広告運用のインハウス化ってどうするの? 担当者になったら知っておきたいノウハウ

「インプレッション、CVが伸びない…」一人で悩む広告担当者に送るトラブルシューティング集

広告配信の設定をアクティブに変更したにもかかわらず、思ったようにインプレッションやコンバージョンが増えない…。そんな悩みを一人で抱えているインハウス運用者に向けて、よくある落とし穴と解決方法についてお伝えします。

昨今のプライバシー保護のトレンドを受け、運用型広告のインハウス化(内製化)が改めて注目されています。そこで、本連載ではインハウス支援のサービスを提供しているアタラとオーリーズが、インハウス体制での広告運用におけるヒントを解説します。

本連載の最終回となる本稿では、これまで外注していた広告運用をインハウス化させ、広告配信を開始した方に向けて、インプレッションやコンバージョンが発生しない、または伸び悩んだときのトラブルシューティングの方法を紹介します。

たとえば、インプレッションが発生していない原因として、シンプルな設定ミス以外にも、運用型広告の大半が採用するオークションという仕組みは競合他社の影響を色濃く受けますので、“競り負けている” ことが挙げられます。

このような一般的な原因をインプレッションが出ない場合とコンバージョンが取れない場合にわけて、11例を挙げながら具体的な対策の例も併せてご紹介します。広告配信を開始した後にお困りになった際は参考にしてください。

トラブル項目
インプレッションが出ない or 伸びない1. 各階層(キャンペーン / 広告グループ / 広告)のステータス確認
2. 審査状況の確認
3. 支払い設定の確認
4. スケジュール設定の確認
5. 予算設定の確認
6. ターゲティング設定の確認
7. ターゲットサイズと重複の確認
8. 入札設定の確認
コンバージョンがつかない/取れない/発生しない9. コンバージョンタグの実装状態の確認
10. 実装したタグの動作確認
11. 管理画面のレポーティング設定の確認

インプレッションが出ない or 伸びないとき

キャンペーンのインプレッション数がまったく記録されなかったり、想定していた量を下回っていたり、設定した日予算がほとんど使われないまま翌日を迎えたりすることがあります。

このようなケースでは、これから紹介する8つのポイントを確認・解決することで一般的に配信ボリュームを確保することができます。

1. 各階層(キャンペーン / 広告グループ / 広告)のステータス確認

シンプルですが散見される一般的な原因の一つに、 “配信設定が有効化されていない” という設定ミスがあります。

多くの方はキャンペーンの配信設定をオフにした状態で入稿し、各種設定にミスがないかチェックしてからキャンペーンをオンにする、という手順で作業されるかと思います。しかし、キャンペーン内の広告グループやアセット、広告にも配信設定があり、これらが無効化されたままだと配信が開始されない or 大きく制限がかかります。

まずは、開始したいキャンペーン内の全設定が間違いなく有効化されているかを確認しましょう。

2. 審査状況の確認

ここで言う審査とは、「アカウント」と「広告」の2つを指します。

まず「アカウント」は、センシティブな情報(薬機法の対象など)が含まれる広告主にとっては特に重要なポイントです。ガイドラインに抵触する内容が確認されると、広告プラットフォーム/メディア側が当該のアカウントを強制停止させることがあります。アカウントが停止されていないかを確認しましょう。

アカウントが停止されていた場合、再開するための申請フォームなどから強制停止の解除を依頼する必要がありますので、管理画面上のガイドやヘルプページなどに従って申請を進めてください。

次の「広告」審査に関してはどの広告主にも当てはまりますが、入稿した広告の審査が終わっていない or 通過できず不承認になっていることで配信可能な広告がなく、その結果配信が始まらないというケースがあります。

