CMS導入活用ガイド

失敗しないためのCMS導入事例
簡易ページ更新システムはなぜCMSに置き換えられたのか/日本財団+WebRelease 2

加藤さこ 2008/3/28(金) 10:00 tweet1このエントリーをはてなブックマークに追加 印刷用
[AD]
失敗しないためのCMS導入事例

日本財団
+WebRelease 2(株式会社フレームワークスソフトウェア)

取材・文:加藤さこ

写真:編集部

海洋関連、福祉、文化・教育や社会問題など、国境を越えて公益活動を助成支援している日本財団(財団法人 日本船舶振興会)。彼らが自らの活動を広報するのは、一般企業のように利益を追求するためではなく、活動の財源である競艇事業が公益に役立っていることを知ってもらい、助成金の申請を募って幅広い公益活動を支援するためだ。

長らくカスタムの簡易ページ更新システムを使ってサイトを更新してきた日本財団は、なぜCMS(コンテンツ管理システム)の導入に至ったのか、そして、どのようにCMS製品を選び、どうやってサイトをCMS化したのだろうか。

3500ページにのぼるコンテンツをCMSに移行し、かつ現場のスタッフが迅速に更新できるようにしたリニューアルの経緯を伺った。

ウェブサイトの基本的な情報や利用CMSに関する情報はページの末尾に記載

CMS導入の目的

  • 現在はエンジニアに依頼しているページ更新を、基本的に職員が迅速に行えるようにする。
  • 公式サイトへの最大訪問者である助成金の申請者が使いやすいようにする。
  • リンク切れや「ページが見つかりません」を出さないようにする。

助成希望を募るためにウェブサイトで活動内容を広報

日本財団にとって、インターネットが普及する以前の広報活動は、「一日一善」で有名なテレビCMがメインだった。しかし、テレビCMの短い枠のなかでは、活動内容の詳細までは紹介しきれなかった。

日本財団の情報グループで編集企画チームリーダーを務める佐々城氏は、インターネットが日本に登場した際に、この新しいメディアの可能性に期待を寄せた。というのも、佐々城氏は、日本財団に転職する以前に広告宣伝担当としてマス広告の業務経験があり、またその前には国産OS・TRONの応用プロジェクトに携わっていたことがあり、広告と技術の両方の世界に携わっていたからだ。

佐々城氏
日本財団
情報グループ 編集企画チームリーダー
佐々城 清氏

日本財団では、全国の地方自治体が主催する競艇の収益金の約2.6パーセントを交付金として受け取り、それを主な原資として公益事業の支援を行っています。テレビCMのおかげで認知度は高かったのですが、競艇と公益事業の関わりや事業そのものについてを、視聴者に理解していただくことは非常に難しいことでした。ウェブサイトなら一般の方にわかりやすく、また深く説明できると感じていました

財団は1996年8月1日に公式サイトを立ち上げた。サイトの主なコンテンツは、助成活動の紹介と、公益事業の申請のしかたについての説明だ。当時の課題は、製造業などと異なって商品を持たない事業をどのように説明するかという点だった。

財団が助成した公益事業の成果報告書を所轄官庁に提出するのですが、非常に充実した内容なのに、一般の方には目に触れる機会がほとんどなく、存在さえ知られていないような状態でした。そこで、1998年にこれらの事業成果報告書をウェブサイト上で『事業成果ライブラリー』として公開しました。さらに5年後の2003年には、これを別サイト『日本財団図書館』として独立させ、現在ではA4換算で114万ページに及ぶコンテンツを公開しています

公式サイト立ち上げ当時は制作を外注しており、サイトはホームページ作成ソフトによって作られていた。ページの更新についても、原稿や画像などを制作業者に渡し、HTMLファイルの作成からFTPでのアップロードまでを委託していた。リニューアルは年度に一度あるかないかだった。

簡易更新システムを使うも
管理面の問題でリニューアルを決定

2001年7月には、シンプルなページ更新システムを導入した。

オリジナルのシステムで『六分儀(ろくぶんぎ)ステージング』と呼んでいたのですが、当時としては、CMSの先駆けともいえる斬新なシステムだったんですよ。ニュースなど頻繁なアップが必要なページに関してはHTMLの知識がなくても職員が更新できるようになりました。基幹システムとも連動していて、承認機能もありました

