かわちれい子のウェブマスターのお仕事

名物ウェブマスターが語るHondaウェブサイトの4つの目的と運営術とは?

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

Hondaウェブマスター 渡辺 春樹氏

かわちれい子(CreatorsNet)
写真:津島 隆雄

会社によって大きく異なる「ウェブマスター」の実態。所属部署は? 予算確保は? ワークフローは? サイトの目的は? 注目しているテーマは? さまざまなウェブマスターの姿を見ることで、これからのウェブマスター像を見出したい。

「集客」「販促」「コミュニティ」「ブランディング」
4つの目的と目標をサイトに持たせています

ウェブマスターは宣伝販促部
予算の大きい部署に所属すべし

渡辺 春樹氏
本田技研工業株式会社
日本営業本部 宣伝販促部 
ホームページ企画ブロック ブロックリーダー
営業主幹

●かわち 今年、ウェブサイト開設10周年だとか。

●渡辺 オープンしたのが1996年7月10日だったので、ちょうど10年ですね。七夕に合わせてオープンしようと思ってたのが、伸びちゃったんですよ。

●かわち 当時はどんなサイトだったんですか?

●渡辺 当時は主要なページをデータベースから引っ張ってきて動的に生成するということをやっていました。今から考えると、すごいことをやってましたね。。

●かわち 今は静的なHTMLが中心ですよね?

●渡辺 ええ。ウェブサイトを開設して半年ぐらい経った頃、S-MXが発表になったんです。まだインターネットなんて普及してないから、どうってことないだろうと思ってたら、とんでもない。S-MXの情報をウェブサイトに掲載したら、たくさんのアクセスが集中して、あっという間にサーバーが落ちちゃって。それで、すべてのページを自動生成はムリだってことになって、静的なHTMLで構成するようになったんですね。

●かわち やっぱり、新車が発表になるとアクセスは増えるんですか?

●渡辺 そりゃあ、ねえ。ちょうど企業のお昼休み直前に、新車情報をウェブサイトに掲載するんですよ。それがYahoo!ニュースのトピックスなんかに掲載されると、すごいんですよ。最近では一日で70万人を集めたすごいクルマもありますよ。

●かわち ところで、渡辺さんがHondaのウェブサイトを担当されたきっかけって、なんですか?

●渡辺 ネットスケープ1を見て、コミュニケーションが変わる、と思ったんです。で、企業のコミュニケーション手段として、これを使わない手はないな、と思ったんですよ。そもそも90年代の初めくらいから、テレビCMが効かなくなってきたな、という印象があったんですよ。それを補完するというか、そういう手段として、インターネットは使えるなと。

●かわち そう思ってたの、渡辺さんだけだったんですか?

●渡辺 そんなことはないですよ。インターネットに目を付けていた人は社内外に結構いて、そういう人たちと勉強会をやったりして、どんなのがいいかねえ、と試行錯誤してましたね。ちょうど1995年にモーターショーが開催されて、それもインターネットを利用するいいきっかけになりましたね。それから、社内で部門間プロジェクトを立ち上げたんです。

●かわち どんな部門が関わってたんですか?

●渡辺 宣伝、マーケティング、広報、情報システムなど、ちょうどいいバランスだったんじゃないかと思いますよ。Hondaには、モノを作ることにかけてとても優秀な人たちがたくさんいますからね。そういう人たちも巻き込みながらでした。今は、宣伝販促部のホームページ企画ブロックとして業務にあたっています。

ウェブサイトでは会社全体としていかにコミュニケーションをとるかが大切なんで、ウェブマスターがどの部署にいるべきかにはこだわってません。強いて言えば、お金を持っている部署に所属すべし、でしょうか(笑)。

ウェブサイトは今年で10周年
もちろん記念イベントも企画

●かわち そんなこんなで、10周年なんですね。記念イベントとかはやらないんですか?

●渡辺 やりますよ。Hondaのウェブサイトのトップページは、開設当初からイラストレーターのBowさんによるイラストを掲載しているのですが、今年は一年かけて、これまでに使ったイラストを一か月ずつ、順番に登場させるつもりです。7月から始まったので、今は3枚目ですね。あと、カレンダーも作るんですよ。同じくBowさんのイラストを使ったカレンダーです。これは、ウェブサイトでプレゼントキャンペーンをやるので、ぜひ、応募してください。

他にも、7月にはトップページの週末バージョンというのを公開しました。

●かわち 週末バージョン、ですか?

