カスタマーエクスペリエンスに基づくマーケティング戦略
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは? 基礎から実践までやさしく解説

すべては顧客への「共感」から始まる~オラクルとロフトワークのカスタマージャーニーマップ活用術

“本当に使える”質の高いCJMを作るには、「顧客の価値観への同化」とそれによる「革新的な創造」が必要
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購買プロセス全体における「顧客体験」を可視化し、顧客中心の商品やサービスをデザインするための手法として「カスタマージャーニーマップ」(CJM)が注目されている。しかし、苦労して作っても、具体的施策に落とし込めないなど、活用しきれていないケースも多い。

作っただけで終わりにせず、次のステップに進みにはどうすべきか。そんな悩みを解決するためのCJM活用ワークショップで明かされた、ロフトワークが実践するCJM作成と活用術を紹介する。

カスタマージャーニーマップの活用は意外と難しい

この記事では、日本オラクルとロフトワークによるCJM活用ワークショップの模様をレポートしています。特に、ロフトワークの西本氏のパートでは、同社がどのようにCJMを作成、活用しているのかを解説します。また、具体例として聴講者によるワークショップの工程も紹介します。

こんな悩みを持つ方の参考に

  • CJMに興味はあるけど作り方がよくわからない
  • CJMを作ったことはあるが、正しくできているのか不安
  • CJM作成の具体的な工程を知りたい

西本氏によるCJM活用のポイント

  • CJM作成準備では「誰に」「どこで」「何を」聞くかにこだわる
  • インタビューでは深い話を聞くために2時間かけるときもある
  • 時間をかけることは大切だが、ただ時間をかければよいわけではない
  • CJMの質を高めるには“共感できる”内容にすることが重要
  • ペルソナは役割が相互補完的かつ重複がないように作る
  • ユーザー視点の創造のために、アイデアの発散、探索、収束を何度も繰り返す
  • CJMは顧客の“ホンネ”(インサイト)を直感的に把握できるツール

ロフトワークの実務をベースにしたシナリオで、実践的なノウハウを学んでほしい

渡邊 紳二 氏
日本オラクル株式会社
FM事業統括本部
WebCenterソリューション部 部長

日本オラクルとロフトワークは、カスタマーエクスペリエンス(CX)を考える共催イベントの第3弾として、2015年10月28日、「Customer Journey Map Workshop by loftwork サービスデザインに役立つカスタマージャーニー活用法」を開催した。

このイベントは座学とワークショップで構成され、「実際にロフトワークがどのようにCJMを作っているか」を学び、「いくつかのフレームワークを使いながら課題解決のためのアイデア出しのプロセス」を体験できるものだ。

イベントに先立ち、日本オラクルの渡邊紳二氏が挨拶に立った。

顧客を理解し、顧客体験を可視化することで、革新的なアイデアや新しいビジネスモデルがどんどん生まれている。その一例として、渡邊氏はある回転寿司チェーンが始めた新しい店舗形態の取り組みを紹介した。

回転寿司とカフェを融合させたような新たな業態の店舗だ。スタイリッシュな店舗外観と、回転方式ではなくタブレットを用いたテーブルでの注文方式が特徴で、お寿司以外にもカフェ、スイーツのようなメニューもそろえる。彼らが考えるペルソナが成功している例の1つといえるのではないか。

オラクルとロフトワークによる、CXをテーマにした共催イベントは今回で3回目。8月にセミナーを行い、9月には、オラクルのシナリオでCJM作成のワークショップを行った。今回はロフトワークのシナリオに沿ったワークショップとなる」(渡邊氏)

ぜひ、ロフトワークの実践的な手法を学び、今後のマーケティングやサービス開発などに役立ててほしいと締めくくった。

CJM作成前の「準備」「インタビュー」を入念に行うことが、顧客への共感の可視化につながる

西本 泰司 氏
株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター

続いて、ロフトワークの西本氏が登壇した。前半の座学パートでは、実際にロフトワークではどのようにCJMを作成、活用しているかを解説した。

西本氏によると、CJM作成を含むデザインリサーチには「80時間以上かけるケースがある」と語る。その大半は顧客に対するインタビューの準備、実施に費やされるそうだ。なぜそこまで準備に時間をかけるのだろうか。

西本氏は、『Running Lean ―実践リーンスタートアップの著者であるアッシュ・マウリャ氏の言葉を引用して説明した。

※アッシュ・マウリャ 著、角征典 訳、オライリージャパン 刊、2012年
「顧客と会話する」ことは「人がほしいと思うものを作る」と同じくらい大切なことです。
(77ページより)

CJMは顧客体験を可視化するためのフレームワークだが、その質を高めるためには「共感できる」内容にすることが大事だ。では、ロフトワークではCJM作成を含む、デザインリサーチの実務をどのように行っているのか。

そのステップは大きく5つに分けられる。

  1. 準備
  2. インタビュー
  3. インサイト(顧客の本音を探る)
  4. ペルソナ&CJM
  5. 機会領域の絞り込み

①準備 ~ポイントは「誰に」「どこで」「何を」聞くか

「準備」でこだわっているのは、「誰に」「どこで」「何を」聞くかということだ

  • どのセグメントに聞くか(対象セグメントの絞り込み)
  • 声がけリストの作成
  • リクルーティング(社員やお客さまのネットワーク、オウンドメディアなどを通じて)
  • インタビューツールの作成

インタビューツールは、特に個々を明らかにしたいポイントを4つほどに絞り、インタビューガイド(質問項目表)を作成する。また、対象者が答えづらいと想定される質問は、カードソート(単語が書かれたカード)を作成し、対象者に選んでもらってインタビューの補助とする」(西本氏)

