『新しいアナリティクスの教科書』Web担特別公開版

ユーザー行動の見方を変える「カスタマージャーニー」は「集客→接客→顧客化→追客」で考える

カスタマージャーニーのもっとも簡単なフレームワーク「集客→接客→顧客化→追客」を紹介

実際のユーザー行動は、サイトを訪問する前から始まっていて、離脱後にも続いています。サイト内に限定しない、一連のユーザー行動「カスタマージャーニー」で、もっとお客さまを理解する考え方と、そのもっとも簡単なフレームワーク「集客→接客→顧客化→追客」を紹介します。

このコーナーでは、書籍『新しいアナリティクスの教科書』の一部を、許諾を得てWeb版として公開しています。

この記事では、書籍の第3章 「カスタマージャーニーによるユーザーの深い理解」 の第1節 「ユーザー行動の見方を変える『カスタマージャーニー』」 の内容をお届けします。

連続した「流れ」としてユーザー行動や心理の変化を追う

第2章では、サイトのユーザー行動のデータからユーザー心理を追求する形で分析していきました。これは実店舗で例えるなら「とにかく今お店に来てくれたお客様と、もっとも適切なコミュニケーションをしよう」という考え方です。

しかし、実際のユーザー行動はサイトを訪問する前から始まっていて、離脱後にも続いています。再び実店舗で例えると、来店前から来店中、そして退店後までを見通したうえで、お客様との一連のコミュニケーションを最適化していこうとするのが本章での取り組みです。このようなサイト内に限定しない、一連のユーザー行動のことを「カスタマージャーニー」と呼びます。

カスタマージャーニーの定義を簡単に言えば、「ユーザーとの接点を一連の旅のようにして可視化したもの」となります。当たり前のことですが、ユーザー行動や心理の動きは、サイトにアクセスする前から、サイトを離脱したあとまで連続しています。また、サイト内でユーザー行動が完結しないビジネスでは、サイト内のアクセスデータだけを見てよしとするのでなく、サイト外まで含めたユーザー行動を見たいと考えるのが自然でしょう。

これは要するに「もっともっとお客様を理解しよう」という取り組みです。ユーザーは、必ずしも1回のサイトへの訪問で契約や購入の決定=コンバージョンに至るわけではありません。何度かサイトを再訪問して情報を収集したり、時間をかけて情報の比較や検討をしたりして、最終的にコンバージョンに至ります。しかし、ときには家電量販店のサイトでデジタルカメラを検索したユーザーがノートパソコンを購入したり、旅行サイトで海外の情報を調べていたユーザーが最終的に京都のホテルを予約したりすることも、珍しくはありません。

人は決していつも一貫性を持って行動しているわけではなく、わずかな間に接触したほかの情報から気持ちを変えていくことがよくあります。人の気持ちが揺れ動くならば、それに合わせて効果的な施策を展開しようというのが、カスタマージャーニーを踏まえた改善の考え方です。

同様の考えとして、広告の世界では古くから「AIDMAの法則」※1などがありました。「カスタマージャーニー」という言葉も、2007年ごろから登場しているようです。

※1 顧客が商品を認知してから購入に至るまでに「Attention」(注意)、「Interest」(関心)、「Desire」(欲求)、「Memory」(記憶)、「Action」(行動・購入)の5段階があると定義し、各単語の頭文字を取ったもの。

技術の進化により連続したデータが取得可能に

アナリティクスの世界では、最近になって活発に「カスタマージャーニー」が言われるようになっています。その背景には、広告配信サービスやアクセス解析サービスが進化し、ユーザー行動を連続したデータの流れとして追えるようになったことがあります。Cookieやピクセルデータ※2、リダイレクト※3といった技術の組み合わせで1人のユーザーの連続した動きを追い、高い処理能力で、大量で複雑なデータを分析できるようになりました。

※2 Webページやメールに小さな画像ファイルを挿入し、画像ファイルへのアクセスを計測することで、ユーザー行動を取得する手法。
※3 あるURLから別のURLに転送すること。Webページが切り替わるときや、メールマガジンからWebページへリンクするときなどに、実質的にコンテンツがないURLにいったんアクセスさせてデータを取得し、コンテンツがあるURLに転送することで、ユーザー行動のデータを取得することが可能になる。

とはいえ、現状ではユーザー行動を完全に連続したデータとして取得できるわけではなく、想定されるユーザー行動のデータのところどころに穴が空いてしまう場合もあります。例えば、サイト外のユーザー行動をデータとして取得するのは難度が高く、特別なツールの導入が必要になったり、そもそも技術的に不可能で、推計に頼る場合があったりもします。

それでも、徐々に見える部分が広がってきた複雑なユーザー行動を、できるだけ広範囲で取得し、分析して、改善に役立てることを考えていきましょう。

4つのポイントでユーザー心理の変化を捉える

カスタマージャーニーを見るための、もっとも簡単なフレームワークを紹介します。以下の図のような「集客→接客→顧客化→追客」という4つのポイントからなるものです。

このフレームワークは、オンラインショップのコンサルタントとして著名な坂本悟史氏の考え方をもとに、コンバージョンをわかりやすくするために「顧客化」のポイントを加えたものです。坂本氏の考え方はユーザー心理を的確に捉えていて、オンラインショップに限らず、サイトやアプリのユーザー行動にまで幅広く適用できます。

「集客」は商品やサービスの認知を獲得して、ユーザーを集めるポイントです。施策としてはディスプレイ広告や検索連動型広告などの各種広告、検索エンジンでのからの流入を促すSEOなどが、このポイントに相当します。

