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マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入
マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入

マーケティングオートメーションは本当に必要か、競争を勝ち抜く新しい武器とは

マーケティングオートメーションの正しい導入のためには、現状を正しく知ることがカギ
庭山一郎(シンフォニーマーケティング) 2014/10/29(水) 8:00 |
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マーケティングオートメーション(MA)の導入が日本企業でも急速に進んでいます。一方、すべての企業が今すぐMAを導入すべきとは限らず、目の前の案件に集中した方がよい場合もあります。正しい導入のためには現状を正しく知ることがカギです。今回は、日本企業のマーケティングの現状と合わせて、MAがなぜ必要とされているのか、より詳しく見ていきます。

マーケティングオートメーションは本当に必要か

弊社(シンフォニーマーケティング)は、事業部や製品ごとに、マーケティング活動の支援を必要としているかどうかの診断をするサービスを持っています。連載ではマーケティングの基礎から解説していきますが、ここではマーケティング活動による支援が必要ないと診断した事業部の例を見てみましょう。

たとえば、売上予算が年間100億円の事業部があるとします。この事業部の引き合い(SQL)からの1年以内の受注決定率が25%で、営業や代理店が1年間に創出する引き合いの合計が400億円以上だった場合、この事業部にはマーケティングの支援は必要ありません。

目の前の案件に集中すれば予算達成できるためマーケティング支援は必要ない。

彼らは顧客を訪問して400億円以上の引き合いを創造し、その引き合いに誠実にすばやく対応し、25%以上をクロージングすれば目標を達成できます。優先すべきは目の前の引き合いであり、マーケティング活動で創出した案件などを追いかけている場合ではないのです。ですから、このような事業部にマーケティング活動で支援することは、営業から見れば「余分な仕事を増やす迷惑行為」にしかならないのです。

引き合い(SQL)に頼って来た日本のマーケティング

ところが2014年に入り、マーケティング活動のツールであるマーケティングオートメーション(MA)を日本企業が続々と導入し始めています。この現象には、しっかりとした「理由」と「布石」がありました。

「理由」は、製造業を中心に日本企業の売上の海外比率が高くなり、海外営業を支援するためのマーケティングのグローバルプラットホームを持たざるを得ない状況になったからです。

実は、日本の製造業の営業や販売代理店の営業の多くは、今まで日々の営業活動によって生まれる「引き合い」に対応して売上を作って来ました。

営業になると、担当企業やエリアを割り振られます。割り振られた担当先に足しげく通うことで、顔と名前と売っている商材や得意な技術などを覚えてもらいます。すると訪問したときに、

「この部品をこんな風に加工できますか?」
「この機種の在庫って今どれくらい持っていますか?」
「これを2万セット買うとしたら単価はどのくらいで出せますか?」
「ここの部分をこのアルミに変更できますか?」

という相談をもらえるようになります。これが「引き合い」です。この引き合いをマーケティング用語で「SQL(Sales Qualified Lead)」と呼ぶのは、前回も説明したとおりですが、SQLの特徴は、営業が頻繁に訪問している「人」からしか出ない、というものです。「企業」ではなくて「人」なのです。顔と名前と所属する企業と、その得意な分野の「認知」をベースに発生しますから、訪問していない事業所や部門、頻繁に会っていない人からは発生しないのです。

SQL(Sales Qualified Lead)とMQL(Marketing Qualified Lead)
電話、訪問など日々の営業によって創出した案件(引き合い)をSQLと呼び、マーケティング活動によって創出した案件をMQLと呼ぶ。

研究室用の機器を製造・販売していた企業が、量産ラインで使用する機器を開発したがさっぱり売れないという現象は、製品の問題というより、量産ラインの機器を選定する生産技術、エンジニアリング部門にまったく面識がないことが理由の場合が多いのです。

同じ営業先の企業でも、頻繁に訪問していない部門からはSQLが出ないのですから、ビジネスをしたことがない新市場ならなおさらです。半導体製造関連に技術を提供してきた企業が、医療機器産業に売り込みたいと考えても、ここからのSQLは期待できないのです。これは海外市場ではさらに深刻な問題になります。

