マイクロモーメント時代のUX

マイクロモーメント時代のUX #2:刹那的に情報を消費するユーザーの捕まえ方

マイクロモーメント時代のUXは「マイクロコンテンツ」「ファーストコンタクト」「線のコミュニケーション」が重要なポイントになる
須川敦史(ネットイヤーグループ) 2015/12/25 7:00 |
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いまどきのユーザーは、自分の期待に合うコンテンツかどうかを一瞬で判断する。
スマホ時代のユーザーは、極めて衝動的かつ刹那的に情報を消費する。

これは、マイクロモーメント時代におけるユーザー行動の特徴だ。

移ろいやすいユーザーの関心をとらえるユーザー体験とはどうあるべきか。今回は、ユーザー体験を生み出すコンテンツの見せ方やコミュニケーションのやり方について、ポイントを3つに絞って解説する。

本連載「マイクロモーメント時代のUX」では、コンテンツやUXを考えるWeb担当者にとって重要なこのキーワード「マイクロモーメント」に焦点を当て、その対応方法について解説する。この記事は、4回連載の2回目だ。

マイクロモーメント時代のUXに必要な3つのポイント

スマートフォンがもたらした最大のユーザー体験は、「何かしたい」と思った瞬間に、手元にあるデバイスで情報収集や購買を行えることであり、その瞬間である「マイクロモーメント」(Micro Moments)と、それによるユーザー行動の変化をとらえ、あるべきユーザー体験を考えることが重要だ(ここまでは前回の記事で解説)。

マイクロモーメント時代のユーザー体験のあるべき形とはどんなものなのか。

筆者は、それを以下の3つのポイントでとらえている。

  • マイクロコンテンツ
  • ファーストコンタクト
  • 線のコミュニケーション

ユーザー行動がマイクロモーメント化し、情報への欲求が次々と変化していく中で、ユーザーは自分の期待に合うコンテンツかどうかを一瞬で判断する。

そのために、それぞれのユーザーの期待値に合わせて、徹底的に情報を絞り込む必要がある。

ただ、そのファーストコンタクトの瞬間だけでは、ブランド側の伝えたいメッセージをすべて伝えることはできない。

次につながるキッカケをつくりつつ、継続的なコミュニケーションをしていくことが重要だ。

マイクロモーメントとはユーザー側の「枠」

現在でも広告予算の多くがテレビCMに投下されている。

テレビCMでは、15秒・30秒という限られた時間の中で、商品の良さやブランドメッセージを伝える必要がある。

電車の中吊り広告や、コンビニの書棚にならべられた雑誌の表紙には、限られたスペースに、少しでも関心や購買意欲をくすぐる工夫が詰め込まれている。

「枠」の制約が強いアナログメディアでは、ひとつのコピー・ひとつのビジュアルが非常に重要であり、それを扱う専門職として、コピーライターやアートディレクターが存在する。

そして、Webというデジタルを活用したインタラクティブなメディアが登場し、情報は「伝える」から「探してもらう」時代となった。

デジタルメディアは、アナログメディアと比べて「枠」の制約が弱い。いくらでも情報を配置できるうえに、ユーザーが情報を能動的に探しに来てくれているという前提で、「あれもこれも言いたいことのすべてを記載する」コンテンツが大量に生産されている。

しかし、それらのコンテンツの多くはまともに見てもらえていない。ユーザーは大量の情報にさらされており、取捨選択を迫られている。

筆者のブラウザーのお気に入りにも「あとで読む」コンテンツが大量に眠っている。マイクロモーメントは、その状況に拍車をかけており、ユーザーは極めて衝動的かつ刹那的に情報を消費している。