管理画面の中で「広告のセクション」を見ると、広告ごとの審査状況を確認することができますので、配信設定のオン/オフだけでなく審査状況についても確認しましょう。

3. 支払い設定の確認

インハウス移行直後に陥りがちなのが支払い設定の確認漏れです。

運用型広告の多くはクレジットカードでの支払いが一般的ですが、登録が済んでいなかったり、他の用途で上限金額まで使ってしまっていたりすると広告の配信は行われません。

また、デポジット型の銀行振込や請求書での支払いにおいてもトラブルがあると広告配信が停止されますので、支払い設定に問題がないかを確認しましょう。

4. スケジュール設定の確認

スケジュール設定では以下の2点を確認します。

  • キャンペーンの配信期間
  • 管理画面で参照している期間

大半の広告配信システムでは 「キャンペーン」の階層で開始日と終了日のスケジュール設定を行いますが、この項目に誤りがないかを確認しましょう。意図せず以下のスケジュールを指定している可能性がありますので、改めて確認した上で再設定しましょう。

  • 開始日:確認した時点より “後” の日程が指定されていた
  • 終了日:確認した時点より “前” の日程が指定されていた

また、管理画面で参照している期間が過去の日付になっていたことで当日のパフォーマンスが表示されていない、というケースもあります。「過去 ◯◯ 日間」といった設定の場合は配信開始当日が含まれていませんので、参照期間を変更することで開始直後のインプレッションが確認できるようになります。

5. 予算設定の確認

予算が低いと広告が掲載される頻度が下がり、予算の上限を超えないようメディアやプラットフォームが抑制した結果、インプレッションがまるで伸びない、という状態になります。

たとえばGoogle 広告の場合、キャンペーンのステータスに 「有効(制限付き)」と表示されている場合は、予算上の制約によって広告が掲載されていないか、掲載が制限されていることを示しています。

この場合、「6. ターゲティング設定の確認」以降で紹介する対策を取っても基本的にインプレッションは増加しない可能性が高いため、当該キャンペーンの予算を引き上げることをご検討ください。

なお、同時に配信するプラットフォームやキャンペーンが増えると1キャンペーンあたりの予算は必然的に下がり、インプレッションも分散されることで最適化にも長い時間を要することになります。選択と集中で、最も高いパフォーマンスが期待できるキャンペーンに予算を集中させる(あるいは数を絞る)、というのも選択肢の一つとしてご留意ください。

6. ターゲティング設定の確認

主にインプレッションが “出ない” ではなく “伸びない” 場合のトラブルシューティングとして、ターゲティング設定の確認・見直しを実施しましょう。

意図していないキーワードやオーディエンスをターゲットとして設定してしまっていたことで、広告の評価が下がり配信量が停滞することが多々あります。想定していた見込み顧客像とアカウントで設定しているターゲットが一致するのかチェックしましょう。できれば、ターゲットに対して表示する広告の情報は適切なものか、も見直したいところです。

デバイスや地域、年齢、性別、時間帯などを細かく指定していくと広告を配信できる機会が極端に減りますので、手動入札の場合は特に注意が必要です。(自動入札の場合はデバイスの設定のみが配信に影響します)

また、オーディエンスを厳密に指定するリストを使って配信する「ターゲティング機能」に関しては、リストレベルでも審査が行われており、キャンペーン・広告グループ・広告が承認されていてもリストが不承認になっていることがあります。インプレッション数が急減したり、適用した新規のキャンペーンが配信されなかったりした場合は、オーディエンスのリストもチェックしましょう。

※ 顧客リストを使ったターゲティング機能においては、プラットフォームごとにリストの最小要件が設けられている場合がありますので、配信が開始されない場合は該当するプラットフォームの利用要件を確認しましょう。

なお、リマーケティング機能を取り入れたキャンペーンの場合、タグの動作確認も併せて行う必要があります。もしどこかのタイミングからリマーケティング用のタグが正常に動作しなくなっていた場合、配信可能なターゲットが減少し、配信量も徐々に低下していくことになります。

7. ターゲットサイズと重複の確認

「6. ターゲティング設定の確認」にも通ずる内容ですが、本来ターゲティングの設定は適切なユーザーに配信を限定できる魅力的な機能です。しかし、インプレッション数が増えないアカウントの代表的なトラブルとして、過度にターゲットを絞り込みすぎている、という状態が挙げられます。「ターゲットを限定する」という行為は、以下のような意味にもなります。

  • 広告が配信できる機会を減少させる(広告のリーチを抑制させる)
  • 入札金額の相場を引き上げる

もちろんこれら自体は悪いものではありませんが、 “量” に目を向けた場合、緻密なターゲティング設定が仇となり配信が滞ってしまう、というのは運用型広告の登場以来常に発生してきたことです。

