企業ホームページ運営の心得

書けないのはネタ切れのせいではない? 「自分史」と「歴史」でスラスラ書く方法

自分自身も知らないことを書こうとすると、ネタ切れの壁にぶつかります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の487

ネタ切れする理由

Pinnacle Pictures/Thinkstock

ブログの更新を続けるうちに必ず訪れるのが「ネタ切れ」です。真っ白な原稿用紙、いやディスプレイを前に、書いては消してを繰り返し途方に暮れる……多くのWeb担当者がこんな経験をしているでしょう。しかし、本当に「ネタ」がなくなっているケースはまれ。ネタ切れの正体の大半は「自分自身も知らないことを書こうとする」ところにあります。

最新情報やトレンドを発信する際も、得た情報を理解してから文章を起こします。半可通でも「知っている」から書けるということです。もちろん、いつもキャッチーな話題があるとは限りません。そのとき、うっかり「知らないこと」に挑戦して筆が止まります。これを「ネタ切れ」と錯覚するのです。今回は、この解決方法を紹介します。

見逃されているネタ

大切なことなので繰り返します。知らないモノ(コト)は書けないのです。つまり、知っていることなら書けます。

人に尋ねて話を聞くなり、ググって調べるだけでも「知っていること」は増えるのですから、論理的に考えればネタに困ることなどあり得ません。なにより「知っていること」は数多く、その出し方を知らない人が「ネタ切れ」を嘆きます。そして、見逃されている「知っていること」が「経験」です。その人なりの経験を丹念に切り出せば、ネタなどいくらでも発掘できます。

経験からネタを見つけるには2つの時間軸を意識します。「自分史」と「歴史」です。

自分史」とは、「ガンプラにハマった」「入社式に遅刻した」といった自身の経験で、業務に限らずプライベートも含めます。一方の「歴史」とは、体験はしていなくても情報や慣習として知っている情報を指します。

たとえば、女子高生を中心に靴下をたるませる「ルーズソックス」がブームになったのは今からちょうど20年前。私はルーズソックスを履いた経験はありませんが、社会現象としては知っておりそれを紹介することはできます。これが本稿における「歴史」です。

ネタ出しの実例

実例をもとに説明します。先日、「『ピースサインは危険!!』3メートル離れて撮影でも読み取り可能」と産経新聞(2017年1月9日)が報じました。写真から指紋情報が読み取れることから、生体認証への警鐘を鳴らす記事です。この記事を受ける形で「自分史」に絡めネタを捻り出します。

ルーズソックスがブームとなった20年前、フリーターから中途入社で広告代理店に潜り込みます。入社してから一週間ほどしたころ、会社の前にパトカーが止まっていました。夜間に泥棒が入ったようで「関係者」として「指紋」を取られます。犯行現場から採取した指紋から関係者を除外し、犯人の指紋を特定する狙いです。

新聞記事は生体認証のリスクを警告するものでしたが、ネットに掲載したピース写真から「指紋」が作り出せるとしたら、ある日突然「犯人」にされてしまうかも? 怖い時代になったものです。

「指紋」にまつわる自分史(経験)を紹介し、元のネタ(引用記事)に戻るコラムの手法です。

歴史への転用パターン

同じ記事を「歴史」に転用するとこうなります。

この記事以降、ワイドショーなどを中心に「指紋認証」のリスクが懸念されている。しかし、2013年にはドイツ人ハッカー集団が「iPhone 5s」の指紋認証を突破する方法を発表しており、すでに指紋認証の安全神話は崩れている。

と、4年前のニュース(歴史)にそのまま接続して結論へ。ピコ太郎の「PPAP」方式といったところでしょうか。なお、当然ながら第三者の記事を参照するときには、きちんと引用の要件を満たした上で利用します。

ハイブリッド型の応用

この記事は「セキュリティ」について触れており、「自分史」と「歴史」を融合させたハイブリッド型への発展も可能です。

《Web系のセキュリティとして代表的なパスワード。Windows 95が発売され、猫もしゃくしもパソコンに飛びついた20年前、インターネットの大海原に漕ぎ出そうとする際、障害となったのがパスワードです。

アプリケーションやプロバイダへのログイン時に要求されるパスワードは、大文字小文字が混ざったアルファベットと数字。当時、ATMの数字4桁のパスワードしか知らなかった一般利用者にとって、その難解さもさることながら、サービス毎に異なるフォントと表記(文字詰めなど)から、小文字の「l(エル)」と大文字の「I(アイ)」と数字の「1」、大文字の「O(オー)」と数字の「0(ゼロ)」の判読が難しかったのです。

この解決は想定される英数字に置き換える「総当たり」。パソコン専門誌でも「対策」として紹介されていた「手口」です。それは一種の「ハッキング」。無事ログインできた達成感は格別で、ハッカーが耐えない理由がわかった気がしたものです。

誰にでもある歴史

今回は一般ニュースをネタにしましたが、業務やサイトの趣旨に沿ったネタを書く時も同じです。むしろそちらの方が、「自分史」や「歴史」を活用できます。なぜなら、誰もが始めは「素人」だからです。つまり、その業界に入る前の先入観と、入ってから学んだこと、Web担当者になってから知った知識は、自分史であり歴史でありネタになるのです。

仮に「SEO」について書くとしたら、「Web担当者に任命された当初、SEOについてまったく無知で『セオ』と誤読していた」とは、Web担のあるあるネタではないでしょうか。自分史や業界の歴史は、当たり前すぎて見落としているネタの宝庫です。

ナウでヤングなWeb担にだって「自分史」はあります。たとえば「スマホデビューした日」も思い出の1つ。初めてスマホを手にしたときの興奮、感動、あるいは購入直後に落下して破壊といった苦い思い出さえネタになります。

スマホでさえも永遠でないことは、ポケベルがPHSに、両者がケータイに置き換えられ、そのケータイがガラケーと呼ばれるようになった歴史が語り、近い将来「スマホ? まだ使っているの?」と、若い連中にからかわれる日が来るかもしれません。それももちろん「ネタ」になります。

今回のポイント

「知っていること」しか書けない

自分史と歴史で切り出す

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