見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

人は、考えない・覚えない生き物だ――「負担をかけないのが最高のサービス」だゾウ(第5回)

ユーザーはサービスを心地よく使いたいだけだ。「試行錯誤」のステップが発生するなら、見直す必要がある

“考えないこと”を責めないで!

こんにちは! 象好きのかたわら、都内でパソコン教室を運営し、ユーザーさんと提供者さんのギャップをじわじわと埋めるお仕事をしている、アジアゾウ好きのモリマミコと申します。

先日、「ユーザー画像」と入力したら「ユーザーが象」と変換され、象分が増分して嬉しくなってしまいました。ユーザーがぞうさんだったらどんなに嬉しいことでしょうか。考えるだけでワクワクするゾウ。

ところで、みなさんはどんなものに“興味がない”ですか?

私はこんなにゾウは好きなのに、キリンにはまったく興味がないことがわかりました。知人と飲んでいるときにキリンの話になってもワクワクしない。まして、キリンにも種類があることも知らなかったし、そんなこと覚えようとも思わないのです。キリンは酒類だけで十分

さらには、オシャレにも興味がありません(たぶん、いつかの春一番で遠くに飛んでいったのだと思っています)。オシャレよりもダジャレが好きです。ダジャレだったら目が輝きます。デパートの婦人服売り場に行くと、クラクラします。なんでかはわかりませんが、キラキラした場所が苦手なのです。キラキラしているとクラクラします。店員さんの猛プッシュに負けて買ったオシャレ風の服は、おクラ入りします。

というように、人はそれぞれ違うモノに、興味を持っていたり持っていなかったりします。そして、興味を持ったモノしか、考えよう・覚えよう・知ろうとしないのです。興味がないから覚える気がありません。だから、覚えないこと・考えない・知ろうとしないこと自体を、責めても意味がないのです。

「ファイルの保存? そんなの面倒だから覚えない!」

先日、1年ぶりに中山さん(57歳女性、仮名)が教室にマイパソコンを持っていらした。

今年も葉書を送るシーズンになったの

彼女は趣味の会の役員をしており、この時期には、全会員に葉書(!!)を送るのです。

でさー、毎年のことだからと思って、今年こそは1人で葉書を作ってみようとしたの。

だけど、どーしてもできないのよね。やっぱりパソコン新しくしちゃったからかしら。

と、彼女は10年くらい前に発売された年賀状のガチャピン本ではなくムック本に付いていた、葉書作成のためのCDを取り出した。

(かなり古い葉書作成ソフトみたいだけど、現代のパソコンで動くんだろうか……)

不安がムックムックと湧いてきたが、かろうじて動いたのでホッとする。ひきつづき、わからなかったところをお教えする。どうやら、素材画像の読み込みと貼り付け方がわからなかったらしい。ひととおり操作を行い、その手順を書いたメモを渡してから、彼女に聞いた。

今作ったファイル、保存しておきます?

え、保存って? よくわかんないけど、私パソコン覚える気ないから考えないで毎回消しちゃうの。

でも、保存したら後で使えますよね

あ、そういうの面倒だから、いらない。

私、仕事でも資格とか取らなくちゃいけないし、考えなくちゃいけないことたくさんあるから。

興味がないことはなるべく覚えないし、考えないようにしているの!

また来年わからなくなったら聞きに来るわね! 聞いたほうが早いじゃない!

そして満面の笑みでさっそうと去っていった。

そして私は改めて悟る。

覚えようとする気がない人は、覚えない

わかろうとする気がない人は、わからない

考えようとする気がない人は、考えない

……考えたくないものは、考えなくたっていいじゃないか、人間だもの。

ぞうさんが好きなのはにんじんだもの(バナナもね!)

まみを。

覚えること・考えることも、重要なのだが……

実際、生きていると人はいろいろなところで「考える力」を問われる。

Amazonで「考える力」検索したら1428件もある。考えものである。多すぎじゃないか。似ているので、「カンガルーの力」で検索したら38件検索結果が出た。意外と多い。ちなみに、「考える」の検索結果は17,642件、「カンガルー」の結果は6,748件、つまり、どれだけ「考える」が求められているかがわかる。

いま、あなたが、ユーザーに考えさせていること、ユーザーに試行錯誤させていること、それは本当にユーザーにとって、必要な負担なのだろうか?

ユーザーに対して、こんな風に言っているのも同然のサービスが多い。

簡単だから、覚えればいいんですよ

考えれば、きっとわかるよ

それくらい、自分で考えようよ

ユーザーは、一生懸命にがんばって、サイトやサービスの使い方に悩み、考えて、試行錯誤して、使い方を覚える――それが当たり前になってしまっている。

これらの言葉は、実はシニアが“家族に言われてつらい言葉”の代表的なものなのだ。当社の教室に通っている方にも、「これらの言葉を言われた」としょんぼりしている人も多い。それなのに、家族に加えて、使いたいサービスにまで「考えること」を要求されるなんて! 考えなければいけないのはわかっている、でも、そこまで興味がないのに、考えなくちゃいけないの!?

