企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用の現場
報道のプロはソーシャルメディアをどう使いこなしているのか、朝日新聞社に聞いてみた

メディアや記者個人、約300のアカウントを運用する朝日新聞社のソーシャルメディア活用を聞いた
企業担当者に聞くFacebook&Twitter運用

今年3月にソーシャルメディアガイドラインを改定した朝日新聞社では、出稿部門や取材チームのアカウントのほか、記者個人のアカウントを使った情報発信にも積極的だ。情報発信だけでなく、情報収集、そしてブランディングという観点からも重要視されている。

報道のプロである新聞社においても、いまやソーシャルメディアを使わないという選択肢はありえないと話すのは、朝日新聞社 ソーシャルメディア・エディターの藤谷健氏。

一般企業に比べ、多くの声にさらされる新聞社において、どのような姿勢でソーシャルメディアの活用に取り組んでいるのか、話をうかがった。

新聞社にとってもソーシャルメディアは新しい取り組み

――藤谷さんは、ソーシャルメディア・エディターという役職ですが、いつから担当されるようになったのでしょうか。

朝日新聞社
ソーシャルメディア・エディター
藤谷 健氏

昨年(2014年)の1月からですね。2012年4月からできた役職で、前任が1年9か月ほど務めた後、私が引き継ぐことになりました。

ソーシャルメディアは新しいメディアですが、新聞社にとっても新しい取り組みです。新聞社では、編集部門の記者が取材して書いた原稿が紙やデジタルに載りますが、これらをもっと多くの人に知ってもらうために、ソーシャルメディアを使っていこうというのが、会社の方針として4年ぐらい前からだされています。

それを推進するのはもちろん、ソーシャルメディアの発信内容やリスク管理を含めた研修、普及からガイドライン整備まで、ソーシャルメディアにかかわるすべてを見ていくのが役割です。

――藤谷さんが担当されることになった経緯は。

私は、もともと国際報道部の記者でした。2年前の5月にタイから帰国してデジタル委員になり、その後ソーシャルメディア担当になりました。バンコク勤務当時は、記者がソーシャルメディア上で名前を名乗って投稿するために会社の承認が必要ありませんでしたから、タイでは、Twitterを使った情報発信や在住の人からの情報収集、さらには東南アジアのメディアや政治家、ジャーナリストらとフォローしあってつながりを作っていました。

こうした経験や、新しもの好きでTwitterやFacebookをやっていたことから、声がかかったのだと思います。ソーシャルメディアをまったく知らない人だと、炎上を怖がるなど食わず嫌いなところがあると思いますが、それはなかったですね。

――ソーシャルメディアの運用の目的はやはりWebメディアへの流入ということになるのでしょうか。

それも目的ですが、記者それぞれが独り立ちするようなブランディングも考えています。記者にファンがついてコミュニティができるようなイメージですね。

トラブルも多い新聞社のアカウント。ガイドラインをしっかり整備する

――ガイドラインの整備もお仕事だそうですが、いつごろから作り始めたのですか。

まず、3年前に前任者が作った暫定版があったのですが、時間が経過するなかで、新聞社のソーシャルメディアの使い方、ソーシャルメディア上での新聞社の扱われ方が変化していました。誹謗中傷や炎上といった経験から、我々には何が足りないのかという教訓も得ていたので、それらの状況を踏まえて正式版(朝日新聞社編集部門ソーシャルメディア・ガイドライン)を2015年3月に公開しました。

――記者などの従業員向けのガイドラインもあるのですか。

新聞社の場合、従業員規則の他に、「朝日新聞記者行動基準」や「社外言論活動に関するガイドライン」があります。ソーシャルメディアガイドラインは、基本的にそれに準拠する形で用意しています。

情報を扱う新聞社にとって、この時代、ソーシャルメディアを使わないという選択肢はありません。ですから、社員として守るべき決まりを守っていれば、Twitter、Facebook、YouTube、Instagramなどをどうぞ使ってください。会社として制限はしません、というのが基本的な考え方です。ただし、記者を名乗って活動する場合は、アカウントの承認を条件にしています。