マイクロモーメントとは、いわばユーザー側の制約としての、極めて小さな「枠」なのだ。

最小こそが最強――マイクロコンテンツ

ユーザー側の小さな「枠」に入り込むためには、情報を徹底的に絞り込む必要がある。

絞り込まれた、最小こそが最強。それを「マイクロコンテンツ」と呼ぶことにしよう。

ヤフートピックスの見出しが13文字に統一されている、というのはよく知られている事実だが、文字を「読ませる」のではなく「見せる」という意識で編集されているそうだ。

動画広告は、再生開始3秒で7割のユーザーがスキップすると言われている。SNSのタイムラインは瞬く間にスクロールされていく。動画広告は、テレビCMよりもさらに短い6~10秒がデファクトスタンダードとなっている。

また、情報を絞り込むという点では、テレビCMや中吊り広告と同じだが、デジタルメディアにおいて決定的に異なるのは、ユーザーを絞り込めるということだ。逆に言えば、ユーザーを絞り込まないと「枠」に入り込むことはできない。なぜなら、情報選択の主導権はユーザー側がもっているからだ。

ちなみに、ユーザーを絞り込むというのは、関心ごとに絞り込むということである。ただ、関心ごとは刻々と変化していくため、まさにその瞬間の関心ごとに応える必要がある。パーソナリティだけでなく、タイミングが重要なのも、マイクロモーメントの特徴だ。

ユーザーを絞り込むと、コンテンツ1つあたりのリーチ数は減少する。より多くのユーザーにリーチするには、多くのコンテンツが必要になる。コンテンツの生産性を高めるマネジメントが、大きな課題となることは間違いない。

期待を超える――ファーストコンタクト

マイクロコンテンツで、ユーザーの関心ごとや期待に応えることができたとしても、欲しい情報だけをつまみ食いして、満足して離脱するのがマイクロモーメントである。

継続的なブランドコミュニケーションを行うには、ファーストコンタクトで期待を超える体験を提供し、もっと見たくなる、また来たくなる、という気持ちになってもらう必要がある。

ブランドは鮮度を保つことが重要だと言われる。そのためには、常に新しいブランド体験を創出し続けなければならない。まったく新しい商品を開発したり、今までにないイベントを実現させたり。それは大変な労力とコストを要するものだ。

苦労して生み出されたブランド体験は、まずはニュースとして、さまざまなメディアをとおして、ユーザーの元に届けられる。その中でブランドサイトは非常に重要な役割を担う。

一方で、多くのブランドサイトは、トップページにのみニュースを掲載している。検索エンジンやSNSから各コンテンツに直接訪問し、トップページを経由せずに離脱するケースがこれほどまでに多いにもかかわらず、である。それはせっかくのブランド体験の機会をみすみす逃してしまっているということだ。

欲しい情報だけをつまみ食いするユーザー動線のスキマ「枠」に、いかにニュースを忍び込ませるか。工夫が求められる。

とはいえ、まったく新しい商品、今までにないイベントを、常に生み続けることは難しい。ブランド資産としてすでに存在するコンテンツを、それぞれのユーザーにとって新鮮な情報として再活用していくことも重要だ。

ファーストコンタクトでの関心ごとは、検索キーワードや閲覧ページで類推できる。コンテンツの引き出しをたくさん用意しておけば、その関心ごとに近いコンテンツをおすすめすることが可能だ。そのためには、やはりマイクロコンテンツのマネジメントが成功の鍵となる。

ゆるくつながり続ける――線のコミュニケーション

さまざまなユーザーの関心ごとに合う、マイクロコンテンツの引き出しをたくさん用意し、ファーストコンタクトでの期待に応え、期待を超えるブランド体験も提供できた。

それでもまだ、ブランドコミュニケーションを終えるわけにはいかない。たまたま訪問してくれたユーザーのスキマ「枠」に、ほんの少しだけ忍び込むことができただけで、もう二度と訪問してくれないかもしれないからだ。

ファーストコンタクトのあと、つながり続けられる関係性を構築し、定期的に接触機会をつくりながら、継続的なコミュニケーションを行う必要がある。つまり、「線のコミュニケーション」である。

