稲富滋のWebマスター探訪記

稲富滋のWebマスター探訪記
お客様との対面販売が中心のBtoB企業でWebをどう活用すべきか? クボタのWebマスターに聞いた

お客様とのFace to Faceのコミュニケーションが中心の社風でWebをどう活用しているか。グローバルサイトリニューアルを実施したクボタの武元さんに聞いた。
左:稲富滋 右:株式会社クボタ コーポレート・コミュニケーション部ブランド推進室 兼 広報室 武元里奈さん

製品の良さでは他社に負けていないはずなのに、いままでお客様との対面販売が中心だったため、Webで後れをとっているのはとても悔しいです。

当社の各事業部には、素晴らしい製品がたくさんあって、皆さん愛情を持って製品を作り、営業をしています。こうした素晴らしさを多くの方に伝え、素晴らしい能力のある制作会社さんと協力しながら、働いている方のモチベーションを少しでも上げることが私の仕事だと思っています。

だから、私はクボタ(皆さん)の応援団なのです!(武元さん)

クボタは、トラクタといった農業機械や建設機械、パイプ、エンジン、水処理システムなどを扱う企業です。2015年12月末にグローバルサイトのリニューアルを実施し、応援団として奮起しているクボタのWebマスター武元さんに、グローバルサイトリニューアルにあたってどのような動きをしたのか、またBtoB企業ならではのWeb活用法を聞いてきました。

「お客様との対面販売が中心」でWeb活用では後れをとっていた

クボタは1890年の創業以来、「技術力」、「社会貢献」、「お客様との信頼関係」で伸びてきた会社です。お客様との対話から数多くの製品が生まれ、それぞれに特化した事業部ができ上がった経緯があります。そのため「お客様との対面販売と足で稼ぐ営業」に重きがおかれ、Webなどデジタルの世界へはなかなか本腰を入れて取り組む土壌ができにくい環境だったそうです。

そういった経緯もあってか、クボタのウェブサイトは、利用者視点のサイト構成ではなく、事業部が各製品を紹介するサイトが中心で、コーポレートサイトも含め、どの事業部のサイトも「大げさではなく」ライバル企業に圧倒的に差をつけられていたのです。

この危機感を背景に昨年の4月から「クボタグローバルサイト」リニューアル・プロジェクトが開始されました。

グローバルサイトリニューアルは、事業部、各国へのヒアリングが重要

プロジェクト最初の3か月間は戦略立案期間としてコンサルティング企業と共に競合各社サイトの研究や先進的グローバル企業へ訪問し、その多くの時間を各事業部のヒアリング、各国のウェブ担当者へのアンケート調査などに費やしたそうです。

ヒアリングは「利用者にいかに知ってもらうかを一緒に考える」

武元さん自らがコンサルタントと共に1~2時間ほどかけて、事業部にヒアリングを行いました。ヒアリングをするときは、Webのことがわかっている専門家として「聞き取り調査」をするのではなく、「どうしたら事業部の素晴らしい製品を多くのお客様に知っていただけるかを、一緒に考える」というスタンスで臨んだという武元さん。

私が言うのもおかしいのですが、クボタという会社はたいへん「真っ正直な」会社で自分自身を売り込むことに遠慮してしまうところがあります。せっかく良いものを持っているのに、これはもったいないことだと思いました。

クボタや製品を応援したい!

そのために、ウェブをどう活用すべきか一緒に考えませんか? という学びのスタンスでヒアリングをしました。私は事業部経験がないので、製品知識が十分ではありません。そのことを正直に伝えて、製品に関する情報を教えてもらいました。またそれをきっかけにコミュニケーションが図れますし、皆さん、本当にとても丁寧に教えてくれます(武元さん)。

ヒアリングでは他社の先進的な「事例」も紹介する

また、各事業部や各国のウェブ担当者とのコミュニケーションで役に立つのが「他社事例」です。事業部の場合は他社の事例に関心が高く、Webを活用した他社事例を1つ紹介するほうが、コミュニケーションが深まります。また、その事例をきっかけに、「クボタでは……」と置き換えることで濃密な話ができます。

ここで注意が必要なことは、Webで効果的なコミュニケーションを取りやすい製品とそうでない製品があるということです

たとえば、クボタの場合パイプなどがWeb活用には向いていない製品です。パイプは、基本的に規格が合っていれば、必ずしも製品の特徴などを念入りに説明する必要はありません。規格をしっかり探せるほうがお客様にとっては重要なことです。また、お客様の数も限定され用途も一定の製品の場合は、ウェブではなく直接お会いするほうが大事です。

