【レポート】アナリティクス サミット2016

日本最大規模オウンドメディア成功の先にパナソニックが見た、新たな可能性

会員数820万人、月間2億2千万PVの次に目指すもの
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パナソニックが運営する会員サイト「クラブパナソニック」は、会員数820万人、月間2億2千万PVを誇るオウンドメディアであり、日本の企業サイトでは最大規模だ。しかもその成功で満足することなく、その先の新たな可能性を見据えている。

同社はこの「クラブパナソニック」をどのように位置づけ、顧客とのエンゲージメント向上や販売促進に活用してきたのだろうか。そして、同社のビジネスにとって欠かせないプラットフォームにまで成長したこの「クラブパナソニック」で次にどのようなチャレンジを目指しているのだろうか。共通IDの導入やO2Oへの挑戦など、参考になる事例の目白押しだ。

中村愼一氏
パナソニック株式会社
アプライアンス社
コンシューマーマーケティングジャパン本部
クラブパナソニック運営部 部長 中村愼一氏

パナソニックの中村愼一氏が、4月21日に開催された「アナリティクスサミット2016」の基調講演として「パナソニックの会員サイト CLUB PanasonicのCRM戦略について」と題しプレゼンテーションを行った。

国内屈指のオウンドメディアに成長した「クラブパナソニック」、その目的と役割

「以前から自分たちで自由に発信できるオウンドメディアに注力してきた」と語る中村氏はまず、クラブパナソニックの概要について説明を行った。同社では、企業サイト、宣伝部門が運営する商品の公式サイト、そして中村氏が中心となって運営する会員サイト「クラブパナソニック」と異なる3種類のサイトを相互に連携しながら運営を進めている。中でも、「クラブパナソニック」について中村氏はその目的を次のように語る。

目的は、販売に貢献するということ。新しい売上を作り出すことだ。

この目的を達成するために、「クラブパナソニック」は3つの活動を軸に運営しているという。

  1. パナソニック製品の愛用登録者へのアンケートによる商品力強化
  2. コミュニケーションによる顧客との継続的な関係作り
  3. 全社のネット経由のお客様のワンフェース化

つまり、「クラブパナソニック」を通じて顧客満足度、顧客とのエンゲージメントを最大化させることでロイヤルカスタマー化が進み、新たな購買=新たな売上を生み出す源泉となるのだ。

きっかけは何であれ、まずは会員になってもらう。そして、エンタメ、レビュー、クイズ、キャンペーンなどあらゆるコンテンツを動機として毎日訪問してもらう。こうしたコミュニケーションを通じて顧客にパナソニックのファンになってもらうことで、さまざまな効果が生まれる。

顧客がパナソニックというブランドを好きになってくれることで、愛用者登録、アンケート回答、イベント参加などに積極的になってくれたり、ブランドに毎日接触してくれるので次の商品購入時にはパナソニックが必ず選択肢になる。実際、会員は非会員よりも年間4万7千円多くパナソニックの商品を購入しているのだという。

「クラブパナソニック」の目的
「クラブパナソニック」の役割

また、日経BP社が行ったWEBブランド調査で10位(企業サイトでは3位)、結果を男性に限定すると価格.comやYouTubeよりも高い5位となるなど、日本国内でも屈指のブランド力を誇るサイトに成長。

加えて、愛用者登録を行う顧客の傾向が「高額商品の購入者」で、「世帯主の男性が中心」という特色から、PC向けサイトは「消費意欲が高く高所得なデジタルシニア世代にリーチできるメディア」というユーザー属性の明確化が実現したのだという。

これが、パナソニックが力を入れているシニア向け家電のターゲット層との高い親和性を生み出しており、社内でも「クラブパナソニック」の会員基盤が重要視されているのだそうだ。

「クラブパナソニック」がここまで成長できた要因について、中村氏は「高速PDCA」を挙げている。中村氏によると、「クラブパナソニック」で展開するコンテンツは30個ほどあるというが、それぞれのコンテンツでGoogle アナリティクスを駆使し、KPIを明確にしているのだという。

「会員を増やす」「PVを増やす」「滞在時間を延ばす」……各コンテンツの担当は絶えずそのKPIの達成度をチェックしながら高速PDCAを回している。ダメなものは捨てるという判断も行い、スクラップアンドビルドを繰り返す2007年11月立ち上げ当時に展開したコンテンツはもはや残っておらず、すべて入れ替えた

