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最先端の「NFT自販機」を体験! NFTをマーケティングにどう生かす? 最新事例と未来の展望

NFT自販機を体験してみた。またNFTをどうやってビジネスに生かせばいいのか。SUSHI TOP MARKETINGに話を聞いた。

NFTは概念の新規性から、「よくわからない」と敬遠する声が多く聞かれる。加えてNFTの購入には、利用者側がやるべきことが多くあり、NFTをマーケティングに活かそうとする企業にとっても悩みの種だ:

  • 暗号資産取引所の口座を開設
  • 暗号資産(仮想通貨)の購入
  • ウォレットの作成や設定
  • NFTのマーケットプレイスとウォレットとのアカウント連携 など

そんななか、これまでのNFTの概念を変えるようなNFT自販機が誕生した。企業のNFTマーケティングを支援するスタートアップ SUSHI TOP MARKETINGが開発した同自販機は、カプセル内に入っている2次元バーコード(QRコード)をスキャンするだけで、ウォレットや暗号資産を持たない人でも簡単にNFTを受け取れる。

どのような仕組みで、どんな体験ができるのか。SUSHI TOP MARKETINGの代表取締役CEO・徳永大輔氏に開発の背景やNFTマーケティングの利点を聞いた。

QRコードを読み取る“だけ”でNFTを受け取れる仕組みとは?

NFT自販機は、大手町駅直結の大手町ビル2階にあるMIRAI LAB PALETTE (ミライラボパレット)に設置されている。自販機は、2023年5月から半年間にわたり設置される予定だ。

入り口を入って、すぐのところに設置されている

同自販機は1回1,000円で、ハンドルを回すとカプセル1個が払い出される。カプセルには2次元バーコードが印字された紙が入っており、それをスマートフォンで読み込むとNFTが手に入る仕組みだ。

カプセルの中の2次元バーコード
スマホで2次元バーコードを読み取ると、NFTが表示され保存できる

手に入るのは、大学生を中心に人気を得ているNFTプロジェクト「VeryLongAmimals(以下、ベリロン)」の二次創作NFT。ベリロンは顔が長い生き物をモチーフにしたデジタルアートのコレクションで、個人・法人・商用・非商用を問わず、無料で利用できるうえ、二次創作をしても構わない。すでに300種類を超える二次創作の作品があり、今回の自販機で購入できるのは人気クリエイターによる二次創作7点。

人気のNFTプロジェクト「ベリロン」とコラボ(SUSHI TOP MARKETINGのプレスリリースより)

活用しているのは、SUSHI TOP MARKETINGが開発した「One Shot」、及び「ブラウザウォレット」の2つの技術(特許出願中)だ。

「One Shot」は、1つ1つがユニークで一度しか使用することができない2次元バーコードを発行する技術。「ブラウザウォレット」は、ウォレットや暗号資産を持たない人でもブラウザ上でNFTを受け取れるようにする技術だ。

ブラウザ上でNFTの保存はできますが、これはNFTを仮で受け取っている状態です。ウォレットに資産として保存したい場合は、『移行ボタン』を押して、自身のウォレットアドレスを入力することによって送付が可能です(徳永氏)

NFT初心者からすると難しい仕組みに思えるが、つまり一時的な受け取りは2次元バーコードから可能だが、コレクションとしてNFTを溜めておくには、ウォレットを作成しなければならない、ということだ。

「NFTの普及」を目的に自販機を開発

NFT自販機を開発した背景には、NFTを普及させ市場を広げたい狙いがある。国内のウォレット人口(NFTを保有している人の割合)はまだまだ少なく、普及のハードルが高いためだ。とある調査によると、保有率は3.2%ともいわれている。

2022年6月に開催された世界最大級のNFTイベント『NFT NYC』で、海外企業が開発したNFT自販機を見ました。それにインスパイアされ、NFT自販機を自社で作ろうと。当社の技術を使えば、暗号資産やウォレットを持たない方にもNFTを配布できるので、気軽にNFTに触れてもらえると考えました(徳永氏)

SUSHI TOP MARKETING 代表取締役CEO 徳永大輔氏

そのうえでベリロンと組んだのは、多くの人がオープンに楽しめる要素があるためだ。ベリロンのNFTを保有する人々のコミュニティもあり、作品自体の熱量が高いことも決め手の一つだったという。設置後の状況をたずねると、想定以上に反響がいいそう。

TwitterでNFT自販機の存在を知って、ここまで足を運び、10回連続で回してくれた方もいました。また、自販機をきっかけに、デベロッパーさんを中心に商談が生まれています。簡単にNFTでビジネスができるという気づきになっているようです(徳永氏)

NFTを使った最新マーケティング事例

SUSHI TOP MARKETINGでは、大手企業や自治体と組んだNFTマーケティング施策を行っている。

最近の成功事例には、2023年3月に実施した東急電鉄との「開業記念NFTプロジェクト」がある。これは東急新横浜線の開業を記念して、4種類のNFTを無料配布するもの。スマートフォンがあれば誰でも参加できる仕様で、QR付き電車カードの配布やQR付きポスターの貼り出しに加え、東急電鉄の公式TwitterとInstagramでNFTを受け取れるURLを配信した。