一方、スマホの普及率が高い地域へ販路を拡大していきたい製品に関しては、Webへの期待度も高いです。それぞれのサイトの組織体制や運用上の悩みなどを聞き、「ウェブにどれだけコストをかけるか」といった現状把握とともに、向かうべき方向の仮説を持ってヒアリングすることが重要です。たとえ、その仮説が違っていたとしても、「違っていた」ということがわかることが私たちにとってはとても重要なことです。

稲富レクチャー

一度信頼関係ができれば、事業部からもWebの利用に関する前向きなレスポンスが早く返ってくるようになりますし、プロジェクトを推進する立場の制作会社にもそれを素早く伝えることで、制作会社も気持ちよく仕事ができるのではないでしょうか。

こんな「応援団」がそばにいていつも励ましてくれるなんて事業部の皆さんも制作会社の皆さんも幸せですね。企業内にあって事業部と制作会社の間で苦労しているコーポレート・ウェブマスターの皆さんも大いに参考にしてよいのではないでしょうか。素晴らしいことです。

また、事業部ではあまり普段から自社サイトも含め他社サイトにも興味を持って積極的に見る経験がありません。他社事例を知ることで「良い刺激」を受けたのではないでしょうか。

グローバルサイトリニューアルの4つポイント

クボタの世界各国でのWeb展開という意味では2011年には世界に向けたコーポレートサイトとしてグローバルサイトを開設し、2013年までには19カ国の言語で「言語的なグローバル化」対応が果たされていましたが、それぞれの製品サイトの中身は各国に任されていました。

したがって同じ製品・機種であってもフランスとスペインが別々に「スペシャルコンテンツ」を作ることもあったのです。本来であれば素材を共有すれば、工数や費用も抑えることができるはずです。サイトの運用についても「担当者のリテラシーに依存した属人的なところ」も大きな課題でした。

リニューアルしたクボタのグローバルサイト

3か月間かけた結果をもとに、出てきた課題を解決するべく次の4つの目的を掲げて、グローバルサイトリニューアルに向けて、プロジェクトを推進しました。

①クボタの総合力を伝える

これまでのクボタ製品のサイトは、事業部内のコンテンツに終始し、クボタの「総合力」を伝えられていませんでした。

たとえば、同じ農作業に使用する「トラクタ」と「田植え機」も同じ「農機」にもかかわらず、別の事業部製品であることから別々に取り扱われ、本来は同じ「水」を扱う「ポンプ」「バルブ」「パイプ」に関してもバラバラだったそうです。

これをクボタの製品ラインアップがあればこんなことができるという「農機の総合力」や「水関連事業の総合力」を訴求するページを目指しているとのこと。

②クボタの技術力を伝える

クボタでは「技術力」を謳いながらこれまで「研究開発の強み」を訴求するサイトはありませんでした。他社では「こんなことを開発中です」といかにも今すぐにでもできるかのようにPRすることもあるかもしれません。しかし、「確実にお客様へソリューションとして提供できるまでは話はできない」という理由から、コンテンツを用意していませんでした。

「技術力」をアピールするのは開発中の製品紹介ばかりではありませんので、「研究開発にかける人の想い」を伝えることで「クボタの技術力」を伝えるコンテンツを準備しているそうです。楽しみですね。

③写真や動画を使ってもっとビジュアル的に

クボタの良さを伝えるためには、テキストだけでなく写真や動画をふんだんに使って、訪問者にわかりやすく伝えていく準備を進めているそうです。

④製品一覧でクボタのラインナップを一同に紹介

これまで個別の製品を「クボタの部門ごと」に紹介されていましたが、これをたとえば「農機」「水関連事業」などの利用者視点で関連製品・サービスをまとめて一覧できるように変えていきます。

稲富レクチャー

組織単位のサイトのことを「エレベータ・サイト」と呼んでいました。お客様は特定のソフトウェアを探して「ソフトウェア事業部のサイト」へ、そのソフトを動かすプロセッサーを選ぶために「プロセッサー事業部のサイト」、さらにストーレジのサイトと「上へ下へと行ったり来たり」しなければならなかったからです。

また、各国マーケティング部門の力の入れ方によってサイトの中身もずいぶんと際立っています。たとえば米国サイトでは、他社トラクタとの違いを動画を使って、これでもかというほどわかりやすく説明しています。

これを見てもまだ他社のトラクタを購入しようというユーザーは、よほどのことがなければいないでしょう。なかなか日本ではここまではっきりと言ってしまうケースはないでしょう。購入検討者は必見ですね。お国柄が出ているおもしろいコンテンツでしょう。

