見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

ユーザーはあなたとは違う――パスワードの設定は難しいんだゾウ(第1回)

「自分が思ってもいなかった行動をする他人=ネットユーザー」を観察し、その行動の理由を読み解く

本連載「見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!」では、「自分が思ってもいなかった行動をする他人=ネットユーザー」を観察し、その行動の理由を読み解き、その対策を考えます(計6回の予定)。

第1回は、「ユーザー名」「登録メールアドレス」「パスワード」など、アカウント設定におけるユーザーの行動を観察します。

亀井さん(仮名)の嘆き

Credit: なとみみわ

はじめまして。私はモリマミコと申しまして、象好きのかたわら、都内でパソコン教室などの大人向け教室を運営したり、その生データや知見を活かしてコンサルティングやユーザビリティ改善業務を行っているものです。象が好きだゾウ(大切なことなので2回いう)。

さて先日、私たちのパソコン教室の生徒である、亀井さん(女性・63歳・仮名)が

通信講座を申し込んだら、「Ustreamで見るように」って言われて、ずっと使っていたの。だけど、パソコンを替えたら使えなくなっちゃって……。

と、おっしゃった。

私は、

いまどきのシニアはUstreamで学習ですか。時代は変わりましたねえ。驚きですよ。

私の若いころはカセットテープと睡眠学習の時代でした。聞きながら寝れば一気に頭がよくなると信じていた青春時代……。懐かしい……。自動で両面聞けるようになったときには「すごい!」と感激していたものですが。それが今はUstreamとはねえ。もう昔みたいに“A面B面ボクつけ麺”とかいうことはないのですね。

と、若かったころを思い出しながら、亀井さん(仮名)のパソコンを開けた。通信講座のためにやる気を出し、最近新しく購入したという、Windows 10のノートパソコンである。

インターネットに接続し、「Ustream」につなぐ。ここまでは亀井さんもアクセクせずにアクセスできる。そこからが問題なのだ。

ここからが、よくわからないのよ。

なんか、昔、登録した記憶があるのだけど、よくわからないまま登録して、そのまま使えていたのに、この間パソコン買い直したら、出なくなっちゃったのよ!

過去に設定した「ユーザー名とパスワード」がわからず、「Ustreamにログインしていない=チャンネルが表示されない=出なくなった」ということのようだ。

引っ越し直後に、部屋番号を忘れてしまい家に帰れなくなったり、鍵がどれかわからずに片っ端から確認してたらただの不審者に見えたり、そんな感じだ。

ちなみに私は、引っ越し直後、家の近所を早朝散歩している最中に、道に迷い帰れなくなったことがある。ああ東京砂漠。そういうときに限りスマホを家に忘れているのだ。まだ住所も覚えていないし、目印もわからないしで、泣きそうになった。早朝のお散歩なんてハイソっぽいことなど二度としないと心に誓った。そんなことを思い出した。

パスワードどころか、ユーザー名すら忘れる人々

このような「出なくなった」問題は、実際、シニアに限らずよくあることである。

パソコンを買い直した場合は、新しいパソコンに各サービスのユーザー名とパスワードをもう一度入れなくてはいけない ―― ネットに慣れている我々にとって当然のことを、知らないのだ。というよりも「ユーザー名」「パスワード」の存在を忘れているのだ。

なぜならば、普段は常にログインしている状態になっており、とくに何もしなくても使えるので、「ユーザー名とパスワードを自分で設定した」ということ自体をすっかり忘れているのだ。

「サービスを使うのにユーザー名とパスワードが必要なのは当たり前」というのは、“新規サービスに登録することに慣れている人”の考えだ。

“サービスを使いたいから使っているだけの人”にとっては、「ユーザー名とパスワード」というのは、一度登録したら記憶の彼方まで、軽く成層圏を突き抜けるほど飛んでいくくらい、重要視されていない。なんとなく大切だとは思ってはいるけれども、実際には大切にはされていないのだ。

