かわちれい子のウェブマスターのお仕事
108位から一念発起して大学サイトのユーザビリティ調査で2年連続1位獲得/中央大学

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

中央大学ウェブマスター 渡辺 純一氏

取材・文:かわちれい子(CreatorsNet)
PHOTO:津島 隆雄

会社によって大きく異なる「ウェブマスター」の実態。所属部署は? 予算確保は? ワークフローは? サイトの目的は? 注目しているテーマは? さまざまなウェブマスターの姿を見ることで、これからのウェブマスター像を見出したい。

中央大学のウェブサイトは、日経BPコンサルティングの実施した「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2006/2007」において総合スコアで第1位を獲得している。

2005年に続いて2度目の1位に導いたのは渡辺 純一。1996年にウェブサイトを立ち上げ、現在は広報課に相当する入学センター事務部でウェブマスターを務める渡辺氏に、大学サイト運営のポイントを伺った。

中央大学ウェブサイトの基本的な情報はこちらを参照

ユーザビリティ調査で108位
「なんとかできないのか」でリニューアル

●かわち 最近の大学のウェブサイトって、デザインはしっかりしているし、情報も充実していて、一昔前とはだいぶ違ったなあという印象があります。

渡辺 純一氏
中央大学 入学センター事務部 入学企画課 担当課長

●渡辺 そうですね。中央大学のウェブサイトは2005年9月に今の形になったのですが、実は、2004年秋に発表された「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2004」では108位と、下から数えたほうが早いような順位だったんですよ。

●かわち そんなに下位だったんですか?

●渡辺 はい。理由はわかっていたんですが、やっぱりショックでした。学長からも「なんとかできないのか」と言われたりして、これはもう、本腰を入れて一気にやらないとダメだな、ということになって、半年ぐらいかけて作業しました。

●かわち 半年で全部リニューアルされたんですか?

●渡辺 全部というわけではありません。最初は全体のトップページと各部署のトップページから手をつけて、リニューアル公開の時点では2000ページぐらいだと思います。

●かわち 結構なページ数ですね。

●渡辺 「やろう」と決まったのが2005年の1月ですが、この時期、大学は受験シーズンなんです。2月はほとんどの時間をそちらの業務にとられてしまうので、本腰を入れて取り組めるようになったのは、3月になってからなんですよ。4月に外部の業者さんにコンペ参加を打診して、業者さんが決まったのが結局6月だったので、実質、3か月なんですけどね(笑)

●かわち 3か月ですか!

●渡辺 実はまだ続きがあって、最終的なデザインが決まったのは、8月なんです。なので、ページ制作は本当のところは1か月程度ですね。

●かわち それはタイトなスケジュールですね。

●渡辺 はい。本当にできるのかな?と、ちょっと心配でしたけど、各部署とできるだけ多く話し合い、各部署の状況を十分に加味したうえで、開発に関する意志決定はすべて広報課(当時。現在は入試企画課)でやるということにしたので、そのあたりはスムーズでした。ただ、デザインを決めるときには、いろいろな人の意見を参考にしました。

●かわち どのような人の意見を参考にしたんですか?

●渡辺 一番影響が大きかったのは、中央大学を受験しようとしている高校生です。彼らは大学のステークホルダーの中でも特に重要な層なので、彼らの意見は影響も大きかったし、参考にもなりました。

●かわち 具体的には、どのような意見だったのか、聞かせていただけますか?

●渡辺 デザイン案って、いくつか考えますよね。たとえば、3つの方向性があるとして、僕らがいいと思ったのは、一番とんがったものだったんです。リニューアルするんだから、新しさや躍動感を感じさせるものがいいよね、と。でも、彼ら(中央大学を受験しようとしている高校生)に聞くと、僕たちとはまったく違うデザインがいいと言うんです。それは、決して派手ではないけれど、情報はきちんとわかるというものなんです。堅実というか、一番地味なものを選んだんですよ。それが、今のデザインです。

●かわち 意外ですね。

●渡辺 ええ。僕たちもびっくりしました。地味すぎやしないか? と心配だったんですけれど、今となっては彼らのほうが中央大学のウェブサイトのあるべき姿を的確にイメージしていたのかもしれないと思います。

私たちはとんがったデザインを選んだ
受験生は情報がわかる地味なデザインを選んだ
中央大学のウェブサイトのあるべき姿を
的確にイメージしていたのは彼らのほうだった

情報発信担当は50人以上
将来は約700人の教員をコンテンツに

●かわち サイトのアクセス解析などは?