②インタビュー ~事前の準備が重要

「インタビュー」では平均で2時間ほど時間をかける。「深い話を聞くためにも、事前のインタビューツールの準備が重要」だという。

インタビュー本番前には、リサーチメンバーで事前にパイロットテストを行い、本番に臨む。そして、インタビュー後には、同じくらいの時間をかけて分析を行う。

「ラップアップ」と呼ばれる分析は、まず、インタビューノートを付箋化(オレンジの付箋)し、壁の模造紙に貼っていく。そして、その付箋の中から、対象者の内面に関わりそうな要素(メンタルモデル)を抽象化し、青い付箋に書き出していく。

模造紙に付箋を貼りインサイトを抽出する

③インサイト ~構造化のための重要なプロセス

「インサイト」は、青色の付箋の構造化を行うもっとも重要なプロセスだ。

  • 青色の付箋の構造化(インサイトとなる上位概念を作る)
  • インサイトに概要文章を付す
  • 資料として調整する

④ペルソナ&CJM ~インサイトを可視化

「ペルソナ&CJM」は、直感的に理解しづらいインサイトに人格と行動人脈を与え、可視化するプロセスだ。

  • 複数のインサイトをグルーピングし、ペルソナのセグメントを作成
  • ペルソナ作成
  • CJM作成

ペルソナ作成で大切なことは、ペルソナの役割が相互補完的で、かつ重複がないように心がけることだ。また、CJMは、フェーズ、タッチポイント、感情、思考の各要素を縦軸に、横軸に顧客の行動を置き、顧客体験全体が可視化できるようになっている」(西本氏)

カスタマージャーニーマップを使って顧客行動の各フェーズにおけるタッチポイント、感情、思考を可視化する

なお、実際のCJM作成については、以下の記事が参考になる。

⑤機会領域 ~検討すべき領域の絞り込み

「機会領域」は、検討すべき価値のある領域を絞って施策を考えることだ。プロジェクトメンバーが集まり、インサイト、ペルソナ、CJMを横断的に眺め、顧客体験向上のための検討するべき施策アイデアを考える(アイデア発散)。そして、ビジネス、ユーザーニーズなどを踏まえ、アイデアを絞り込み(領域定義)、最後にタイトルと概要文章を付す(概要文章)。

西本氏は、顧客への共感を通じて、サービス提供側の視点が変わっていく点にCJMの価値があると語った。

顧客にもたらす価値(結果)を変えるためには、顧客との関係の質を変える必要がある。関係が変われば思考が変わり、行動が変わるからだ。そして、顧客との関係の質を変えるために、顧客と価値観が同化する(共感する)ことが必要だ。CJMは、顧客の“ホンネ”(インサイト)を直感的に把握できるツールだ」(西本氏)

架空のペルソナ、CJMをもとに施策案を検討

続いて、ワークショップが行われた。ワークショップの目的は、事前に用意されたストーリー、ペルソナ、CJMをもとに、参加者どうしで施策のアイディエーション(アイデア出し)を行うことだ。

アイディエーションは以下の要領で計3回行われた。

  • 1回目=ウォーミングアップで手堅いアイデアを考える
  • 2回目=リフレーミング(発想の転換)で“飛んだ”アイデアを考える
  • 3回目=独自資源(その企業の強み)とかけ合わせ“ならでは”のアイデアを考える

その理由について、西本氏は以下のように語る。

顧客と価値観が同化(共感)すれば、すぐに革新的な創造がすぐに生まれるとは限らない。価値観が同化し、『ユーザー視点の創造』を経て、革新的な創造は生まれる。

『ユーザー視点の創造』のためには、アイデアの発散、探索、収束を何度も繰り返す。可能性を広げて発想し、アイデアを深めながら『これだ』というアイデアを探すというプロセスだ」(西本氏)

アイデアは発散、探索、収束を何度も繰り返す

会場は8つのチームに分かれ、全3回のアイディエーションを行った。アイディエーション後は、参加車全員で、出されたアイデアに対して投票を行った。

投票は、青、赤、緑の3色のシールを各2枚ずつ持ち、これがいいと思ったアイデアに投票していくやり方だ。

  • 青: 独自資源と相性がいいアイデア
  • 赤: 新規性があり、できれば実現したい
  • 緑: ユーザーニーズに合致している
シールを使った投票

実務では、アイディエーション後、ストーリーボードを作り、顧客体験にフォーカスを当てながら施策を詳細化していくプロセスを経ていく。

最後に、西本氏は以下のように語り、セッションを締めくくった。

今日は、ロフトワークで普段行われていることを実践形式で、コンパクトに体験していただいた。CJMは質が大事だといったが、時間をかけて作成すればよいというものではない。CJMを通じてどこまで顧客に共感できるかが大事だ。CJMを活用し、次はあなたの顧客で、『価値観への同化』と『革新的な創造』を行ってみてほしい

CJM活用のポイント
  • CJM作成準備では「誰に」「どこで」「何を」聞くかにこだわる
  • インタビューでは深い話を聞くために2時間かけるときもある
  • 時間をかけることは大切だが、ただ時間をかければよいわけではない
  • CJMの質を高めるには“共感できる”内容にすることが重要
  • ペルソナは役割が相互補完的かつ重複がないように作る
  • ユーザー視点の創造のために、アイデアの発散、探索、収束を何度も繰り返す
  • CJMは顧客の“ホンネ”(インサイト)を直感的に把握できるツール
ワークショップの様子
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