Web広告研究会セミナーレポート

6億人に迫る中国インターネット人口、オンラインに大きくシフトする中国の企業広告のいま

中国国内のオンラインキャンペーン事例や独自に進化を遂げてきたインターネット事情を解説
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

2012年中に中国のインターネット利用者人口は6億人に達するともいわれ、利用者の急増とともに、企業のSNSやオンライン広告の活用が進んでいる。この10年間で独自に進化を遂げてきた中国インターネットの最新事情や、欧米・中国企業のオンラインキャンペーン事例について、中国でマーケティングコンサルティングを行う宮田氏が解説した。

携帯電話からのネット利用が非常に多い中国

宮田将士氏
普千(上海)商務諮詢有限公司(しゃんはいしょうむしんしゆうげんこうし)
董事総経理
宮田 将士氏

第二部の冒頭で「中国でどのようなキャンペーンが行われているかについて話したい」と話す宮田氏は、2001年に中国で起業したことを明かし、起業してから現在までの約10年間で中国のインターネットが発展し、独自に進化してきたと説明する。

2007年頃から急速にインターネット人口が増えている中国では、2012年6月で約5億3,000万人のインターネット人口(総人口は2012年で約13億5,000万人)があり、北京や上海などの沿海都市部では80~90%がインターネットを利用している。CNNIC(中国インターネット情報センター)の調査によれば、2012年中にインターネット利用者人口は6億人に迫る勢いだという

※編注 2013年1月15日発表の調査では、2012年末時点の中国のインターネット利用者は5億6400万人とされている。INTERNET watchのニュース記事

中国では2002年以降、ポータルサイト、BBS、ブログ、インスタントメッセンジャー(QQ)、SNS、中国版Twitterのウェイポー(Weibo、微博)などのWebサービスが提供され、最近は中国版LINEのウェイシン(WeChat、微信)が急成長しているという。

中国では、米国で流行り始めたサービスが2~3か月後には中国独自のサービスとして提供されているといい、ForeSquareが流行り始めた2か月後にはジェパン(Jiepang、街旁)というほぼ同様なサービスを北京大学の学生が作って提供している。つまり、中国で次にどのようなサービスが流行るかは、米国を見ていれば予想がつくと宮田氏はいう。

中国におけるウェブサービス登場の推移
中国におけるウェブサービス登場の推移

2007年頃のインスタントメッセンジャーの時代まで、中国のインターネットのアクセスはPCが中心だったが、SNSの普及以降は携帯電話のインターネット利用が大きな割合を占め、2012年6月時点で全ネットユーザーの7割以上が携帯電話からネットに接続している。特に、農村部では携帯電話からのネット接続が多いが、これについて宮田氏は次のように説明する。

PCでインターネットしようとすると、PCに3,000元、ネット開設に1,000元、月額で100元かかる。日本と同じように、中国でも2年縛りで実質月額0元で携帯電話を手に入れられ、定額パケットサービスも月額30元で利用できる。携帯電話のほうが安上がりなため、都市部よりもむしろ農村部での利用が多いことが考えられる。モバイル向けのキャンペーンをやる場合、都市部の若年層を想定しがちだが、中国では意外と農村部の利用者が多いことを知ってほしい。

ネット利用者年齢やネット利用者収入構成をグラフで示し、ネット通販利用、オンライン決済利用、各種ウェブサービス利用がいずれも伸びていることを説明した宮田氏は、携帯電話からのウェブサービスアクセス状況で、日本ではあまり利用されていない「小説、文学」の利用者が約4割と高くなっていることに注目する。

中国の携帯電話からのウェブサービスアクセス状況
中国の携帯電話からのウェブサービスアクセス状況

パケット定額サービスを利用せずに月額費用を抑えている人も多いため、動画などのリッチコンテンツではなく、テキストベースのコンテンツも結構利用されている。キャンペーンでリッチコンテンツを使うと、定額サービスでないターゲットがパケット代を気にしてあまりアクセスしてこないことも考えられるので、このような傾向があることも考えておいたほうがよい。

宮田氏はこのように話したうえで、中国のインターネット事情について、「もちろんPCを使っているユーザーは多いが、中国でキャンペーンやプロモーション、イベントを行うときには、携帯電話やスマートフォンをベースとした設計を考えることが大きな要素となる」とまとめている。

高額で効果測定が困難なマス広告よりも、オンライン広告が拡大している

次に宮田氏は、中国でのキャンペーントレース例として、自らが手がけたDELLの事例を紹介する。中国でもコンシューマとビジネスの両方で大きなシェアを持つDELLは、中国に進出するにあたって、マス広告にかなりの投資を行ってきた。しかし、当時はあまり成功せず、コンシューマ戦略をWebにシフトしていくと売上も上がってきたという。

もちろん、DELLはイベントや店頭販促などのリアルな活動やマス広告も行っているが、現在ではかなりWebに力を入れている。また中国でも、マス、Web、リアルと分けずに、トータルコミュニケーションとして考える傾向が特に欧米の企業で出てきているといい、それを見た中国企業も同様のアプローチを始めている。したがって、宮田氏もそれぞれの広告やキャンペーンの効果だけでなく、トータルでの効果や成果を求められるようになってきているという。