――公式アカウントが数多くありますが、どのように立ち上げていますか。

アカウントは大きく2つ、記者個人のアカウントとグループアカウントに分けられます。グループアカウントは、社会部、スポーツ部などの部署ごとのアカウント、取材班や地方総局のアカウントなどがあり、イベント系なども含めると全部で100ぐらいあります。開設するときに届け出をしてもらい、運用の参考資料を渡していますが、実際の運用は任せています。

すべて見せないのがツイートをクリックさせるコツ

――Twitterで情報発信するときのコツはありますか。

記事の見出しとURLだけのツイートは、始めの一歩としてはいいですが、機械と変わらないためできるだけ避け、魅力的な見出しをつけるように研修でも伝えています。魅力的な見出しとは、ツイートの先にあるコンテンツに触れてもらえるように、クリックしたくなるような見出しです。

新聞記事というのは、見出し、リード(前文)、本文の3つがありますが、文字量はあとに行くほど増え、情報量も増えていきます。新聞記事は、逆三角形(ニュースのポイントを結論から示す書き方)で、見出しで要点が伝わらないといけません。ですが、Twitterの場合は見出しで内容がわかってしまうとクリックされないので、あえて結論を書かなかったり、インパクトのある言葉を出したりして、興味をひくような工夫をしています。

――ソーシャルメディアから記事への流入はどのくらいありますか。

記事への流入は、「Yahoo!トピックス」や「スマートニュース」経由などが大きいのですが、これらのメディアに掲載されるためには、もとの記事がソーシャルメディアで話題になることが欠かせません。ですから、記者200人がそれぞれアカウントを持って、ファンがつけば強みになるのです。なかには2万人ほどのフォロワーがいる「スター記者」も出てきています。

将来的なビジネスの可能性の1つとして、個別の記事コンテンツの有料化ということも考えられると思います。特定の記者の記事コンテンツを有料購読できるというような形ですね。

ソーシャルメディアでの情報収集は現代の重要スキル

――Twitterを使った情報入手という視点ではいかがでしょうか。

今の時代、ソーシャルメディアからの情報入手は記者の重要なスキルです。ネット上で事件を感知したり、データ分析したりすることですね。

以前から一般の方に写真を提供してもらうことはありましたが、Twitter経由で写真をもらうこともあります。ただ、気をつけないといけないことは、なかにはニセの写真をアップしてあたかも本物かのように発信する人がいることですね。ですから、情報の真偽を見極める能力も必要になっているので、マニュアルを用意し研修などでも伝えています。

――具体的にはどんなポイントがありますか。

たとえば、撮影場所を地図やストリートビューで確認し、写っている建物が実在するか確認します。あとは、写真データのタイムスタンプや位置情報などですね。加工されていると難しいですが、生のデータをもらうようにして確認しています。

火種は早めに見つけて消火する

――新聞社という立場から、批判にさらされたり炎上したりする機会は、一般企業よりも多いと思います。対応はどうしていますか。

炎上は確かにありますが、そこまで恐れてはいません。話題になることはよいことでもあります。とはいえ、根拠のない誹謗中傷に対してはきちんと説明します。また、我々が間違った情報を発信してしまったり、だれかを傷つけてしまったりした場合は、早く、丁寧に謝罪するように心がけています。

ソーシャルメディアをやっているからこそ、炎上の火種をあらかじめ知っておくことができます。思わぬところで名前があがることもありますが、ソーシャルメディアをやっていれば、問題を早く沈静化するノウハウを身につけることもできます。

――ソーシャルメディア登場の前後で、記事の作り方などに変化はありましたか。

読者の反応は、かつて、手紙や電話が主流でしたが、それ以外のチャネルができたことで、リアルタイムでいろいろな方の意見を聞けるようになりました。誹謗中傷もありますが、取材のネタや取材の深堀のアイデアといった建設的な声をもらうことができています。

