かわちれい子のウェブマスターのお仕事

ヒト・モノ・カネに次ぐ経営資源「情報」を活用――味の素 上田玲子氏

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

味の素「レシピ大百科」ウェブマスター 上田玲子氏

かわちれい子(CreatorsNet)
写真:津島 隆雄

会社によって大きく異なる「ウェブマスター」の実態。所属部署は? 予算確保は? ワークフローは? サイトの目的は? 注目しているテーマは? さまざまなウェブマスターの姿を見ることで、これからのウェブマスター像を見出したい。

月2回のウェブ会議と半期に1回の担当者会議
1万件以上のレシピDBをあらゆる業務で利用

ウェブマスターの所属は
コーポレート・コミュニケーション部

上田玲子氏
上田玲子氏
味の素株式会社
コーポレート・コミュニケーション部
コンシューマー・コミュニケーション・センター
料理情報担当部長

●かわち 味の素ウェブサイトの概要をおしえていただけますか。

●上田 味の素のウェブサイトには、大きくわけて3つのコンテンツがあります。味の素の企業活動を消費者の皆様に正しく伝える「企業情報」、味の素の商品の魅力を伝える「商品情報」、そして、それらを結び付ける「生活情報」です。生活情報と言っても、味の素は「食と健康」に関する事業を展開していますので、コンテンツは、それらが中心になっています。

●かわち 上田さんは、その「生活情報」の部分を担当されているんですよね。

●上田 わたしが所属しているのはコーポレート・コミュニケーション部のコンシューマー・コミュニケーション・センター(以下、「CC部CCC」)の料理情報担当ですが、生活情報のコンテンツの中でも「レシピ大百科」を広告部のダイレクトコミュニケーショングループ(以下、「DCG」)と一緒に、運営・管理しています。料理情報グループは7人で、そのうち3人がウェブ専任ですね。

企業情報のコンテンツは、会社案内など人事や環境、社会貢献など当該部署が担当し、商品情報は、それぞれのカンパニーが管理しています。

これらの味の素のウェブサイト全体をCC部のウェブ専任者の2名が統括していますので、予算は、CC部のウェブ予算として確保しています。ですから、何かをするごとに事業部を回って予算を確保して、ということは必要ないですね。

CC部は、味の素の中でも消費者の皆様と接する機会が多い部署です。消費者の皆様がどんなことに興味を持ち、また、どんな情報を味の素に求めていらっしゃるのかを的確に判断し、味の素社内のリソースから提供できる情報はどんどんコンテンツに追加していこうと考えています。

●かわち ウェブサイトを拝見すると、非常にたくさんのコンテンツがありますが、運営体制はどのようにされているのですか?

●上田 味の素では、「ウェブサイトでどんどん商品を売ろう」ということを第一目標には考えてはいません。そうではなく、ウェブサイトの運営はブランドイメージをアップさせるための長期的な活動と位置付けています。

運営としては、月に2回ウェブ会議を開き、ウェブサイトやコンテンツの方向性などを決定しています。この会議には、CC部CCCの料理情報グループや企画グループ、広告DCG、システムの担当者などが参加しています。

また、ウェブサイトが全社的な取り組みとなるように、事業部のメンバーを集めた「担当者会議」を半期に1回程度のペースで開催し、報告会や意見交換をします。各部署のホームページ担当者は通常の業務と兼任しているので、1回の会議について、日程を2回程度確保して、できるだけ多くの人が参加できるようにしています。

レシピ大百科に限ってお話すると、特集コンテンツや毎日のおすすめレシピなど、頻繁に更新作業がありますので、関係者はかなりの人数になりますね。

ヒト・モノ・カネに次ぐ経営資源
「情報」は企業活動全般で広く利用

●かわち レシピ大百科を拝見すると、本当にたくさんのコンテンツがありますよね。ウェブサイト用に作られたものなんですか?

