いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本 [Web担特別公開版]

LINE経由で120万枚の年賀状注文──日本郵便のLINE ビジネスコネクト事例

現在は荷物の追跡や再配達受付なども開始し、キャラクターとの会話を通じて楽しみながら利用できるサービス展開を進めています

この記事は、書籍『いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本』の一部をWeb担向けに特別に公開しているものです。

この記事では、書籍の第3章「LINE上でのサービス提供」レッスン21「会話を通して年賀状が作成できる──日本郵便株式会社の事例」の内容をお届けします。

日本郵便では、LINE ビジネスコネクトを活用して、期間限定の年賀状作成サービスを実施しています。現在は荷物の追跡や再配達受付なども開始し、キャラクターとの会話を通じて楽しみながら利用できるサービス展開を進めています。

運用の背景と目的

日本郵便株式会社では、売り上げの約10%を年賀はがきが占めていますが、年賀状を送る人は若年層を中心に年々減っているという課題がありました。一方で近年は年賀状の売上に占めるオンラインの比率が上昇し、特にスマートフォン経由の注文が増加してきました。会社としてもスマートフォンに注力していく流れの中で、目を付けたのがLINE ビジネスコネクトでした。2014年10月から2015年1月まで、まずは年賀状のシーズン限定でLINE公式アカウント「郵便局[ぽすくま]」を開設。

LINE上でキャラクターと会話をしながら年賀状を作成できるサービスを提供しました。写真や動画がすぐに加工できる面白さが話題を呼び、普段郵便局をあまり利用しないユーザーにも利用されたといいます。このため、獲得したLINEの友だちと年賀状のシーズンが終わっても引き続きコミュニケーションを取っていきたいと考え、2015年10月からは通年のアカウントとして運用。郵便物の追跡や再配達依頼など通年で利用できるサービスを徐々に追加しています。

LINEを活用した年賀状作成キャンペーン

「郵便局[ぽすくま]」の年賀状作成サービスは、スマートフォンで撮ったお気に入りの写真や動画をトーク画面上で送ると、すぐに年賀状デザインにはめ込んで送り返す仕組みです。年賀状のデザインパターンは、オーソドックスな年賀状から、顔写真をキャラクター風にデコレーションするものまで幅広く用意されており、写真を送るたびにランダムに選択されるため、ユーザーは毎回飽きずに楽しめます。年賀状作成という目的を越えて、写真を加工する楽しさがSNSなどを通したクチコミで広がり、2015年末には計3,100万枚程度の年賀状デザインが作成されたそうです。

「まずは遊んでもらうってことですよね。遊びながら、『これだったら面白いから1枚出してみるか』と、年賀状を1枚でもいいから出してもらうきっかけになってくれれば。0枚の人を1枚にするのが一番難しいので、まずは1枚ということを目標にしています」(経営企画部デジタルビジネス戦略室 西村哲氏)。

▶「ぽすくま」の年賀状サービス図表21-1
▶年賀状デザインは1,000パターン以上図表21-2

住所がわからない相手にも年賀状を送付

年賀状を出さない理由として「相手の住所を知らない」という人が多いといいます。そこでできるだけ多くのユーザーに年賀状を送付してもらえるように、送りたい相手の住所を知らなくても年賀状を送ることができる仕組みを用意しました。年賀状デザインを作成したあと、その年賀状を送りたい相手の「メールアドレス」「携帯電話の番号」「LINE ID」を入力すると、その連絡先に日本郵便から「○○さんがあなたに年賀状を送りたいと言っています」という通知が届きます。通知を受けた受取人は、年賀状の受け取りを承諾する場合に限り、専用フォームで本名と住所を記入します。するとその記入内容が年賀状の表面に印刷され、受取人に送付される仕組みです。この際、年賀状の送り手に受取人の住所が開示されることはありません。受取人としても知り合いから年賀状が届くのはうれしいことです。7~8割程度が受け取りを承諾し、住所を記入してくれたそうです。

LINE経由で120万枚の年賀状注文

LINE ビジネスコネクトを活用する上で、重視している指標は以下の3つです(図表21-3)。

特に年賀状作成キャンペーンの際には、「LINEを起点にした年賀状の注文枚数」や「作成された年賀状枚数(投稿された画像数)」に注目していました。期間中に送付された画像の枚数は約3,100万枚、LINEを起点として約120万枚の年賀状売上につながったとのことです(実際に年賀状作成サービスを通じた直接の売上は約20万枚)。テレビやWebなどさまざまなメディアにも取り上げられるなど、プロモーションの効果も非常に大きく、従来のバナー出稿などの取り組みと比べてもやはりLINEのコストパフォーマンスは高いそうです。「LINE公式アカウントもけっこう費用がかかりますが、それに見合うだけの効果はあるんじゃないかと思っています。逆にそれ以外のものがいまはないのかなと」(西村氏)。

▶注目している4つの指標と実績 図表21-3

LINE上の「郵便局」で通年のコミュニケーションへ

2014年末にLINE ビジネスコネクトを活用した年賀状作成サービスを実施したところ、多くのユーザーが参加してくれましたが、あくまで期間限定のキャンペーンだったため、終了後にはアカウントを閉じています。このとき、普段は郵便局とあまり接点がない若年層も多く参加してくれたため、年賀状の時期だけでなく、1年を通じてアカウントが活用できないかというという思いがあったそうです。そこで翌年2015年末に同様の年賀状作成サービスを実施したあとは、年賀状キャンペーンを通じて獲得した700万人の友だちとLINE上のコミュニケーションを継続する方針に。そのためには、LINE上で常時利用可能なサービスを提供することが必要です。日本郵便はLINE ビジネスコネクトを使ったサービスの第2弾として物流サービスを採用し、2016年3月からは郵便物の再配達依頼などをLINE上で手軽にできるサービスを提供しています。