●渡辺 そう、週末バージョン。毎週金曜の夕方から月曜の朝まで、ウェブサイトのトップページをですね、平日とは違った趣にしているんですよ。

●かわち お客さんの反応はどうですか?

●渡辺 反響は大きいですよ。ふだんのトップページとはまったく違いますからね。加えてトップページでは「世界一短いショートムービー」も展開中なので、それに気付いてもらえると嬉しいんだけれど、誰も気付いてないだろうなあ(笑)

10万ページを10人で管理
週替わりで担当する役割を交代

●かわち Hondaのウェブサイトは、ページ数も、多いですよね。どれぐらいの人数で管理されているんですか?

●渡辺 Flashなど、単純に1ページと考えられないものもあるので詳しくはわからないんですが、8万~10万ページはあるんじゃないですかねえ。管理しているスタッフは10人です。最初は5人だったので、10年で倍になりました。

●かわち それだけのページを10人で切り盛りするとなると大変じゃないですか。

●渡辺 役割を分担しながらなので、大変、というわけでもないですよ。ウェブマスターの業務は、大きく分けると3つなんですね。サイトを更新する「アップデート」、フォームから入力されたりメールで寄せられたりするご意見などに目を通して応対する「メールマスター」、サーバーやCMS、アンケートシステムなどを管理する「プラットフォーム保守」の3つです。この他にモバイルサイトがあるので、まあ4つと考えてもいいですね。これらの業務を、一週間ごとに交代でやっています。

●かわち 一週間ごとに交代ですか?

●渡辺 だって、飽きちゃうじゃないですか、同じ仕事ばかりしていると(笑)。今週は誰がどの担当かわかるように、デスクに旗を立ててるんです。その旗がまわって行くんですね。

ウェブマスターって「知識の集積」なわけですよ。どうやって知識を集めてそれを共有するか、という問題をクリアしようとした結果です。

Hondaのウェブマスターの「やるべき仕事」は、ウェブサイト全体のナビゲーションを作ったり、メール配信やアンケートなどのプラットフォームを提供したりするということなんですね。これら「やるべき仕事」を、業務レベルに落とすと、さきほどの4つになるわけです。

まあ、いろんな部署がいろんなページを作りたいと言ってきますから、それらに対する社内コンサルティングも業務といえば業務ですね。たとえば、つまらないマス広告をやるよりもネット広告を薦めるとかですね。でも、社員はどんどん異動で入れ替わりますから、コンテンツの作り方なんかは教え続けるしかないんです。ぼくは、それがウェブマスターが存在する価値だと思ってます。

サイトの目的は4種類を明確に設定
全ステークホルダーが対象ユーザー

●かわち ところで、Hondaのウェブサイトは、どんな目的をもって運営されているんですか?

●渡辺 「集客」「販促」「コミュニティ」「ブランディング」の4つの目的があって、それぞれ目標を設定しています。

「集客」は、ウェブサイトを自社が持つ大きなメディアだと考え、このメディアを使ってくれるお客さんを増やそう、というものです。目標は、2010年までにHondaサイトの訪問者数を年間5000万人以上にすることです。

「販促」は、Hondaの製品を買ってくださるお客さんに、ウェブサイトが少しでも貢献できればと考えています。目標は、Honda製品の購入時にHondaのウェブサイトを見た人の割合を50%にすることです。

「コミュニティ」は、長期的なコミュニケーションをとっていけるようにするというものです。自動車に限ると、買い換え周期がだいたい6年から7年ですから、長期的なコミュニケーションをとるということは、メーカーにしてみれば重要なことなんですよ。目標設定は難しいんですが、今は、2010年にメルマガの購読数をのべ100万人というところにしています。

「ブランディング」は、そうですね、やっぱり、良いウェブサイトだって言われたいじゃないですか(笑)。2010年に「良いサイト」のトップ10に入りたいというのを目標にしています。

●かわち Hondaのウェブサイトの対象は「自動車が欲しい人」だけじゃないような気がします。

●渡辺 Hondaも大きな会社ですから、さまざまなステークホルダーがいるわけです。車やバイクなどの製品を販売している販売店やHondaユーザーだけでなく、Hondaに入社したい学生さんや株主の方もそうですね。アナリストもそうだし、従業員だってHondaのウェブサイトのターゲットです。Hondaに直接かかわっている人ばかりでなく、Honda従業員の家族も対象ですね。ありとあらゆるステークホルダーが、Hondaのウェブサイトの対象です。