本当は、こんなとき“できる人”のほうこそが、さらにもう一歩先を考えなくてはいけない

ユーザーは、ユーザーであってプロではない

当たり前だが、ユーザーはユーザーであって、そのサービスやサイトのプロではない。いわんや新規ユーザーをや、である。心地よいサービスや空間を提供するのがプロであり、ユーザーはそれを心地よく使いたいだけなのである。

たとえばホームセンター。あれだけ雑多な商品があるのに、それほど迷うことはないし、欲しい物が見つけられる。商品の配置をわざわざ覚えている人は少ないし、覚えていなくても、なんとか買い物できる。これは売る側が、商品ジャンルや売れ筋商品を考え、配置などを試行錯誤し、買う側が考えなくても商品を探せるように準備しているからだ。

そう、「何の気なしに歩いているだけで、欲しい物を買える空間」を提供するのが売る側のプロなのだ。

しかしインターネットでは、お客様に試行錯誤を押し付けているケースが多い。ホームセンターにたとえれば、「棚割り、わかるよね」「買い方、わかるよね」というように。

代表格は、ECサイトの「パスワード再発行」だ。

商品を購入しようとして、パスワードを忘れていた場合、パスワードを再発行しようとすると、メールアドレスを入力しなければいけない。ユーザーは、複数のメールアドレスを入れたり、確認したり、試行錯誤する。考えなくてはいけない。思い出さなくてはいけない。

だけどこれ、ユーザーが考えなくてはいけないコトなのだろうか???

興味が低ければ、ユーザーは離脱する。なぜなら、そこまで考えたくないからだ。

“ユーザーも考えるべき”を言い訳にしない

ユーザーは、自分の大切なことのためであれば、いくらでも考えるし、試行錯誤するし、関係することを覚える。見分けがつかないゾウさんの顔も、愛があればこそ、必死で特徴を見つけて、顔と名前を覚えるのである。だが、そこまで魅力を感じていなかったら、まして愛などなかったら? キリンは何頭いても私にとってはキリンなのだ。

「考えろ」というのが無理難題である。考えるなんて、興味のない人には無理なんだい?

興味を持って、魅力を感じるからこそ、考えるのである。考えないのは、考えるだけの魅力が伝わっていないのだ。だから、ユーザーの「考えない」「考えたくない」を責めてはいかんのだゾウ!

ユーザー行動まとめだゾウ

千葉県市原市にある「市原ぞうの国」。ぞうさんの数が国内最多である。私は年に4、5回通っている。新規ユーザーが増えるのを見ていると、とても嬉しくなる。このうち何割の人がリピーターになるのだろう。子どもたちを見るとワクワクする。ああ、こうやって象好きが生まれるのだ……。

それがもし、初回訪れた人に、

せっかく来たんだから園内地図くらい、把握しておきなさいよ

ぞうさんは山の上にいるに決まっているでしょ。少しは考えなさい

あのかわいいぽっちゃり型のちびちゃんはりり香(りりか・推し象さんの名前)に決まってるでしょ。覚えなさい

のように「知っていること」「考えるコト」を強要したらどうなるだろうか? 訪問者は「ウヘエ」となるに違いない。

サイトやサービスの「使いやすさ」は、誰がどんな状況でどう使うかを提供者側が意識し、ユーザーが考えなくても、ストレスなく使えるベストな状態を提供することが大切だ。だから、以下の3点が重要だ。

  • 「ユーザー」とは誰で、どんな背景があり、何がユーザーのゴールなのかを意識する

  • 「考えないから」といって、ユーザーを責めない

  • 「考えなくてもスムーズに動ける心地よさ」を提供する

あなたのサイトにユーザーはそこまで惚れてない。自社サイトについて考えてほしいのであれば、惚れさせなくてはいけない。そのためには、まずとにかく一度、訪問してもらう。好きになってもらう。もう一度訪問してもらう。そして、大好きになってもらう。そういう流れを提供者側が意識することが大切だ。

提供者(サイト・商品)とユーザーの関係など考えずに訪問してもらい、考えずに楽しい時間を過ごせる、そんな“ゆるい空間にハマってもらう”ことが真髄なのではないだろうか。

自社サービスや自社サイトが、ユーザーに心地よさ・使いやすさをさりげなく提供できているか、ユーザーが「ウヘエ」となっていないか確認してほしい。

【このコーナーに協力いただける、ECサイトさん・企業ホームページさんを大募集!】
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「見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!」を、いつもお読みいただきありがとうございます。本連載では、「ぜひ、うちのサイトも分析してほしい!」というサイトオーナー様を募集しています。

基本的に、物販などを行っている「ECサイト」または「企業のサイト」が対象です。

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  • シルバー層をターゲットに含めたいので、一度チェックしてみたい。

応募いただいたサイトでユーザーテストを行い、記事として公開させていただきます。ぜひご応募ください。

【応募方法】

次の情報を、「editor-tomioka@impressrd.jp」(担当編集:冨岡)までメールください。内容を吟味し、折り返しご連絡させていただきます。

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