ウェブ制作あるある

ウェブ制作あるある ―― ウェブ制作会社管理の失敗あるあるとその予防策

「あるあるトラブル」は、だれにでも起こり得ること。ダメなウェブ制作会社を見分け、制作会社と良い関係を築く方法を解説
坂本直樹(トランスコスモス) 2016/4/12(火) 7:00 |
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Webサイトのリニューアルなどで、「できます」「やります」と言っていたことを、後になって「できない」「やらない」と言われた経験はないでしょうか。

この記事では、こうした「Web制作あるあるトラブル」を紹介したうえで、こうした問題を避けるための「ウェブ制作会社と良い関係を築く2つのポイント」と、「こんなウェブ制作会社には要注意4つのポイント」を解説します。

記事の後半では、「外注管理表」のサンプルExcelファイルもダウンロードできます。

ウェブサイト制作あるあるトップ3
  1. できます事件 できないなら最初からそう言ってほしい! そんなふうに思ったことはありませんか? ウェブ制作会社の技術力・リソース不足に悩まされるパターンです。

  2. やります事件 「やります、やります」と言われて、待たされたあげくに結局期待はずれだったことはありませんか? ウェブ制作会社の忙しすぎる担当者に悩まされるパターンです。

  3. やっぱりできません事件 相手を信じた自分が悪いのか、安請け合いをした相手が悪いのか……。契約内容の認識違い、ウェブ制作会社内の連携不足に悩まされるパターンです。

あるあるケース① できます事件
Web制作会社の技術力・リソース不足

中堅機械メーカーX社では、製品ラインナップの刷新とそれに伴うキャンペーンの実施を機に、ウェブサイトをリニューアルすることになった。リニューアルの主な目的は、更新作業の大幅な簡略化だ。

ウェブ施策を担当するナカガワさんは、業者選定コンペを実施し、新規の外注先であるP社に発注することにした。

以前より念願だったサイト更新作業の簡略化は、CMSのリプレイスでやっと実現される、はずだった……。

同じような更新作業をCMS内の2箇所でしなければならないのは、なぜですか?

期待していた動作と違う内容に戸惑い、ナカガワさんはP社担当者に訊いた。詳細な仕様策定の打ち合わせを繰り返し、サイト内容の詰めとともに実装機能の確認が始まったときだった。

CMSとサーバーの相性の問題だと思うのですが、現在調査中でして……。

じゃあ、最悪の場合、こちらの作業量はリニューアル前と変わらないってことですか?

すみません、そういうことになります……。

上長にどう報告すればいいのだろう。リニューアルの最大の目的である機能が実装されないかもしれない。しかし、問題はこれだけではなかった。それはリニューアル工程の大詰めに起こった。

すみません、データの入力がスケジュールどおりに終わりそうにありません。

弊社でやりきれない部分は御社で作業していただけないでしょうか……もちろん、その分の費用は差し引かせていただきます。

この期に及んでリニューアル期日を延ばすなど論外だ。

理由を聞けば、P社が受注した別案件のトラブル対応に、当初こちらの案件にと見込んでいた人員をとられてしまっているとのこと。

いうまでもなく、そんなことはナカガワさんの知ったことではない。ナカガワさんはこの制作会社に発注してしまったことを、心の底から後悔した。

あるあるケース② やります事件
Web制作会社の忙しすぎる担当者に悩まされるケース

中堅食品メーカーY社は、2年前にサイトフルリニューアルをウェブ制作会社のQ社に発注して以来、サイトの日常的な更新作業もすべてQ社に外注している。

Q社の担当者カトウさんはかなり多忙で、連絡がとりづらいことが時折あったが、更新業務はスムーズに進行していた。

あるとき、Y社は新商品を発売するにあたり、新規コンテンツの企画をQ社に提案してもらうことにした。

では、だいたいの提案骨子がわかる資料を、来週なかごろまでにメールで送ってください。意見交換して、それをもとに正式な提案書を再来週に提出していただけるとありがたいです。

Y社のサイト運営担当者イシダさんは、カトウさんに新商品の情報と提案期日を伝えた。

わかりました。ちょっと時間的に厳しいですが、おもしろい商品ですし、がんばります!