大切なものは失ってから気づくんだよ。ユーザー名とパスワードが引き裂かれ、切なさに全パスが涙した、悲恋の物語。そういう映画ができそうな勢いである。

恐怖の「パスワードゴチャゴチャ問題」

とは言うものの、大切だとはなんとなく思ってはいるからか、亀井さんはメモを残していたようだ。おもむろにノートを取り出した。

大体のIDとかは、ここに書いてあると思うんだけどね。どうだろう……。

これがID野球、ではなくIDメモか。そういえば、昔、とある野球選手が言ったことを思い出す。「記録よりも記憶に残りたい」。このパスワードは記録されていることを記憶されていない。「ユーザー名とパスワード」は、記憶もいいけど、できれば記録にも残りたい。

そして私はノートを見せていただく。

見た瞬間、ゾウっとした。象が好きな私は、いつだって、ゾウの事を想うチャンスを狙っている。という理由だけではなく、ゾウっとした。

そのノートには、さまざまなサービスのユーザー名とパスワードが縦横無尽に書かれており、どのユーザー名が何のパスワードなのか、なにがどれか、どれがなにかまったく区別がつかないのだ。

なかには、打消し線が引かれていたり、「ここは大文字」など、矢印や注意書きが追加されていたり、とにかく読み取るのに神経がいる。気分は迷探偵である。パスワードの森に迷う探偵……。

アリババだって「開けゴマ」で音声認識してるっていうのに、これを読み解いたら埋蔵金あるの!?というくらいのごちゃごちゃメモは、今どき、まい(る)ゾウ。どうしたもんか……。

もしかしたら、あぶり出しとかしたら正しいパスワードが浮かび上がるんじゃないか! 小学校のころにやったレモン汁のあぶり出し。暑中見舞いとかでやっていたアレだ! やるか?

……いや、思いとどまれ。あぶり出しをしたら真実を知る前にこのメモが燃えてしまう……。はっ、私の本心は、この闇のメモを燃やしたがっているのか!? なかったことに、したいのか?

心の中で問答をしながら、目から目玉が飛び出しそうなほどにノートを見ていると「ユウストリーム」と書かれている個所を発見! テンションが上がる! 「アイスクリーム、ユウストリーム、好きさ~」などと鼻歌を歌う余裕ができる。

そしてその下に書かれたユーザー名、近くにあるパスワードらしきものを入力してみる……しかし通らない。「好きじゃないさ~」。テンションが一気に落ちる。

おかしいわね、変えてないのに。そんなはずはないのに。

そんなはずはないさ、それはわかっている。実は、「ユウストリーム」と書かれた項目の下には、「パスワード」とも書かれており、5種類ぐらいの文字列が書いてある。いずれも動画を見るのに必要なパスワードのようである。とりあえず、いくつかのメールアドレスとパスワードを組み合わせて試してみたが、やはり通らない。

それね、教材を見るためのパスワードなの。

おーう。「教材を見るためのバズワード」だったら、なんとなくイマドキィな感じなのに、「教材を見るためのパスワード」。それが、ユウストリーム周辺に散乱している。手がかりは多そうだが、実は全部関係なかったという、下手なミステリーのパターンである。

でも大丈夫! だったら、パスワードを忘れたとして、問い合わせればいいのよ!

メールアドレスはたかが数個。とりあえず順に入れてみるべし、と確認していくと、Yahoo!メールをUstreamで利用していたようだ(Yahoo!メール自体のパスワードは一発だった。万歳!)。

早速UstreamにYahoo!メールのアドレスでパスワード再設定を申し込む。目にもとまらぬ早業で脳内BGMは「忍者ハットリくん」だ。

さらに恐怖の「パスワード使えなかった問題」

こうして新しいパスワードを設定。亀井さんが新しいパスワードをノートに控え、画面に入力し、「送信」を押した瞬間、無慈悲な鉄槌が画面にくだされた。

パスワードは英数字5文字以上で、大文字小文字数字をそれぞれ1文字以上含む必要があります

……「大文字小文字数字」って、寿限無寿限無にしか見えない。早口言葉にしたい日本語。大文字小文字数字。「おおもじを、あなたはなぜおおもじなの」「こもじ!」って、ロミオと寿限無かよ(ジュリエットじゃないのがよく滑る感じで)……。やはり、パスワードは悲恋の物語。非連続でオヤジギャグを展開する悲連の物語のようだ。