共通IDによるワンフェイス構造が社内にもたらしたもの

こうして現在に至っている「クラブパナソニック」の820万人という巨大な会員基盤は、自社の事業推進にどのようなメリットを生み出しているのだろうか。

中村氏は次のように説明した。

クラブパナソニックIDができた当時は、ファミリーサイト(パナソニックの各事業部が運営するマイクロサイト)を運営する各事業部に頭を下げて、冷たくあしらわれることもあった。しかし今では、新たに立ち上げるサイトやサービスのほぼ全てで“IDを使わせてほしい”と言われる

今や、パナソニックのコンシューマビジネスにおいて、なくてはならない存在にまで成長したのだ。

社内のさまざまなネットサービスの会員基盤をクラブパナソニックIDに統一

そのメリットのひとつは、パナソニックというブランドに好意的な820万人にもおよぶ会員に無料で告知ができるという点。ある新商品では、数億円という広告宣伝費をかけてもなかなかサービスサイトに会員が集まらなかったところ、クラブパナソニックIDを採用して集客してみたら会員が30倍にも増加したのだという。

もうひとつの理由が、会員基盤を共通化することにより事業部のシステムコストやセキュリティリスクを軽減することができる点だ。会員IDをクラブパナソニックIDすることで、各事業部は顧客の個人情報を保有・管理する必要がない。個人情報を一元化することで、社内で運営する複数のオウンドメディア全体で、セキュリティレベルの平準化が可能になるのだ。

メリットはこれだけではない。中村氏によると、クラブパナソニックIDを活用することによって、商品購入・愛用者登録後の顧客に対するアフターマーケティングの効率が大きく向上したという。

  • 季節家電の点検などを啓発 ⇒ お客様サポートの問合せが大きく軽減した
  • リコールなどの告知 ⇒ 登録された製造番号を元に、対象顧客にピンポイントで通知できる
  • 愛用者アンケートやグループインタビューを実施 ⇒ 次期商品開発に活用できる

中でも、愛用者アンケートやグループインタビューは次期製品開発の大きな参考になっているそうで、社内で意見が割れたときには「会員(現行製品の愛用者)に聞いてみよう」となるのだそう。

アンケートやグループインタビューは年間数百本実施している。今や、パナソニックの製品作りはクラブパナソニックの会員基盤が重要な役割を担っている。

このように製品の愛用者登録に基づいて管理されるクラブパナソニックIDは、社内の複数事業部に横串を刺すかたちでネット上における顧客基盤を一元化できたことにより、見込み顧客へのリーチ、商品購入後のサポート、次期商品のプロダクトマーケティングに至るさまざまなフェイズにおいて、そのコストと手間を大きく軽減することができるようになったのだ。

売上に貢献する会員サービスを目指して行ってきた3つの挑戦

それでは、この「クラブパナソニック」は冒頭に中村氏が挙げた目的である「売上への貢献」をどのように実現してきたのか。中村氏はこれを3つの段階に分けて説明した。

第1の段階は、2008年頃から力を入れてきた「ネットで繋がる」というものだ。現在では、年間数千万人を「クラブパナソニック」から各商品のサイトへと誘導しているほか、商品の紹介動画の視聴回数は年間数千万回。商品に関連するキャンペーンの支援は年数百本にのぼり、「クラブパナソニック」を軸にWebマーケティングを展開することが社内で当たり前になっているという。

こうしたWebマーケティングを支えているのが、データの活用だ。「クラブパナソニック」に登録した際に入力された愛用者登録データや興味のあるカテゴリーに基づき嗜好性やライフスタイルにあわせた商品をレコメンドするアップセルクロスセルを行っているほか、最近では会員のサイト閲覧履歴や行動履歴とプライベートDMPを活用したマーケティングオートメーションも拡大しているという。

登録された商品やカテゴリーは会員の「過去の興味」。最近は、ユーザーが閲覧している「今の興味」に対してメール配信などを通じて興味のある商品の情報を配信している。反響は大きく、メールのクリック率は通常の7倍にものぼっている