「グローバルサイトから」サイト役割の明確化

グローバルサイトをリニューアルするにあたって、クボタ全体のサイト数や役割を明確に決めたそうです。クボタには、グローバルサイトを含めて全体で123のサイトがあり、 その内訳は次の通り。

区分 役割
グローバルサイト 1 各国でKubotaと検索したときの受け皿・関連サイト、会社へのスムーズな誘導や、クボタグループとしてのコーポレート情報発信とブランディングの役割。
カントリー・ゲートウェイ 24 エリア別、国別サイト。各国語でKubotaの関連キーワードを打ったときにヒットするサイト。現地の言語でコーポレート情報を発信する。これまでは、現地の内容に製品情報も、カスタマイズしていたが、ゲートウェイの役割としては、キーワードにヒットさせる役割が大きいと判断。その受け皿となることを目指す。
Division(ディビジョン)サイト 28 製品分類を紹介するサイト。よりお客様に近い視点でマーケティング情報を発信するという役割。製品に関するビッグキーワードなどでヒットするサイト。
ローカルサイト 70 各国での取扱製品の特徴などを紹介するサイト。製品に関する詳細なキーワードでヒットするサイト。

グローバルサイトとカントリー・ゲートウェイを武元さんが管理し、各ディビジョン、ローカルサイトを各事業部または関連企業が行います。

グローバルサイトのリニューアルが「新たな始まり」

グローバルサイトリニューアルに向ける思いを武元さんに伺いました。

クボタ 武元里奈さん

事業部の結束が強いところを生かしつつ、その力を横断的に活用してクボタの総合力に持っていくようなサイトを実現して、訪問者にもそれを実感してもらえるサイトにしていきたいです。その実現のために全力で支援し、応援するのが、私たちの使命と考えています。

今回のリニューアルは、アクセス数の増加といった数値や対外的な効果は当然のことながら、社内に向けて語りかけるメッセージでもあるのです。

デジタルの世界で「クボタ」のコーポレートブランドを確立して、プレゼンスを高めていきたいです。コーポレートサイトは、企業情報、ブランド力を訴求していくことで投資家や求職者へもアピールできると考えています。

ウェブ関係組織と役割

ウェブ関係組織と役割についても伺いました。

武元さんの所属するコーポレート・コミュニケーション部は管理者も含め全部で18名。その中に報道対応、社内報、社員向けサイト(イントラネット)を担当する広報室・東京広報室が11名とブランド戦略や広告宣伝、事業部の催し物などを支援するブランド推進室7名の体制です。

武元さんの仕事は

  • 全社のウェブの共通運用ルール策定と管理
  • コーポレートサイト(日本およびグローバルサイト)の企画運用
  • 各ディビジョンやローカルサイト制作に関するレビュー承認

この他、コーポレート・ドメインとして「kubota.XX」の積極的取得など「クボタのドメイン・マネジメント・グループの事務局」や全社SNSの運用管理も手がけているようです。

仕事にメリハリをつける

これだけ多くのサイトを管理し、グローバルサイトのリニューアルも推進する武元さんに仕事の進め方やリフレッシュ方法を聞いたところ、「就業時間の8時半~5時は、頭をフル回転して仕事に集中します。そして残業はあまりしません。効率良く仕事をして帰れるときはさくっと帰るというのが私の仕事の仕方です。社内では、早く帰る人だと思われていると思います(笑)」とのことでした。

また、リフレッシュとしては、海外旅行を徹底的に楽しむことだそうです。まず計画を立てることで楽しみ、旅行自体を楽しみ、旅行中の料理の中から美味しかったものを覚えて帰り、家で再現して料理のレパートリーに加えるのが楽しみだという。最後に必ずフォトアルバムを作成する徹底的ぶり。

こんな具合に一度旅行へいくと帰って来てからも2、3か月は楽しめるそうです。

稲富レクチャー
コーポレート・コミュニケーション部の使命と役割

武元さんからの説明にもありましたが、クボタは堅実着実にお客様を大切に「実」行をすすめる企業であり、比較的ウェブの活用に関しては先頭を走る企業ではないようでした。

ただ、これから10年以内に社会で働く人々の75%以上が「デジタル・ネイティブ」の世代となると予想されている(出典:Pew Research Center)時代では「デジタルの世界でもクボタのプレゼンスを高めていく」ことが重要でしょう。

その際にもこれまで培ってきた「技術力」「社会貢献」「お客様との信頼関係」を大切にする「真っ正直な」会社を貫き通す「デジタル・プレゼンス」をどのように実現していくか武元さんはじめコーポレート・コミュニケーション部門の手腕が問われるのはこれからです。がんばってください。

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