マイクロモーメント時代のUX

「父の日キャンペーン」のカスタマージャーニーに学ぶ、マイクロモーメント時代のUX実践

父の日にクラフトビールを贈るユーザーのカスタマージャーニーを描いて「関心が生まれた瞬間」をとらえる
須川敦史(ネットイヤーグループ) 2016/6/16(木) 7:00 | |
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「関心がうまれた瞬間」をとらえる
――これこそが、マイクロモーメント時代におけるマーケティングの極意。

スマートフォンによって、ユーザーは「何かしたい」と思った瞬間に、すぐに情報収集や購買を行える。そんなマイクロモーメント時代のユーザー体験を実現するためのポイントは、以下の3つだ。

  • マイクロコンテンツ
  • ファーストコンタクト
  • 線のコミュニケーション

今回は、今日から実践できる具体的なノウハウを、あるデジタルマーケティング担当者のストーリーを追いながらご紹介する。

本連載「マイクロモーメント時代のUX」では、コンテンツやUXを考えるWeb担当者にとって重要なこのキーワード「マイクロモーメント」に焦点を当て、その対応方法について解説する。この記事は、4回連載の4回目だ。

プロローグ~父の日に向けたクラフトビールの販促

藤田くんは、某飲料メーカーのデジタルマーケティング担当者だ。近年ブームとなっている「クラフトビール」の新商品を、父の日(6/19)に合わせて拡販することが現在のミッションである。

クラフトビールという商品には、次のような特徴がある。

  • 嗜好性が極めて高いカテゴリーで、マスマーケティングが効きづらい
  • ターゲットとなる20~30代はテレビを見ず、スマホで情報収集する

求められるのは、まさにマイクロモーメント時代のUXだ。

先輩社員の前川さんのアドバイスをもらいながら、「クラフトビール」の拡販に挑戦する!

このストーリーの登場人物

藤田 翔太
27歳 男性
デジタルマーケティング担当。勉強熱心
前川 裕美
29歳 女性
藤田くんの先輩社員。デジタルマーケティングにやたら詳しい

Lesson 1
「関心がうまれた瞬間」をとらえたカスタマージャーニーを描こう

藤田くん、おはよう。

クラフトビールの件、どんな感じかな?

おはようございます、前川さん。

ちょうど相談しようと思っていたところです!

これまではプレゼントキャンペーンの企画ばかりやっていたので、何から手をつければいいかわからなくて……。

だよね。こないだの勉強会でもあったように、マーケティングの基本はUXから考えることよ。

まずは、想定しているターゲットユーザーのカスタマージャーニーを描いてみて。

そして、スマートフォンを中心に、刹那的に情報が消費されることをマイクロモーメントというけど、ユーザーの「関心がうまれた瞬間」をとらえることがとても重要なの。

「関心がうまれた瞬間」ですか?

そう。今回は父の日がターゲットだよね?

父の日の「関心がうまれた瞬間」って、どんなとき?

えっと……。そういえば昨日ランチに行ったときに、OL風の2人が母の日について話をしていましたよね。

しかも2人ともスマホをいじりながら

なるほど。なんとなくわかってきたので考えてみます。

ありがとうございます!

そして、藤田くんは、こんなカスタマージャーニーを描いた:

~藤田くんが考えたカスタマージャーニー~

会社の同僚との女子飲みで「父の日に何を贈るか?」という話題に。

どうやら「クラフトビール」を贈るらしい。

「クラフトビールって何?」と思いつつ、恥ずかしくて聞けないので、同僚がトイレにいっている間に、こっそりスマホで「クラフトビールとは」と検索

小規模なビール醸造所で作られたビールのことなのね。

そういえば最近コンビニでも見かけるよね。高いから買わないけど、たしかに父の日の贈り物としてはいいのかも。

同僚と別れた帰りの電車で、どんな商品があるかが気になり「クラフトビール 父の日」で検索。その中でひとつの商品が目にとまった。

父の日にクラフトビールバーを贈ろう。美味しくのめる本格派グラスセット

なるほど。単にビールを贈るのではなく、本格的なグラスとセットで贈ることで、クラフトビールのバーにいるような体験を楽しんでもらうのがコンセプトなわけね。

うちのお父さん、年のわりにオシャレだし、喜んでくれるかも。価格的にもちょうどいいよね。

ただ、父の日はまだ先だし、もう少し他も探してみようかな。

ここ、いつも使っているECサイトで会員登録もしてあるし、お気に入りに入れておこう。

――そして時がたち、父の日の1週間前

いつも使っているECサイトからの「まだ間に合う父の日特集」というタイトルのメールに、見たことのあるクラフトビールのギフトセットが。

他も探してみるつもりが、完全に忘れていた!