▶「ぽすくま」のリッチメニュー図表21-4

ワンポイントキャラクターの世界観を一貫させるルール

日本郵便LINE公式アカウント上のコミュニケーションは日本郵便公式キャラクター「ぽすくま」との会話という体裁になっており、友だちからのメッセージには「ぽすくま」の世界観で定めた運用ルールに基づいて自動応答しています。

例えば、「はがき」など郵便局のサービスに関する基本的な言葉が入力されたときに、簡単な説明を返すように設定されていますが、固すぎる文章や詳細な説明が必要な内容など、「ぽすくま」としての発言にそぐわない場合は、メッセージで細かく説明はせず、詳しくはWebサイトでの解説へ誘導するようにしています。

このように定められた運用ルールは、担当者が代わっても発言のトーン&マナーが変わらないように、共有して意識すべきものです。日本郵便でも、2016年度からは西村氏1人での運用からチームでの運用に変更したこともあり、コミュニケーションルールの作成を進めているとのことです。

シンプルな会話でのサービス提供を重視

年賀状キャンペーンでは、「ウルトラヒーロー」や「ドラえもん」とのコラボ年賀状のように、話題性を狙ったデザインや施策を展開しています。ウルトラマンをまねて「シュワッチ」とメッセージを送るとスペシャルデザインを入手できるという裏ワザを仕掛けたりした結果、主に若年層から反響がありました。このような施策が効果的なのも、「LINEはほかのSNSに比べて、よりお客さまが能動的に動いていて、レスポンスがすぐに返ってくる」からだと西村氏は言います。そして、サービスを能動的に楽しんでもらう上で欠かせない要素が「やりとりのシンプルさ」だといいます。「会話のサービスなので、やったらすぐレスポンスが返ってきて、すぐに結果がわかることが大事です。

どれだけ会話の数を減らして結果を出すかって部分には苦労してますね」(西村氏)。例えば再配達依頼でも、ぽすくまとの会話の中で数字だけ入力すれば完了するなど、極力シンプルに結果が出るようにしたいといいます。また会話をシンプルにすれば、必要な返信数を抑えることができ、配信費用の抑制にもつながります。

投稿された写真の顔認証システムなど、技術的な部分は外部パートナーに依頼して開発しています。ユーザーが楽しめる機能を積極的に取り入れる姿勢がうかがえます。

サーバーの整備が課題

LINEのメッセージはスマートフォンにプッシュで通知されるため、メールやほかのソーシャルメディアと比べ、多くのユーザーが即時的かつ同時的に反応する傾向があります。そのため、サーバー環境はしっかりと整備しておくことが求められます。日本郵便でも、一斉配信後のアクセス集中のインパクトは想定以上だったとのことです。また多くの人が年賀状を作る12月後半にもアクセスが集中し、特に後半になるほど年賀状作成サービスの利用者は増加します。2015年末にはテレビでもLINE上の年賀状作成サービスが紹介され、そのときにもアクセスが集中したそうです。このように一斉配信後のほかにも、提供するサービス内容や外的要因によって、特定のタイミングでアクセス集中が起こることもあり、注意が必要です。

「リーチの規模が大きいLINEならではの悩みではないかと思いますが、それだけ効果が大きいということも言えると思います」(西村氏)。

通年でのサービスの拡大へ

年末限定の年賀状作成キャンペーンから、通年での継続的な運用へとかじを切った日本郵便のLINE公式アカウントですが、まずは現在のサービスラインの拡張を図っていきたいと考えているそうです。現在は物流関連で、以下のようなサービスを検討中とのことです。

・年賀状作成のスキームを活用した、季節ごとのポストカード作成

・「ぽすくま」との会話のみ(トーク画面のみ)で完結できる荷物の再配達依頼

・EC企業と連携した、出荷連絡や配達予告などのプッシュ通知

サービスの幅を広げていくためにも、まずは、現状のサービスをいかに充実させられるかが第一歩になるといえるでしょう。

事業の枠を超えたサービス展開

日本郵便のLINE公式アカウントでは、さらなるサービスの拡張も検討しています。第1弾の「はがき・年賀状」、第2弾の「郵便配達・物流」に続く第3弾として、これら以外の事業のサービスも、LINE ビジネスコネクトを活用して実施することを検討していると言います。自社の事業ポートフォリオを念頭に置き、どの事業のサービスをLINEというプラットフォーム上で提供すると効果的なのかをしっかりと検討することが重要で、西村氏も「掛け合わせることで新しい商品になる」と言います。

今後も日本郵便の事業の特徴を踏まえた、ユーザー視点のサービスが期待されます。

ユーザーに飽きられることなくコミュニケーションを取っていくためにも、変化し続ける姿勢は非常に重要といえます。

  • 著者: 豊田義和/荒川夏実(株式会社トライバルメディアハウス) 著
  • 発行: 株式会社インプレス
  • ISBN: 9784844380856
  • 価格: 1,780円+税

いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本
~人気講師が教える双方向マーケティング実践

企業のLINE利用が進化する初の解説書

LINEを使ったOne to Oneマーケティングの実践方法が、先行企業の導入事例から学べる解説書。

LINEの企業向けサービス「LINE ビジネスコネクト」は、いまやメールに代わるインフラとなったLINEを使って、顧客との双方向コミュニケーションやLINE上でのサービス提供を可能にする仕組みです。

11社への取材をもとに、目的別の利用イメージや運用の全体像を解説。導入前の検討から導入後の効果測定まで、企業と顧客を結ぶために役立つノウハウが満載です。

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