●かわち 従業員の家族まで広げると、対象はとても広がりますね。

●渡辺 言うなれば、Hondaのウェブサイトは「みんなで作るHondaの百科事典」ですね。いろいろなステークホルダーがいて、さまざまな情報を開示して、その情報に対してご意見などを聞きながら改訂を重ねる百科事典です。ウェブマスターは、その百科事典の編集長ですよ。企業のウェブサイトですから、会社の役に立つ編集をしなければなりません。そのあたりの舵取りをするのが、おもしろいですねえ。

●かわち Hondaのウェブサイトには、社内報のようなページもありますね。

●渡辺 私、昔、社内報の編集長をやってたんですよ。その名残ですね。ウェブサイトにプレスリリースを掲載するということもやりましたねえ。

●かわち 今じゃ、普通ですよね。

●渡辺 当時はそうじゃなかったんですよ。広報部にかかってくる電話の多くが、Honda製品に関するプレスからの問い合わせだったんですね。で、郵送したりファックスしたりという作業に多くの時間が費やされていたんです。これを、プレスリリースをウェブサイトに掲載することによって解決しようとしたんですね。今では、過去30年分くらいのプレスリリースがサーバーにあるんじゃないでしょうか。

●かわち 30年分はすごいですね。

●渡辺 基本は「オープン」です。もちろん、本当の機密情報はありますが、それ以外はオープンにしたほうがいいと思っています。たとえば、リコール情報なんて、メーカーにとってはあまり公開したくない部類に入りますが、それでも、公開しておいたほうが、みんなにとって利益になる。利益になることは、公開しておいたほうがいいですからね。リコール情報のウェブサイトでの公開も他のメーカーに率先してやりました。

アクセス解析は関係者に完全公開
競争意識が産むより良いコンテンツ

●かわち 最近では「アクセス解析」といえば、必ずHonda、特に渡辺さんの名前が挙がりますね。

●渡辺 過去の蓄積がありますからねえ。知識の集積がウェブマスターですから、比較対照できるものがあるというのは、我々の強みですね。

アクセス解析って、何かと比較しないと意味がないわけですよ。Hondaでいうと、4年前のモデルチェンジ時と比較する、ということも意味があるわけです。私たちのように10年間というのはムリにしても、前年同月と比べてどうか、というようなことをやらないと、意味がないんですね。

●かわち Hondaでは、アクセス解析のレポートは制作業者でも他セクションの人でも見られると聞きました。

●渡辺 ええ。自分が作ったものだけでなく、よそのコンテンツもどうなっているのか見ることができますし、原則として、アクセス解析は自分でやってもらっています。わからない場合はコンサルティングもしますが。アクセス解析のレポートをフルに公開しているのは、そうすることで、競争が生まれるからです。やっぱり負けたくないですよね、「となりの部署は競争相手」って。そうなると、どんどんウェブサイトが良くなっていくわけです。競争なきところに進化なし、ですからね。まあ、常に試行錯誤ですよ。

●かわち 渡辺さんご自身が、今、関心を持っていらっしゃることってどんなことですか?

●渡辺 企業ウェブサイトって、マス媒体の効果測定ツールとして使えないか、ということですね。

Hondaがキャンページを実施すると、たいてい、マス媒体がセットなわけです。大きなものから小さなものまでさまざまですが、それらの効果として返ってくる「こだま」をウェブサイトで受け取って、解析していくと、マス媒体を使った効果というのが測定できるんですよ。マス媒体の総量とこだまには、かなりの精度で相関関係があるので、そのあたりを分析していき、効果的なマス媒体の使い方、というのを考えていきたいな、と思っています。

●かわち 今日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.2』 掲載の記事です。

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

Hondaウェブサイト

http://www.honda.co.jp/

大きくホンダのクルマ・バイク・汎用製品に分けられて、商品の情報を中心に、広報&IRなどの企業情報やコミュニティの楽しい話題も掲載。

本田技研工業株式会社の会社概要

  • 設立:1948年9月
  • 資本金:860億円(2006年3月末現在)
  • 従業員数:14万4785人(連結、2006年3月期)
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