翌週の火曜の夕方、まだ提案骨子は届いていなかった。イシダさんは、明日の何時ごろになるのか確認しようとカトウさんに電話をした。しかしカトウさんは外出中だったため、携帯電話の留守電にメッセージを残した。

翌日、連絡がつかなかったことへのお詫びとともに、提案骨子を金曜まで待ってほしいというカトウさんからのメールが届いた。イシダさんは、少し嫌な予感がしつつも、待つことにした。

そして金曜日。嫌な予感は的中し、メールは来ていない。何回か電話をしてもカトウさんは捕まらず、イシダさんの退社時刻ギリギリになってコールバックがあった。

すみません。週明けに骨子だけではなく、ある程度かたちになった資料をお送りしますので、待っていただけますか?

金曜のこの時間になってしまっては、待っていただけるも何も、待つしかない。

ちょっと困りますね。来週水曜に上長に確認してもらうことになっているので、必ず月曜の午前中に送ってください。

週明け、カトウさんから届いた提案に、イシダさんは軽いめまいを覚えた。送られてきたのは、ワードのファイル1ページにコンテンツ案の箇条書きが書かれているだけのものだったからだ。

ある程度かたちになっているどころか、まったく話にならない。イシダさんはカトウさんに連絡をとるまでもなく、上長との打ち合わせを延期してもらうことにした。

あるあるケース③ やっぱりできません事件
Web制作会社との契約内容の認識の齟齬、Web制作会社内部での情報共有不足

大手建材メーカーZ社では、コーポレートサイトの海外向けコンテンツを拡充し、さらにBtoB向けECサイトを新たに立ち上げることになった。コンペの結果、この案件は中規模ウェブ制作会社のR社に発注することにした。

R社はこのプロジェクトに、プロジェクトマネージャーのアベさん以下、コンテンツ、UI、システム構築など各分野に数名のプロジェクトリーダーをアサインした。

発注主であるZ社側も、ウェブ戦略担当のフクイさん一人ですべてを管理することはできないので、広報部門やIT部門から数名がそれぞれ各分野を分担することになった。

プロジェクト全体の大枠が決まった後は、各分野の分科会で詳細仕様を詰めることが多くなったが、両社の責任者であるフクイさんとアベさんは、できる限りすべての会議に参加するようにしていた。

複数の分科会のスケジュールが重なることもあるし、他の業務もあるため、フクイさんが参加できない分科会もなかったわけではないが、プロジェクト全体はスムーズに進行。フクイさんは、アベさんをはじめR社のメンバーの一生懸命さや親切さに感謝しつつ、プロジェクトの順調な進捗に期待していた。

いよいよ構築フェーズに入ろうとしていたある日、フクイさんとアベさんは定例会後に二人でミーティングをしていた。

フクイさん、その機能、オプション扱いですよ。

え? 予算内で実装できると、御社のシステム担当のヤマモトさんから聞いていますけど?

いいえ。はじめのご提案でお知らせしたとおり、その機能は別料金です。ご発注内容もそのようになっていると思います。

確かに当初はアベさんの言うとおりではあったが、その後のシステム構築分科会でのディスカッションでR社ヤマモトさんが請け合ってくれていたし、実装作業計画もそれを反映したものになっている。その旨を具体的に伝えたところ、アベさんの反応はこういうものだった。

申し訳ありません。おそらく、ヤマモトがご契約内容をきちんと把握していなかったのだと思います。社に戻って確認します。

後日、アベさんから、R社内での情報共有がきちんとできていなかった点について謝罪があったが、やはり予算内では実装できないとの連絡を受けた。

フクイさんはその機能も実装できるとすでに社内に報告していたが、いまさら予算を追加することもできず、その機能は実装しない方向で計画を進めるしかなかった。

「あるある」を笑う者は「あるある」に泣く

ここで示した3つの「ウェブ制作あるある」、あなたは耳にしたことや、自分で経験したことはないだろうか。

いまや広報・広告活動でウェブ施策をまったく行っていない企業はほとんどないでしょう。そして、企業のウェブ施策担当者にとって、協力会社の選定、管理は欠かせない業務です。

