カスタマーエクスペリエンスに基づくマーケティング戦略

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは? 基礎から実践までやさしく解説
カスタマーエクスペリエンス(CX)って、何? Web担当者はどうすればいいの?

「カスタマーエクスペリエンス」とは何か、どうすればいいのか。その起源と、Web担当者とのかかわりを解説
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カスタマーエクスペリエンス(CX)を意識すること――それこそが、企業が顧客に製品やサービスを提供する際に求められているものだ。では、「カスタマーエクスペリエンス」とは何か、どうすればいいのか。この特集では、その基本概念と実践方法の解説、事例の紹介をとおして理解を深めていく。

今回は、カスタマーエクスペリエンスの考え方や言葉が生まれた背景、Web担当者との関係について解説する。

あなたは、次の連休に家族と久しぶりの温泉旅行をしようと考えている。

エリアを決めたら、旅館とそこまでの交通手段を選ばなければいけない。情報収集や予約は、もちろんインターネットを使って行う……。

温泉
ThinkStock/iStock/SamSpicer

さて、どこにしよう?

楽天トラベル一休.comといった旅行サイトで情報を集め、Googleマップを使って場所や交通手段を確認する。候補となる旅館を絞り込み、それぞれのWebサイトをブックマークしたら、家族に相談する。

東京からのアクセスの良さ、アクティビティの選択肢の多さから、無難に箱根に決定。

次は旅館の予約だ。

良さそうな旅館のプランを探して予約をしなくちゃいけない。3つの旅館に候補を絞り込み、空いている部屋の写真を見比べて旅館と部屋を決める。

食事のコースは3種類ある。どの食事がお得で美味しそうか。そして旅館のサイト楽天トラベルを見比べて、どちらがお得かもチェックする。最終的に旅館のサイトにだけあった特別コースが決め手となり、旅館のサイトから予約をする。“田中旅館”だ。

次は交通手段だ。

以前から気になっていたカーシェアリングのサービスを試してみたい。いざとなったら電車に切り替えればいいし。

いよいよ旅行当日だ。

幸い、道は空いている。途中、食べログでチェックしていた箱根湯元の蕎麦屋でランチを食べ、15時には旅館に到着。

部屋は離れだけど、用意されているiPadを使って中居さんを呼んだり、チェックアウトや食事の時間や家族風呂の予約をしたりもできる。

食事は思っていたよりずっと美味しくて、中居さんの感じも悪くない。ビールを飲んでいい気分。家族もリラックスしていて今回のプランに満足しているようだ。

ああ、本当に来てよかった……。

こんな楽しい温泉旅行ができたら、とてもうらやましい。

旅館のWeb担当者として顧客の体験をとらえると……?

顧客が旅行プランを立てて実施するまでのプロセス(体験)を例に挙げたが、逆にあなたが今回の宿に選ばれた“田中旅館”のWeb担当者で、4代目修行中の“田中さん”の立場だったら……と考えてみよう。

あなたは、宿泊プランを考えたり、季節の食事コースを料理長といっしょに考えたり、料理のコースの写真や部屋の写真をカメラマンとデザイナーに依頼して作ってもらったりしている。ブログやFacebookの更新も毎日欠かさない。

Web担当者としてできることは、ひととおりこなしている……。

ここでもう一度顧客の視点に戻ると、旅行先を田中旅館に決定するまでに、田中旅館のWebサイトだけでなく、たくさんのプロセスを経ている。顧客は、さまざまなWebサービスを活用してサービスの内容を見比べ、検討している。

あなたが一生懸命作ったWebサイトのコンテンツが、宿を田中旅館に決定する大きな要因になったことは間違いない。しかし、決定までには他にもさまざまな要因が存在している

さらに旅行全体の満足度でいうと、途中の交通渋滞や当日のランチの美味しさによっても変わってくる。渋滞に巻き込まれたうえ、田中旅館に訪れる前に食べた蕎麦屋のサービスがひどかったら、そのあとにいくら田中旅館が素敵な体験を提供していたとしても、旅行全体の満足度と田中旅館に対する印象は悪いものになっていただろう。

理不尽かもしれないが、人とはそういうものなのだ。

カスタマーエクスペリエンス=企業の立場から見た“顧客の”ユーザーエクスペリエンス

温泉旅行を計画して実行する「旅行客(顧客)の視点」と、その旅行客に宿を提供する「Web担当者の視点」の例からいえることは、次の3つだ。

  • 購買行動の中でWebが果たす役割は10年前に比べてはるかに大きくなっている
  • 購買決定のプロセスにおいてWebサイトやソーシャルメディアは重要な情報源である
  • (しかし)Webサイトは顧客体験のすべてではなく、あくまでも一部でしかない

つまり、私たちが取り組まなければならないのは、顧客体験全体の最適化なのだ。

ThinkStock/iStock/VOLODYMYR GRINKO

「顧客/見込顧客」があなたの会社の「商品/サービス」を選び、購入し、利用し、満足をする。そして顧客は利用したあとにいったん離れはするが、時期をおいて再びあなたの会社の「商品/サービス」のもとへ戻って来る(来てほしいよね?)。これが顧客体験すなわちカスタマーエクスペリエンスの全体像になる。

ここで、「カスタマーエクスペリエンス」(CX)という言葉について説明しよう。この言葉は比較的新しいものだが、その考え方は「ユーザーエクスペリエンス」(UX)が元になっている。

認知心理学者でヒューマンインターフェイス研究者であるドナルド・A・ノーマン氏が1988年に書いた『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論』(日本語版は新曜社から1990年発刊)という本からユーザーエクスペリエンスという言葉が生まれ、体系として育った。