一方で、まだネットのスピード感に記者がついていけないところもあり、ネット上で話題になってから紙面に掲載されるまで時間がかかることもあります。だからといって、ネット上の話題を紹介するだけでなく、情報の真偽、その背景なども含めて確度の高い情報を提供するようにしています。

ざっくりと数値を見ながら運用改善

――効果測定はされていますか。

本格的な効果測定はこれからになりますが、公式の分析ツールに加え、一部のアカウントは運用ツールの「つぶやきデスク」を使った簡単な分析、たとえば、一覧でつぶやきごとのRT数や反応が見られるので参考にしています。またフォロー、フォロワーの関係もわかるので、影響力のある人をフォローし、ダイレクトメッセージを送って取材に協力してもらうこともあります。

Facebookページは、インサイトを使って分析を行い、かなり改善されてきています。Twitterの投稿は速報がマッチしますが、Facebookは共感できる話題がマッチしているようです。また、Facebookにはクオリティの高い写真や動画が重要だと感じています。

今後は、個人に対してもTwitterのアナリティクスのマニュアルを用意して、自分で分析しながらエンゲージメントを高めて、ユーザーにアクションを起こしてもらいやすい情報発信ができるようにしたいですね。

会社としてKPIのようなものは用意していませんが、まず報道機関として、多くの人に記事などのコンテンツを届けることを目的にしています。「朝日新聞デジタル」のコンバージョンに結びつけられればよいと思います。無料会員登録と有料会員登録がありますが、特に有料会員登録はハードルが高く、ペイウォールの高さを感じます。

閲覧ピークに合わせて予約投稿を活用

――ソーシャルメディアの管理ツールを導入したきっかけは。

1つは、パスワードの一元管理ですね。アカウント数が多いので、担当者ごとに管理してもらっていますが、1~2年で異動になるので管理が大変です。つぶやきデスクなら、アカウントの追加や削除が一元管理できるのでストレスなく利用できます。

先ほど話した分析機能も使っています。今までは仕事の都合上、新聞の朝刊作業が続く深夜にツイートすることがありましたが、実際のところ見る人が多くないんですよね。Twitterの閲覧ピークは、朝の通勤時間と、夕方から夜にかけての時間帯です。実際、この時間帯に予約投稿することで、クリック数などのエンゲージメントが以前よりも増えています。

これまでは週末ニュースに触れる人は少なかったのですが、スマホの普及で土日のアクセスが増えたので、意識的にツイートするようにもしています。

――運用の悩みはありますか。

ソーシャルメディアを使ったことがない管理職と、若手のソーシャルメディア経験者とのギャップでしょうか。新聞記者は、ひと通り各部署を経験するので、管理職は専門分野以外にも通じているのですが、ソーシャルメディアだけは経験がないのでわからない。一方で若手は、メディアリテラシーは高くても、社会人経験が少ないといった違いもあります。

継続的に運用し続けるための仕組みを作る

――これからソーシャルメディアを担当する人に、アドバイスをいただけますか。

社内でもTwitterやFacebookをやりたいという人は多いのですが、始めることが目的にならないように、と話しています。ソーシャルメディアは、継続的に運用することによって信頼が増します。アカウントを開設したのに情報発信しないというのはおかしいですから、やるからには労力がかかるし、1人で運用し続けるのは無理だということを伝えていますね。

――今後やりたい施策はありますか。

いろいろありますよ。先日、将棋の感想戦をツイキャスでライブ配信(朝日新聞将棋取材班)したところ、1200人の同時視聴、延べ2万人の視聴がありました。もともと、将棋の解説をツイキャスで放送するという企画だったのですが、感想戦があることを知って急遽放送しました。簡単に、ニッチなターゲットにささるコンテンツが作れるのはいいですね。

また、InstagramやPinterestをこれから始めるところですし、海外の記者を含めてGoogleのハングアウトを使い、顔出しでディスカッションするというのも考えています。どれも基本無料で使えるプラットフォームなので、試行錯誤しながら可能性を探りたいですね。

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