見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

御社のウェブサイトは「簡単モドキ」になっていないか? 「簡単」のギャップが生まれる理由(第4回)

簡単なインターフェイスやシステムのはずなのに、ユーザーが使いこなせない。問題はどこにあるのか?

安易な「簡単」を吹っ飛ばせ!

こんにちは! 象好きのかたわら、パソコン教室を運営し、教室に通っている方の操作を観察し、お困りごとを発見する仕事をしているモリマミコと申します。アジアゾウがとても好きなんだゾウ。ゾウさんについて語らせたら、電源を切れない壊れかけのRadioのように、小一時間は話し続ける自信があるゾウ!

ある日、当社が運営するパソコン教室に「なんかうちのパソコンが変なの」とノートパソコンを持ち込まれた方がいらっしゃいました。

何が“変”と感じられましたか?

とうかがっても

よくわからないけど、なんか“変”なの。

というお答え。

パソコンを操作していただくと、インターネットエクスプローラーを起動しても、何も表示されない。画面は真っ白だ。

何もしていないのに、ヤフーが出なくなっちゃったのよ、変でしょ。幽霊かしら。それ以外に原因が考えられないでしょ。

とおっしゃる。

幽霊!? YOU礼! ギャグは要冷凍!

と心のなかで韻を踏みつつ応対。

無線LANのスイッチを確認すると、案の定オフになっていました。オンにすると、無事Yahoo! JAPANのトップページが表示されました。インターネットを表示させない幽霊なんていなかった! 要冷凍のギャグなんてなかった!

「変」からの脱出まで、たった約10秒。

なんだ、こんな簡単なことだったんだ。

との感想をいただきました。

ユーザーさんは、こんな風に考えています。

「すぐにわかる、解決できる、やりたいことができる」=簡単

「考えなくてはいけない、考えると混乱してしまう」=難しい

しかし、無線LANのスイッチを入れるのは、本当に「簡単」な行動だったんでしょうか? 「簡単だ」と判断したのは誰だったのでしょうか?

ここまでが毎度ゾウさんの鼻並みに長い前置きですゾウ。

「使いやすい、わかりやすい=簡単」で安心。でも……

さて、今回の登場人物は、飲食店のオーナーシェフ「若井さん」(仮名・64歳男性)だ。

仕事がら、グルメ情報サイトの有料サービスも活用するなど、PCでインターネットは使えているのだが、機械類が大の苦手。これまでも、

画面が半分になっちゃった(ブラウザの縮小ボタンを押しただけ)

矢印が反抗期(外付けマウスを付けるのを忘れたためにマウスカーソルが動かなくなった)

パソコンのなかに、ホームページ入れておいてよ(もはや意味不明)

といった質問を、一度ならず何度もいただいている。

そんな若井さんから、ある日相談が。

なんかさぁ、営業の人が来たんだよ。新しい予約サービスを使いませんかって言って。

“タブ?なんとか”っていう機械を使った仕組みで、「簡単です」って言うので、使ってみようかなと思うんだ。

営業の人がさ、「簡単だから絶対にできる」って言うんだよ。そう言われると安心だよね。できるまで教えてくれるっていうし。

そこまで簡単なら、俺でもイケる気がしてきたよ。タブ?なんとかを使ってみてもいいかなあ?

使いやすい、わかりやすい=簡単なのはいいことだ! 反対する理由はないゾウ。カンタッカターン。自作のアップテンポな「簡単ソング」が脳内を流れ、「やりましょう!」と某経営者のように力強く、私は答えた

こうして、若井さんは新しい予約サービスを申し込んだ。

後日タブレットを持って営業さんが来て、たぶんしっかり説明したそうだ(タブレットだけに)。しかし……しばらくして、若井さんから連絡が来た。

簡単じゃないよ、助けて!

私がお店に赴くと、若井さんは、営業さんが渡してくれたiPadの電源を入れた。ここまではバッチグー。しかし、そこまでだった。予約サービスアプリを起動しようとする若井さんの前に立ちはだかったものとは!?

誰にとっての「簡単」?

営業さんにとっての「使いやすい、わかりやすい=簡単」は、若井さんにとってはとても難しかった。まず、タブレットの操作が難しい。

押すと震えるんだよ。震えたいのは俺だよぉ、こんなん使えって言ったってさぁ

長押ししてしまったため、震えるアイコンたち。逢いたくて逢いてくて震えるのでも、ギャグが寒くて震えるのでもない。押しすぎて、震えているのだ。

※iPadでは、ホーム画面でアイコンを長押しすると、アイコン並べ替えモードに入り、アイコンが震える。

ホームボタンを押して、どうにか震えが止まった。「アプリのアイコンは、長押しするのではなくタップする」ことを伝えて、あらためて操作すると、アプリが起動した。

この画面が、なんだかもう、よくわからないんだよ

と若井さん。タブレットだけではなく、アプリの操作も難しい。

営業の人が、「ここをこうやって、予約登録できますよ、予約されたらここに出ますよ、ほら簡単ですね!」って教えてくれたけど、もう全っ然わかんないの。

目の前で見せてくれたけどわからない。だから、いまここで同じことができない。

俺には難しすぎるよ! 全っ然簡単じゃないよ!

何回か来て、また教えてくれるんだけど、ダメなんだよ。もう、やなの。これ!

