企業ホームページ運営の心得

ライオンを探せ! 震災時のデマに騙されない方法

デマの見極め方と拡散したときの対応を紹介します
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の455

分散型ネットワークの強み

scanrail/iStock/Thinkstock

4月14日の前震から数えて、熊本地震から1か月が過ぎました。収束はまだ遠く、「大規模地震の発生後、余震への警戒は年単位になる」とは、東日本大震災で専門家が繰り返していた警告です。だから備えておくべきであり、押し入れに眠っているノートパソコンがあれば、引っ張り出して充電しておきます。これが停電時の「バッテリー」となり、災害時の貴重なライフライン「スマホ(携帯電話)」を支えてくれます。

熊本地震ではそのスマホを介したSNSによって、救援を呼びかけ、避難所間で物資の融通が行われました。中央との連絡が途絶しても、現場レベルで情報共有できるのは分散型ネットワークの強みです。一方で「デマ」の拡散というマイナス面も露呈します。ただし、東日本大震災のときと比べ、事実を持ってデマを否定する「自浄作用」が強く働くようになり、全体としては心配するレベルにはないと考えます。

だからこそ、Web担当者が「デマの拡散」をしては赤っ恥。そこで今回は、デマの見極め方と拡散したときの対応を紹介します。

マスコミの大好物

ゴミのような情報ばかりを発するという意味から、ネットスラングで「マスゴミ」と呼ばれるほど、マスコミへの信頼度が低くなっている昨今ですが、「デマ」をチェックするための「フィルタ」としての機能は健在です。熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」という「デマ」がありましたが、これが事実なら、マスコミはヘリを飛ばしてライオンを空撮するか、装甲車をチャーターしても百獣の王のご尊顔を全国中継したことでしょう。

震災などの「事件」が発生したとき、彼らは一種の「躁状態」となり、刺激的な映像を極限まで追い求めます。とりわけテレビは衝撃映像が大好物。吹けば飛ぶような体重の軽い女性アナウンサーを、荒れ狂う波が打ち寄せる堤防に立たせ、台風の実況をしながら土砂災害の際まで近づく姿は、まるで二次災害を期待しているかのようです。

ライオンはどこへ消えた

若いWeb担当者はご存じないかもしれませんが、かつて「豊田商事」の会長が刺殺され、犯人が血塗られた凶器と共にカメラの前に現れたとき、記者は逃げ出すどころかその犯人にインタビューをはじめ、血まみれの被害者の姿を競ってお茶の間に流していました。その態度の善悪は脇に置くとして、マスコミが「ライオン」を見つけだせていないなら「デマ」だということです。

ニュース番組が放送されていない時間なら、テレビ局各社のサイトにあたります。NHKと在京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)、加えて当地の地方局を確認します。また、「第一報」においては新聞がテレビを追い越すことも珍しくありません。「映像」の到着を待つテレビ局と、文字情報のみでも発信する新聞社の違いです。新聞は朝日、毎日、読売、日経、産経といった「全国紙」と、地域のみで発刊されている「地域紙」があり、沖縄県内では琉球新報や沖縄タイムスの地域紙2社で、97%を超えるシェアを誇っており、こちらでも「ライオン」を探してみてください。

常識で考える

大震災になったからといって、人が自力で空を飛ぶことも、黒毛和牛が白髪に染まることもありません。冗談ではなく、「常識」に照らせばデマに惑わされないということです。熊本地震では、ある地域で12人の女性が性被害にあったという「デマ」が拡散されました。話は阪神大震災にさかのぼり、「停電により闇に塗られた街角で、1人歩きの女性が次々と襲われ、被害者は精神的ショックから口をつぐみ被害は拡大した」というデマ。

常識で考えてください。暗闇は恐ろしいものです。ましてや震災直後の不安定な心理状態のなか、1人で夜道を歩く女性が、そもそもどれほどいるでしょうか。東日本大震災のとき、ほんの数時間の計画停電ながらも、文字通りの「漆黒の闇」に1人歩きする勇気は、おっさんの私でも持ちませんでした。そして襲う側も停電の闇にいます。その闇を歩いてきた相手が、女性かどうかを判別するのは困難です。さらに、性被害者が口をつぐんでいたならば、それではだれが「連続被害」を特定したというのでしょうか。

政治デマという詭弁

こうした被害がゼロだとは言えません。しかし、常識に照らして考えれば、論理的矛盾が見つかるのが「デマ」の特徴です。ちなみに、熊本の「被害」に違和感を覚えたユーザーが地元警察に確認したところ、そんな事件は起きていないと否定されています。

熊本地震では自らのイデオロギーを実現するためのデマが確認されています。鹿児島県にある「川内原発」の停止を呼びかける署名活動は、それぞれの思想信条の自由です。しかし、呼びかけに使われている「地図」は、川内原発の直下まで地震を引き起こす構造体が走るかのように描かれており、それは「捏造=デマ」です。

被災者の不安心理を利用した政治活動で、いわば「政治デマ」です。私も画像を見た瞬間、ギョッと驚きました。しかし、それが事実なら、そもそも「世界一厳しい基準」と、原発再稼働推進派が嘆息するほどの原子力規制委員会が再稼働を許可するはずもないとは、常識的解釈。調べてみて「デマ」だと確信した次第です。

なお、週刊新潮2016年4月28日号よれば、川内原発は2000ガル(建物に瞬間的にかかる力の強さ)に耐える構造ですが、260ガルで自動停止するように設計されています。16日未明の本震での観測は12.6ガル、「安全運転」の範囲内です。

デマが流れたときは

震災時のデマはなくなりません。政治デマは論外としても、性被害デマなどは「被害の拡大を防ぐ」という善意に基づいているからです。だから、本稿をお読みのWeb担当者のなかにも、うっかり「リツイート」によって、デマ拡散の片棒を担いでしまうこともあるでしょう。

そのときは「削除」するのは当然ながら、

ライオンが逃げたという投稿をリツイートしましたが、デマと判明しました。一刻も早く知らせねばと早合点してしまい、大変申しわけありませんでした。

と、「デマ」の内容と、「デマ」であることを明記し投稿します。これが「自浄作用」を強化してくれます。

善意を出発点としても、デマはときに被災地へ「風評被害」という、さらなる被害を与えます。だからこそ震災時には「マスコミ」「常識」をもって情報に触れ、「政治的思惑」に警戒してください。

今回のポイント

刺激的なネタの真偽はマスコミをチェック

デマに気づいたら、いち早くデマであることを明記

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