WAA通信:世界中のウェブ解析業界から

Web解析業界で優先度が高いのはデータ統合とトレーニング・教育――WAAの調査から

「どのようなWeb解析ソリューションを使用しているか」「Web解析の役割がどの部署に所属しているか」
WAA通信:世界中のウェブ解析業界から

2011年度 Web解析業界 見通し調査報告
WAA Outlook Survey Report

WAA(Web解析協会)は2011年7月13日に、業界見通し調査の報告会をWebセミナーの形式で実施した。これは、WAAがここ数年毎年実施している調査で、今回は2010年11月12日から12月10日までにWeb解析関連サイト、電子メール、イベントでの呼びかけで協力した365人の回答結果を整理して、なかでも特徴的な結果について報告がなされた。

発表された調査結果の主な内容を、2011年の調査結果(2010年末調査)だけでなく2010年の調査結果(2009年末調査)とも比較しつつここで紹介したい。調査内容は大きく分けて以下の3つのパートから成る。

  1. Web解析の現状
  2. 将来(特に2011年)の方向性や課題
  3. Web解析の組織内での優先順位や専門スキルについて

上記1と2は昨年までもほぼ似たような質問で調査してきたが、今年から3を分けて報告し、Web解析の組織的対応やスキルを中心により質的な面で掘り下げたのが特徴だといえる。

回答者についての情報

結果の報告の前に、少しだけ調査協力者のプロフィールを見てみよう。

今回の調査協力者の地理的構成をみると、米国56%、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域が19%、カナダ14%、アジア太平洋地域8%、ラテンアメリカ3%となっている。

また、仕事の機能別で見ると「Webアナリスト」が3分の1以上、「オンラインを主とするマーケティング」が約17%、「コンサルタント」が11%となっている。

なお、「その他」には、財務、コンテンツ制作、マーケットリサーチ、広報、コミュニケーション、オフラインのマーケッターが含まれる。

では、調査結果の主なものを紹介していこう。

1Web解析の現状

どのようなWeb解析ソリューションを使用しているか

「大規模ベンダーのソリューションを世界的組織で複数ドメイン名にまたがって使用している」という回答が45.2%あり(2010年の調査では40%)、一番多かった。次に「無償ツール」が27%近く(同30%)、「中規模向けソリューションを複数部署、複数ドメイン名で使用」という回答が15%(同15%)で後に続く。自社作成ツールは3%未満(同4%)であった。

何も使用していない割合は過去3年間低下の傾向にあり(2009年調査2.7%、2010年調査1.1%)今年は0.8%であった。

61%は複数ソリューションを使用

今年から設けられた質問だが、61%の回答者が会社などの組織において複数の部署が異なるソリューションを使用しているとし、残る39%は全社で同じソリューションを使用していると回答している。

前者の大半が、複数ソリューションを併用している理由として「1つのソリューションだけでは異なる組織ニーズを満たすことができないから」と回答している。また後者の単一ソリューションと回答した多くは「Google Analyticsを使用しており費用がかからない」ことをその理由としてあげている。

ベンダーには総じて満足

現状付き合っているベンダーに対しては、おおむね満足しているという回答が多かった。7段階評価で回答者に示してもらったうち、「4. 不満でも満足でもない」とニュートラルな立場で回答したのが21%あり、それよりも不満なグループ(「1. 非常に不満」から「3. やや不満」まで)が約16%、それより満足なグループ(「5. やや満足」から「7. 非常に満足」まで)が63%という結果であった。

2将来(特に2011年)の方向性や課題

2011年のあなたにとってのチャレンジは何か

この調査の参加者の過半数はWebアナリストやオンラインを中心とするマーケティング担当者だが、これらの人たちが2011年に挑まなければならない課題は「アクションにつなげられるデータ」「分析に基づいたビジネス上の意思決定」という情報活用についての項目が上位2つに挙がった。

「ソーシャルメディア」が3番目に上がっている。ソーシャルメディアは2010年の調査でも話題に上っていたが、知識や事例などを収集したいという研究過程の色彩が濃かった。2011年の調査では知識をつけたい対象としては回答が減っており、より具体的な取り組みを計画または実施したうえでさらにどうすればより効果的かということに意識が進んでいるようだ。

ちなみにこの質問の回答を過去の結果と比較してみると変化が見える。2009年の調査ではリーマンショック直後という事情もあってか、「予算確保」が40%と最大のチャレンジとして挙げたが、翌2010年では27.5%で6位に落ち、2011年では15.5%で10位以内にも入らない課題となった。Web解析がプラスのROIをもたらすという認知は広まり、より質的な課題に対処しようとしているトレンドがうかがえる。

オンライン解析の予算

今年は昨年と比較して予算はどう変化するかとの質問に、「減る」と回答したのは3%未満で、43%が昨年と同じ、54%は「増える」と回答した。

なお、予算についての質問への回答は回答者の居住する国の経済状況を反映している可能性があるが、前述のとおり、今回の調査回答者の70%は北米(米国56%、カナダ14%)であった。日本で同様の調査をしたらこのような傾向にはならない可能性がある。

投資が何に振り向けられるか?

