからこそ実現するユーザーへのダイレクトな情報提供。ネットを活用することによる情報量の増加と情報伝達のスピードアップによって、マーケティング広報に新しい展開が起こりつつあることを感じました。

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