【レポート】Web担当者Forumミーティング 2016 Spring

資生堂のWeb担当者が実践する。失敗しない「Webプロジェクト」の進め方

関係者の方々が、気持ちよく動ける折衝・調整術
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企業のWebサイトの成否は、企画やデザインの良し悪し以外にも、プロジェクトを進めるための関係者間の「折衝力」が大きくものをいう。日々、社内外を問わずさまざまな担当者と関わりを持ち、自社のWebプロジェクトを推進する事業会社のWeb担当者は、具体的に、どんなポイントに気をつけて仕事を進めていけばよいのだろうか。

宿久 和宏氏
資生堂ジャパン株式会社
ダイレクトマーケティング部 Web推進室 コンテンツコミュニケーションG
宿久 和宏氏

「Web担当者Forum ミーティング 2016 春」のオープニング基調講演には、資生堂ジャパンでWeb担当者を務める宿久(しく)和宏氏が登壇。「失敗しないためのWebプロジェクトの進め方」をテーマに、ワンランク上の「折衝力」=「コミュニケーション力」を身につけるポイントを解説した。

プロジェクトを進めるためのコミュニケーションは「はじめが大事」

宿久氏は、資生堂ジャパンにて、商品に関する情報やキャンペーン、プレゼントなどのプロモーションを担うブランドサイトのWeb担当者を務め、アクセス解析やガイドライン策定、システム構築など各ブランドのデジタルマーケティングを支援している。

セッション冒頭で、宿久氏は、Webプロジェクトは大きく、「プランニング」「実行」の2つのフェーズに分かれることを示した。

プランニングは、アイデアを企画にするだけでなく、推進体制や予算などの条件面を詰めていく。そして、実行フェーズでは、プランニングで決めた条件に従い、実際の制作や運用を進めていく

いずれのフェーズにも共通するのが、さまざまな社内外の担当者との「対話」や「コミュニケーション」だ。とくに、取り決めた内容を実行フェーズに移ってから変えることは、「条件変更」となり、納品物の品質や成果、納期、予算などの条件が変わるため、交渉・調整が難航することが多い。

つまり、Webプロジェクトを円滑に進めるためには、企画フェーズにおける「最初のコミュニケーション」が非常に大事なことがわかる。では、具体的に、Web担当者はどのようにコミュニケーションを図っていけばよいのか。宿久氏は、論点(問題点)の整理の重要性を提唱する。

サイトの「成果」を評価するための指標を明らかにすることが大事

具体的には、以下の5軸にそって論点を整理することが提唱された。

  • 「成」…成果
  • 「物」…制作物
  • 「人」…体制
  • 「時」…納期
  • 「カネ」…予算

これらが整理できれば、プロジェクトを推進する上で必要なことが漏れなく話し合える。また、Webサイトがわからない社内の担当者でも、理解や整理できる言葉で問題点が整理される、お互いの理解がより進む効果も期待できる。

では、具体的に各ポイントを見ていこう。

「成果」とは、KPIのこと

1つ目は「成果」だ。Webサイトの結果の良し悪しは、そもそも目標とする基準が定まっていなければ判断しようがない。「成果」とは、どんな結果を求めてサイトを立ち上げたいのかという「目標数値」(KPI)のことだ。

全ての取り組みのベースになるのは「アクセス数」だが、数値を評価する際に気をつけるべきポイントは、以下のように、質だけでなく量も話し合うことだ

  • : 総セッション数、層ユニークユーザー数、総ページビュー など
  • : 目的のページの閲覧率、目的のページヘの遷移率、目的のページの滞在時間 など

「率」に着目する理由は、アクセス「数」の増減に偏らない「質」がわかることにある。宿久氏は、サイト開設などの施策の「Before」「After」のチェックも大事であると述べた。

事後(After)の評価(施策がうまくいったかどうか)を判断するには、事前(Before)を把握している必要がある。

私の場合は、以下のようなKPIの一覧表を作り、マーケティング担当者と成果についての評価を行うようにしている。シート化することの効果は、社内担当者だけでなく、社外担当者との間でも目標の共有化を図ることができる点だ。目標の進捗を把握したり、目標を阻害するための課題を見つけ、改善に向けて議論したりすることが可能になる

制作物のゴールを共有せよ

2つ目は「制作物」だ。成果の達成に向けて何を制作するのかを共有する必要がある。しかし、社内では、責任者や決裁者など、Webサイトの作り方が分からない人に「制作物」を理解してもらうのは難しい面がある。

