マツケンコラボのグランバザールが大反響! パルコの「クリエイティブ制作」の裏側を聞いた

枠にハマらない多彩な表現をするパルコ。2024年1月には“マツケン”こと俳優・松平健さんを起用したクリエイティブが話題に。どのように制作されたのか、その裏側を聞いた。

半世紀以上も前から独自のクリエイティブを追い求めてきたパルコ。若き日の石岡瑛子さんや佐藤可士和さん、ソフィア・コッポラ監督などをいち早くクリエイターに起用し、時代の先端を切り取るような斬新な表現で“パルコらしさ”を形作ってきた。

2024年1月2日〜14日まで全国のPARCOで開催された「グランバザール」では、“マツケン”こと俳優・松平健さんとコラボレーションしてCMを制作したほか、おみくじやARを活用したデジタル体験を提供。来客やSNS投稿につながったという。

話題を集めるパルコのクリエイティブは、どのように制作されているのか。宣伝部のマツケンプロジェクトメンバーに、その裏側を取材した。

(右から)​株式会社パルコ 宣伝部 業務課長 小林絵理子氏、本橋乃衣絵氏、安藤寿一氏

空気を読み、時代を切り取る「パルコのDNA」

「パルコにおける広告は、販促というより新たなクリエイティブの提案の要素が強い」と本橋氏は話す。

宣伝ビジュアル担当の本橋氏

時代のコンテクストを踏まえて、今ならではの表現手法を用いてクリエイティブに落とし込む。それが当社のクリエイティブ制作のDNAと言えます。

たとえば1970年代の広告は、ハイカルチャーとサブカルチャーという相反する価値観の併存や女性の社会進出など、当時の時代の流れを反映したクリエイティブになっています(本橋氏)

最先端のクリエイターの起用だけでなく、インキュベーションにも精力的で、まだ広く知られていないクリエイターやモデルを起用した事例も多くある。枠にハマらない多彩な表現も、パルコのクリエイティブの見どころだ。

当時、若手だったアートディレクター・石岡瑛子さんを起用した1975年の広告(画像:パルコ提供)

2023年には生成AIで制作したクリスマスの広告も大きな話題を呼んだ。YouTubeで配信した同広告は、従来の広告よりも遥かに多い4.4万回再生されている(2024年1月時点)。

2023年に発表された生成AIで制作した広告も話題に(画像:パルコ提供)

2023年に掲げていた宣伝部のテーマは『伝統と革新』で、生成AIによるクリエイティブは『革新』に当たります。同広告はメディアで多く取り上げられ、広告業界の方やデザイナーだけでなく、エンジニアなど幅広い層から反響がありました(本橋氏)

宣伝効果を最大化するべく、10年ぶりの組織改編

パルコでは、10年にわたり「プロモーション部」がキャンペーンや年間の広告などのクリエイティブ制作を担ってきたが、2023年の組織改編で「宣伝部」に名称が改められた。新体制となった宣伝部には、次の6つのチームが存在するという。

  • 営業企画チーム: 全国のキャンペーンを担当
  • 広告制作チーム: 全社の広告を担当
  • デジタルプロモーションチーム: XRやSNSなど、デジタル関連の施策を担当
  • 展覧会チーム: 展覧会やポップアップイベントを担当
  • ロケーションビジネスチーム: 撮影やイベント向けの場所貸しを担当
  • ソーシャルビジネスチーム: クラウドファンディングを担当

宣伝部の名称に変更するにあたり、これまで他部署に所属していた『デジタルプロモーションチーム』と『ソーシャルビジネスチーム』が合流し、現在は約30名が所属しています。組織改編によって、より多様なクリエイティブを制作できる体制が整いました(小林氏)

イベント担当の小林氏

クリエイティブの制作スタイルにも、“パルコらしさ”があると小林氏は言う。

代理店に制作を委ねるのではなく、当社のメンバーもクリエイターと直接ディスカッションをして、代理店やクリエイターと同じ目線で作り上げます。そうした喧々諤々(けんけんがくがく)がパルコならではの独自性につながっていると思います(小林氏)

新年らしさを存分に表現できるのは松平健さんしかいない

2024年1月に開催された「グランバザール」では、次の3つのチームが連携してクリエイティブを制作した。

  • 営業企画
  • 広告制作
  • デジタルプロモーション

全国規模で開催される年2回のグランバザールは広告の露出量がもっとも多いキャンペーンであり、今回は年始のタイミング。めでたさや華やかさに加え、世の中を明るくするようなパワーがあるとして、松平健さんの名前が挙がった。実は、パルコは過去にもマツケンとコラボして成功を収めている。