この「六分儀ステージング」により、現在のブログのように手軽にニュース系ページの更新ができるようになった。

しかし、ページデザインの変更まではできないので外注しなければならないし、一部のページしか更新できないという点がネックでした

その後コンテンツは順調に充実していき、2006年には3500ページにもなったのだが、5年間、デザイン面でのリニューアルはトップページのみで、大きなリニューアルはしていなかった。その理由は、共通デザイン部分の変更には大きなコストがかかってしまうことだった。

また、更新頻度が上がったのは良かったのだが、コンテンツ数の増加に伴って全体の管理が難しくなってきた。修正が追いつかない、リンク切れがある、どこに何があるかわかりにくいなどの問題が発生するようになってしまったのだ。

募集内容について、古い情報をいつまでも掲載しているとマイナスイメージにつながってしまいます。サイトに載っている財団への問い合わせ先が、異動のためになくなってしまっていたこともありました。『六分儀ステージング』は、あくまでページ更新システムであり、コンテンツを管理する機能を持っていませんでした。これを解決するにはどうすればいいかと検討し、CMSの導入が不可欠だという結論に至りました

具体的にCMS導入によるサイトリニューアルの具体的な条件が部署内で固まったのが2006年9月。CMS導入に併せて日本財団のウェブサイトをリニューアルするのだが、旧サイトの問題点を洗い出したうえで、リニューアルの目的を次のように設定した。

  • すべてのページを迅速に更新できるサイトにする
  • 公式サイト、CANPANサイト、日本財団図書館の整理を行う
  • 助成金の申請者を中心に、よりわかりやすい構成、より使いやすいデザインにする
日本財団ウェブサイトの関係
日本財団のウェブサイトの関係図(図はクリックで拡大)

また、リニューアルの基本方針として、主に次のようなポイントが挙げられた

  • CMSシステムを導入し、担当部署自身での迅速な更新を行えるようにする
  • 公式サイトへの最大訪問者である助成金の申請者が使いやすいようにする
  • 過去のページは資産と考え基本的にすべて残し、消えてたどりつけないページを作らないようにする

CMS選定のポイントは「国産」「インストール型」「実績」

佐々城氏はサイト改善の開発会議を担当会社と行って調査を進めた。候補に挙がった製品の説明会に参加してみるなどして、CMSを勉強した。

CMSに関するセミナーに参加したり、ウェブサイトや雑誌を参考にしたりして、そもそもCMSとはどういうものなのか、そして各製品のコストや性能を調べました。そのおかげで主要なCMSは把握できました

条件を洗い出していくうちに、さまざまなことがわかってきた。

ASPタイプのCMSでは、サービス提供側の都合でメインテナンスが発生するため、日本財団のような申請受付期間中にサイトにアクセスできないような事態が発生すると問題がある。また、カスタマイズにも制限が多い。

オープンソースのCMSならばライセンス料はかからないが、作り込むと開発コストがかさむ。なによりも、サポートがしっかりと受けられないと、日本財団のような公益法人には向かない。

決済が関連するようなEコマース的要素は、今のところない。多量の更新が一度に発生することも少なく、更新の担当者は数名。会員登録システムはあるが、マイページのようなものはないので、動的なページ生成機能は基本的に必要なく、静的HTMLの出力だけでほぼ足りる。

調査を進めた佐々城氏は、製品選定の軸を「メインテナンスやサポートの面を考えて国産であること」「ASP型ではなくサーバーインストール型であること」「しっかりとした導入実績が明示されているもの」と決めた。

条件と予算とで候補が数社に絞られたので、事業者の開催する製品説明会に出席してみて、ミッドレンジCMSの2社に絞りました

トータルに比較した結果、フレームワークスソフトウェアのCMSパッケージソフト「WebRelease 2」が選ばれた。11月半ばのことだ。

やはり、セミナー参加は、とても意義のあるものでした。CMS選定の最終決定をする際に、ベンダーさん側から直接話を聞けたことが最後のひと押しになりましたから。WebRelease 2は初期コストとランニングコストを併せたコストパフォーマンスも高く、何よりも全体での自由度の高さに惹かれました

期日厳守の導入作業は時間との戦い

佐々城氏は、CMS選定と同時に、CMSに移行するページの選択や、サイトの基本デザインの検討を進めていた。WebRelease 2のための制作会社が決まり、具体的なサイト設計を開始したのが12月、1月からテンプレートの開発を開始した。

スケジュールでは2007年4月1日にリニューアルオープンする予定だったが、佐々城氏は、この予定を何があっても厳守する必要があった。というのも、日本財団に対する競艇からの交付金率変更が4月1日付けの法改正で行われることが決まっており、公式サイト全ページに記載されている従来の率の表現を変更する必要があったのだ。

