企業ホームページ運営の心得

企業の物語という究極のオウンドメディアコンテンツ

企業の自分語りは、お客が食いつくネタになります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の508

松屋のラーメン物語

tiverylucky/Thinkstock

ある情報番組でカフェにも見える小洒落た内外装の店舗が紹介されていました。スタイリッシュな女性が埋め尽くす店の看板メニューは「トマトラーメン」。

ラーメン屋って感じじゃないから女性ひとりでも入りやすい

取材に応じた女性は答えます。そして、この店が牛丼チェーン「松屋フーズ」の運営であるとネタ晴らしすると「えー」と驚きます。松屋はもともと中華料理屋として産声を上げ、牛丼屋になるのはその後。そしていま、創業の思いを胸にラーメンをはじめたとVTRにナレーションが添えられます。

ある意味「究極のオウンドメディアのネタ」です。

松屋のコーポレートサイトを訪ねると「トマトラーメン」は、ショッピングセンターのフードコートに出店する新業態の看板メニューだとわかります。実は、松屋がラーメンに乗り出すのはこれが初めてではありません。ここでは大人の事情をさっして深堀は避けますが、お客は「創業者の思い」や「秘話」的な話、つまり「物語(ブランドストーリー)」が大好きです。

豚骨ラーメンへの情熱

すこし想像してみてください。

  • 何となく儲かりそうだという理由だけで始めたラーメン屋
  • 出張先で偶然はいったラーメン屋の豚骨スープに感動。脱サラして修行した店主のラーメン屋

どちらがうまそうに感じるでしょうか。実は、後者は情熱を語っているだけで、うまいかまずいかの判断材料は示されていないのですが、お客はこうした物語がある方を喜びます。

こうしたお店にまつわるネタ、いわば企業の「個人情報」は有名店ならともかく、街の小さな店は自分たちで語るしかありません。だから「究極のオウンドメディアのネタ」と銘打ったのですが、お客の食いつき(反応)が良いネタでもあります。「こだわり系」のラーメン屋が、店内の壁やパンフレットに「熱い思い」を書くのも同じ理由。もちろん、普通のWebコンテンツとしても使えます。

感動のメカニズム

実例を紹介する前に、お客が物語を好む理由を説明しておきます。

巨人に襲われた経験がなくても『進撃の巨人』にワクワクドキドキし、薙刀どころか体育会系の部活経験がなくても『あさひなぐ』に没入するように、物語は人の心を揺さぶります。それは登場人物の心理や行動を、類似の自分の経験を引用して理解するからです。

だから、ラーメンを作ったことがなくても、美味しいものを食べて感動した体験や、ふとしたきっかけから人生の目標を見つけた経験があれば、前述の「ラーメン物語」を理解できるのです。

そこにトレーサビリティとのぞき見心理が加わります。トレーサビリティとは、「商品の流通経路を生産段階までさかのぼって追跡可能な状況であること」を指します。単にトレーサビリティというと、今は食の安全と安心のための取り組みを指すことが多いのですが、他の商売でもそのまま通じます。

つまり、「どんな人が作ったのか」「どんな思いで商売をしているのか」を伝えることが安心感につながるのです。農産物における「顔の見える農家」も同じ発想です。

のぞき見心理と加工

程度の差こそあれ、多くの人は「のぞき見」をしたいという心理をもちます。芸能人の噂話や秘話は、これを満たすためのもの。お店にまつわる物語とは、健全な範囲ののぞき見欲求を実現するコンテンツになるということです。

「加工」できる点もメリットです。

松屋のサイトにある「会社沿革」を見ると、昭和41年に「中華料理 松屋」を開業し、その2年後に「牛めし・焼肉定食店 松屋(江古田店)」を出店したとあります。これが、多くの人がイメージする牛丼の松屋としての1号店だといえるでしょう。

沿革を見る限り、苦戦する中華料理から業態を変更して成功してきたと受け取るのが妥当でしょう。つまり、創業時にラーメンで大成功していたわけではないのですが、「創業の志」という筋書きを与えてあげることで、「牛めしの松屋がラーメン」に説得力を与えます。

名前物語

語弊を怖れずに言えば「錯覚」なのですが、広報や広告、もちろんホームページでは、「錯覚」を利用することは重要です。昨今メディアを賑わせる言葉にすれば「印象操作」。ある流れに沿って情報を取捨選択して組み立てる物語はこれに最適です。

ネタにしやすい、企業の個人情報には「社名」があります。創業者の思いに連結・隣接することが多く、命名の由来を説明するだけで物語になります。

気まぐれで焼いたパンを、その父が喜んだ。喜ぶからまた作り、研究を重ねるウチにパン屋を開業。開店を待たずに父親は他界したが、父を偲び父の名前を店名にした

これは、テレビで紹介されていたあるパン屋のエピソード。エピソードとは、すなわち物語です。

また、ある漢字三文字のラーメン屋は、店名の頭二文字は修行した店から拝借し、最後の一文字は実家のラーメン屋から取ったといいます。これらをつづったFacebookの投稿に、数多くの「いいね!」が寄せられていました。

特別を演出する

特別な話でなくても物語は作れます。

真冬の早朝、身を切るような冷たい水で20キロの米を研ぎ、レタス三箱を切りそろえて冷水に浸し、キャベツを一箱を千切りにする。16才になったばかりの冬の朝のことである。ここで私は基本的な調理技術を身につけたのだ

どこかの著名料理人の修業時代の話ではなく、いまはグループ名のみとなった「すかいらーく」でのアルバイト体験談という、私の学生時代の物語です。アルバイトなのですが、知らない人からするとかなりの「修行」に思わせることができます。業務用の仕込みは量が多いので、日常の調理とは違うことを示すだけで特別な物語に見せることができるという小技です。物語的には「秘話」に分類できます。

オウンドメディアのアプローチは、さまざまありますが「自分語り」は究極です。繰り返しになりますが、自分以外には語ってくれないからです。それでいてお客が食い付くことは先に述べた通り。

今回のポイント

「個人情報」はネタになる

物語は理解しやすく加工も容易

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