一人でできるWebサイト収益UP術-ウェブ解析士事例集
たった3か月のWebマーケティング施策でタイの観光客をゼロから集客する方法とは?

新規の獲得拡大のために訪日外国人を呼び込みたい。実店舗は日本だけの旅行代理店が、タイからの観光客を呼び込むために行った4つのWebマーケティング施策を紹介。
齋藤陸+山倉英樹(アウンコンサ... 2015/2/6(金) 7:00 tweet100このエントリーをはてなブックマークに追加 印刷用

新規の顧客獲得拡大のために訪日外国人(今回はタイ人)を呼び込みたい。実店舗は日本だけの旅行代理店が、タイからの観光客を呼び込むために、もともとあった英語サイトを活用し、サイトリニューアルも実施せず、たった3か月でタイからの予約件数を7.5倍も獲得した4つのWebマーケティング施策を大公開!

箱根に訪日タイ人を呼び込みたい!
タイ人向けのWebプロモーションは初めての試み

今回は日本のある旅行代理店が、箱根エリアのツアーをタイ人向けに販売強化するために行った、Webマーケティング施策について紹介します。この旅行代理店は「箱根エリア」を強みとしており、関東圏ではそれなりの知名度があります。

しかし、タイ人からすると箱根もその代理店も全くの無名です。また、かけられる予算も決して多くはなく、限られた範囲でいかにして効率良く予約を増やしていくかが大きな課題でした。

タイ人集客における課題
  1. 箱根エリアの認知が低い
  2. 旅行代理店の認知が低い
  3. 広告にかけられる予算が限られている

Webサイトは保有していますが、対応している言語は英語、中国語、韓国語のみで、タイ語には対応していません。また、Webサイトの機能として、ホテル・ツアーの予約機能はあるものの、入力しなければいけない項目が多いためユーザーが離脱してしまうことが懸念されました。加えて、サイト全体のデザインが古く、来訪者に不安感を与えかねないという問題もありました。

Webサイトにおける課題
  1. 英語サイトはあるが、タイ語対応なし
  2. オンライン上で予約が完結できるが、入力項目が多く離脱してしまう可能性あり
  3. サイトのデザインが古い

タイからの観光客を取り込みたいものの、今回は予算の関係上タイ語のページを用意できませんでした。また予約フォームの改善やサイト自体のデザインをリニューアルも行うことができませんでした。

そのため、サイトにおける課題を直接解決するのではなく、サイトは現状のままでタイからの観光客を集客するためのプランとして、次のことを3か月で実施することにしました。

  • 箱根エリアに旅行したいと思っている層(ニーズが顕在化している層)を確実に獲得する
  • 箱根エリアの旅行需要を喚起するため(ニーズが潜在化している層)に認知向上施策実施する
マーケティングファネルと3つの施策
※イメージ図

マーケティング施策スタート:3つの広告施策とサイト内分析

上記2つのプランを達成するために、具体的な4つの施策を考えました。

  1. リスティング広告
  2. Googleディスプレイネットワーク(GDN) / リマーケティング
  3. Googleディスプレイネットワーク(GDN) / 手動プレースメント
  4. サイト内分析

施策①リスティング広告

タイ人が旅行を探すとき一般的な行動としては、まず行きたい場所をネットで検索をして、上位に表示された旅行代理店を複数比較しながら調べて、価格が安いものや信頼できるかどうかを判断して、最終的に予約をします。

そのためタイではネット上で旅行関連の集客プロモーションを行うことは効果があります。タイのネットユーザーにおける検索エンジンシェアはGoogleが98%以上を占めているため、ニーズが顕在化している層へのアプローチ方法として、検索エンジンなどの検索結果ページに掲載されるテキスト広告の「リスティング広告」を利用しました。

タイ検索エンジンシェアGoogleが98%以上

広告を出稿するキーワードは、メインとなる「旅行」、「ツアー」などの旅行関連キーワードを主軸に、エリア関連、観光関連、固有名詞などのキーワードを組み合わせました。特徴としては、「箱根」を含むキーワードの合計検索数は、月間で5,000回程度しかないという点です。日本の地方都市などと比較すれば検索数は多いほうではありますが、それでも検索母数としては少ないため、「日本」や「東京」といった広域エリアのキーワードも配信しました。

リスティング広告を出稿するときのキーワードの掛け合わせ方法

施策②Googleディスプレイネットワーク(GDN) / 手動プレースメント

テキストのリスティング広告だけでなく、旅行を検討している人にバナー広告で箱根の良さや旅行代理店名を広く知ってもらうために、ディスプレイ広告のGoogleディスプレイネットワーク(GDN)を利用しました。

ここで日本との違いで注意することは、前述したようにタイでは検索エンジンシェアがGoogleが98%以上を占めているためYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)ではなく、Googleディスプレイネットワーク(GDN)を使うことです。