導入作業は制作会社、システムを担当しているコンサルティング会社と日本財団から1名が携わった。旧システムからのWeb担当者は、日本財団内外に7名いたが、スケジュールを守るために一定のところまで外注で進め、その間に日本財団内で新規ページとCMS操作のトレーニングを行った。トレーニングは、1日6時間で2日間とした。

「いろいろな条件面の要求から、当初CMSに移行するのは、アクセスの多い100ページ強の予定でしたが、旧サイトの3500ページを一気にCMS上に移行できそうだとわかりました

コンテンツの移行は、複数回に分けるよりも一度にしたほうがいいのも確かだ。予定が変更され、全ページのCMS移行が決定した。リニューアルオープンまで3か月を切り、スケジュールが迫っているなか、CMS導入プロジェクトで最大の方針転換だった。スケジュールが大幅に狂う危機を防ぐため、佐々城氏は東奔西走し、軌道修正を図った。

サーバーの購入、テンプレートの開発、ページの移行など、さまざまなことを平行して行いました。2006年内にサーバーの購入ができなかったことも、テストスケジュールに影響を与えましたね。遅れを取り戻すために、本来なら制作会社に依頼する作業も、一部は自社内で行いました

アルファ版ができたのが2007年2月5日だった。その時点で佐々城氏は、情報構造とデザインを切り離して作業を進めることとし、ニュースページを先行して入力し始めた。

CMS導入によるリニューアル作業終盤の最大の変更だった全ページのCMS移行も、増員しての作業の甲斐があり、予定内に終了させることができた。

本当に綱渡りをしているような日々でしたよ。最後のほうには、入力練習を兼ねて日本財団側のスタッフがCMSにコンテンツ入力をしていましたから。予定どおり、4月1日にリニューアルしたサイトを公開できたときは、さすがにほっとしました

デザインもきっちりと予定どおりのものに仕上がり、リニューアル前のイメージを持ちつつ新鮮味のあるものとなった。グローバルナビゲーションとして、事業内容の紹介、助成申請、日本財団からのお知らせの3つを配し、サブディレクトリとして英語サイトを持たせることができた。

導入後に気付いた良い点、問題点

WebRelease 2の運用が順調にスタートした日本財団のサイトだが、佐々城氏いわく、CMS選択で一番悩んだのは「試用ができないこと」だったという。

しかし、実際に使ってみてわかったことですが、WebRelease2の使い勝手は、導入を決めた後に開発されるテンプレートに大きく影響されるので、今になってみれば、事前試用の意味は実質的にはあまりなかったかもしれないと感じています

導入前にはわからなかったが、導入して運用が始まって気付いた問題点もあったという。

2001年から使っていた簡易ページ更新システムは、テキストを入力するだけのシンプルな機能で、だれでも使えていましたし、だれが使っても同じ結果でした。でも、WebRelease 2上で今回開発したテンプレートではいろいろなことができるので、担当者のスキルによってページの品質に差が出てしまうのです

そこで、公開担当者を絞ったが、そのために以前よりもページの公開ペースが遅くなった。これを解決するために、ニュース系ページの作成を広報チームに任せて、クオリティを保つように心がけたという。

導入後に気になったのはそれぐらいですね。あと、新しいサーバーになった際に、バックアップが保存されていない状態になってしまっていました。こちらのミスなのですが、これには愕然としてしまいましたね。4日で復旧して事なきを得たので、今では笑って話せることになりましたけど(笑)

非常に便利になった点としては、以前は公開するためのFTP転送を手動で行っていたのだが、CMS導入によってFTP転送をタイマで自動化できるようになり、指定時刻での自動公開や公開終了が可能になったことが挙げられるという。現在は6時、正午、17時に更新を行っている。

CMSの導入でコンテンツを充実させられるだろうとは考えていましたが、導入時に3500ページ程度だったコンテンツが1年弱で2倍の7000ページにまで増えていたので、改めてCMSの力に驚かされました

2008年1月にWebRelease 2がバージョン2.3になりましたが、ページの公開期間を指定したり未来時点の状態をプレビューで確認したりできる機能は非常に重宝しています。FTP転送も高速になったりフォルダを一括操作できるようになったりと、使い勝手が良くなっています。こういったアップデートはありがたいですね

