企業ホームページ運営の心得

遅刻の言い訳からコンテンツにまで使えるフレームワーク

商売の現場(ホームページ)は複数のフレームワークで成立しています
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百弐十六

誤解される人の話し方

前回、「フレームワーク」を枠組みという切り口で紹介しました。しかしそれは一面に過ぎません。

朝7時に起きようと思ったのに30分寝坊して、慌てて家を出たら携帯電話を忘れたことに気がついて、取りに戻ったら電車に乗り遅れて会社まで走ったんですけど、途中で取引先のAさんに会って遅刻しちゃうと思いながら立ち話していたら「そうそう、来週の展示会に来てください」ってお願いされたんです。

遅刻を咎められた上司への釈明です。あなたの近くにこんな人はいないでしょうか。いわゆる「話の下手な人」はフレームワークがなく墓穴を掘ります。この話は最後にまとめますが、フレームワークとはコンテンツから遅刻の言い訳まで使える応用範囲の広い技術です。

営業用コンテンツに必要なこと

フレームワークを商売に当てはめるとこうなります。

  • 「集客のフレームワーク」
  • 「販売のフレームワーク」
  • 「リピーターにつなげるフレームワーク」

この他にも仕入れや人材育成などに適用でき、商売の現場(ホームページ)は複数のフレームワークで成立しています。そしてそこから考えることでコンテンツの課題が見えてきます。

たとえばホームページ制作業の作る「SEO」コンテンツを見てみると、言葉の説明から始まり、外部・内部要因といった仕組みや「ネット時代の消費行動法則」としてAISASを紹介し、最後に自社のサービスが述べられているものがあります。しかし「販売」というフレームワークでみれば違うコンテンツとなります。

「SEOとはなんぞや」と検索する人は二通りです。知識として知りたい人と、実際のSEOを欲している人です。「客」は後者です。ところがホームページ屋が提供しているコンテンツは前者を満足させるもので、これは「記事」のフレームワークです。

アフェリエイト界の世界的権威

新聞や雑誌の記事はトピックを盛り込み、異論や各論を併記し「知的好奇心」を満たします。一方、客が求めているのは「メリット」です。つまり「販売」というフレームワークでみれば「SEOの説明」よりも「メリット」や「料金」を優先しなければならないのです。これは前回のメニューの見直しにも通じます。

さらに実戦的なフレームワークを「情報商材」の世界で見ることができます。とあるサイトでは「アフェリエイト界の世界的権威」なる先生が登場します。または「マーケティングのカリスマに師事」したと胸を張ります。購入者の体験談は小さなものから大きなものまで掲載されすべてが喜びに溢れています。そして「成功」を約束する文章がコンテンツを支配します。

両論併記が生み出すもの

まず「ツッコミ」ます。権威やカリスマの論拠も根拠も示されておりません。「商売人」は名前を売りたがるのに成功例に匿名希望が多いことも不思議です。また名前入りの「成功者」を「ネットで検索」しても見つからないことはよくある話で、他の「情報商材」を売っているサイトで名前を見かけることも多々あります。「特定商取引表示」をクリックすると「404 Not Found」であることは珍しくありません。

結論を述べれば情報商材屋は怪しいところが多いのですが、そのコンテンツのフレームワークに注目します。それは「記事」ではなく「広告」です。見事なまでに成功の世界観に偏っているのは広告だからで、広告にわざわざ不利な情報を載せる必要はありません。この潔さすら感じる偏った世界観は「記事」と「広告」のフレームワークの違いを学ぶケーススタディに最適です。

そして、本稿は記事。情報商材の手法を紹介し、次に「ツッコミ」をいれて両論併記とします。

ビジネス書の我田引水

ちなみに記事が金になるのは業界人だけです。商売人は商品やサービスが金を生みます。そのため、「販売」や「広告」というフレームワークが必要で、売るために論理構成をコンテンツに反映させます。そこでの我田引水は誉め言葉です。

独立してから「自己啓発本」や「ビジネス書」を読んで首をひねることが多くなりました。ネットビジネス系にも多く、特殊な環境を設定してから自説を展開するなら何でもアリのちょっとしたファンタジーです。しかし「フレームワーク」に触れて得心しました。これらは

「結論」

に向かって組み立てられた「商品」であり記事ではないのです。だから異論や反論を記す必要はありません。ご都合に沿ってつづられており、ご都合主義という批判は子犬に向かって「サノバビッチ(直訳では雌犬の息子)」と叫ぶようなものです。

遅刻の言い訳とは

フレームワークについては沢山の商品……書籍が多数でておりますのでより詳しい説明はそちらに譲りますが「Web担当者」なら身につけておくべき技術です。そして冒頭の遅刻ネタに戻ります。

冒頭の言い訳は、会社にもよりますが取引先と会って遅刻したのならばお目こぼしされることでしょう。つまり、この場合の言い訳の最適解はこうです。

「取引先の人と会っていて遅れました」

声をかけられた時点で遅刻だったとしても求められなければ話す必要はありませんし、何時に起きようと思ったかなどは不用です。遅刻を咎めるのは内規違反への対処でありイジメではなく、正当な理由があれば処罰が回避されるのは「組織運営」というフレームワークで考えればわかること。つまり上司の「思考の枠組み」で「言い訳」は考えるものなのです。さらに順を追って説明したからといって伝わるものでないことを私たちは義務教育で経験しています。順を追って習った「通史(歴史)」よりも「テストにでるから」と教えられた「応仁の乱」や語呂合わせの年号のほうが記憶にあるのではないでしょうか。これは「テスト」というフレームワークです。

コンテンツも同じです。全部を並べても覚えきれません。そこで「ここ、メリットになります」とするのが「販売」のフレームワークです。

♪今回のポイント

目的と立場でフレームワークは変わる。

フレームワークとは相手の立場で考えることでもある。

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