PR 2.0の現場から
複数のサイトによる情報発信でB2Bの信頼感をB2Cへ届ける/奥本製粉の場合

PR 2.0の現場から
ネットPR時代を生きる広報&マーケティングパーソンへ

多くの企業ウェブサイトのオーナーが広報部であるというのは、ご存知のとおりです。

従来の広報の仕事に新しくサイトの運営が増えたと同時に、インターネット時代のPR活動としてマスメディアが対象の広報活動からインターネットを通じたあらゆるステークホルダーとのコミュニケーションへの変化にも対応しなければなりません。

広報のプロフェッショナルがウェブサイトのオーナーのプロフェッショナルになるためには、大きな意識改革が必要です。

この連載では、試行錯誤の中、成功のルールを発見しつつある企業の広報担当者から、成功のルールを導き出すまでのプロセスやノウハウをレポートしてきます。

神原 弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長)

奥本製粉株式会社
奥本製粉株式会社
http://www.om-group.co.jp/

1937年創業の奥本製粉株式会社。現在の社長は三代目という、創業から70周年を迎えた老舗企業です。小麦粉中心のB2Bビジネスが主体だった奥本製粉が、2007年の春から楽天市場に出店し2回目のECに挑戦しています。

採用から自社ウェブサイトの運営とECサイトの店長までこなしている奥本製粉の通信販売部の原田さんに、歴史あるB2B企業のインターネット活用と現状についてお話を聞きました。

自社ウェブサイトで通年採用を実現

奥本製粉の自社ウェブサイトは、広報室を設置した2000年に開設。広報室開設と同時に広報室に配属となった原田氏も含めて、当初は2名でのスタートだったそうです。現在のサイトは、リニューアルをした2代目のものです。

原田 昌範氏
原田 昌範氏
奥本製粉株式会社 通信販売部 サブマネージャー

当時、競合企業などがウェブサイトを立ち上げ始めていた状況でした。我々はB2B(企業向け)といわれるジャンルでしたので、B2C(消費者向け)といわれる企業とは、(ウェブサイトの)役割が異なるのではないかと思います。会社案内のウェブ版という位置づけは、今でもあまり変わっていないと思います。

ウェブサイト開設の効果として、一番大きかったのはリクルーティングですね。開設後、学生さんがウェブサイトからエントリーしてきたんです。そこは意外と期待していなかった(笑)。ウェブサイトがなかったらご縁のなかった人たちだと思います

自社サイトの採用のコーナーについては、現在は東京総務部が担当しており、この3月には、採用サイトを自社で新たに立ち上げたとのこと。

従来、採用専業のサービス事業者を活用していたオンラインでの採用コンテンツを、自社運営に切り変えたねらいは?

(オンラインの有料求人サイトは)集客力を考えると費用については納得できますが、枠が決まっていて掲載される内容に制限があります。いまは、通年での採用が普通になっています。海外に留学していた人や公務員試験を受けている人に対して門戸を開いておくと、ユニークな学生が応募してくる場合もあり、そういう人たちにも我々は期待したいと思っています。継続した情報発信を考えると、自社で開設し、運営したほうが費用対効果も高くなると考えました。

自社で作った採用だけのリクルーティングサイトは、学生さんそれぞれとインタラクティブに接触する場にしたいと思っています。社員インタビューなどもオリジナルコンテンツを作って、掲載していく予定です

奥本製粉株式会社 採用情報(リクルートサイト)
奥本製粉株式会社 採用情報(リクルートサイト) http://om-group-r.com/

学生に人気の高い職種だけでなく、小麦の仕入れや営業部門など会社全体を伝えることができるようにユニークなコンテンツを準備中とのこと。「デザインやコンテンツでオリジナル性、奥本のカラーを採用でも出していきたい」と熱が入ります。

従来の広告を中心とした求人活動では予算的にも難しかった通年採用ですが、自社ウェブサイトを活用することで、より多くの、いい御縁が生まれるきっかけになります。企業の認知が低くなりがちなB2B企業にとって、企業ウェブサイトの採用への貢献は想像以上に大きいようです。

二度目の楽天出店はスタートも順調

奥本製粉は2007年に楽天市場に出店しているが、実はこれが二度目の挑戦。2001年に一度出店したが、そのときは時期が早すぎたこともあり、すぐに撤退したそうです。2回目の挑戦となる今回も、楽天市場を選んだ理由について、楽天市場の「OKUMOTO TOWN」の店長でもある原田さんに聞いてみました。

楽天市場を選んだのは、楽天にはオンラインマーケティングのノウハウがあると期待してのことです。楽天大学にも参加しましたよ。ただ、楽天大学では受講する人のITリテラシがばらばらなので、講義のなかで私にとってはなんでもないところでつまってしまう人がいて流れが止まってしまうなど、気になる点はありますね。しっかりとレベル分けしてもらい、濃い内容を受講できるといいのにと思いました。

楽天市場で取り扱っているのは、ホットケーキミックスやフランスから輸入している高級パン用小麦粉「ラ・トラディション・フランセーズ」など。もともと25キログラム包装で販売していた業務用のものをB2C向けに1キログラム包装という少量にして、一般のお客様向けに販売しています

楽天市場に出店してすぐに、楽天市場の懸賞コーナー「懸賞市場」でプレゼントを提供した原田さん。その効果のほどはどうだったのでしょう?