“ユーザー体験を考える”というユーザーエクスペリエンスの考え方は、人間中心設計(HCD)やサービスデザインという概念、老人や障害者のためのアクセシビリティへの発展など、さまざまな分野へと派生した。また、OSや携帯端末など新しい体験を提供するデバイスの出現とともに成長を遂げてきた。

そして、これを「サービスやツールを提供する企業側から見たユーザー(顧客)の体験」として、立場を明確にしたものがカスタマーエクスペリエンスである。

ビジネスの究極の目的は、サービスや商品をとおして顧客に良い体験をしてもらい、次の利用に結びつけることだ。その意味では、ビジネス視点の考え方を多く含む言葉なのだ。

ところで近年、CMSメーカーのWebサイトで「カスタマーエクスペリエンス」という言葉をよく目にするようになった。これはつまり、「単にコンテンツを管理するのではなく、顧客の体験を管理(=カスタマーエクスペリエンスマネジメント)しましょう。CMSはそのための製品ですよ!」というメッセージなのだ。

購買決定プロセスにおけるWebやソーシャルメディアの重要性を見れば、CMSメーカーが「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」(CXM)や「Webエクスペリエンスマネジメント」(WEM)を謳うことにも合理性はある。

カスタマーエクスペリンエス全体最適化の取り組みではWeb担当者が中心的存在に

カスタマーエクスペリエンスの最適化、すなわち顧客が大きく満足できる体験はどうやってつくり出せばよいのか。そして、それぞれのタッチポイントをどうマネジメントし、自社の「商品/サービス」を選んでもらえばよいのか。

ThinkStock/iStock/Lucky_Guy

たとえば、アップルストアでの体験は随分とポピュラーなものになったが、今でもなお先進的だ。

レジ以外の場所でも、クレジットカードがあればフロアにいるスタッフの誰からでも商品を購入できるし、サポートもどのスタッフからでも受けられる。

このサービスを実現しているのが、顧客情報の管理を行うシステムとiPad、そして机の下に巧妙に隠されたプリンターなどICTの活用だ。

また、Suicaの登場によって、それまで面倒だった電車やタクシー、コンビニの支払いという体験は、とても快適になった。国内旅行での飛行機の搭乗では、わざわざチェックイン操作をする必要がなくなり、携帯電話でQRコードを表示させるだけで搭乗できるようになった。

このようなカスタマーエクスペリエンス全体を向上させる取り組みにおいて、Web担当者は中心人物になることができる

なぜなら、Webは「計測」が可能だからだ。

アクセス解析に基づいてコンテンツを改善するプロセスは、リアルでの体験改善にも通用する。顧客のタッチポイントを最適化するための仮説をつくり、見える化の構造をつくり、実際に試して計測の結果を改善につなげる。早い段階のプロセス改善にWebは欠かせないし、そもそもこれはWeb担当者が当たり前のように行っていることだ。

Webはカスタマーエクスペリエンスのすべてではないが、中心になれるのだ。

新しい顧客の獲得こそカスタマーエクスペリエンスが重要

それでは、カスタマーエクスペリエンスの全体最適化は、どのように取り組めばよいのか。

初期のタッチポイント形成を目的とした広告によるマスメディアマーケティングだけでは、顧客の体験は最適化できない。体験を最適化せずにマーケティングによる流入増加を行ったところで、コンバージョンレートは低くなるし、逆に顧客に不愉快な体験をさせてしまうだろう。

Webやソーシャルメディア、サービスの現場、商品のサポート、顧客管理と在庫管理、接客のためのツールなどなど、顧客のタッチポイント新しい顧客のためにデザインする必要がある。

たとえば、カスタマージャーニーマップやメンタルモデルといった顧客の行動や気持ちを把握するために使うフレームワークは、カスタマーエクスペリエンスの全体像をとらえるために欠かせない

また、新しい顧客を見つけるためには、フィールドリサーチやヒアリングなどの手法をしっかり取り入れる必要がある。きちんとカスタマーエクスペリエンスを整えてからマーケティング施策を始めないと、広告費は穴の開いたバケツに水を入れるように無駄になるだけだ。

カスタマーエクスペリエンスを考えることは、顧客に商品を購入してもらうための体験を考えることだ。しかし同時に、それによって企業が提供する本質的な価値を定義したり、見直したりするための「バリュー定義プロセス」でもあるのだ。

顧客体験をデザインせずに製品やサービスをつくってマーケティングを行っても、不愉快な体験による失望によって一瞬で使われなくなる製品、そして二度と戻ってこない顧客を生み出すことにしかならない。

有名コンサルタントのブライアン・ソリス氏が、その著書『What's the Future of Business: Changing the Way Businesses Create Experiences』(ビジネスの未来はどうなるか)で述べている内容も、やはり「体験」がキーワードだ。同氏は、この本で次のようなメッセージを記している。

Experience, experience, experience, That's the future of business.

体験、体験、体験。それこそがビジネスの未来を決める

冒頭に示した温泉のストーリーで、みなさんが体験したい「温泉旅行」についてあらためて考えてみてほしい。そして田中旅館のWeb担当者である田中さんが、あなたが望む“その体験”を実現するために何ができるのか、どんな手伝いができるのか。さらに、田中旅館のWebサイトにどのようなシステムを導入するとそれが可能になるのか。カスタマーエクスペリエンスの視点から考えてみてほしい。

◇◇◇

特集「基礎から実践まで カスタマーエクスペリエンス完全理解」の次回は、実際にカスタマーエクスペリエンスをとらえるためのワークショップフレームワークについて解説します。

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