では投資予算は何に使われるか。2011年の投資対象として49.0%の回答を得て一位に上がったのは「外部またはサードパーティのシステムとのデータ統合」である。前述のベンダー満足度調査の回答のコメントのなかに「ベンダーへの要望として他のベンダーと協力してプロジェクトを進めてほしい」というものがあったそうだが、今後のツールベンダーやサービスベンダーのスタンスとして自社製品・サービスを提供するだけでなくユーザー企業の立場に立って行動することがこれまで以上に要求されるようになるかもしれない。

44.4%で2位にあがったのは「解析担当者のトレーニング、教育投資」である。市販のツールを使っているだけでは他社との差別化は図れず、経営上の優位性を発揮するためにはデータをどのように読み解き、どのようなアクションをとるかという人間の知恵が重要であるこという認識が広まってきたからであろうか。3位は「行動ターゲッティングや有料検索(リスティング広告など)管理のアドオンツール」で40.1%、4位は「Web解析担当者の人員増」で35.8%と続く。

2009年と2010年の調査をみると上位3項目の顔ぶれは同じだが、「データ統合」という回答はそれぞれ36.1% → 41.5%と毎年数パーセントずつ増えてきていることがわかる。一方で、Web解析担当者のトレーニングは43.4% → 42.1%、アドオンツールは41.1% → 40.3%でありどちらも過去3年間ほぼ同じ比率で推移している。

KPIの設定について

KPI(主要業績指標)については、すでに定めて使っているものと、2011年に作成して導入しようとしているものの2つに分けて質問をしている。

既定のKPIとしてトップに挙がったのは「電子メール」で75.3%がKPIを定めている。次が「ソーシャルメディア」と「Facebook」でそれぞれ39.3%、4位が「オンライン動画」37.4%、5位が「Twitter」32.9%となっている。FacebookもTwitterもソーシャルメディアだが、特に代表的なこの2サービスは切り出して別項目として尋ねている。

これから導入するKPIとして1位にあがったのは「ソーシャルメディア」が64.9%であり、上述したすでに導入したという回答と足すと100%を超える結果になっており、昨年までに導入しているもののまだ不十分でさらに追加もしくは変更することが必要と認識している企業があるものと推測される。

2位は「Facebook」と「モバイルメディア」がどちらも49.5%となっている。モバイルメディアのKPIをすでに確定させているという回答は23.7%と低いので、まさに今年がKPI設定の旬の年になる様相である。日本のデータを持っていないので正確な比較はできないが感覚的にはソーシャルメディアは日本より少しだけ進んでいて、逆にモバイルに関してはやや遅れているように思う。

もちろん、この前提として、KPIというのが単なるソーシャルメディアからのトラフィックや自社ブランド名が取り上げられた回数をカウントする程度の数値を指すのではなく、事業目的から体系的に作られ日々の業務マネジメントのなかに組み入れられている指標であることを想定している。ただし、当調査のなかでKPIの定義を詳しく定義して質問がなされているわけではないので回答者の解釈に依存する。

3Web解析の組織内での優先順位や専門スキルについて

どの分野のスキルをつけたいか?

どの分野で知識やスキルを向上させたいかという質問に対して最上位に上がったのが「A/Bテストおよびマルチバリエイト(多変量)テスト」であった。次に「行動分析」「モバイル解析」「プレディクティブ(予測)モデリング」と続く。

ソーシャルメディアが2010年度調査では63.4%で2位だったのに対して今年は33.9%で5位に下がっている。昨年が勉強して対応策を検討する時期だったのに対して、今年は勉強のフェーズが終わり具体的にアクションをとる時期に移行している傾向がうかがえる。

回答者の経験年数

あくまで回答者を母数とする集団においての比率ではあるが、Web解析経験年数が10年以上の回答者は2009年の調査時がわずか5%であったのが2010年は10%、2011年は17%と増加し、業界内に熟練者が増加してきていることがうかがえる。

Web解析の役割がどの部署に所属しているか?

回答者の企業・団体でWeb解析の役割がどこに属しているかを質問したところ、3分の1以上が「マーケティング」の部署であると回答した。2位が「ビジネスインテリジェンス/解析」24.9%、3位が「IT」9.9%となっている。

「マーケティング」部署という回答は2009年の調査では46.3%、2010年では41.2%であり2011年が34.4%と、どの年も1位でありながら比率は下がる傾向にある。一方で、上昇傾向にあるのが「ビジネスインテリジェンス/解析」を担当する部署である。2009年が10.1%、2010年が18.8%と年々増加している。他の選択肢の数や表記の影響を受けるので経年で単純比較はできないものの、マーケティング目的だけでなく、他システムからのデータも含めて広範囲かつ専門的に分析するニーズが増えている可能性がある。

◇◇◇

なお、WAAの会員は“Outlook 2011: Survey Report”(PDF)をWAAのWebサイトからダウンロードできます。

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