もう時間もないし、これを贈ろう。ポチっと♪

Lesson 2
「マイクロコンテンツ」で関心の網をはろう

なかなかよくできているじゃない!

マイクロモーメント時代のUXの3つのポイントもちゃんとおさえられているわ。

え、本当ですか!?

全然だめなんじゃないかとドキドキしていました(ホッ)

ところで、3つのポイントってなんでしょう?

3つのポイントというのは、

  • マイクロコンテンツ
  • ファーストコンタクト
  • 線のコミュニケーション

のことよ。

安心して、いまから順番に解説するから(笑)

まずは「マイクロコンテンツ」からね。

ユーザーの関心は、いろいろな形でうまれるわよね。今回のクラフトビールについても、「クラフトビールって何?」という関心から、「父の日にぴったりなクラフトビールを探したい」という関心まで、ユーザーの知識レベルや、商品購入の検討段階などによってさまざまなわけ。

それを「クラフトビール」というざっくりとしたくくりで考えるのではなく、それぞれの個別の関心ごとに絞り込んだコンテンツを用意して、関心の網を張っておくことが大切なの。

どうして「個別の関心ごと」なのでしょうか?

ユーザー視点とSEO視点で考えるとわかりやすいわ。

ユーザーは、いまこの瞬間の関心に合っているかどうかで、読むか読まないかを判断するの。不要な内容があれば、すぐに離脱するわね。

SEO的にいえば、ユーザーのより具体的な関心に応えているコンテンツのほうが、検索エンジンに評価されやすいのよ。

なるほど!

SEO視点も重要ですよね。いくらコンテンツをつくっても、検索でヒットしないと意味がない。

そうね。ところで、検索時に指定するフレーズ、いわゆる検索クエリは、「DOクエリ」「KNOWクエリ」「GOクエリ」の3つに分けられるのよ。

  • DOクエリ: 商品購入などのアクションにつながる検索行動
  • KNOWクエリ: 情報収集や悩み解消のための検索行動
  • GOクエリ: 特定のWebサイトや場所を探す検索行動

それぞれに合ったキーワードとコンテンツを用意することが重要なの。

今回の場合だと、「クラフトビールとは」がKNOWクエリで、「クラフトビール 父の日」がDOクエリ、ということですね!

その通り!

そして、DOクエリに応えるコンテンツは、置かれる場所がとても大切よ。

「欲しい」と思った瞬間に購入やお気に入り登録などのアクションをしてもらえる場所ね。今回の場合は、ユーザーが普段から買い物をしているECサイトが理想的だといえるわね。

Lesson 3
「ファーストコンタクト」で心をとらえよう

続いて、2つ目のポイントは「ファーストコンタクト

世の中にゴマンとあるコンテンツのなかで、幸運にも自分たちのコンテンツを見つけてもらえたとしても、欲しい情報だけつまみ食いして去られたら意味がないわよね?

はい。商品を買ってもらわないと困ります(苦笑)

そこで大事なのが、ファーストコンタクトで、ユーザーの「本当の関心」をとらえて、それに対する魅力的な提案につなげることなの。

たとえば今回の場合で、「クラフトビールとは」で検索したユーザーの「本当の関心」は何だっけ? 単にクラフトビールについて知りたかったわけではないよね?

はい。そもそも父の日に何を贈るかが「本当の関心」です。

……あ、そういうことか!