若井さんは、タブ?なんとかことiPadを使うのを諦めた。当然「iPadを使った簡単なサービスの利用」も諦めた。「サービスを利用するのは簡単じゃない」「面倒くさい」若井さんはそうつぶやきながら、iPadを箱に片付けた。

「簡単です」は提供者のセリフではない。

営業さんにとって、そのアプリの操作は簡単なレベルなのだろう。だが、ユーザーである若井さんにとっては、簡単ではなかった

提供者は気軽に自分の評価で「簡単」という言葉を発する。

だが「簡単」は、ユーザーが判断するものだ。決して提供者が判断してはいけなかったのだ。

先日、一人暮らしをしているという大学生に「自炊しているのか」と聞いた。「簡単なものだったら」と彼が答えた。「どんなのを作るの?」と私が聞くと、

結局、カップラーメンとかが多いですね

という回答だった! これは想像していた答えとは大きく違った。私が考えていた回答は、

  • カレーなら作れる
  • 味はいまいちですが煮物なら
  • 魚ぐらいは焼いてますよ
  • キャベツなら、千切りにしてサラダにします

といったものだったのだ。

私が考えていた「簡単な自炊」と、彼が考えている「簡単な自炊」は大きく違った。簡単という言葉は、それを使う人だけが判断できる言葉なのだ。ユーザーと提供者(私は質問者だが)の「簡単」が違うことを、提供者は理解しなくてはいけない。思い込み、ダメ、絶対。

キャベツの高速千切りをしたことがない人は、庖丁を持ちすばやく扱うことを、「難しそう」「だから怖い」と思うだろう。トンカツ屋さんの大将が「簡単だよ。Don't think, Feel」とマスターヨーダみたいなことを言っても伝らず、その人は困ってしまうだろう。「いやいや、Feel、無理っす」と。

「簡単カレーセット」という名称でにんじん、じゃがいもなどカレーに必要な野菜が1人分まとめて売っていたとする。その調理は非常に簡単なはずだ。しかし、「簡単な調理とは、レトルト食品を温めること」と思っている人は、こう感じるだろう――「いや、それ、包丁も使うし火も使うし、難しいでしょ」と。

ユーザーにとっての「簡単」とは、「考えずにできる」こと

提供者は、ユーザーのためにWebサイトや画面のインターフェイスを簡単にしたいと思っている。実際、できるだけ簡単にしている(つもりでいる)。

だが、熟慮されていない簡単さでは、ユーザーに感嘆してもらうことはできない。むしろ「簡単モドキ」がゆえにギャップが大きく感じられ、近寄ることさえなくなってしまう

悲しいことに、ユーザーにとっては、「諦める」「離れる」「使わない」ことが一番簡単なのだ。だから簡単モドキは、使われなくなる。

世の中に、「簡単モドキ」はあふれている。たとえば、

  • スマートフォンサイトのハンバーガーメニュー
  • ロゴをクリックすればホームページに戻るサイト

などだ。これらは、知っていれば便利だ。しかし、知らない人・気づかない人には、簡単には使えない。

それを把握せずに「インターネットを使うなら、そのくらい知ってるよね。覚えちゃえば簡単でしょ」とユーザーに簡単を押し付けているサイトが、いかに多いことか! だが、それは“真の簡単”ではない。実際に、使い方がわからずに質問をする50歳代が後を絶たないのだから。

スマートフォンの操作、アプリのメニュー、サイトのインターフェイス……。提供者はとかく「簡単」と言いたがる。しかし、その簡単という基準は、提供者側の判断でしかない。いくら練られたものであっても、ユーザーがそれを「簡単」と受け取るかどうかはわからない。提供者の思う「簡単」は、「ユーザーが簡単に使えるであろうという“幻想”」であることがままある。

“真の簡単”とは、次のようなことだ。

できそうだからやってみた → できた → 簡単!

「簡単」は結果論でしか語れない。ただ「簡単な体験」という結果だけがあるのだ。

ユーザー行動まとめだゾウ

“真の簡単”は、提供者が決めるのではなく、ユーザーが決めることだと認識しよう。そのためには、「簡単」という言葉を発する前に、ユーザーに対する淡々とした理解が必要だ。

こうしたユーザーと提供者の間に生まれる「簡単」ギャップには、次のような原因がある。

  • ユーザーが、「簡単」という言葉に期待しすぎる

    簡単という言葉を見て、ユーザーは、「気持ちが通じている」「自動的にやってくれる」と思っている。ピンクレディのUFO並みである――「手を合わせて」「見つめるだけで」「思っただけで」通じ合う、色っぽい無言のような。

  • 提供者が、ユーザーを「想像」してしまい「理解」「観察」しない

    たとえば、自分の友達は自分と仲の良い人である。だが、ユーザーはあなたと仲良しだとは限らない。自分の知らない世界は想像しにくい。だから、ユーザーの簡単を思いやれない。想像の中だけでユーザーを考えると、理解の幅が狭まる。

このギャップを埋めるためにはどうすればいいのだろうか? それは、もう、「ユーザー行動観察」しかない。とにかく、主観なく、観察あるのみである。ユーザーの行動を観察し、何が本人にとって難しく感じるのかを把握し、彼らでも「できる」道筋やインターフェイスを提供して初めて「簡単」と名乗れる。

  • ユーザーは「すぐできる」「考えずにできる」状態を「簡単」と思っている

  • 「使いやすい、わかりやすい=簡単」かどうかを決めるのは、提供者ではなくユーザー側

  • だから「何を簡単と思うか」「どうすれば簡単と思ってもらえるか」を観察する必要がある

  • しかし、単なる「簡単モドキ」では使ってもらえず、むしろ逆効果なときも

ユーザーが何を求めているのか、ユーザーにとってのゴールは何か、そうやって、“真の簡単”にたどり着いたとき、本当に提供したかった「簡単」を提供できるのだ。

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