編集長ブログ―安田英久
ヤフーさん、検索HTTPS化はいいけど、サイト管理者というステークホルダーを軽視しちゃってませんか?

ヤフーさんの「日本におけるインターネットに欠かせないものとなったプラットフォームとしての責任」とは

今日は、Yahoo!検索のHTTPS化に関するヤフーさんへの一問一答インタビューをお届けします。またそのうえで、一連の動きに見えた「サイト管理者というステークホルダーの軽視」について述べ、「プラットフォームとしての責任」への意識の希薄化について、「ノブレス・オブリージュ」という言葉とともに述べます。

Yahoo!検索のHTTPS化 一問一答

Yahoo! JAPANにおいて8月18日に行われたYahoo!検索のHTTPS化に関して、その意図や背景、そしてプラットフォームとしての姿勢などについて、ヤフーさんにメールで取材を行いました。

まずは、Yahoo!検索のHTTPS化に関する、ヤフーさんの公式な一問一答をご覧ください。

Q1なぜ今回、Yahoo!検索をHTTPS化したのでしょうか、その目的は? また、そうした背景にはどういうものがあったのでしょうか?

A1ユーザーへ、セキュリティやプライバシーの観点からより安全性の高いサービスを提供するためにHTTPS化を実施する運びとなりました。

具体的には、ユーザーから送信される情報を盗み見られたり、改ざんされたりするリスクを防ぐことができます。

またサービス提供者としてはHTTPS対応していないことで、今後、信用面からサービスを利用してもらえなくなる可能性もあります。

Q2すでに8月18日からHTTPS版の検索を利用できるようになっていますが、これは全検索ユーザーが自動的にHTTPS検索を使うようになっていくのでしょうか。

その場合、どのようなスケジュールで移行していくのでしょうか。PC版とモバイル版それぞれのスケジュールを教えてください。

A2はい。スケジュールに関しては未定となります。全体的な影響を見つつ進めていく所存です。

Q3HTTPS検索化によって、どのような影響があるのでしょうか?

検索ユーザーとサイト管理者側、それぞれについて教えてください。もしPC版とモバイル版で異なる点があるようでしたら、それも併せて教えてください

A3ユーザーにとっては、セキュリティとプライバシー保護の強化につながります。

サイト管理者にとっては、リファラーから取得していた情報が、一部取得できなくなります。

検索連動型広告に関して、現時点で広告主に対する影響はありません。

Q4HTTPS化の目的がセキュリティ向上の場合、リダイレクトページのURLやmeta referrerで指定するリファラーURLから検索キーワードを削除することは必須ではないと思います。

なぜ、検索キーワードを意図的にジャンプ先のページに届かないような修正を加えたのでしょうか?

A4ユーザーのプライバシー保護の観点から判断をいたしました。

Q5リファラー内のp=パラメータがなくなったことにより、アクセス解析サービスなどで「Yahoo!検索からのアクセス」という判定がうまくいかなくなるようなことはあるのでしょうか?

また、そうしたことに対応するために、アクセス解析サービスの提供者さんたちとヤフーさんは事前に連携・調整していたのでしょうか?

A5ユーザーが安心して使用できるサービス提供を目的とした変更となりますので、アクセス解析サービスの提供者様との調整・連携は行っておりません。

リファラーに含まれるドメイン名が search.yahoo.co.jp であることをもって、HTTPS化されたYahoo!検索結果からの流入であることをご判定いただくようお願いいたします。

Q6グーグルさんは検索アナリティクスの機能によって、サイトごとの検索キーワードなど検索意図を推測する情報をサイト管理者に提供しています。そうした情報をヤフーさんが提供する予定はあるのでしょうか

A6現時点で、提供する予定はありません。

Q7ヤフーさんは私企業ではありますが、Yahoo! JAPANやYahoo!検索はすでに日本のインターネットにおける「1つのサイト」ではなく、「社会的に責任のあるプラットフォーム」であり、そうした立場が今回のHTTPS化を進めた背景の1つだと思います。

では、そのYahoo!検索が成立する土台としてのコンテンツを作成しているサイト管理者の人たちに対して、ヤフーさんはプラットフォームとしてどういった姿勢やフィロソフィを原則とするのでしょうか

A7すべてのユーザーに対して、課題解決の役に立つ検索サービスの提供を目指して運用してまいります。

Q8今回、Yahoo!検索がHTTPS化されましたが、今後、Yahoo!検索に関してどのような変化や未来を考えておられますか

A8将来・未来については公表いたしかねます。あらゆる可能性を検討して、課題解決に役立つ検索サービスを提供してまいります。

Web担からの取材依頼に対してヤフーさんから「メールでの取材を」という回答があったため、8月19日に質問メールを送信し、8月27日に回答メールを頂きました。

上記の文章は、メール取材での質問と回答を、原則として原文のまま掲載しています(句読点・改行・敬称・サービス名を編集したほか、取材時からQ4とQ5の掲載順を入れ替えています)。