会員の行動履歴を元にしたレコメンドで大きな成果を上げている

そして第2の段階として、2013年頃からはリアルでも顧客と繋がる取り組みを実施。具体的には、会員に対する商品レンタルによる体験機会の創出と、「クラブパナソニック」の会員を対象としたリアルなイベントの実施だ。商品レンタルは年間7商品で実施し、10万人が応募して6481名が体験。体験イベントは年間77回実施し、数万人が参加したという。

こうしたCLUB Panasonicのマーケティング活動である「商品開発」の為の商品アンケート、「商品認知」の為の商品サイト誘導、商品動画の視聴促進、「商品体験」のための商品レンタルや商品体感イベントへの誘導O2OをCLUB Panasonicがなかったとして外部への広告出稿でカバーした場合、電通の試算だと年間100億円を超えるコストが必要になるのだそうだ。それを「クラブパナソニック」の会員基盤でカバーしたのだ。

なお、こうしたリアルイベントの実施でも、同社はデータを活用して大きな成果を上げているという。中村氏によると、レンタルによる商品体験を実施した際には、体験応募者、体験者限定でキャッシュバックキャンペーンを郵送のDMで告知。すると、レンタル体験者の購入率が未体験者の5倍にのぼったほか、体験者の87%の購入意欲が向上したという。リアルな体験が購入意欲の大きな向上に結び付いた事例だ。

また、街頭イベントの際には「O2O」の取り組みにも挑戦。イベント参加用クーポンを会員情報に紐づけて、リアルイベントで商品を体験した参加者を対象にメールで再度商品やキャンペーンを告知するという試みで大きな成果を上げている。ネット施策で集客を行いリアルな体験に顧客を呼び込み、再びネット施策で購入意欲の向上を促すという構図だ。「O2O2O」ともいえるだろう。

リアルイベントで実施した「O2O」の流れ

加えて中村氏は、商品の認知や購入意欲の向上のために位置付けられてきた体験イベントを、「すぐ購入するための機会」へと変貌させるための試みも行ったという。

具体的には、商品体験イベントの参加者に対して、当日限定のキャッシュバックキャンペーンを実施。事前にキャンペーンを告知し、商品動画や商品の口コミなどの情報を提供して購入意欲を醸成し会場に来てもらうという構図を作り出した。

その結果、「今すぐ購入を検討するために来場した」という人は83%にのぼり、イベント会場近隣の小売店での売上も向上。「いつか買おう」から「よければすぐ買おう」へと意識改革に成功したのだそうだ。

「いつか買おう」から「今すぐ買おう」へと意識改革に成功

オウンドメディアの枠を超えたビジネス展開へ

最後に、2015年から行っている第3段階目が、「金銭で繋がる」ということ。具体的には、電子マネーや航空会社のマイルに交換できるポイントサービス「クラブパナソニックコイン」を2015年2月に立ち上げ、顧客との関係性を更に深めようとしているという。

このクラブパナソニックコインは、既存の商品販売促進施策やO2Oの促進に活用。キャンペーン参加の報酬やキャッシュバックを郵便為替や商品券ではなくコインで行うというものだ。

また、コインの活性化を促進するために、アフィリエイト広告のプラットフォームを活用して他社サイトの利用にもポイントを付与するポイントモールを立ち上げ、約900サイトを掲載しているという。

これまでクラブパナソニックの会員基盤はパナソニックの社内だけで活用されてきたが、他社もポイントモールで成果報酬型の広告が掲載できるようになったのだ。

「クラブパナソニックコイン」を既存の販売促進施策に活用していく

また、コイン流通を活性化するための新たな取り組みも進めている。

それが、中村氏がクラブパナソニックで実施してきた商品認知のための施策スキーム、商品開発のためのアンケート、O2O施策によるリアルの集客施策、商品レンタルなどによる販売促進など、クラブパナソニックの会員基盤を活かしたスキームをオープン化して他の企業に提供していくという。

広告主からの広告収入を会員にCLUB Panasonicコインとして付与することで、コイン利用を促進したい狙いだ。今年上半期のテスト販売を経て、下半期には本格展開を開始する予定だという。

外部の広告主とのコラボレーションを通じて、会員を更に活性化させる

中村氏は、こうした他社とのコラボレーションによる新たなビジネスの創出に、「パナソニックのために行ってきたさまざまな施策を他の企業にもどんどん提供していきたい」と意気込みを語る。「クラブパナソニック」はオウンドメディアという枠組みを超えて、メディアとして新たなステップを踏み出そうとしているのだ。

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