禁断の外注コントロール術

外注も知らない本当のWebサイトの目標(第3回)

目標となる指標は多数ありますが、失策に手を出さないためには正しい目標指標を知る必要があります

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禁断の外注コントロール術

外注の立場と発注側の立場の両方を経験している筆者が、それぞれの立場の経験から、「発注側が外注の力を借り成果を出す方法」を考えていきます。

※この記事では、事業主体の「発注側」に対し、事業を成功させるために協力してもらう専門性の高いパートナー(Web制作会社や広告代理店など)のことを「外注」と表記を統一しています。

目標はページビュー数の3倍増

前回は目標設定について書きましたが、今回はもう少し具体的にWeb担当の目標ついてお話します。発注側が正しい目標を設定できなければ、外注は力を発揮できません。失策に手を出さないためにも、正しい目標と計測すべき指標を知っておく必要があります。

あるWeb担当者に次のような目標が設定されました。

ページビュー数を今期中に3倍にする

Web担当者は外注に提案を依頼し、集客のためのキャンペーンを企画しました。キャンペーンのバナー広告を貼り、クリックでポイントが貯まるメールマガジン広告、クリック報酬のアフィリエイトプログラムを行った結果、多くの人がWebサイトに訪れ、目標のページビュー(PV)数3倍を達成することができました。しかしその後、別のWeb担当がアクセス解析を行ったところ、コンバージョンに至った訪問者はいなかったそうです。

このような“ページビュー数神話”はなぜ起こってしまうのでしょうか?

アクセス解析の落とし穴

多くのアクセス解析ツールで最初に表示される指標がページビュー数であることが原因かもしれません(Google Analyticsは訪問回数です)。また、レポートとしてページビュー数とコンバージョン数を合わせたグラフをよく見かけますが、ページビュー数とコンバージョン数は相関関係にあることが多く、このことからページビュー数を増やせばコンバージョンにつながると錯覚してしまうのです。しかし、相関関係と因果関係は別物ですから注意してください。

指標と聞くと重要な数字に思えてきますが、騙されないようにしましょう。アクセス解析ツール(Webサイト)には無駄な指標が多すぎます。アクセス解析ツールはたくさんの指標を示してくれますが、多くの指標がそのままでは使い物にならないことが、誤解を生じています。アクセス解析ツールの指標のほとんどは、訪問者全体の傾向を表した数字なので注意が必要です。

外注も知らない本当のWebサイトの目標

直帰訪問の罠

訪問者のなかには質の良い訪問者と質の悪い訪問者があります。その違いは、お客さんになってくれる可能性があるかどうかです。ですが、アクセス解析では区別されずに合算値が表示されています。

たとえば、キャンペーンで新たにバナー広告を出稿し、ページビュー数やユニークユーザー数が一気に増加したとします。ページビュー数やユニークユーザー数は増えたのだから集客施策は成功したという見方ができます。しかし、一見さんが増えたことでWebサイトの1訪問あたりの平均ページビュー数が下がり、サイトを離脱する人も多くなった結果、コンバージョンが思うように伸びなかったと結論付けられたりもします。

ポジティブ評価
  • ページビュー数とユニークユーザー数が倍増
  • 新規ユーザーの訪問数が増えた
ネガティブ評価
  • Webサイトの平均ページビュー数が下がった
  • コンバージョン率が下がった
  • 離脱率が上がった

さらに、発注側は外注から「Webサイトの平均ページビュー数が下がったのはWebサイトのナビゲーションや構造に問題があるからだ」と、Webサイトのリニューアルを提案される、またはキャンペーンの中身に問題がある、と新たなキャンペーンを提案される可能性があります。

こういったキャンペーンでは大抵の場合、直帰率の数字も一気に増加しています。キャンペーンだけが目的の質の悪い訪問者が沢山来たことで、1訪問あたりの平均ページビュー数が下がってしまったのです。質の悪い訪問者がたくさん来ても、ページビュー数やユニークユーザー数といった指標は増えるからやっかいです。

ページビュー数やユニークユーザー数を指標とするなら、訪問者の質で切り分けて見てみる必要があります。集客施策による影響は、直帰訪問を除くことで受けにくくなり、より正確な数字を把握することができます。直帰者を除いた平均ページビュー数は、以下の算出方法で計算します。

直帰者を含む「平均ページビュー数」ページビュー数÷訪問回数

直帰者を除いた指標として適切な「平均ページビュー数」(ページビュー数-直帰訪問回数)÷(訪問回数-直帰訪問回数)

直帰訪問を除いた平均ページビュー数の計算結果
 ページビュー数訪問回数直帰率直帰
訪問回数
直帰訪問を含む
平均ページビュー数
直帰訪問を除いた
平均ページビュー数
キャンペーン前13,7505,00050%2,5002.84.5
キャンペーン中36,50020,00085%17,0001.86.5

直帰訪問を除いた数字を見ると平均ページビュー数は伸びており、Webサイトやキャンペーン内容ではなく、集客に問題があることがわかります。その他の指標についても、直帰訪問を除くことでWeb担当者が見るべき指標を算出することができます。

直帰訪問を除いた指標の算出方法の例
  • ページビュー数全体ページビュー数-直帰訪問回数
  • 訪問回数全体訪問回数-直帰訪問回数
  • 離脱率(離脱数-直帰訪問回数)÷訪問回数
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本連載が、電子書籍になりました! タイトルは「Web担当者が知っておきたい『禁断の外注コントロール術』」です。

Web担当者の業務範囲は、制作や運営だけでなく、アクセス解析、インターネット広告やSEOに加え、ソーシャルメディア活用など多岐にわたり、それぞれ業務の内容もますます複雑化しています。そんな中で一定の成果を出していくには、もはや1人2人の手では足りず、社外の人の力を使わないとも対応できなくなっています。

本書は、Webの発注側にいる人が、社外の人の能力を最大限に活かす方法、ノウハウが収録されています。発注側と外注側のゴール・目標の違いを認識することからスタートし、成果を出す目標設定やツールの使い方、社外の人のモチベーション管理方法、対人関係能力の磨き方まで、発注・外注両方を経験している著者が、自らの経験を元に、丁寧に解説しています。

要点がコンパクトにまとまっているので、Web担当者になってから間もない人、自分以外の人の力を借りてもっと成果を上げたい人、気づきが満載です。ご一読のほど!

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用語集
CPA / SEO / アクセス解析 / アフィリエイト / キャンペーン / コンバージョン / コンバージョン率 / ナビゲーション / ページビュー / ユニークユーザー / 検索エンジン / 検索連動型広告 / 発注 / 目標設定 / 直帰 / 直帰率 / 訪問 / 訪問者

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