次に目指す課題はフローの改善

導入に成功し、運用していくうちにCMSに対する要望が湧いてきたと佐々城氏はいう。

CMSの管理画面から簡単に情報を探せる検索機能がほしいですね。交付金率の変更もそうでしたが、公式サイトでの表現を統一的に変更するような際に、CMS上で検索できれば、より便利になると思います

確かに、サイト訪問者が公開済みのページを探すだけならばグーグルのサイト内検索などを使えばいいのだが、Web担当者にとっては管理面での機能充実は大切だ。

今後の予定としては、ページ更新のフロー改善を進めたいという。

せっかくのCMSなので、より多くの職員が自然に使えるような、業務フローを構築したいと思っています。また、検索連動型広告(キーワード広告)を始める予定で、SEOも徹底する必要がありますが、その点でもCMS導入はいいタイミングだったと思っています。さらに携帯電話用ページの新設も視野に入れています。地方では、日本財団の福祉車両がたくさん走っています。その車体にQRコードを描いたら、道で見かけた人が気軽に携帯電話からアクセスしてくれるかもしれませんよね

インターネットがそうであったように、携帯ページという新しいメディアは、日本財団にとって広報活動の場を広げる媒体となるかもしれない。日本財団は、WebRelease 2によって、新しいメディアを効率的に活用する力を得たようだ。

▲ページ先頭に戻る

日本財団ウェブサイト概要
URL http://www.nippon-foundation.or.jp/
目的 財団の公式サイトとしての情報発信・情報公開
オープン 1996年8月1日
ページ数 約7000ページ
更新頻度 ほぼ毎日

利用CMS情報
製品名 WebRelease 2(ウェブリリース2)
提供事業者 株式会社フレームワークスソフトウェア
URL http://www.frameworks.co.jp/
出力形態 静的HTMLファイル出力
対応OS Mac OS X/X Server、Solaris、RHEL、Fedora Core
特徴 国内導入実績200社超のミッドレンジCMS。プログラミング不要のパッケージソフトのため、コストパフォーマンスが高く導入も容易。HTMLベースのテンプレートにより、ウェブクリエイターがプログラマーの手助けなしにサイトを構築できる。デザインの制約も一切なく、XMLやPHPの生成、Flashとの連携やRSS自動生成など、幅広い応用が可能。シンプルなユーザーインターフェイスで、専門知識がない現場の担当者でもコンテンツの更新・公開ができる。
CMS導入概要
  • サイト全体をリニューアルしてCMS化
  • カスタムの簡易更新システムから商用CMSに切り替え
  • 過去のコンテンツ約3500ページは、ほぼすべてCMSに移行(過去のページは資産と考え、基本的にすべて残し、消えてたどりつけないページを作らないようにした)
  • 一部のコンテンツは入力の練習を兼ねてWeb担当者が自分で入力
  • CMS選定に約2か月
  • 制作会社選定に約1か月
  • デザイン作業とコンテンツ移行作業は平行して行った
  • 基本的な機能設計とデザインに約1か月
  • テンプレートの作成に約2か月
  • コンテンツ移行に約3か月
CMS選定のポイント
  • 国産の製品であること
  • サーバーインストール型であること
  • しっかりした導入実績が明示されていること

▲ページ先頭に戻る

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

[AD]
tweet1このエントリーをはてなブックマークに追加
日本赤十字社 東日本大震災 義援金募集

今日の用語

XMLサイトマップ
検索エンジンに対して、サイト内にあるページをリストアップして伝えるファイル。XM ... →用語集へ

連載/特集コーナーから探す

インフォメーション

Web担のメルマガを購読しませんか?
Web担の記事がコンパクトに毎週届くメールマガジン「Web担ウィークリー」は、10万人が読んでいる人気メルマガ。忙しいあなたの情報収集力をアップさせる強い味方で、お得な情報もいち早く入手できます。

Web担に広告を掲載しませんか?
購読者数10万人のメールマガジン広告をはじめとする広告サービスで、御社の認知向上やセミナー集客を強力にお手伝いいたします。

サイトマップ
RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

GOLD SPONSOR
さくらインターネット株式会社株式会社KDDI ウェブコミュニケーションズ株式会社日本レジストリサービスHP Softwareトランスコスモス株式会社株式会社ハイパーボックスDomain Keeperアドビ システムズ 株式会社
SPONSOR
株式会社キノトロープ株式会社アイレップ株式会社ニューズ・ツー・ユーシックス・アパート株式会社ウェブアンテナ株式会社サイバーエージェント富士通株式会社SitecoreYahoo!プロモーション広告Oracle