企業ホームページ運営の心得

マスゴミに捏造されたなら。取材と取引の相互関係

取材では事前に取材意図を確認します。ホームページと同じで、企画で伝えるべき内容が変わるからです
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百六十六

週刊ポストからの取材依頼

企業のツイッター利用について、私のインタビュー記事が週刊ポストに掲載されました。取材依頼は3月末にホームページの「問い合わせ」にあり、「アクセスログ」をチェックしてみるとブログからの訪問でした。そこで声をかけた理由を尋ねます。たとえば「Web担当者Forum」経由のアクセスならば「IT系のコメント」がほしいのだろうと想像できますが、ブログは「政治」や「経済」、そして「週刊少年ジャンプの黄金期」について語ることもあり、編集部が求めているものがわからなかったからです。

取材によって意見を変えることはありません。しかし、求めている答えを提供できないなら最初から断るのが互いのためです。特に「本業(ビジネス)」に隣接する取材には注意が必要です。

マスコミのネタ元は

ブログ、ミクシィ、ツイッター、そしてホームページを開設していれば、有名人や著名人でなくてもマスコミの取材を受ける可能性があります。たびたび紹介する埼玉県春日部市の「だるま不動産」も昨年、テレビ局の取材を受けました。ホームページに掲載していた「任意売却」の実例が番組スタッフの目にとまったのです。こうした例は枚挙に暇がないほど、「ネット」はマスコミの「ネタもと」となっています。

取材の目的は大きく分けて2つあります。1つは記事にする前段階の「情報収集」で、時間があれば人脈を増やす程度の軽い気持ちで受けて結構です。「記事になりますか?」と尋ねれば教えてくれます。問題は「コメント取り」の場合です。取材依頼の時点で記事の方向性(いわゆる企画)が決まっており、そのためのコメントを取る取材です。自分に期待するコメントは何か、両論併記ならば「是非」のどちらを期待しているのかを事前に確認します。

そして、ライブドアの犠牲者となった

旧ライブドア株が上場廃止となる直前、株主としてある情報番組の取材を受けました。撮影クルーが事務所にやってきます。ディレクターの質問に答える形で撮影が行われました。

●ディレクター 「株価が下がって旧経営陣にいいたいことは?」

●ミヤワキ 「株は自己責任ですから」

●ディレクター 「経営責任については?」

●ミヤワキ 「司法の判断待ちでしょう」

●ディレクター 「悔しくないですか?」

●ミヤワキ 「そりゃ損しましたからね。でも負けて泣くなら博打をしてはいけません」

いまでもディレクターの困った顔を思い出します。「株価下落で悔しがる株主」のコメントがほしいのだと察したのは取材開始から30分後。そして「損したことは悔しい」と表現を変えると取材は終了。オンエアーされたのはこの部分で、番組の「企画」を考えれば当然です。

マスコミ批判で儲ける人々

これを「偏向」と糾弾するのは幼すぎます。100人の意見をただ並べただけでは番組にはならず、企画というメッセージ(主旨)を軸に構成することで視聴にたえられる「作品」ができあがるのです。ツイッター礼賛本でもそれは同じで、「不都合な事実」を小さく紹介し、バラ色の未来に紙幅を割くのも「企画」に沿ってのことです。そして「企画ありき」でも、取材を通じて事実とあまりにもかけ離れているときには企画自体が「ボツ」となるものです。

読者にどんなメッセージを伝えたいのか、これはホームページのコンテンツにもいえることです。だるま不動産を例にあげれば、企画は任意売却、読者は任意売却や競売の素人で、客が誰であるのかを知ることは商売の基本です。

マスコミ批判をする著名人がいます。発言が歪曲されるとブログで批難する元経営者がバラエティ番組に出演し、嘘ばかりとツイッターで吠えるジャーナリストがワイドショーのコメンテーターをしているのはなぜでしょう。自己矛盾する彼らの行動が「嘘だけ」でないことを証明しています。また、いまだにマスコミの影響力は大きく、著書の売り上げや講演活動の動員数に寄与していることを彼らは語りませんが事実です。つまりマスコミへの露出はビジネスチャンスを拡げるのです。

協力者があってこその「やらせ」

事前に企画を確認することで「偏向」される確率は少なくなります。私は取材を受ける前に取材意図(企画)への「私見」をメールします。この時点で企画にあわなければ「ご高説なるほどと拝読しましたが弊誌読者には難しいようで」と断りがはいります。マスコミ露出の機会を逃しますが「偏向」された結果「本業」に悪影響が出ては本末転倒です。

コメントや資料提供を「リクエスト」されることもありますが、できないことはできないと伝えれば企画を調整してくれるものです。それをせずにリクエストに協力すれば「捏造」の「共犯者」となります。もっとも「やらせ」を強要する媒体は少なく、たまにスキャンダルが報じられるのは珍しいから「ニュース」になるのです。

できるチェックはする

新聞や雑誌の取材なら「ゲラ(入校前の原稿)」のチェックができるのかも確認しておくといいでしょう。これを嫌うところもありますが、拒まれたのなら断る勇気も必要です。先に述べたようにマスコミの影響力はいまだに大きく「偏向」された意見が流布するぐらいなら断る方が得策なのです。またゲラの確認後、意見が180度変えられ掲載されたとしたら「裁判」で戦うべきです。それは捏造というレベルのもので、マスコミにリークすることで「名誉」と「売名」の一石二鳥を得ることができる美味しい戦いとなります。

何度も取材を受けた私の結論は「ビジネス取引」と同じ。契約前に取引内容を確認するように、取材内容は事前に確認します。これを怠るのは契約書も見ずに判子を押すようなものです。またディレクターや編集者を取引先の担当者として見立てれば、双方の「信頼関係」を構築するために「私見」を伝えることで「人となり」への理解を期待するのは営業マン時代に培ったノウハウです。

ネットで散見する「マスゴミ」という非難になるほどと思うこともあります。しかしテレビ局も雑誌社も「仕事」として報道しており、そこで働く「なかのひと」も普通の人間。「マスゴミ」という色眼鏡だけで見ると損しますよ。

今回のポイント

マスゴミ……もといマスコミの「なかのひと」も仕事としてやっている。

取材は取引と同じ感覚でチェック。

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