企業ホームページ運営の心得
これまでのWebの話をしよう。日本のWebの論点2011

200号記年してWeb論壇という大舞台、かつ大難問にたった1人で「手短」に切り込む企画に挑戦します
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百

ただひたすらに感謝

本稿にて連載200回。好きなことを書かせてくれる安田編集長、時に脱線したまま帰ってこない拙稿を朱入れしてくれる池田さん、そして風呂敷を拡げ放題ひろげるくせをみて、「論点を絞られた方が」といってくれた初代編集の仲里さん。皆さんのご助言がなければ、とっくの昔に連載に句点を記していたことでしょう。そしてなにより、時に厳しく、いつも暖かく見守ってくれた読者のおかげと感謝いたします。

連載がはじまった当時、Web業界は「Web 2.0祭り」のただなかにありました。「論壇」というと大袈裟かもしれませんが、現在の「Web著名人」の多くが、Web 2.0という壇上に上がり、この時期に「ブログ」などからブレイクし、オピニオンリーダーとしての地位を築きました。彼らは新しい秩序が生まれ、Web環境が再編されると浮かれていたものです。

新潮流、ムーブメントと盛り上げるだけならまだしも、これを「環境変化」と定義し、白亜紀以降の酸素濃度の変化と重ね、対応することで繁栄した哺乳類と適応できずに滅びた恐竜に分け、どちらを選ぶかという脅迫めいた解説も散見しました。最近では「ツイッター」への対応で同様の論調を見かけますが、現実はどうでしょうか。

Web論壇には大きな問題が3つあります。それは「単純化」「乖離」「歴史」です。今回は200号記念。Web論壇という大舞台、かつ大難問にたった1人で「手短」に切り込むという無謀な企画に挑戦します。

恐竜は絶滅していない

Web論壇の問題点は「作為のある単純化」です。先ほどの環境変化への例え話などがその最たるもので、恐竜は「鳥類」へと「進化」しており、すべてが死に絶えたわけではありません。また、酸素濃度が高くなったことは、哺乳類の大型化を助け、それが哺乳類の発展につながったとされますが、同時に恐竜の大規模な多様化も助けており、哺乳類だけが「適応」したわけではないのです。Web 2.0を流行させたいという「作為」から、都合の良い単語をピックアップして「単純化」したということです。あるいは誰かのエントリーを検証もせずに「コピペ」したのでしょう。だいいち、俗にいう「恐竜絶滅」の主因は「隕石衝突」です。

こうした「作為のある単純化」は多く、

日本にグーグルが生まれない理由は?

という問いかけもそうです。手前に「日本」を、向こう側に「米国」をおき、閉鎖的な社会制度や、起業家を支援しない日本の社会環境を嘆きます。

日本人でもグーグルは作り出せる

しかし、ちょっとまってください。グーグルの創業者の1人「サーゲイ・ブリン」は旧ソ連の生まれで、ヤフー創業者の「ジェリー・ヤン」は台湾生まれ。彼らを例にとれば、日本人でもシリコンバレーに進出すればグーグルを作り出せるわけです。ならば「生まれない理由」は個人の資質であって、日本社会を嘆くのはお門違いです。

そうではなく、日本国内にグーグルのような企業が生まれないことへの批判だというのなら私の回答はこうです。

グーグルのような“米国らしい”企業が、日本で生まれるはずがない

“米国らしい”とは、貪欲なベンチャースピリットに溢れ、狡猾……知略に長けているという意味です。謙虚さを美徳とする日本人の中で“貪欲”が許されるのは中川翔子さんだけです。

日本人ゆえに日本人をけなす

そもそも文化や風土の違いを無視して、日本を卑下することがナンセンスです。日本からはソニーやホンダといった世界的企業が生まれており、最近の米国ではそれがヤフーやグーグルだったというだけのことです。Web論壇では作為的に単純化されているものが多く、「哺乳類の発展と恐竜の絶滅」や「日本と米国」という二項対立の「わかりやすさ」から、本質が置き去りにされてしまいます。

少し、余談にお付き合い下さい。Web論壇はマスコミとの対比が好きで、それを見るたびに、内田樹さんの『日本辺境論』を思い出します。日本人は他人との比較で、おのれの立場を確認するという指摘があり、マスコミを批判することで、自分の立ち位置を確認しているように見えるからです。

グローバルと接するWeb論壇でありながら、「日本人」のくびきから逃れることはできないとしたら微苦笑を禁じ得ません。そして、日本のマスコミも「作為のある単純化」が大好きで、それはゲストや関係者へのインタビューで「YesかNo」「辞任か総選挙か」と二者択一の言質を迫るニュースキャスターからも明らかです。

バカに見つからない構造

2つ目の問題である「乖離」は、Web業界全体に悪影響をもたらしていると考えます。年々、「馬鹿(素人)」に見つかりにくくなっているのです。

「ガジェット」「キャズム」「インフルエンサー」、そして「バイラル」。

Web業界は専門用語や、珍しい英単語、造語を濫用します。前回もお話しましたが、Web業界は一歩外に出ると認知されていないのにもかかわらず、まるで「そんなことも知らないのか?」と「馬鹿」にしているかのようです。お笑いタレントの有吉弘行さんはバラエティ番組で「ブレイクすることとは」という問いに「馬鹿に見つかること」と答えたといいます。今のWeb業界はその逆で、「馬鹿」の目に止まりにくい言葉を濫用することでブレイクを自ら遠ざけ、一般社会と「乖離」しているのです。

90年代は「草の根BBS」や「日記型掲示板」など、「馬鹿」に届く努力(意訳、翻訳)がなされていました。電子的なというニュアンスの「e」と雑誌の「Magazine」を組み合わせた「イージン(e-zine)」として米国で普及していたものを「メルマガ」としたのもその1つです。「馬鹿に見つかる努力」が今のWeb論壇には欠けています。

歴史を語らない

最後の問題点は「歴史」で、「時系列」がおろそかにされているのです。2011年の今、ミクシィは実名で利用しなければならないと声高に叫べば失笑が起こるでしょう。しかし、Web 2.0が騒がれていた当時、ミクシィは「実名で登録するから安全」と啓蒙するWeb業界人ばかりでした。「結果論だ」という反論もあるでしょうが、今は同じことを叫びながらフェイスブックに集客しており、デジャブに目眩がします。

過去の失敗を正視しないと言い換えてもいいでしょう。「ソーシャルタグ」「フォークソノミー」「セマンティックWeb」「フィード」。すべて失敗したというつもりはありませんし、評価の方法によっては定着したものもありますが、Web 2.0時代に唱えられた「恐竜絶滅」は起こらなかったのは事実です。そしてなにより、Webにはすでに語る「歴史」があります。過去の失敗を堂々と語られるようになるときが、Web論壇にとっての「2.0」がやってくるのかもしれません。

その時、本稿は……と目を細めているのは達成感からではなく、おのれの無謀に涙が止まらないからです。すでにお気づきの方もいるでしょうが、本稿も字数の関係上「単純化」しており、自縄自縛、自作自演となってしまったことを深謝。これに懲りずに201回、202回とお付き合いいただければ幸いです。

今回のポイント

ネット論壇の特徴はバイアスと同義。

差し引くことで「発見」がある。

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