デジタル上でつながり続けるための古典的手法として、会員化とメールマガジンがある。メールの開封率が下がり、もはや有効な手法ではないのでは、と言われたりもするが、多くの現場では、まだまだ有効であるととらえられている。

とはいえ会員化は、ユーザーにとってはハードルが高く、ブランドにとっても、仕組みの用意や個人情報の管理など、決して容易ではない。ロイヤル顧客むけには有効だが、それには至らないユーザーに対して有効であるとは言い難い。

現在は、SNSやアプリなど、ゆるくつながり続ける手法はたくさんある。ターゲットユーザーに合わせて、うまく組み合わせていくことが重要だ。

また、当たり前の話だが、ブランド体験の場はデジタル上だけではない。

リアル店舗やイベントは、より重要なブランド体験の場である。あらゆる場がマイクロモーメントとなり、ファーストコンタクトとなる。そこで期待を超える体験を提供し、場を超えてつながり続けることが理想だ。つまり、「面のコミュニケーション」である。

そのためには、すべてのブランド体験の場で、同じようにユーザーをとらえ、コンテンツを共有し、一貫した体験を実現する必要がある。部門を超えた、ユーザーデータとコンテンツのマネジメントが不可欠となる。

マイクロモーメント時代のUXの実現に向けて

マイクロモーメント時代のUXの実現には、以下のようなステップが考えられる。

STEP 1 マイクロコンテンツを準備する

企業内のコンテンツ資産を集約し、さまざまなユーザーの関心ごと、ブランド体験の場に合わせて、それぞれのマイクロモーメントでのユーザーのスキマ「枠」に入りこめるよう、徹底的に絞り込んでコンテンツ化する。

リアル店舗やイベントは、良質なブランド体験・コンテンツ資産の宝庫であり、多くの労力とコストが投資されている。一方で、デジタルもまた、重要なブランド体験の場として、コンテンツへの投資が進んでいる。部門を越えたコンテンツのマネジメントにより、投資対効果を高めていく必要がある。

たとえば、ワイン・コーヒー・紅茶などの嗜好性の高い商材は、セミナーなどのリアルでのブランド体験が非常に重要で、実際に体験すると関心のレベルが一段階上がることが多い。一方で、関心のポイントやレベルは人によりまちまちだ。それらリアルでの深い体験を、デジタル上でうまくマイクロコンテンツ化できれば、かなりの投資対効果が見込めるはずだ。

STEP 2 ファーストコンタクトで期待に応え、期待を超える

偶然の出会いであるファーストコンタクトにおいて、その瞬間のユーザーの関心ごとをとらえ、その関心にあったマイクロコンテンツを提供する。さらに、まったく新しいブランド体験や、そのユーザーにとって新鮮な情報をおすすめしていくことで、期待を超える工夫をする。

それはデジタルに限定した話ではなく、リアル店舗での接客も同じだ。

たとえばアパレルであれば、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)で提案できるスタイルは限られているが、デジタルコンテンツとタブレット端末を活用して、いま接客している顧客に対して、その瞬間の関心に応え、さらに新しい気づきや発見のある提案を、よりビジュアルに行うことも可能だ。

STEP 3 線のコミュニケーションでつながり続ける

ファーストコンタクトを最後の出会いにしないよう、会員化・SNS・アプリなどをうまく組み合わせながら、つながり続けられる関係性を構築する。

ファーストコンタクトは、デジタル上とは限らない。リアル店舗やイベントなども含めた、あらゆるブランド体験の場で「ユーザーとつながる」「一貫したブランド体験を提供する」という共通の目標をもって、取り組むことが重要だ。

次回は、連載「マイクロモーメント時代のUX」の最終回として、マイクロモーメント時代のUXの実現事例をご紹介します。
今回言及した3つのポイント「マイクロコンテンツ」「ファーストコンタクト」「線のコミュニケーション」を踏まえて、マイクロモーメント時代にふさわしいUXを実現した事例をお楽しみに!

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