5000人くらいの応募がありましたね。広告の利用はなしで、楽天市場の懸賞市場だけで集まりました。懸賞に応募した人が、お試しセットを購入してくれるという流れができています。

お試しセットは送料無料でもあり、正直、採算的にはなかなか厳しいです。どんなにいいプレゼンテーションをしたって、おいしいと思っていただけないと、次にまた買おうとは思っていただけないですから。商品に自信を持っているからこそ、提供できるんです。本当に商品力ありきだと思っています

まず、潜在顧客(リード)を集めてリスト化し、そこに対して自社の自信の商品を詰め合わせた「お試しセット」を告知して、商品を体験していただく。有効リードの確保から顧客化、そして次はファンづくり。原田さんの仮説にそって、二度目の楽天市場でのB2Cへの挑戦は順調な滑り出しのようです。

奥本製粉の東京本社には、扱っている商品がきれいに並べられている、カフェを模したショールームがある。

業務用で培った信頼を消費者に届ける

現在、通信販売部の原田さんからの情報発信は、担当しているEC関連の情報が中心になってしまいます。

アピールの仕方だと思っています。新商品発売などは、情報が流れやすく、わかりやすいので、リリースポータルを積極的に活用しています。一方で、新商品の情報ばかりだと商売、商売になってしまいます。

これからは、業務用で実績があるのもアピール素材になると考えています。業務用の信頼感がある。プロが使っているわけですからね。ストーリーを自分たちでアウトプットしているだけでなく、第三者に認めてもらうことが大事なんです

ニュースソース不足だといわれることの多い製造業ですが、実際はどうなのでしょうか?

最近、社内活動や環境への取り組みなど、幅広い分野の内容のニュースリリースを目にすることが増えました。当社にも社内にも埋もれている情報はたくさんあります。たとえば、コジェネ対策や環境対策チームの活動など、さまざまな取り組みもしています。企業として、お客さまをはじめ、銀行さんなど、いろんなステークホルダーに情報を提供していくという意味でも、情報発信については、もっと積極的にしたいですね」(原田氏)

企業を多面的に見せるという視点、全体感のなかで伝えていくというのがウェブの本当の役割」という原田さん。広報からの情報発信も含めて、社内の情報を積極的に自社ウェブサイトから発信していくのが、今後の課題です。

検索エンジンがお客を連れてくる?

インターネットは、新しい顧客とのコンタクトポイントです。特に、製造業にとっては、消費者との直接の接点になります。

実際に、インターネットで新しいビジネスのきっかけなどは起こっているのでしょうか?

楽天市場のサイトを見て、お問い合わせをいただいたクレープ屋さんもありますし、学園祭でクレープ屋さんをやるというニーズのお問い合わせもありました。お問い合わせいただいた会社にサンプルを提供したら、評価が良かったのでオーダーにつながったというケースもあります。「クレープ」というキーワードだとヤフーの上位に表示されるので、そこから、モノが流れていき、商売につながっていくということを感じますね

今後のB2Cの目標は?

もともと当社では、12年前から『ミセスHANAKO』というブランドでB2Cを展開している通販部がありました。今後、B2C向けのブランドを統一して展開していく予定です。ウェブを中心にしたEC事業の柱になるように成長させていきたいですね。

日本はクール便が発達しているので、食品流通が活発になったと聞いています。クール便がない米国では、食品関連のECは普及していない。PCもまだまだ成長しますが、これから興味があるのはモバイルですね。

モバイルは何を基準にして検索順位がでるのかわからない。SEOはあとでもいいので、まずはメールアドレスを集めてメルマガを発行し、コンバージョンをチェックするPDCAを地道にまわしていきます。自分で感じないといけないと思っています

モバイルに関してはさらに「今後は、商品にQRコードをつけるなど、なんらかの形で奥本に接する機会を作っていきたい」という原田さん。ウェブサイト担当者として、ECサイトの責任者として、これまで積み重ねてきた経験から、モバイルの分野でも何か新しい発見があるのではないかと期待しています。

原田氏と神原氏

商品への自信があるからこそ、自信を持った対応が可能

昨今の食品関連業界では、異物混入や回収など、企業の品質管理はもちろん、緊急時の対応に注目が集っています。

奥本製粉では、緊急時対応について、どのような取り組みをしているのでしょうか?

当社では、緊急時の対応マニュアルがあり、異物混入などのクレームが発生した場合にすばやく対応できるよう定期的に演習も行っています。通信販売を12年間やってきたおかげで、お客様相談室にもかなりの量の電話がかかってくることを経験していますから、万が一のときの対策は自信を持ってやっていけます」(原田氏)

過去の経験から「食の安全、安心については、正直に伝えるということが大事だと思います」と、お客様の誤解に対応したエピソードを披露してくれた原田さん。すべては、商品への自信。そして品質管理体制への自信があるからこそ、できることだと感じました。

企業ウェブサイトでは、従来の取引先や採用を中心とした情報発信を行い、楽天市場を活用した消費者向けの販路の確保。奥本製粉のインターネット戦略は、一歩一歩着実に発展していっているようです。

企業のインターネットへの取り組みは、先行している企業とそうでない企業との格差は開くばかりです。特に歴史ある企業では、社内の情報流通を替えるだけでなく、取引先の拡大など、従来のビジネスを大きく変えるきっかけになります。

企業によって、さまざまな課題もあるとは思いますが、5年後10年後を考えたときに、いま取り組まなくてもいいという企業は一社もないはずです。奥本製粉のケースは、多くの日本の製造業に通じるものを感じました。

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