市場で戦うための新しい武器がMQL

今までの「営業」が創出する案件だけでは成長に限界が見えてきたことから、必要になるのが、「MQL(Marketing Qualified Lead)」と呼ばれるマーケティング活動によって創出した案件です。

MQLとは営業の日頃の訪問活動ではなく、展示会やセミナー、Web、メールマガジンなどのマーケティング活動から創出された案件であり、SQLだけでは不足している案件をMQLで補完することで、手が回らない市場や、顧客企業内のなかなか会えない事業所や部門をカバーするのです。

記事の冒頭で示した例は、「マーケティング支援を必要としない」ケースでしたが、数年前に「今はマーケティングによる営業支援は必要ない」と判定した企業から、再度呼ばれることが多くなりました。訪問してみると、数年前には400億円あったSQLが今年は250億円がやっと、しかも25%あったはずの受注決定率も20%になってしまったというのです。

こうなると、期首に見えている売上は250億円の20%の50億円ですから、売上予算100億円の半分にしかなりません。このまま放置すれば確実に50億円の穴が空くのです。これを解決する方法は、今までのSQLとは別に、不足している250億円の案件を他から持ってくるしかありません。つまりMQLの出番なのです。

年間の引き合い(SQL)と受注決定率の低下によって予算達成が困難なのでMQLによる補完が必要。

日本企業は今、新製品を開発投入したり、国内外の新しい市場に打って出る必要に迫られたりしていますが、多くの企業はこれに苦戦しています。その原因は、SQLが期待できない市場にもかかわらず、MQLを創出する仕組みを持たずに戦っているからなのです。

20年前からあった布石

一方「布石」は過去10年間で急速に普及したSFA(Sales Force Automation)です。

実は米国でSFAが普及したきっかけは、20年前から始まったSEC(証券取引委員会)の規制強化でした。資本主義の本場である米国では、株主保護の思想が強く、上場企業に対する売上や利益の予測、その上方・下方修正の制限をどんどん厳しくしたのです。

グローバルでビジネスをしている企業が、四半期ごとの業績を正確に予測しようと思えば、営業部門や販売代理店が持っている営業案件を可視化しない限り不可能です。そこで上場企業やその連結対象企業を中心にSFAの普及が進みました。すると、可視化した営業案件の受注決定率が上がることに気がついたのです。「見えている問題には手が打てる」という当然のことが起きた結果、このSFAは上場企業以外にも普及し始め、その波が日本にもやってきたのです。

2014年現在、世界でシェアを分け合っているSFAの大半は、実は第三世代と言えるものです。

第一世代(1980年代に登場)
  • 「ONYX(オニキス)」
  • 「Clarify(クラリファイ)」
第二世代(大規模営業支援ソリューションとしての地位を確立)
  • 「Siebel(シーベル)」
  • 「Vantive(ヴァンティブ)」
  • 「Pivotal(ピボタル)」
第三世代(現在シェアを争うSFA)
  • 「セールスフォース・ドットコム」
  • 「Dynamics CRM」
  • 「SugarCRM」
  • 「Oracle Sales Cloud」

SFAを補完するマーケティングオートメーションの役割

MAは、この第三世代のSFAの補完機能として2000年に入ってから誕生し急成長してきました。SFAはもともと営業案件とそれに紐付く担当営業やパートナーの営業プロセスを管理するツールですから、営業案件を創りだす機能は持っていなかったのです。ですから営業案件を創出し、SFAに安定供給するMAが必要でしたし、現にマーケティング先進国の企業ではSFAとMAをセットで導入するのが常識になっています。

日本では「MAが手に入らなかった」という理由でSFA単独での普及が先行しました。そして、SFA導入ユーザーの運用面での不満の大半は、本来MAで行うべきマーケティングについてでした。

大量のメール配信、特定ターゲットに対するキャンペーンのシナリオ設計や、Webと連動したキャンペーンの実施、属性情報や行動解析からのスコアなどはSFAで行うべき仕事ではなく、本来はMAの仕事なのです。

ですから、日本企業が営業の生産性を向上したいという目的で導入したSFAを活用しようと思えば、自社に合ったMAを導入しなければ仕組みは完成しないのです。

次回は、そのマーケティングオートメーション(MA)を選定する上でのポイントを解説します。

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