企業ホームページ運営の心得

勝てる市場を見つけて一発逆転したアパレル会社の話、USPが必勝のカギ

勝てる市場を見つけて勝負すること、独自の強み「USP(Unique Selling Proposition)」がカギです
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の483

勇気ある経営という評価

kasto80/Thinkstock

いつものように読み放題の「dマガジン」を斜め読めしていると、見たことのある社長が週刊誌のグラビアページで紹介されていました。商工会議所が表彰した企業についての特集企画です。顔見知りの社長を称賛する記事が喜ばしいことに間違いはなく、目を細めながら読み進めると、成功理由は「Web」とあります。

取材現場に立ち会ったわけではなく、社長がどう説明したかは存じませんが、「さわり(概略)」で語られていた成功のきっかけは「Web」でしたが、記事に書かれた方法だけを真似ても成功はしません。そう断言できるのは、この「Web」に深く関与していたからです。

今回は、取材されていたアパレル企業がWebで成功した本当の理由を紹介します。

サクセスストーリーの仕組み

意訳も含まれますが、週刊誌がまとめたサクセスストーリーの概要です。

アパレル業界が次々と生産拠点を海外移転するのに伴い、国内の関連メーカーは次々と倒れ、当社もそのドミノから逃れられず「倒産」すら意識していた。ところがホームページを開設し個人向け販売をはじめると、アパレル以外の業界から注文が来るようになり、ここに商機を見いだし一発逆転でウハウハ。

実際はどうだったか。「倒産」が囁かれていたのは事実です。別のルートで知り合った、この会社の関係者からも同様の話を耳にしました。ただし、赤字がかさみ債務超過する前に廃業する「事業整理」か、現在の社屋を売り払い、安い地方へ転居しての「規模縮小」とのこと。「倒産」とはいささか自虐的に誇張した表現です。

この手の「成功物語」は読者の興味を引き、カタルシス(満足)を与える狙いがあります。不遇から成功の間に落差があればあるほど盛り上がるため、成功結果には盛り土がされ、そこから逆算して地下空間が作られます。

舞台裏からみた成功

私が社長と知り合った当時、すでにホームページは公開されていましたが、閑古鳥の鳴き声で聞こえるばかりで成功の兆しすらありませんでした。まったくSEOを講じず、自作のサイトにはデッドリンクが山積み。さらに「素人シェルパ」と私が呼ぶ、「素人にしてはWebに詳しい」人物に相談し、あきらかに間違ったアドバイスを愚直に実行していたのです。

プロのWeb屋が関与すれば、すぐに改善できることばかりとはいえ、サイトリニューアルの相談を受けた私は、サクセスストーリーの要になっている「個人向け販売」への取り組みを「致命的」と断じます。

個人販売という魔物

当時は「楽天市場」が飛躍的に拡大し、アマゾンが上陸した個人向け通販の拡大期。同時に進行していた「デフレ」に耐えるために、中間マージンが不要の「直販EC」に猫も杓子も取り組んでいました。この企業もその轍を走ろうとしていたのですが、明らかに間違い。個人向け販売の「EC」に活路を見いだそうと、全速力で駆け出して討ち死にする企業にも通じる理由をこれから述べます。

取り扱う商材にもよりますが、概ね個人向け通販における1回あたりの粗利は数千円です。数百円の取引だってあります。仮に人件費を含めた事務所維持費に毎月100万円が必要だとすれば、1,000円の粗利なら1,000件、500円なら2,000件、土曜日を除く平日のみの20日間の作業としても、それぞれ毎日50件~100件、注文された商品を倉庫から拾い出して包装し、宛名を貼り付ける作業を既存業務に加えて行わなければなりません。

当時、この会社はBtoB(企業間取引)が主体で週刊誌の記事によれば取引先は十数件。少数他品種の取り扱いには慣れていません。一口に「個人向け販売」といっても、新しく別の会社を社内に作るようなものなのです。

市場環境も厳しい

さらに社長はもちろん、当時の社内には1人として「個人向け販売」の経験者がいませんでした。Webもほぼ素人。そもそも、ネット通販は窓口を開けば注文が入るほど甘い世界ではありません。ノウハウや人手といった、「経営リソース」がないままの個人向け(ネット)販売へのシフトチェンジは「致命傷」になりかねないのです。

また、当時この会社が目指した個人向け市場をリサーチすると、今や懐かしい「SOHO」や主婦の小遣い稼ぎ的なプレイヤーが多いことがわかりました。彼らは小回りが利くうえに経営コストが少なく、目標利益も低くていいことから必然的に単価が抑えられており、企業として参入しても旨味はなかったのです。

勝てる市場はどこだ

聞き取り調査を続けると、「ITバブル」など景気の良かった時代と断ったうえで、展示会のグッズや記念品など「ノベルティ」の引き合いがあったことがわかります。これこそがWebで開拓すべき市場と閃きます。

当時も今もどんな時代も、景気の良い業界はどこかに存在し、そこには「ノベルティ」の需要があり、有名アパレルメーカーの下請けに耐える品質と、大量生産できる大型製造装置が活躍します。また、この会社は展示会需要の多い都内にあり、機動的な打ち合わせも可能という点をアピールすれば、価格では太刀打ちできない海外メーカーとの差別化となります。そしてノベルティを求める企業なり、団体なりとの取引は、打ち合わせの欠かせない慣れ親しんだ「BtoB」ですから、経験がそのまま活かせます。

これらを踏まえて、ホームページをリニューアル。これが逆転への起点となったのです。つまり記事の「個人向け販売をはじめると、アパレル以外の業界から注文が来る」とは、偶然ではなく予め狙った必然だったということです。これが本当の成功理由です。

私がしたことは、この会社の強みを活かせる市場を見極め、適切なラインアップ(商品展開・本件ではノベルティ)をピックアップし、それに沿ってサイトを再構築したこと。つまり、オリジナルの強みを生かす「USP(Unique Selling Proposition)」にあります。

さらに、BtoB向けに必要な「信頼」を与えるためのオリジナルコンテンツを提案。手前味噌ですが、とても重要なコンテンツで、これについては近日掘り下げる予定です。

今回のポイント

自社の強みを見極め、勝てそうな市場を選ぶ

Webにも企業にも不可欠なこと

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