●渡辺 ある程度は把握しています。あまり細かい数字にこだわるのもどうかと思うので、ざっくりつかむようにはしています。

●かわち 季節的な変動ってやっぱりあるんですよね。

●渡辺 当然、出願時期はアクセスが増えますね。志願状況をデイリーで更新しているので、1月~2月は多くなります。それ以外は、ニュースの更新が増える3月から5月も多いですね。

●かわち どのようなニュースが多いんですか?

●渡辺 イベント告知などが多いですね。今となっては笑い話ですけれど、実は、今のウェブサイトの運営方法にするまでは、広報が知らないイベントが開催されていたことがあったんです(笑)。

大学で起きていることの情報がすべて広報に集まる仕組みの必要性はずっと感じていて、リニューアル時にその仕組みも一緒に作ったんですよ。各部署の担当者がウェブサイトに掲載したいニュースを登録できる仕組みです。情報によっては、ウェブサイトに掲載するだけでなく、マスメディア各社に対してプレスリリースとして配信したいこともありますよね。そういうときには、入力時にそのようにチェックをつけてもらうんです。すると、広報の立場からマスコミで取り上げてもらいやすい表現などもアドバイスできるし、情報も広報に集まるし、なかなか便利な仕組みです。

中央大学ではウェブサイトに掲載するコンテンツを入力する際に「Information Card」という仕組みを利用する。いわゆるCMSだが、どのサイトに情報を掲載するかなどもこの画面から設定できる。入学企画課(広報課)が管理する部分に関しては、掲載の可否がチェックされる。

●かわち そのシステムは、何人ぐらいの方が使っていらっしゃるのですか?

●渡辺 各部署にいますので、100人はいないと思いますけれど、50人は下らないですね。

●かわち それだけの人数が情報発信担当なんですね。

●渡辺 そういうことです。ただ、彼らは大学のイベントやニュースだけを発信しているのではなく、教員の情報も代わって発信していることもあります。大学には、教員というとても有力な「コンテンツ」がありますから、教員も合わせると結構な数になります。

●かわち 教員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?

●渡辺 専任だけで700人です。ひとりひとりの紹介ページを作ろうと思ったら、それだけの数のページが増えることになります。でも、やりたいんですよ。大学は教育機関でもあり、研究機関でもあります。いろんなところでいろんなことを研究している教員がいるわけで、彼らの研究を紹介して、中央大学のことを少しでも身近に感じてもらえればと思っています。

教員すべてが有力な「コンテンツ」の持ち主

今秋には学生がイベントやニュースを更新
「拡大トップページ」で管理負担を軽減

●かわち 中央大学のウェブサイトは、いつ頃立ち上がったんですか?

●渡辺 1996年の4月頃だったと思います。当時、「中央大学のサイト」と称するウェブサイトが、学生が勝手に作った非公式なものも含めて3つも4つもあったんですよ。中央大学についての間違った情報が流れるのは困るので、ちゃんとした大学の情報をきちんと出すために立ち上げたというのがスタートです。

●かわち 渡辺さんは当初から広報課でウェブサイトを担当されていたんですか?

●渡辺 当時、僕は情報センターにいて、外から広報に「やれやれ」と言っている立場でした。どちらがやる、というような線引きもなかったので、広報にお鉢が回ってきたというのが実情ですね。

その頃に比べたらウェブサイトの利用ははるかに進んでいますね。セミナーの開催などをウェブサイトに掲載すると、掲載と同時に参加申し込みがいっぱいになってしまうようなことも起きています。

●かわち 中央大学のウェブサイトはたくさんの人が巻き込まれいてる感じがしますね。

●渡辺 とにかくいろいろな部署の人たちと話し合いました。多言語展開ということで、英語、韓国語、中国語のウェブサイトもあるんですが、これは中央大学の国際交流センターに協力を仰いでいますし、近々、学生が更新できる仕組みも導入する予定です。

●かわち 学生さんが、大学のウェブサイトを更新するんですか?