にもかかわらず、こうした問題に頭を悩ませている方も少なくないでしょう。外注して自身の手間が省けると思っていたのに、余計に仕事が増えたなんてことは、程度の差はあれ多くの方が経験されていると思います。

そもそも、こうした「あるある」は、言われてみれば「あるある」と頷けるし、他人事ならばおもしろいのですが、自分では普段はほとんど意識していないことではないでしょうか。だれにでも起こりえることで、発生頻度が低くないにもかかわらず、何らかの理由でなおざりにされていることでもあります。

ひとつひとつの「あるある」は些細なものかもしれませんが、これを放置すれば積もり積もって大きな損失となりえます。また、より複雑で大きな問題の要因となっていることもあるでしょう。

つまり、「あるある」の退治は、スムーズで効果の高いウェブ施策業務に欠かせないものなのです。

この記事で紹介した「あるある」は、年間約600社のウェブサイト制作・運用をおこなうトランスコスモスが、これまでさまざまな協力会社とのお付き合いを通じて経験した、ウェブ制作の外注でありがちな「あるある事例」です。

ここからは、その経験から導いた、どうすればウェブ制作会社と良い関係を築き、うまく外注先を管理できるかのメソッドを解説します。

どうしたら外注管理はうまくいくのか

ここまでに見てきた3つの「あるある」は、どのように防いだらいいのでしょうか?

先に述べたように「あるある」は、だれにでも起こりがちなのに、何らかの理由でなおざりにされていることです。これらの問題を明確に意識したうえで、具体的な対策を見ていきましょう。

対策としては、「ウェブ制作会社と良い関係を築く」2つのポイントと、「こんなウェブ制作会社は要注意」4つのポイントの2種類があります。

ウェブ制作会社との関係を築くポイント①
ウェブ制作会社の得意分野やキャパシティを把握しているか?

ウェブ制作会社に限らず、企業におけるあらゆるパートナーシップ、協業関係、取引関係の基盤になるのは、お互いの信頼です。では、相手の「何を」信頼するのでしょうか?信頼の対象がない限り、信頼関係は生まれようもありません。

業務に活かされるきちんとした信頼関係は、信頼の対象となりえるお互いの事実(ファクト)を把握することから始まるといっても過言ではないでしょう。そこでお勧めしたいのが、外注管理表の作成と定期的なアップデートです。

外注管理表のサンプル(実際には横に長いExcelのシートとして作っている)

外注管理表には、ウェブ制作会社の一般的な企業情報(従業員数や資本金、事業内容など)とともに、企業の発注担当者にとって重要な要素を詳細に記録します。

たとえば、制作会社の得意分野ならば、次のようなことまで踏み込んだ内容を記録します。

  • デザインやコンテンツ制作に強い会社なのか、システム構築に強い会社なのか。

  • コンテンツ制作が得意なのであれば、アイデア勝負の柔らかめのコンテンツが得意なのか、取材をガッチリした硬めのコンテンツが得意なのか。

その裏づけとして、あなたの会社がこれまで発注した内容とともに、ウェブ制作会社が他の企業向けに制作した実績なども聞き出して記録しておくことも必要でしょう。

さらに、デザインやコーディングに関わることのできる人、SEやプログラマーの人員規模を把握しておくことも重要です。コンペなどでまったくの新規案件を発注するときはもちろんですが、日々の更新業務などを依頼するときも、あなたの担当している案件を専任で担当してくれる人が何人いるのかを把握しておくことは重要です。

このように、発注先のウェブ制作会社がどのような質(得意分野)と量(リソース、キャパシティ)を担保できるかを日常から把握することで、業務における実質的な信頼感を持つことができます。

その結果として、「あるある①」と「あるある②」を防ぐことが可能となります。

外注管理表のサンプルを用意しましたので、ダウンロードして使ってみてください。

外注管理表のサンプルをダウンロードする 無料、直リンク Zip済みExcel 13Kバイト

ウェブ制作会社との関係を築くポイント②
Web制作会社が「できません」と言えない関係性に陥っていないか?