2023年現在は各種プラットフォーマーも「ターゲットは広く、入札でパフォーマンスをコントロールする」という方向で舵を切っていますので、1キャンペーンあたりのターゲットサイズはできるだけ広げられるよう設定することをおすすめします。

また、アカウント内でターゲットが重複し、あるキャンペーンにインプレッションが集中する、という状態にも注意が必要です。

厳密に管理することは難しいですが、アカウントに複数のキャンペーンまたは広告グループがあり、キーワードやターゲティングが類似していると、参加できるオークションが重複する場合があります。この場合、トラフィックはいずれかのキャンペーンに送信されるため、他方のキャンペーンはインプレッションが伸長しないことになります。

Facebook 広告(Instagram を含む)に関してはこれを助けるツールが提供されており、アカウント内でどの程度ターゲットが重複しているかを調べられるので、参考にしてみてください。

オーディエンスの重複について ─ Meta ビジネスヘルプセンター

8. 入札設定の確認

少々現金な話になりますが、広告の掲載可否が “オークション” で決まるという仕組みである以上、入札設定についても無視できません。

もちろん、オークションは単純な入札金額だけでなく広告の品質も加味してスコアリングされますが、あまりに競争力がない入札単価を設定するとオークションで競り勝つことが難しくなりますので、以下のフローで見直してみましょう。

  • 設定している入札戦略が自社のビジネス目標にマッチする内容か
  • 設定した入札単価の競争力を調べる

まずは設定している入札戦略の確認です。選択した入札戦略は参加するオークションへ多大な影響を与えますので、コンバージョン数が大事なのか、コンバージョンによって得られる売上が大事なのか、あるいは費用対効果の効率性が大事なのか、自社の状況に合った適切な入札戦略を採用しましょう。

つぎに、設定した入札単価の競争力(相場に対して高いか低いか)を調べます。かねてからGoogleには対応するツールがありましたが、2023年1月からはYahoo! JAPANからもオークション分析機能がローンチされていますので活用しましょう。

両社から提供されているツールは、同じオークションに参加している他の広告主と自社の掲載結果を比較することができます。ここで得られる情報によって、相対的に自社が成功している領域や広告掲載のチャンスを逃している領域を把握できるので、最適な予算や入札戦略を決定する手助けになってくれます。

コンバージョンがつかない、取れない、発生しない場合

ここからは、インプレッションは問題なく記録されているが、コンバージョンの発生が確認できないというシチュエーションにおけるトラブルシューティングです。

9. コンバージョンタグの実装状態の確認

まず確認するポイントは、コンバージョンタグの実装状態、つまり “意図した場所に正しく設置できているか” という点です。コンバージョンが計測できていないときの原因で上位にあげられる理由に、以下のようなものが考えられます。

  • タグを設置する場所をそもそも間違えていた
  • サイトメンテナンス時に意図せずタグが外れた
  • タグマネジメントツールでトリガーの設定を間違えていた

大変初歩的ですが、実際に何度も遭遇しているケースですので、コンバージョンがまったく発生していなかったり、ある日突然獲得ペースに急ブレーキがかかったりした場合などはまずタグの実装状態を確認しましょう。

また、タグを設置した場所だけでなく、タグそのものが正しい状態であるかを確認します。多くはプラットフォームの管理画面からコピーしたタグを貼り付ける、という処理を行いますが、このときに一部のコードが欠損した状態で実装されていることがあります。

コンバージョン数だけでなく、ユーザーが広告経由で商品を購入した際の金額や数量を計測する場合、タグの中身を一部書き換える処理が必要になります。
たとえば、この際に動的な値を挿入して実装した場合、エラーが発生する可能性がありますので、次に紹介する内容と併せて動作確認を行ってください。

10. 実装したタグの動作確認

タグが適切に実装されていることが確認できたら、タグが正常に動作してコンバージョンを測定できる状態かを確認します。検証する方法は以下の3種類です。

  1. 自身のデバイスに表示された広告をクリック > コンバージョンタグを設置したページまで進む
  2. 広告プラットフォームの管理画面でタグのステータスを確認する
  3. 広告プラットフォームが提供する検証ツールを使用する