●渡辺 はい。学生サークルをサポートする学友会という組織がありまして、学生が実施するイベントやニュースを更新する権限を彼らに渡すことを考えています。現在、体育連盟の試合結果を会場から携帯電話でも更新する仕組みをテスト中です。今年の秋くらいから正式に使えるようになる予定です。

●かわち そこまで更新の権限を広げるのも、すごいですよね。

●渡辺 こういった仕組みは、OBやOG、それに、受験生に対してもアピールすることになります。中央大学はこれまで40万人以上の卒業生を送り出していて、彼らは中央大学への愛着が強いんです。海外で活躍する卒業生も、箱根駅伝の結果速報は気になるでしょうしね。

●かわち 渡辺さんご自身がウェブサイトを更新することはないんですね。

●渡辺 ほとんどしません。ただ、箱根駅伝の結果を更新するときは、正月に出勤していました。時期が時期だけにさすがに誰かに頼むというわけにもいきませんので。でも、近いうちには認証の仕組みと組み合わせて、出勤しなくてすみそうです(笑)

●かわち それだけ多くの方が更新しているとなると、管理も大変ですね。

●渡辺 我々は「拡大トップページ」と呼んでいるんですが、入学企画課が管理しているのは全体や各ステークホルダーのトップページと、多くの部署のトップページにとどまらず、各部署のページ全体ということもあり、かなりの範囲で下の階層のページまで管理しています。特にイベントやニュース更新のシステムが自動で生成するページなんかは、それこそたくさんありすぎて、今では9000ページを超えるんじゃないでしょうか。

すべてのステークホルダーにとっての
「なんでも知ってる友達」に

●かわち 大学全入時代なんていわれていますが。

●渡辺 大学の価値は時代によって変わりますよね。当然、社会における大学の価値や姿はどんどん変わるわけです。

インターネットが普及する前の1992年に、僕はイリノイ大学でネットワークを文化的に考えるというようなテーマで研究していたんですが、その頃から考えは変わっていなくて、ウェブサイトは知識と人間のインターフェイスだと思っています。「なんでも知ってる友達」という感覚ですね。中央大学のウェブサイトもそうで、中央大学のウェブサイトを見れば、大学に関わる情報をすべて得られるようにしたいですね。

大学のステークホルダーは、受験生や在学生など直接の関係者を始め、彼らの親御さんや卒業生、共同研究をしている企業のみなさんというように、本当に多岐にわたります。彼らに「なんでも知ってる友達」と思ってもらうためには、まだまだだと思っています。現時点では、理想型の20~30%程度しかできあがっていないと思うんです。10年前に芽吹いた樹木が、藪の時代を過ぎ、やっと幹が太くなって、枝を多く茂らせているという感じです。これからは、葉や花を咲かせ実を結ばせて、より多くの樹木を育てていかないといけないと思います。

●かわち 大学サイトのウェブマスターにとって必要な能力って何でしょうか?

●渡辺 周囲を巻き込む力と体力でしょうか。必要とあれば、何百回とミーティングを重ねてプロジェクトを進めるというような覚悟も必要ですね。

●かわち 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

大学ウェブマスターに必要な資質は「周囲を巻き込む力」
必要とあればミーティングを何百回と重ねる覚悟も

大学Webサイトの歴史と将来
渡辺氏の考える大学Webサイトの歴史と将来。
「藪の時代」では、訪問者が欲しい情報が掲載されていない、各部署が保守しているページ間で統一感がない、更新頻度が低い(部署によりばらばら)、情報にたどり着かない(分類が分りにくい)、情報発信部署に技術要員が不足している、機器環境やソフトウェア環境が不足しているなどの問題が発生してくる。
その後サイトの構造や更新のフローが構築されて役割分担が明確になって「幹と枝の時代」になり、コンテンツが蓄積されて「葉と花の時代」と進む。
中央大学はこれから「実と新たな芽の時代」、そして「Web完成期」へと向かっていく。

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中央大学ウェブサイト概要

さまざまなステークホルダー向けに整理された情報はさすがユーザビリティ調査1位。さらに英語、韓国語、中国語など各国語対応もしている巨大サイト。RSSフィードも提供しており、サイト内検索はpowered by Google。

  • URL:http://www.chuo-u.ac.jp/chuo-u/index_j.html
  • 目的:大学、授業、学生生活、就職その他大学関連の情報提供
  • 総ページ数:9000ページ以上
  • 訪問者層:受験生、在学生、OB/OG、社会人の受験生/受講生、教職員など
  • オープン:1996月4月

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