ヤフーさんのプラットフォームとしての姿勢は、これで良いのか

一連の動きとこのインタビューから気になったのは、ヤフーさんの「プラットフォームとしての責任」についてです。

インタビューでの回答にもあるように、今回のYahoo!検索HTTPS化は、日本における検索プラットフォームとしての責任から、セキュリティやプライバシーのために行われたのでしょう。

しかし、その責任は、検索ユーザーというステークホルダーに対してだけでなく、検索が成り立つ根本となるコンテンツを作っている、数多くのブロガーやサイト管理者というステークホルダーに対してもあるはずです。

実際にグーグルさんは、検索のHTTPS化後に、「検索アナリティクス」の機能を強化し、Googleアナリティクスと連携を強め、APIも提供するなど、サイト管理者に対して必要な情報を提供する動きを続けています(これ以外にも、グーグルさんが「プラットフォームであることの責任」に対する意識を強く保とうとしていることは、さまざまな取材から感じられます)。

しかし、ヤフーさんの今回の動きは、検索ユーザー以外のステークホルダーに対する配慮に欠けているように思われるのです。

検索キーワードがどうなるのかといった情報が事前にまったく提供されず、事後にも状況から判断するしかなく、さらにアクセス解析ベンダーとの調整も一切されていなかったというのは、サイト管理者というステークホルダーを軽視しているように思えます。

いまの時代に考える「ノブレス・オブリージュ」

「ノブレス・オブリージュ」という言葉があります。

本来は「貴族には、その地位にふさわしい、成すべき義務がある」といった意味の言葉ですが、私はこの言葉を、本来の意味から少し変化した「役割に応じて、担うべき責任がある」という意味で現代に適用できると考えています。

社会において、役割ごとにそれぞれ果たすべき責任があり、特に大きな役割をもつ者はほかとは異なる責任があるという考えです。これは明文化されておらず、法律で定められているわけでもない、「モラル」です。

(「ノブレス・オブリージュ」という言葉の本来の意味と、それを現代においてどう解釈するかに関しては、「ノブレス・オブリージュは今日的な意味を持ち得るか」が参考になります)

わかりやすいものに、「船長は、事故が起きたときに最後の1人が避難するまで船を離れてはいけない」というものがあります。これは以前には法律で定められていましたが、今は改正されて法律としては存在しなくなっています。それでも船長は、よほどのことがなければ最後まで船から逃げるべきではないというのが一般的な認識でしょう。

貴族や船長ほどでないにしても、程度はともあれ、「役割に対する責任」は今もさまざまあります。

小さいものでは「兄・姉の責任」「先輩の責任」「上司の責任」など、立場の下の者のことを考え・守り・育てる責任は、立場・役割にある者がもつとみなされるものですよね。

少し大きくなると、上場したら「上場企業」にふさわしい責任が生まれます。

我々メディアも、「商業メディアとして事業を行うにあたって、果たすべき社会に対する責任」があります。何らかの客観的な指針に則って正しい情報・適切な情報を選別する、自己の利益のために情報を操作しない、といったものです。

公共サービスもそうですよね。郵便、通信、交通機関などは、社会のインフラとして「対象エリアであまねく・途切れさせず、届ける」責任があります。まぁ、このあたりは法令で定められていたり、管轄官庁から指導されたりするからという面もあります。

でも、郵便配達の人たちはサボると罰せられるから郵便物をちゃんと配達しているのでしょうか? 日本の鉄道は、法律があるから時間を守っているのでしょうか? そうではないですよね。社会インフラとしての役割に対する責任を、少なくとも組織全体として意識しているはずです。

とはいえ、海外にいくと日本ほど鉄道が時間に厳密ではないように、そうした「モラル」は国や文化によって異なりますし、時代によっても変わっていきます。何か明確なものが定まってあるわけではないのですよね。

日本においてヤフーさんが担うべき「ノブレス・オブリージュ」

では、ヤフーさんの「日本におけるインターネットに欠かせないものとなったプラットフォームとしての責任」はどういうものであるべきなのでしょうか。

もちろん、ヤフーさんも私企業です。そのため、利益を追求するのも自然なことですし、すべてのステークホルダーが満足する施策を行うことも難しいでしょう。

でも個人的には、今回の検索HTTPS化については、もう少し「ネットにコンテンツを生み出している」人たちへの配慮があれば良かったのではないかと感じています。

さて、私がそう感じた背景にあったのは、何だったのでしょうか。

  • ウェブ検索のパートナー企業や他の領域から何らかの強制力が働き、やむを得ず動いたから

  • ヤフーさんが「プラットフォームとしての責任」を軽視するようになってきたから

  • 株主やアナリストが評価するのは一般ユーザーに対するわかりやすい部分だけなので、サイト管理者向けの対応は後回しにしたから

  • 検索のネットにおける重要性が下がっているため、これぐらいならいいとヤフーさんが思ったから

  • ヤフーさんの考える「プラットフォームとしての責任」が、私の考える「プラットフォームとしての責任」とは違っただけ

  • いまはまだ表では言えないだけで、さまざまな「プラットフォームとしての責任を果たすためのアクション」を予定している

個人的には、最後の項目であってほしいと思っています。検索のHTTPS化後に少しずつサイト管理者向けの情報を整備していというのは、グーグルさんがそうでしたからね。

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