そう、入力する前は注意書きが見えていないし、入力している(=画面を見ている)最中は注意書きが表示されないために、注意書きに気づかない。だから、パスワードを決めて、入力してから、「そのパスワードは使えない」と言われてしまうのだ。悲しすぎる物語に、涙で前が見えない。

完璧な注意書きといったものは存在しない。完璧な入力フォームが存在しないようにね。そういうものなのである。

このときの私の心境を解説しよう。女子高生風にいうと「やばいの3段活用(まじやばい、オニやばい、ウルトラやばい)」である。とはいえ、そんな顔をなるべく隠し、ポーカーフェイスで大文字小文字数字の旨を亀井さんに伝える。

えー。面倒なのね、じゃあ、こうするわ、これでいいわ。

「これでいいわ」……これで、いいわ……これで、いいわ(エコー)。

私は心の中で「トホホ」とつぶやいた。なぜトホホなのか。それは経験則からいって「ノートに書いてからの修正→これでいいわパターンは、後で必ず面倒事になる」からだ。

前のパスワードに数字を追加し、最初の文字に×がされて、矢印で大文字とノートに書き込む亀井さん。こうして、これが次回の「変えてないのにね、おかしいわね」を生み出すのである……。

そして、今日何度目かのゾウっとした気持ちになって、ああ早くぞうさんに会いたいなあと思うのであった。

ユーザーは自分とは違う――謎の行動攻略法

今回のユーザー像

「パスワードの設定」は、多くの人にとって「めんどう」「苦手」「難しそう」グループに属します。

この場合、実際に「難しい」かは、じつは関係ありません。「難しそう」であるがゆえに、「難しく」見えてしまうのです。この“難しさ感”ゆえに、パスワードがわからずに買い物をあきらめた、サービス利用をあきらめた、ということもよく聞きます。

この気持ちは、「ポイントカードの面倒くささ」と同じものです。お店を変えるたびに「ポイントカードを作ること」を強要され(ているように見えて)、毎回住所や暗証番号を登録する必要があり、間違えてしまうと使えなくなり、といった、あの面倒くささです。これを感じたことがあれば、「パスワードの設定」の面倒くささが理解できるかと思います。

さらに、“一度ログインしておけば、次回省略できる設定”を利用していると、ユーザー名とパスワードがあったことすら忘れてしまいます(来店したら、カードを出さなくてもポイントが貯まるシステムなら、カードの存在を忘れてしまうでしょう)。

対処法:パスワード再設定は可能な限り気軽にできるように

「人はパスワードを忘れるものだ、整理できないものだ」と認識しましょう。ですので、サイトを運営する側は、パスワードの再設定を、できるかぎり気軽にできるようにしておきましょう

また、パスワードに条件があるときは、必ず事前にわかるように書いておくことも重要です。

  • 〇文字以上
  • 大文字小文字数字
  • 初期パスワードはシステムが強制発行

など、書かずに伝わることはまずありません。

「設定」とひとくくりにされて嫌われがちなユーザー名とパスワードですので、できる限りユーザーの負担を減らすようにしましょう。

ユーザー行動まとめだゾウ

  • ユーザーは、パスワードを手帳にメモしています。ごちゃごちゃになりがちです。

  • ユーザーは、どのユーザー名やメールアドレスで登録したかを忘れがちです。

  • 常にログインしているようなものは「ユーザー名とパスワード」があったことも忘れがちです。

ユーザーにストレスフリーな操作をしていただくべく、ユーザーは自分と同じ人間ではなく、違う人であるということをしっかり頭において、ユーザーについて考えることが超重要ですゾウ

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