企業ホームページ運営の心得

Webコンテンツは総力戦、伝わらない「こだわり」という大艦巨砲主義

こだわりだと思っていたことが、万人には伝わっていないことがあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の496

大艦巨砲主義の失敗

leolintang/Thinkstock

先の大戦で、日本が敗戦した理由など、そもそも論で無謀だったと言ってしまえば、それでおしまいですが、戦略的には「大艦巨砲主義」が挙げられます。大きな戦艦、巨大な主砲で敵を蹴散らす。男子的には爽快ですが、航空兵器の発達から制空権の奪取が重要となった時代に取り残されたのです。

Webに残しを見つけるとはいささか物騒ですが、自社の主力商品のみをアピールする戦い方に重なります。たとえば、「こだわりのそば屋」。そばの実の鮮度にこだわり、石臼で挽き、毎朝手打ち。こだわりの水もアピールすることは間違いではありませんが、必ずしも百点満点の正解ではなく、ストロングポイントのみの強調は「大艦巨砲主義」となり、ときに首を絞めることもあります

今回は思考実験。例示しやすいのでそば屋にしましたが、実在の店舗は関係ありません。

そばの香りがわかるか

こだわりのそば屋として千客万来、開店から閉店までお客が途切れないのなら「大艦巨砲主義」でも間違いではありません。一方で「そこそこ」なら、サイトの見直しを検討すべきでしょう。

そもそも、そばの良し悪しを明確に判断できるお客はまれです。そば好きにとっては「香り」が何より大切、何もつけずに食したり、塩で食したりする人がいるのは、香りを楽しむためです。旅行誌「サライ」のサイトで、「そばを作っている人間が、こういうことを言ってはいけないと思うんですが、実は香りには自信がないんです」と告白する主人がいるように、そばの香りは繊細なもの。

素人にとって、そばの判断基準は、細い太い、堅い柔らかいといった麺の形状やゆで加減、そばつゆの甘いや辛いといった味です。だから、そばへのこだわりだけ語ったコンテンツに感心はしても、食欲をそそられるのはそばマニアだけという可能性があります。

実際、「さらしな」「もり」「田舎」といった、実の挽き方が違う三種のそばを提供する店で、それぞれの違いを明確に答えられるお客はまれです。

Webの良いところ

「そば推し」コンテンツだけのサイトが、どれだけのお客の心に響くかは疑問だということです。さらにそば屋を例にした理由を挙げると、「こだわりの○○」と掲げて閉店した店は多く、とりわけ○○をラーメンにすると洒落にならないほど実例が多いからです。

こだわりのページが無駄というのではありません。総力戦で、より強欲にお客を獲りにいくということです。こだわりのページはそのままに、コンテンツを無限レベルに増殖できるのがWebの利点です。

それでは何を増やすか。店によって異なるでしょうが、一般的な街角のそば屋なら、まず間違いないのが「ご飯」です。その時期にそれなりに美味しいお米を仕入れ、二升釜などで大量に炊くのでほぼ間違いなくうまいものです。ブランド米ならなお良し。

Webは総力戦

一般的なそば屋にグループで足を運んだとき、全員がそば類だけを食べるシーンはあまり多くないでしょう。何人かは、カツ丼やカレーライスといった「そば以外」を注文するものです。つまり、ご飯はそばマニア以外の幅広いレンジへのアピールになります。

ご飯ときたら「味噌汁」もアピールポイント。そばつゆのために大量に出汁を取るそば屋の味噌汁は、それなりにうまいものです。地味ながらもそば以外のアピールに役立つことでしょう。そば屋のためのWeb講座ではありません。メイン商材にばかりフォーカスをあてる「大艦巨砲主義」に陥っていないか、という問いかけであり、実際には商売もWebも「総力戦」だということです。

戦いに勝利するには制空権を支配して、陸上戦力で制圧することも不可欠。なによりそば屋でご飯が人気になること、味噌汁のために行列ができること、どちらも歓迎すべきことです。実際、Webの世界では「主力」以外の商品に火がついて、そちらがメインになった例は枚挙に暇がないのです。

サイドメニューが決め手になることも

SEOからみれば、1つの食材、料理にこだわるほうが有利という見方もあり、筆者はそれを「焼き鳥屋理論」と呼び推奨していますが、ここでも「間口は狭く、奥行きは深く」と、サイドメニューの充実はむしろ推奨しています。

サイドメニューがお客を惹きつけることは、読者のみなさまも体験的に知っていることでしょう。宅配ピザを選ぶ際、「デザート」で業者を選別する主婦はいますし、「つきだし」のうまさで選ばれる居酒屋もあります。

私は「お冷や」でこれを経験しています。その昔、埼玉県西川口の幹線道路沿いに、うまさとすれば60点ぐらいのラーメン屋がありました。俗に「昔懐かしい」との表現ぐらいしか浮かばない凡庸な味でしたが、この店の一番の売りは「お冷や」。たぶん、ただの水道水ですが、ウォーターピッチャーにレモンが一欠片はいっていて、さわやかな香りが空腹に優しく、食後の脂っぽさを洗い流してくれます。

汗水垂らした営業マン時代、この「レモン水」を飲みたくて、近くにいれば必ず立ち寄ったものです。

Web屋もはまる落とし穴

いわゆる「大艦巨砲主義」なサイトは少なくありません。店のこだわりが溢れ出し、同業者やマスコミはそれをみて「さすが」と一目置くのかもしれません。また、Web屋としても店の一番良いところを伝えたいと、魅力を引き出すのに苦心し、注力するものです。

ところが、注力したコンテンツが、一般のお客にとってあまり興味がないネタであることもあります。そもそも店のこだわりとはあって当然、そば屋がそばにこだわるのは当たり前のことです。つまり、当たり前すぎて興味を惹かないコンテンツの可能性もあります。一方、ご飯や味噌汁にまで気を使っていれば、メインのそばに手を抜くはずがないと、好意的な誤解も期待できます。

サイトは「ペルソナ」と呼ばれる仮想客を想定して設計するものですが、机上の空論で陥りがちなのが「大艦巨砲主義」です。

今回のポイント

万人に伝わらないこだわりもある

Webサイトのコンテンツの総合力で勝負

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