ウェブ制作会社はあくまでもビジネスパートナー。単なる発注相手として捉えるのではなく、ともに切磋琢磨して成長する仲間として接することが最も重要です。

普段からお互いを対等な存在として、事実を事実として話し合える関係を構築しましょう。無理強いや理不尽な依頼・発注に対して「できませんと言えない」関係性は論外ですし、あまりにもツーカーになって安請け合いを誘発するような「できませんと言わない」関係性も考え物です。

「無理が通れば道理が引っ込む」という言葉があります。客観的事実の蓄積である道理を無視するから無理になるのです。同様に、ツーカーな状態というものは、曖昧かつ“なんとなく”進めてしまうということも含みます。ですから、両者とも事実をベースにすることで避けられることです。

基本的なことですが、次のようなことが重要です。

  • 契約内容をしっかり確認し合うこと
  • 打ち合わせごとにきちんとした議事録をウェブ制作会社から提出してもらうこと
  • 担当者や作業する人のリソースを明確にしてもらうこと

このようなことが実施されていれば、「あるある③」のようなケースは避けられたでしょう。

また、ウェブ制作会社がISO 9001などの品質マネジメントシステムに準拠しているかなどは、発注先選びの時点から参考になります。

それでもダメなこともある。
こんなWeb制作会社は要注意?! 4つのポイント

とはいっても、ダメなことはあります。残念ながら、規模の大小にかかわらず本質的にダメなウェブ制作会社が世の中には存在します

ここでは、これまでたくさんの協力会社との取引を通じてトランスコスモスが学んだ「こんな会社は要注意」というポイントを列挙します。これらが、恒常的に該当する場合は……よく話し合ってみるほうがいいかもしれません。

こんなWeb制作会社は要注意?! 4つのチェックポイント

  • 頻繁に打ち合わせ時間に遅れる

    ごく基本的なビジネスマナーすら守れない会社とは付き合う必要はありません。

  • 自社の「ウリ」を明言できない

    どんな会社でも、「デザインが得意」「コンテンツ制作で力を発揮する」「EC運営なら他社に負けない」など、それぞれ強み・ウリがあるはずです。

    自社のウリが明言できない制作会社は、競合の制作会社との差別化ができていないということです。このような会社は価格で差別化をはかろうとする傾向にあり、「安かろう悪かろう」であることが多いです。

  • 不明瞭な見積もり・大雑把なスケジュールしか出してこない

    項目に「一式」が多い見積書を頻繁に提出してくる会社や、あまりにも大雑把なスケジュールしか出さない会社は要注意です。

    確かに、提案時に最初から詳細な見積もり項目や金額を算出したり、正確な工数・作業期間を策定することは難しいですし、これは発注側の依頼内容の精度にも左右されるところでもあります。

    しかし、実際の要件定義がある程度固まってからも、あまりに大雑把な見積もりやスケジュールを当たり前のように提出してくる会社もあります。その場合は、いわゆる「どんぶり勘定」が常態化し、工数管理や進行管理も疎かである可能性があります。

  • 小規模な企業であるにもかかわらず副業が多い

    少人数の制作会社が悪いというわけではありません。個人または10数人規模の会社ですばらしい仕事をしている会社はいくらでもあります。

    しかし、飲食など本業とほとんど関係のない副業をいくつもやっている会社は、ウェブ制作に本腰を入れているのかという点で懸念されます。

最後に

ここまで、「あるある事例」をとおして、ウェブ制作の外注にかかわる問題とその対処法を見てきました。

なんども述べているように、「あるある」は、いつでもだれにでも降りかかってくることです。

しかし、それらを意識の上に顕在化し、管理の対象とすることで、「あるある」ではなく「ないない」になります。

協力会社との良好な関係性を考えることをベースに、メソッド化できるところはメソッド化して少ない手間でさらに良い関係性を築く、このような点で、この記事が参考になれば嬉しい限りです。

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