弊社の過去実績などから広告出稿を行う最初の段階で、広告を配信する媒体を絞り込んで出稿しました。

タイ最大級の日本に関する情報サイト

たとえば、上記のサイトmarumura.comは、タイ人が日本に関する旅行情報について調べる際によく閲覧されるものです。媒体を絞り込んで広告出稿をすることで、効率の良い広告配信が可能となります。

なお、タイのWebメディアの多くはGoogleの広告配信枠(Google AdSense枠)があり、純広告よりも低いCPC(またはCPM)で広告を配信できます。逆に、純広告は媒体社の価格が高く、費用対効果が悪いため、認知向上のために露出先を最大化する目的以外ではあまりお勧めできません。

施策③Googleディスプレイネットワーク(GDN) / リマーケティング

リスティング広告や手動プレースメントで旅行代理店のサイトに誘導した見込顧客の多くは、サイト内を回遊した後、予約する前に他サイトと比較するためサイトを離脱してしまいます。そのため、サイトに訪れたユーザーに「箱根エリア」のリマインドとサイトへの再訪を促すために、リマーケティング配信をあわせて実施しました。

リマーケティングとはGoogleのサービス名で、Yahoo!はサイトリターゲティングといいます。自社のサイトに訪れたユーザーが、別のサイトに去ってしまった場合でも、自社のサイトに再訪してもらうように促すことができる広告で、追跡型広告とも呼ばれています。

今回は予算の都合上実施できませんでしたが、サイトの訪れたページに応じて配信するバナー広告を変えることでさらに広告の効果が上がります。また、広告の追跡期間や表示回数などを再訪させたいサイトの特性によって細かく設定することで、さらに効率の良い広告運用が可能となります。

施策④サイト内分析:ボトルネックを洗い出し

施策①~③はオンライン上のマーケティング施策で集客やサイトへの再訪を促す施策でした。①~③のプロモーション施策と同時に、サイトに訪れたユーザーにとって箱根の魅力が伝わりやすく、迷うことなく予約完了ができるサイトでなければ、予約率アップにはつながりません。そのため、サイト内のユーザー行動を分析して改善していくことが欠かせません。次のようなことをリストアップし、フィードバックしました。

サイト内主要導線分析
  • 離脱しやすいページ
    現状、英語のサイトしかないため今後タイ語のサイトを作るときの参考となるように、ユーザーがよく離脱するページや滞在時間が著しく短いものなどボトルネックとなるページをピックアップしました。

  • 予約フォーム
    予約フォームの入力項目が多く、煩雑だったため、予約完了までたどり着かないケースがありました。それを軽減するために、フォームに訪れたユーザーがどこで離脱しやすいのかをピックアップしました。

  • タイ向けの商品を開発のするためのアイデア
    リスティング広告では検索クエリからユーザーニーズがわかります。そのため、タイ人が好む旅行がどういったツアーなのか、商品開発をするときのアイデアとなるようにキーワードをリストアップしました。

  • タイにおけるデバイス別分析、エリア別分析
    タイのどの地域からのアクセスが多いのか、よく使われるデバイスはどれか、といった情報をリストアップしました。

広告出稿後の2週間後:効果検証と改善案

広告出稿を開始した2週間後に最初の効果分析を行いました。広告の表示回数、クリック数は概ね想定通りで推移していたものの、予約はほとんど取れていないという状況でした。来訪者の動きをみると、次のような結果でした。

  • リスティング広告経由の直帰率が約70%、滞在時間が約1分50秒
  • ディスプレイ(バナー)広告経由の直帰率が75%、滞在時間が約1分

直帰率が高く、滞在時間が短く、サイト内回遊はあるものの予約ページまでたどり着いても予約完了まで至らないケースが多い傾向がありました。やはり英語しか対応していないことと、予約フォームの煩雑なフローに対する予約障壁が高いことがわかります。

ちなみに、別のサイトでの実績として、ランディングページを英語からタイ語に変更した結果、予約率が1%から2%近くまで改善されました。

とはいえ、すぐにサイトのシステムに関わる部分や言語対応などができないので、いかにして少ないコストかつ短期間で、予約フォームへの誘導数を増やせるかという観点から、次のような4つの改善施策を実施しました。

改善施策①ランディングページのファーストビュー以外にも予約フォームへのリンクボタンを設置

リスティング広告やバナー広告で訪れたホテルやツアー予約詳細ページに、予約ボタンはあるものの、ページをスクロールするとリンクボタンがみえなくなり、予約ページへの導線がなくなるというページ構成でした。そのため、ファーストビュー以降にもリンクボタンを設置することできちんと導線を整備しました。

宿泊施設ページへの導線設置

改善施策②リスティング広告及びバナー広告のリンク先を細分化

キーワードごとに最適なリンク先URLを設定するのはもちろん、予約ページへの流入数を最大化するために、予約ページまでたどり着くことが多いページへ誘導するように、リスティング広告やバナー広告を作り直しました。