東急電鉄の「開業記念NFTプロジェクト」で配布されたQR付き電車カード(SUSHI TOP MARKETINGのプレスリリースより)
NFTの受け取り方(SUSHI TOP MARKETINGのプレスリリースより)

その結果、横浜駅で配布した限定3000枚のQR付き電車カードは、当日で配布が終了する反響に。さらに、東急電鉄が配布したNFTの所有者向けに特設サイトを開設し、限定動画やアナウンス音声といった特典コンテンツの公開も行った。デジタル上で新体験を提供することで、ファンとのロイヤルティの向上を図ったそうだ。

また、京都タワーではNFTを用いた新しいマーケティング手法の実証実験として、2022年12月に「2023年の運試し!京都タワーでNFTガチャ『開運福引き』」を実施した。QRコードを読み取るとNFTガチャを回すことができ、10種類のNFTがランダムで配布される。

京都タワーのNFTマーケティング施策では、NFT画像のほか、お買い物券も配布された(SUSHI TOP MARKETINGのプレスリリースより)

京都府が進めるメタバース共創プロジェクトの一環として、観光とデジタル福引きを融合させた本取り組みでは、20日間で5,906個のNFTを配布したという。無料で参加できることに加え、お買い物券や10%オフ券など消費者にとって価値となるNFTを織り交ぜたことで「やってみたい」という意欲が刺激されたのかもしれない。

徳永氏が描く「NFTマーケティング」の未来

SUSHI TOP MARKETINGでは、新たなマーケティング手法として「トークングラフマーケティング」を推し進めている

これは、これまでのマーケティングの指標であったインタレストグラフ(趣味、興味、関心など人の趣向を基にした人や物のつながり)やソーシャルグラフ(SNSを中心とした人間の相関関係や結びつき)とは異なり、顧客が所持しているNFTや暗号資産を踏まえて広告などのコミュニケーションを取る手法を指す。

トークングラフマーケティングの利点は、大きく次の2点あるという:

  • タッチポイントの創造
  • ロイヤルティの可視化

たとえば、ゲームのアイテムやキャラクターなどとコラボして、そのコンテンツを商品のおまけとしてユーザーに所有させることで、タッチポイントを創造できる。自社商品・サービスと親和性が高い層に人気のあるNFTをおまけにすれば、そのNFTのファン層に商品を訴求することができ、新規顧客開拓が期待できる。

消費者がそのNFTを所有している限り、配布したNFTに動画の視聴権利などのユーティリティを後から付与したり、新たなNFTを送付したりして、継続的に接点をもつことも可能となる。

次にロイヤルティの可視化だが、デジタルマーケティングの普及により、ブランドと消費者の接点は多岐に渡っている。「ニュースレターの購読」「イベント参加」「購買」など、多元的なユーザーアクティビティを個別ユーザーごとに一元管理するのは複雑で難易度が高い。

そこでNFTを活用すると、多元的なアクティビティの管理が容易になる。たとえば「ニュースレター」「購買」「イベント」、それぞれの行動の証として消費者にNFTを配ると、ユーザーのウォレットアドレスにそれぞれのアクティビティを証明するNFTが紐づいて可視化される。

NFTの配布によるロイヤルティ可視化のイメージ(SUSHI TOP MARKETING提供)

自社に関連したユーザーの行動を把握できるので、熱量の高いユーザーだけにイベントの招待券として使用できるNFTを送付するなど、ユーザーへの還元もしやすい。従来、ポイントマーケティングが担ってきたような消費者コミュニケーションを、NFTの活用により、これまでとは違った角度からアプローチできる。

データ収集においても、NFT配布による広告配信においても、氏名や年齢といった従来の個人情報ではなく、匿名のウォレットアドレスを軸にコミュニケーションを行うため、個人情報を侵害することもなくなる。

徳永氏はグローバルを視野にNFTマーケティングの未来を語った

これまでは、Web上の検索や決済の履歴から特定の企業や商品の広告を表示したり、SNSのフォローや『いいね』の履歴から関連広告を表示したりといった手法が主流でしたが、マーケティングされている側からしたら気持ち悪さがありますよね。個人情報の観点でも課題が指摘され、EUやアメリカを中心にクッキーレスが広がっています(徳永氏)

まずは国内企業を中心に「トークングラフマーケティング」の事例を増やしたいと意気込む徳永氏。2023年6月には、NFTマーケティングSaaS「トークングラフマーケター」をリリースしたばかり。

NFTマーケティングSaaS「トークングラフマーケター」の仕組み

これは、企業の担当者が簡単にNFTマーケティングを実行できるシステムだ。NFTをアカウントレスで配布できる同社の独自技術「NFT Shot」を使用して、NFT発行可能リンクを発行することで、新たな顧客とのタッチポイントを創造できるという。

徳永氏は、「NFTの活用により日本が世界と互角に戦える」とも話す。

アニメ・ゲームを中心に、日本には世界に誇れるコンテンツが多くあります。過去の事例では、あるゲームのアイテムをNFTで配布した際、ベトナムでバズり、約1週間で10万個近くの配布に成功しました。NFTは世界で勝負できるポテンシャルがあるのかなと(徳永氏)

◇◇◇

取材を通じて、NFTの難解さが完全にクリアになったわけではないが、SUSHI TOP MARKETINGの技術を活用することで、広くNFTマーケティングを仕掛けることができるとわかった。今後のNFTマーケティングの動向も注視したい。

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