「接客」はサイト上のコンテンツやアプリ上のサービス、実店舗における利用体験や相談、見積もりなど、ユーザーとコミュニケーションし、商品の購入やサービスの契約に向けて比較・検討などをしてもらうポイントです。カスタマージャーニーを詳細に見るときは、接客の過程を検討の進み具合で細分化してユーザー行動を追っていくこともあります。

「顧客化」はコンバージョンであり、ユーザー行動のゴールとなるポイントです。B2Bビジネスや保険などであれば、集客、接客の段階では「見込み顧客」であったユーザーが、契約の成立により「顧客」となった瞬間を指します。オンラインショップでは購入完了ページ、会員制サイトでは会員登録完了ページが、顧客化のポイントに相当します。

ビジネスで想定されるユーザー行動の多くは、集客から接客を経て顧客化までのポイントでいったん完結します。本章ではカスタマージャーニーを「地図」にする方法を解説しますが、そのときには、「集客→接客→顧客化」までのポイントを見て地図にしていくことになります。

最後の「追客」は、すでに顧客や会員になったユーザーに向け、再度の購入や追加の購入、新しいサービスの利用などを促して、リピーターやロイヤル顧客※4を増やしていくポイントです。メールマガジンやリマーケティング広告※5などが相当します。

※4 企業やブランド、または商品やサービスへのロイヤリティ(忠誠度)が高い顧客のこと。継続的な購入が期待でき、売り上げへの貢献度も高い。
※5 サイトを訪問したユーザーの行動を追跡し、収集したデータに基づいて表示する広告。「リターゲティング広告」とも。通常の広告よりも高いクリック率やコンバージョン率が期待できる。
カスタマージャーニーを捉える4つのポイントとユーザー心理の変化

サイト内外のユーザー行動を紐付ける鍵を押さえておく

カスタマージャーニーを見るアナリティクスの基本は、「集客→接客→顧客化→追客」の4つのポイントに沿ってユーザー行動を捉えることです。4つのポイントに、それぞれユーザー心理が大きく変わる節目となる行動があります。具体的にはサイトの閲覧開始、メールマガジンの登録、アプリのダウンロード、見積もり依頼や電話、実店舗の訪問などです。

的確なアナリティクスのためには、一連のユーザー行動のデータが揃っていることが重要です。それにはサイトのアクセスデータ以外のユーザー行動データも取得する必要があり、さらに、物理的に切り離されたサイトとサイト外のユーザー行動をつなげて見ていくために、両者を紐付けるためのデータが必要です。一例としては、サイトでは会員IDでユーザー行動を追い、実店舗ではポイントが貯まるモバイルアプリと会員IDを紐付けて購買行動を取得する、というように、鍵になるデータでサイト内外のデータを紐付けていきます。

このような取り組みは、決して簡単なものではありません。特に、サイト外のユーザー行動データの取得には限界もあります。しかし、ここでは完璧さを求めないことも大事です。取得するためにベストを尽くすとしても、入手可能な範囲のデータを使って、できない部分は推測する、というように割り切って考えましょう。

ビジネスに明るいアナリティクス担当者が求められる

本章では、第2章で解説したサイトの改善の経験を十分に積んでいることを前提に、より複雑なアナリティクスに取り組んでいきます。そのため、取り組みを開始するには「アナリティクスの4つのステージ」の「少年期」にある企業が適当で、達成することで「青年期」に近付いていくものと位置付けられます。

第2章で行ったサイトの改善は、サイト担当者を中心としたチームで行うことができました。しかし、本章で行うカスタマージャーニーを利用した改善では、サイト外を含むユーザー行動を見て、的確に分析するために、改善の対象となるビジネスそのものに明るい人材が必要です。他部門との積極的な連携も必要で、組織内でのコミュニケーション能力が求められます。場合によっては、アナリティクスに取り組むチームの再編成を検討する必要もあるでしょう。

本章の取り組みを始めるにあたり、小規模な改善の経験を積んだアナリティクスのプロジェクトチームから、常設のアナリティクスチームに組織を変えることも考えられます。そのときには、企業内での位置付けもよく考えた方がいいでしょう。組織の編成や企業内での位置付けなどについては第5章で詳しく考察するので、そちらも参照してください。

POINT
  • カスタマージャーニーは、ユーザー行動や心理の動きを連続した流れとして描き出す
  • 「集客→接客→顧客化→追客」の4つのポイントでユーザー行動を捉え、心理の変化を分析していく
  • 著:アナリティクス アソシエーション
  • 価格:2,000円+税
  • ISBN:978-4-8443-3793-5
  • 発行:インプレス

『新しいアナリティクスの教科書』
~データと経営を結び付けるWeb解析の進化したステージ
[アナリティクス アソシエーション公式テキスト]

データ分析はできるけれど、ビジネスの成果はなかなか上がらない……。

そのような悩みを抱えるWeb担当者、アナリティクス担当者のために、国内最大級の業界団体「アナリティクス アソシエーション」が、これまでの7年にわたる活動の中でに蓄積した知見をまとめました。

これから「改善」に取り組む担当者のためにはスモールスタートによる改善の取り組みを具体的に解説。

Webサイトから企業のビジネス全体へと範囲を広げ、DMP、データ統合といった最新の取り組みにも触れながら、アナリティクスの本質と、現実的な問題への対処法を明らかにしていきます。

また、アナリティクスによる改善の成否に大きな影響を及ぼす「組織」の問題についても、数多くの事例をもとに考察。アナリティクスに取り組むチームの編成、企業内での位置付け、他部門との関わり方などを論じていきます。

本書はツールの使い方を解説する本ではありませんが、ツールの使い方以外のあらゆるノウハウを盛り込んだ、企業の成長を牽引するアナリティクス担当者のための本です。

本書の詳しい目次やレビューを見てみる

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