2024年1月のグランバザールは、マツケンとコラボして大きな反響を得た(画像:パルコ提供)

松平さんとは2022年と2023年に開催した『マツケンサンバ POP UP SHOP』、2023年に開催した『マツケンサンバⅡ』のコラボレーションカフェ『ビバ~マツケンサンバIIワールドカフェ~オレ!』でもご一緒していて、いずれも大変好評でした。そういった実績があり、新年らしさを存分に表現できるのは松平さんしかいないだろうと(小林氏)

『ビバ~マツケンサンバIIワールドカフェ~オレ!』のメニューイメージ画(画像:パルコ提供)

“革新”を表した「マツケンロボ」のテレビCM

クリエイティブの方向性は、宣伝部がテーマとしている「伝統と革新」の「革新」に重きを置いたものにすることに。そこで、斬新なアイディアとテクノロジーをかけ合わせたクリエイティブを得意とする広告代理店「Dentsu Lab Tokyo」に制作を依頼した。 

CMではパルコのビルからマツケンロボが出現。開いた頭頂部からリアルのマツケンが登場するほか、周囲には大量のマツケンや鮮やかなマツケン柄のショッパー(ショップ袋)が舞う華やかな印象になっている。

CMで登場する“マツケンARパレード”は、最新技術を駆使して作られた(画像:パルコ提供)

クリエイティブの制作にあたり、最新技術を駆使して踊る松平さんを3Dデータ化。マツケンロボは顔を3DCGモデルにすることで実現している。

撮影では100以上の一眼レフカメラが360度に配置され、松平さんをあらゆる角度から撮影した(画像:パルコ提供)

プレゼント企画にも、マツケンコラボのクリエイティブを使用

グランバザールの期間中にPARCOで実施されたプレゼント企画にも、マツケンコラボのクリエイティブが使用されている。1月2日~4日は「マツケンおみくじ」を実施。幸運な顧客には、次の景品が当たった。

  • おめでたさ満開の「マツケンゴールデンフィギュア」
  • 鮮やかな「ショッパー」
マツケンおみくじで超大大大吉を引くともらえる「マツケンゴールデンフィギュア」(画像:パルコ提供)
大大大吉は「金のショッパー」、大大吉は「赤のショッパー」をもらえる

お客様からの反響を得られたらと思い、インパクトのある賞品を用意しました。するとショッパーが当選した方が『何これ』といったコメントを添えてXなどに投稿してくださり、7万を超える『いいね』が付いた投稿もありました(本橋氏)

「AR」企画は、過去最大の反響だった

今回のキャンペーンにおいて、SNS上でもっとも盛り上がっていたのは「AR」を使った2つの来店促進施策だったという。

AR施策1マツケンARパレード

各店舗1日限りのスペシャルイベントとして、CMで登場した“マツケンARパレード”を店内で鑑賞できる体験を提供。会期当日に対象のPARCOに設置している2次元コードを読み取り、スマートフォンを空に向けるとマツケンARパレードが登場する。

AR施策2飛び出すマツケンARフィルター付きオリジナルコースター

期間中に館内対象のレストラン・カフェで1会計1,200円以上の飲食をした人には「飛び出すマツケンARフィルター付きオリジナルコースター」(全4種)を先着で配布した。コースター裏面に記載の2次元コードをスマホで読み取ると、ARでマツケンが出現する。

どちらも好きな場所にマツケンを出現させることができ、お客様が自分なりの楽しみ方を探せるような仕様です。制作側の思惑通り、みなさんがおもしろがってSNSにたくさん投稿してくれました。これまで多くのAR施策を行ってきましたが、今回が一番の反響でした(安藤氏)

AR・テクノロジー担当の安藤氏

今までのマツケンコラボでは、20代女性からの反響が多く約9割の来店者が女性でしたが、今回のAR企画の体験者は女性が約7割、男性が約3割という結果に。これまでと違った層にアプローチできたのは、デジタル活用の効果だったかもしれません(小林氏)

それまでパルコが仕掛けたAR関連の企画でもっとも反響があったのが、2023年に上野PARCOで実施した「スマホdeシャンシャン」(上野動物園のジャイアントパンダのシャンシャンがARで出現する)だったが、マツケンコラボのARはその約1.5倍の反響だったそうだ。

数字を伴う結果につながったのは、パルコのクリエイティブによって「マツケン」というコンテンツが持つパワーを最大限に引き出せたからなのかもしれない。

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