どの方法でも目的は果たせますが、それぞれについて説明します。

まず、「1. 自身のデバイスに表示された広告をクリック > コンバージョンタグを設置したページまで進む」は完了後に会員登録や商品購入の消込作業が必要になるかと思いますので、関連部門と連携して進めるようにしましょう。

他の検証方法2と3は大変便利な方法ですが、対応するプラットフォームが限られています。Google・Facebook は管理画面上でかんたんに確認できますが、Yahoo! JAPANなど他のプラットフォームでは対応していません。

一旦「2. 広告プラットフォームの管理画面でタグのステータスを確認する」を解説しましょう。それぞれのプラットフォームで以下の通り進むと広告の配信状況に関わらずタグの動作状況がレポートされています。これはキャンペーンをオフにしたままでも確認できます。

  • Google
    • Google 広告にログイン
    • 画面右上にある [ツールと設定] アイコンをクリック
    • [測定] カテゴリ内の [コンバージョン] をクリック
    • コンバージョン アクションの表の [名前] 列で目的のコンバージョン アクションを探し、同じ行の [ステータス] 列を確認
    • ステータスが [コンバージョンを記録中] または [最近のコンバージョンはありません] であればタグは有効
  • Facebook
    • イベントマネージャにアクセス
    • 画面左側の [データソース] アイコンをクリック
    • データの名前とIDを選択
    • 画面中央に表示される [すべてのアクティビティ] グラフと、スクロールして表示されるイベントごとの取得数が表示されていればタグは有効

「3. 広告プラットフォームが提供する検証ツールを使用する」に関してもGoogleとFacebookの2社だけが対応していて、Googleからは「Tag Assistant Legacy (by Google)」、Facebookからは「Meta Pixel Helper」というGoogle Chromeの拡張機能が提供されています。インストールしてそれぞれの機能を有効化すると、タグを設置したウェブページにアクセスするだけでタグの動作状況をかんたんに調べられます。

11. 管理画面のレポーティング設定の確認

最後は意外な落とし穴ですが、タグは適切に実装されているのにそれでもコンバージョンが報告されない場合、管理画面の設定を誤っている可能性があります。

実装したタグの画面を開くと、コンバージョンに関する詳細な設定項目が準備されていますので、この内容を見直してみましょう。意図せず初回のコンバージョンのみを計測する設定になっていたり、測定そのもののステータスがオフになっていると、管理画面に反映されない原因となります。

また、インプレッション同様に管理画面の参照期間も念のため確認してみましょう。当日のデータが含まれない設定にしている場合、せっかくテストコンバージョンを実行しても “0” のまま表示は変わりません。

それでも一向にコンバージョンが報告されない場合、以下のような可能性が考えられます。

  • 管理画面に反映するまでタイムラグが生じている
  • ウェブサイト側の問題でコンバージョンデータが広告プラットフォームに送信されていない

この場合は数十分置いてから再度アクセスするか、ウェブサイトの管理者に協力を仰ぎましょう。

最後に

ここまで、「インプレッションやコンバージョンが発生しない・伸びないときのトラブルシューティング」について解説してきました。インハウス化した広告主の皆さまは問い合わせられる先も限定され、満足なサポートが受けられない状況にある方も多いかと思いますので、本稿が広告配信の初動でつまずかれた際の手助けになれば幸いです。

本文中でも触れていますが、初期導入のハードルはあるものの、有事の際の対応やその後のメンテナンス工数を考えると、インハウス最初期からタグマネジメントツール(特に Google タグ マネージャ)の実装をおすすめします。

広告効果改善に必要不可欠なターゲット戦略の策定やコミュニケーション設計に十分な工数を割り当てられるよう、効率化できる部分に時間を取られないような環境構築を目指しましょう。

本連載は本稿をもって最終回となりますが、お付き合いいただいた読者の皆さま、誠にありがとうございました! 皆さまのプロモーションが大成功されることを心よりお祈りしています。

万が一インハウス体制の広告運用でお困りごとがあれば、執筆を担当したアタラとオーリーズが共同運営するウェブサイトからお問い合わせください。

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