●上田 レシピの数だけだと、現在、10,000点をご提供していますが、もともとはウェブサイト用に作ったものではなかったのです。

味の素の社内には、これまで消費者の皆様に提供してきた、貴重なレシピがたくさんあります。それらの財産をデータベース化して、社内のさまざまな部署が利用できるようにしているのです。『レシピ大百科』も、そのデータベースの一部を利用しています。

味の素が消費者の皆様にレシピを提供している歴史は創業以来ですが、中心的なものは1956年の『奥様手帖』なんです。以来、さまざまなメディアを通じてご提供してきたレシピは、いくつぐらいになるんでしょうか。想像つかないですね(笑)。

●かわち それらを社内でデータベース化していらっしゃる、と。

●上田 はい。現代では「情報」は重要な経営資源の1つですからね。『レシピ大百科』だけではなく、販促、営業、商品開発、広報、など、さまざまに利用していますよ。ウェブサイトでレシピの提供をスタートしたのは1997年です。当初のレシピ数は6,000点程度でした。

●かわち レシピ大百科について、もうちょっと詳しくお聞きしていこうと思います。先ほど、ページの更新はたくさんあるとおっしゃっていましたが。

●上田 はい。レシピ大百科のトップページだけでも、「今日のレシピ」が毎日替わりますし、特集記事も常に5本はあって月に2回は更新しています。キービジュアルは毎月季節に合ったものに変更しています。また、「お弁当づくり応援コーナー」「おいしく食べよう!日本」というようなコーナーがたくさんあるので、ウェブサイトで更新しているレシピの数は、毎月500点はくだらないと思います。

●かわち その500点すべてが新作ってことはないですよね……?

●上田 さすがにすべてが新作ということはありません。検索でご利用いただける10,000点のレシピの中から選ぶこともあれば、料理研究家の方にお願いして新しいレシピを考えていただくこともあります。2005年の10月にスタートした「ヘルシー&ビューティー」というコーナーも、毎月更新されるテーマに沿ったレシピをご提供しているんですよ。

●かわち 「ヘルシー&ビューティー」って、ぐっとくるフレーズですね。

●上田 そうですか?(笑)ウェブサイトのアクセス解析をしていると、消費者の皆様がどんなことに興味を持っていらっしゃるのか、如実にわかりますよ。

「今月の話題の食材・成分」というコーナーは、まさしく「流行りもの」だったりします(笑)。テレビや雑誌で取り上げられると、調べたくなるでしょう?(笑)そのような興味に応えるメニュー提案までのコンテンツが欲しいと考えて、このコーナーを作ったんですよ。

●かわち どんな手順で、新しいコーナーが立ち上がるんですか?

●上田 レシピ大百科の場合、「社内に蓄積されたメニュー情報を一般に公開しては?」というアイディアからスタートしました。コンテンツ戦略の部分はCCCの料理情報担当が担います。社内のウェブ会議でその戦略が承認されると、制作がスタートします。ウェブ会議以外でも事業部との意思の疎通を図るように心がけていますね。

いま熱心なのはアクセス解析
サイト内の検索もしっかりと分析

●かわち サイトの改善のためには消費者のニーズを把握する必要がありますが、どのようにされていますか?

●上田 社内のイントラネットでアクセス解析のレポートが公開されているので、社内の人間はそれを利用しておおまかな動向をつかめます。アクセス解析ツールの管理画面にログインして自由に調べることもできるのですが、まとまったレポートのほうがうれしい人は多いですからね。最近アクセス解析ツールがバージョンアップされて、詳細なレポートが定期的に出されるようになったので助かっています。

個人的には、アクセス解析には大変に興味があって、解析ツールが提供しているレポート以上のものを、さまざまな切り口で解析していますね。どのような検索キーワードでサイトにたどり着いているのか、どの食材が人気なのか、おすすめテーマのどれが人気だったかなどを時系列で調べていると、消費者の食卓がイメージできます。また、サイト内の検索機能でどのような検索がされたのかも解析しています。

消費者の皆様は「食」に対してとても敏感です。「食」に関する社会的なニュースが報道されると、レシピ大百科内の検索キーワードにも変化が見てとれるんですよ。

●かわち どういうことですか?