DELLの広告出稿の回数は、Web広告がメインとなっており、金額的にもテレビCMと大きな開きはない。このように、欧米の企業がWeb広告に力を入れている背景には、急速にインターネット人口が増えてきたという要因以外にも、中国のマス広告が非常に高額なことが原因だと宮田氏は説明する。

たとえば、中国の旧正月の大晦日に行われる視聴率約80%の国民的テレビ番組「春節聯歓晩会(しゅんせつれんかんばんかい)」で、カウントダウン直後の15秒CMを流すには日本円で約8億円かかるという。これは最も高額な例だが、中国ではテレビ局を政府が運営しているため、景気が悪くなってもCM費が下がることはなく、明確な料金体系がない。したがって、非常に価格が高く、効果測定も難しいと説明する宮田氏は、「効果が見えないマス広告に企業が投資するメリットがあるのか、ということがここ数年の課題となっている」と話す。

テレビCMの効果が疑問視されるなか、効果測定のしやすいオンライン広告に注目が集まるのは当然の流れだが、だからといってすべての広告をWebにすると、中国では物が売れなくなるという。消費者が、非常に高額なテレビCMに出稿できる会社なら信頼・安心できると考えるからだ。DELLも企業の実力を証明し、消費者の信頼を獲得するためにテレビCMを行っており、他社もそのような傾向があると宮田氏は説明する。

たとえば、DELLは商品広告と同時に企業アピールに力を入れるため、テレビCMの最後に表示する企業ロゴの表示時間を、約1秒から約3秒に伸ばしている。また、新聞や雑誌も非常に高額な出稿費がかかるため、テレビと同様に商品広告よりも企業アピールに力を入れているという。

日本企業に先行し、SNSに力を入れる欧米・中国企業

中国版Facebookであるレンレンワン(Renrenwang、人人網)でのDELLコミュニティの会員数は約103万人いるという宮田氏は、「企業が1年間SNSでページを運営する費用は1,000万円から数千万円で収めることができ、それだけで興味がある100万人のユーザーを集めることができている」と説明する。100万部以上発行している新聞や雑誌の目立つ場所に広告を出す費用を考えると非常に低コストで、そこからどれくらいの人がDELLのWebサイトに行ってPCを購入したのかという効果測定も行えるのであれば、オンラインのSNSなどに力を入れるのは当然だ。

DELLは、中国版Twitterのウェイポーでも約20万人のフォロワーを獲得しており、宮田氏は「欧米企業や中国企業は、どんどんWebやSNSに力を入れてきている。一方で、日本企業は取り組みは行われているが、欧米企業に比べると、まだまだWebやSNSに力を入れているとは言い難い」と話す。

また、DELLでは、中国で約8億人のユーザーが利用しているというインスタントメッセンジャー「QQ」によるサポートも行っている。DELLの中国サイトにはQQのボタンが用意されており、オペレーターにつながるようになっているのだ。QQはDELLに限らず、多くのWebサイトで顧客とのコミュニケーション手段として利用されており、ECを行っている中国企業の約8割がサイトで利用しているという。

これらのSNSやWebサービスに取り組んだことで、BBSやブログ、Q&AサイトでDELLの話題が取り上げられることが非常に増えている。宮田氏の調査によれば、マス広告に力を入れていた2006年頃はBBSやブログ、Q&AサイトでのDELLに関する話題の露出件数は年間7万件だったのに対し、Webに力を入れてきた2010年や2011年は20万件に伸びており、3倍以上の高い効果があったようだ。

最後に、宮田氏は次のように話し、第二部の講演を終えた。

第一部の米国の話と同じように、中国においても広告の効果を明確にエビデンスとして出せないのであれば、予算を出すことができないのが現状です。それに対して、中国ではインターネット広告を利用することで数値を出していくことが主流となっている。ただし、中国は事情が異なり、アップルやグーグルは中国とあまりうまくいっていない。アマゾンも中国企業と提携しているが、単なるネット通販の会社の域を出ていない。

中国にはレンレンワンや検索サービスのバイドゥ(Baidu、百度)があるが、これらの会社がプロダクトを持っているわけではないため、米国で言われているような垂直統合をやるには難しいのが現状。とはいえ、広告主にとってはROIやKPIを出してもらわなければ予算を出しにくく、それに対する回答はまだ出ていない。これを考えつくことができたなら、非常に大きなチャンスになると思う。

第一部と同様、講演後は質疑応答が行われ、中国でのRTB(Real Time Bidding)の現状や、ユーザーデータを扱う上での中国での注意点などの議論が行われ、中国でビジネスを展開しようと考えている来場者が生の声を聞ける非常に貴重な機会となった。

オリジナル記事はこちら:6億人に迫る中国インターネット人口、オンラインに大きくシフトする中国の企業広告のいま 2012年10月23日開催 月例セミナーレポート(2)

この記事は、2012年10月23日に開催された「第6回Web広告研究会月例セミナー」のレポート後編です→前編を読む

オリジナル記事はこちら:ブランディング広告はRTB経由が主流に、「NY Advertising Week 2012」で語られた最新オンライン広告市場 2012年10月23日開催 月例セミナーレポート(1)

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