そこで、宿久氏は、「Webサイトのサイトマップを描き、各ページで必要なことを書き示す」方法を示した。

写真素材の有無、開発の必要な応募フォーム等の有無、コンテンツの更新頻度、作成内容などを、文字でなくビジュアルで説明することを心がけてい

一方、外部の制作会社に制作を依頼する際のポイントは、「運用の有無」「素材作成の有無」「オーダー(指示)とオファー(提案)」3つだ。

よく、「制作会社から良い提案がない」と嘆くWeb担当者の声を聞くことがあるが、よく見ると、細かく指示をしていて、制作会社に提案する隙がなかったということがある。必要に応じ、指示ではなく提案を待つことも重要だ

そして、納品物については、素材ファイル(Photoshopなど画像のソースファイル)の納品有無を伝えることや、のちに担当者が変わる際の引き継ぎ等を考慮し、各提案資料の最終版を納品してもらうことも大事なポイントとして挙げられた。

推進体制の整備戦略を明確に

3つ目は、推進「体制」だ。制作体制や公開までの承認フローを明確にしておく必要がある。

社内の推進体制を整備する際には、事業部門だけでなく、社内の「どの部門」を巻き込めばいいかを明らかにすることが重要だ。とくに、法務や情報システム、広報、お客様相談室といったスタッフ部門は欠かせない。

利用規約や個人情報の取り扱いで法務部門から指摘が入り、公開スケジュールが遅れることもある。

また、Webを公開することにより、事前にどういう問い合わせが想定されるかを、サポート部門と共有する必要がある。

そして、技術的な問い合わせについてサポートが難しければ、外部の協力を仰ぎ、必要なサポート窓口を設ける必要がある

一方、社外の推進体制については、良い「制作会社」とのパートナーシップが不可欠だ。宿久氏は、外注先選定のコンペの注意点を示した。

まず、候補の会社は専門サイトやWeb業界紙、制作会社総覧、知人の口コミなどを頼りに探すが、見極める際には、「サイトの作り(デザイン、画面構成)や会社概要(業務内容)、制作実績などを確認している」という。そして、6~8社をピックアップし、下図のような一覧表にまとめ、社内メンバーに説明し、最終的に3~4社に絞っていく。

次に、オリエンテーションは、公平性を保つ観点から「合同オリエンテーション」がよい。その際、提案依頼書では、発注者側が実現したいことの「答え」を言わないことがポイントだ。

オリエンで答えを示すと、各社の提案内容が同じになり、評価ができなくなるデメリットがある。また、不明点があれば質問がくる。その質問から、この会社はきちんと話し合えるかどうかを見極めることができる

選定の際のポイントは、以下のようなチェックシートを用意し、評価を数値化して感覚だけの選定になるのを防ぐことだという。

サイトのデザインという主観だけで選定すると、運用フェーズになったときに、更新しにくく、運用が大変なつくりだったというケースがある。こうしたことを防ぐためにも、評価を数値化することは重要だ。コンペは候補選定から提案、選定までトータルで約2か月から3か月をかけている

納期の設定は、承認プロセスの考慮が必須

4つ目のポイントは「納期」だ。スケジュールを立てる際に考慮するポイントは、大きく次の3つがある。

  • 「支給素材の提出期限」
  • 「新規制作が必要な素材の撮影、制作等のスケジュール調整」
  • 「サイト公開前のテスト期間」

とくに、動作テスト期間は、スマホサイトのテストが入ると、デスクトップだけに比べて期間が増えることに注意が必要だ。資生堂では、公開日3日前の納品(作業完了)をルールにしている

また、制作会社が作成するスケジュールには、社内の承認期間が考慮されていないため、「公開までの承認フローと承認会議のスケジュール調整を必ず考慮し、反映することが大事」だという。そして、修正などの手戻りのスケジュールも事前に調整しておきたい。

予算配分はすべての鍵

5つ目は「予算」だ。よくあるのが、「追加要件の予算がない」「運用の予算がない」「制作会社から修正費用の請求があった」というトラブルだ。

こうしたトラブルを回避するため、提示予算に「運用費」「予備費」を加えた金額を全体予算とするよう、何があっても困らない予算配分にする必要がある

社内で考慮すべきポイントは、運用と修正を予算に盛り込んでおくことだ。

そして、社外で話し合う際のポイントは、見積項目を、作業内容が見えるレベルまで細かく出してもらうことだ。企画費であれば、企画に費やす日数、制作費は、ページ数、関わるスタッフ、人数・役割、期間など、そして、運用費は更新ページ数や頻度、それにかかる作業内容まで明らかにする必要がある

最後に、宿久氏は以下のように会場にエールを送り、セッションを締めくくった。

宿久 和宏氏
Web担当者はよりマーケティング活動にしっかりコミットすること

企業にとって、Webサイトの活用はますます重要になる。Web担当者だけがWebサイトを理解している状態では、全社的なWeb活用は実現できない。そうした状況を打破するためにも、Web担当者はよりマーケティング活動にしっかりコミットすることが、今後ますます求められてくる

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