●上田 たとえば、BSEの問題が報道されたタイミングや、鶏インフルエンザが報道されたタイミングで、消費者の皆様の興味は明らかに変化しました。季節のイベントに関してもそうですね。バレンタインやクリスマスの季節は、お菓子のレシピが人気です。

もちろん年間を通しての人気レシピもありますが、季節変動はありますね。旬の野菜や魚介類を使ったレシピは、やはりその季節にアクセスが増えます。春はタケノコ、秋はさつまいもなど、想像できるでしょう?(笑)

●かわち スーパーで白菜を安売りしてたけど、ちょっと変わったレシピはないかしら? って、『レシピ大百科』にアクセスしている姿が目に浮かびますね。わたしも、その1人ですが(笑)。

●上田 そういう方、きっと多いと思いますよ(笑)。「冷蔵庫に残った食材を使って」というコーナーがあるのですが、このコーナーへのアクセスの季節変動は顕著ですね。

モバイルサイトも用意していますので、スーパーで食材を前にして検索というのも可能です。ただ、PC向けサイトとまったく同じというわけにはいきませんが……。モバイルサイトの充実は、これからの課題ですね。

サイト経由の問い合わせにも対応
消費者とのコミュニケーションを重視

●かわち 味の素のウェブサイトでは、メールで問い合わせを受け付けていらっしゃいますよね。

●上田 たいていはそうですね。通勤電車の中や休日、ふとした瞬間に「こういうの、どうかな」とアイデアが浮かぶんです。それらを周囲に話して、形にしていくことが多いですね。

●かわち じゃあ、誰かに話すときにはすでに「企画」になってるということですね。

●上田 ウェブサイト経由の問い合わせに関しては、CC部ウェブ担当が最初の窓口です。料理情報担当には、レシピに関するお問い合わせがまわってきます。

数は年間800件程度ですが、実験してみないとわからない場合には回答にお時間をいただくこともあります。いい加減な回答はできませんから、実際に試してみてから、お答えを差し上げるようにしています。消費者との直接のコミュニケーションは大事なんです。

でも、基本は「お客様の声を聞く」ということですよ。消費者の皆様が味の素のウェブサイトに対してどのような印象を持たれているのか、また、何を求めていらっしゃるのか、という声を聞くために、さまざまな仕掛けを用意しています。仕掛けと言っても、レシピ大百科のトップページでレシピアンケートへのご協力をお願いしたり、レシピのページにアンケートへのご協力をお願いするボタンを付けたり、という地道なことですけどね(笑)。ウェブサイト以外でも、グループインタビューを実施して、直接、消費者の皆様の声をお聞きする機会を作ったりしています。Club Ajinomotoに登録されているロイヤルカスタマーへのアンケート調査も実施しています。

●かわち ウェブサイトのリニューアルも、そのような声を反映して?

●上田 それだけ、ということはないですけれどもね。2005年の10月にアクセス状況を考慮して、トップページから直接各コーナーのトップに移動できるようにしたり、レシピの検索性を向上したりと、おおがかりなリニューアルを実施しました。ご好評をいただいていますよ。

もちろん大規模なリニューアルは1年に1度できればいいぐらいですが、半年に1度は、どこかを見直して使いやすさを向上させるようにしていますよ。

●かわち そのような積み重ねが、消費者からの信頼をつかみ取っているのですね。

●上田 コーポレート・コミュニケーション部のミッションは、味の素グループの企業価値を向上させるというものです。味の素では、社会やステークホルダーとのコミュニケーション活動を通じた相互理解が、企業価値向上のためにはなくてはならないものだと考えています。相互に理解をするうえで、相手の声を聞く、ということは重要ですよね。

●かわち レシピ大百科を、今後どのように展開していくかという計画はあるんですか?

●上田 レシピ大百科をご利用いただいているのは、30代から40代の女性が中心です。今後は、20代の女性や男性や高齢者の方にもご利用いただけるようにしていきたいと考えています。また、モバイルにも力を入れていきたいですね。レシピ大百科をより見やすく、よりわかりやすくすることで、食生活を豊かなものにするという味の素の姿勢を伝えていきたいと思っています。

また、ウェブサイトを通じていただいた消費者の皆様の声を、味の素社内にもフィードバックしていきたいと考えています。消費者の皆様と味の素グループをつないでいくことが、結果的に、味の素グループの企業価値を向上させることにつながっていくと思います。

●かわち ありがとうございました。

※この記事は、『Web Master 完全ガイド Vol.2』掲載の記事です。

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時(2005年3月)のものです。

レシピ大百科
月間約1,300万ページビューの人気サイト。10,000個以上のレシピデータベースを検索できるほか、季節に合った献立やさまざまなテーマでの特集ページが多数ある。
運営:味の素株式会社
味の素株式会社の会社概要(2005年3月31日現在)
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