予約が取れるようになってからは、来訪者の属性情報についても分析し費用対効果の高い地域、デバイスへの最適化を実施しました。

改善施策③タイ全土からバンコク市内へエリアターゲティングの変更

広告配信直後はエリアを絞らず広範囲で広告配信をしていましたが、Google AdWordsの「詳細分析」タブから、地域を選択してエリア別の広告配信結果をみると、タイのなかでもバンコクエリアで次のような結果得られ、効果が高いことがわかりました。

  • 広告表示回数の7割がバンコク
  • コンバージョンの8割がバンコク

まだ、精度の高い数値が取れているとはいいがたい状況でしたが、人口、及び所得水準を考慮してバンコクエリアに広告配信を集中投下するほうが、効果が高いのではと判断し、広告配信エリアをタイ全土からバンコク市内に狭めました。

地域別配信データの参照

改善施策④配信デバイスの変更

Googleアナリティクスで、デバイス別の流入結果を比較するとタイからの流入の約3割がスマートフォン経由となっていました。これは、サイト全体数値と比較して高い比率となっており、タイではスマートフォンからのアクセスが重要であることがわかります。

一方で、対象サイトはスマートフォンへの対応はまだできていないため、PCやタブレット経由の流入と比較すると直帰率が高く、平均ページビューと滞在時間は少ないという状況でした。理想はモバイルデバイスにもサイトが対応していることですが、現時点では対応が難しいため、Google AdWordsでモバイル端末への入札単価を抑制しました。

デバイス別単価調整の方法

なお、Google AdWordsではエリアセグメントの他に、Googleディスプレイネットワークの配信セグメントとして「性別」「年齢」「子供の有無」といった配信セグメントも選択することが可能です。ただし、これらをターゲティング方法として設定する際は、精度が高くはないため注意が必要です。

3か月後の結果:予約件数が7.5倍に増加

施策を開始した1か月目と3か月目を比較すると以下のように効果が改善されました。

予約ページのトラフィックが5倍に増加
予約件数が7.5倍に増加
予約獲得単価が10分の1に圧縮
直帰率が70%→60%に減少
滞在時間が1分50秒→3分に増加
※直帰率及び滞在時間はリスティング広告経由の数値

また、3か月間で得られた情報を活用して、サイトリニューアルを実施することが決定しました。具体的には次のようなことです。

  • 予約フォームなどのユーザビリティ改善
  • スマートフォン対応などの機能面
  • 検索クエリデータをもとにしたSEO(検索エンジン最適化)など

サイトリニューアルが完成次第、本格的にタイ向けのマーケティングを行う予定となっています。

今回は3か月という短期間のプロジェクトだったため、必ずしもすべての最適化ができているわけではありませんが、時間とコストという観点から、最も効果が期待される施策を実施していくことで効果を改善することができました。

もちろん専門的なテクニックの話になると、経験が求められる部分はありますが、とはいえ実はそのようなテクニックで改善できる幅は小さかったりするものです。ちゃんとお客様にとって使いやすくて、有益なサイトや広告であるかという観点からWebマーケティングに取り組むことで、きちんと結果はついてくるでしょう。

最後に

今回の事例のように、実店舗が日本にしかない場合よく「インバウンド、アウトバウンドの施策を日本でもできるのか?」という点に関してよく質問されます。答えはYes 50%、No 50%です。つまり条件次第です。

一番重要なのは、インバウンド、アウトバウンドとも対象国のマーケティングに精通した人が社内にいるかどうかが重要になります。対象国を知らずしてマーケティングはできません。

次に重要なのは、現地のマーケターとパイプがあるかどうかが重要になります。日本の社内に精通した人がいたとしても、現地ではなく日本にいるわけですから生の情報感度は下がり施策戦略、戦術にずれが生じる可能性があります。

この2点が満たすことができなければ、それを満たすことのできる代理店にお願いすることをお勧めします。

外国人向けにWebマーケティングを行うのは、言語や習慣などわからないことが多くあるため敷居は高いと思います。とはいえ、昨年は訪日外国人が過去最高の1,340万人を突破したということで日本でも大きな話題になりました。今後2020年のオリンピックに向けて、さらに国をあげて観光産業を盛りあげていく動きが活発になっていきます。

今後タイに限らずさらに訪日外国人が増加することが見込まれるなかで、できることから外国人向けの集客にトライしてみてはいかがでしょうか。たとえば、英語のチラシを一枚作ることからでも構いません。

極端な話、言葉は伝えるための単なるツールにすぎません。なにもしないでお客様の獲得機会を失うほうが、よっぽどリスクだと思います。もし本記事があなたの外国人集客の取り組みに、少しでも役に立てば嬉しく思います。

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