つまり「クラフトビールとは」で検索したユーザーの「本当の関心」が父の日であることがわかれば、そのまま父の日ギフトの提案につなげられるということですね。

でもそれってどうやって……。

「本当の関心」を正確にとらえることは難しいけど、推測することはできるわ。ポイントはタイミングとパーソナリティ。

父の日のギフトを探すのは、1~2週間前からといわれているわよね。だとすると、そのタイミングでクラフトビールについて調べる人は「父の日」に関心がある可能性が高い

あとは、オーディエンスデータを活用して、たとえば過去に「父の日」で検索したことのあるユーザーに対して、父の日ギフト提案ページのバナーを表示する、ということもできる。

なるほど。なんかデジタルマーケティングって感じですね!

当たり前でしょ(笑)

ただ、「本当の関心」をとらえて提案につなげたとしても、最終的にユーザーの心をとらえるのは魅力的な提案よ。そういう意味では、ユーザーの「本当の本当の関心」は「お父さんが喜ぶ」こと

これだけは忘れないでね。

Lesson 4
「線のコミュニケーション」で長くつながろう

3つ目のポイントは「線のコミュニケーション

さっきの話みたいに「クラフトビールとは」で検索した人に父の日ギフトを提案して、理想はそのまま購入してもらうことだけど、現実はそうはいかない。

はい。他の人がつくったカスタマージャーニーでよく見るパターンですが、ずっと疑問に思っていました。

なので、ぼくが作ったカスタマージャーニーには「他も探してみる」というプロセスも入れています。

そうやって離脱したとしても、一度接点をもったユーザーに再度アプローチする方法はたくさんあるわ。

今回の場合でいうと、藤田くんのジャーニーのとおり、お気に入り登録までしてくれたユーザーにはメールでのリマインドもできるし、そこまでいかなかったユーザーには、リターゲティング広告という手もある。

たしかに。でも、すでに他で買ってしまっている人には無駄打ちになりますよね。

そのとおり。なので、ここでもポイントとなるのは、タイミングとパーソナリティ。

ECサイトでの父の日ギフトの購入は、1週間前くらいがピークなので、そのタイミングをうまく見計らう必要があるわ。

あとは、メールやリターゲティング広告の反応も含めて、すべてのユーザー行動は、そのユーザーのパーソナリティとしてとらえて、次に活かすことができるの。

なるほど。父の日の一週間前のメールに反応したユーザーは、来年の父の日でも同様の行動をとる可能性が高いと。

遠いなぁ……。

それだけじゃないわ。父の日にクラフトビールを探すユーザーが「ギフトでは新しい体験を贈りたい」という関心をもっているのなら、クリスマスや母の日など、いろいろなギフト提案に展開できるはずよね?

マイクロモーメントでは「関心がうまれた瞬間」に刹那的に情報が消費されるから、そのときにもてる接触時間は非常に限られている。だからこそ、その一瞬の接点を大切にしながら、次の「関心がうまれた瞬間」に再び接点をもてるよう仕掛けをしておくわけ。

セッション内の購買コンバージョンも大事だけど、次のセッションにつながったかどうかも大事、ということですね。

教えてもらった内容をもとに企画書を作ってみます。

ありがとうございました!

エピローグ~マイクロモーメント実践チェックリスト

マイクロモーメント時代のUXを実現する難しさを知った藤田くん。

ただその後、ひとつひとつの積み重ねが、継続的な効果につながっていることを実感し、あの日に「今日から始めた」ことが重要だったことに気づいたようだ。

さあ、あなたも以下のチェックリストを参考に、マイクロモーメント時代のUXを“今日から”はじめて、ライバルに差をつけよう!

マイクロモーメント実践チェックリスト
  • 「関心がうまれた瞬間」をとらえたカスタマージャーニーを描けているか
  • ユーザーの個別の関心ごとに絞り込んだマイクロコンテンツを用意しているか
  • DO-KNOW-GOの3つの検索クエリにわけてキーワード・コンテンツを考えられているか
  • DOクエリに応えるコンテンツを、購入アクションにつながりやすい場所に置いているか
  • KNOWクエリで検索したユーザーの「本当の関心」をとらえて提案につなげられているか
  • 「本当の関心」に応える魅力的な提案ができているか
  • 接点をもったユーザーに、タイミングよく次のアプローチができているか
  • ユーザーのパーソナリティをとらえ、次の「関心がうまれた瞬間」への仕掛けをしているか
◇◇◇
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