1,000万円のサイト構築費を50万円に抑える方法

ページ受託からビジネス協業への変革

1,000万円のサイト構築費を50万円に抑える方法

ウェブサイトの構築や運営にかかる費用や制作会社との上手なつきあい方は、常に企業のウェブ担当者の悩みの種だ。ここでは、その直接的なコストを減らし、さらに制作会社が今までよりも積極的にあなたのサイトにコミットしてくれるようにする「レベニューシェア」について解説する。

TEXT:編集部
協力:株式会社コスモ・インタラクティブ

ページ単価は昔の基準?

まず、企業とウェブサイト制作会社や関係について状況を整理しておこう。

十数年前から、企業はウェブサイト制作会社に「受託」という形でウェブサイトの構築や更新を依頼してきた。コーポレートサイトを数百万円かけて作り、サイトができたら制作会社は企業から渡された内容を元に何ページかのHTMLを作ってアップロードする運用作業を毎月数十万円で請け負うといったスタイルだ。つまり「ページをデザインして作り、納品する」ことが制作会社の仕事だった。

しかし、数年前まではそういう形も多かったが、実はこういうパターンは減ってきている。というのも、企業が本気でウェブを活用するようになり、ビジネスプラン、マーケティング、クリエイティブ、システムなど、より幅広い要素が複雑に関係してくるようになってきたからだ。

ウェブサイトを作る場合、企業は確保している予算枠のなかで何をしたいかという意志決定をし、ビジネス上の目標を達成するためにウェブサイトを作るために制作会社に仕事を依頼する。実装の部分だけを制作会社が担当する場合もあるが、意志決定の段階から制作会社がかかわることも多いだろう。どの部分を制作会社が担当するかは状況によって異なるが、最近のサイト構築・運用のステップをシンプルにまとめると、次のようなものになる。

  • 企画(意志決定支援)
  • 要件定義
  • サイト設計
  • 制作開発(検証、テストを含む)
  • 運用規定の作成(CMSなどを使って企業が自分たちで運用していく場合)
  • リリース後の運用・更新(特にFlashで作ったコンテンツの更新は制作会社が担当することが多い)
  • 効果測定のプラン作成(アクセス解析、SEOの状況測定、ユーザビリティテストなど、企画料に含まれる場合もある)と実施
  • キャンペーン実施(プロモーション)

そして、予算枠で達成できずに次フェーズに送った事項や、運用をしながら新たに浮かんだプランについて、同様のアクションが繰り返される。

サイトも単なる会社紹介だけでなくもっと大規模で複雑なものになってきていることもあり、制作会社の役割が「ページあたりのコストで仕事を請け負う」というものから変化しているのだ。

パラダイムシフトが進む制作会社

企業サイトのライフサイクルの関係に目を移すと、制作会社と企業の関係の変化がよりわかりやすい。ビジネス構築と同様に、サイトの構築・運営をどのように行うかは、戦略に基づいて戦術が決められ、戦術を具体化するためにサイト制作という実装作業が行われる。

この戦略→戦術→実装(→効果測定)フローの繰り返しは、どんな小さなサイトでも存在するはずだ。そしてウェブサイトでは、このフローが他のビジネスよりも短いインターバルで繰り返される。

戦略(コンサルタント)→戦術(プロデューサ)→実装(ディレクタやマーケター)→効果測定

この流れに照らしてみると、制作会社は以前はウェブページやウェブサイトを作る実装の部分だけを担当していたといえる。それが、今や実装の部分だけでなく、ビジネス構築にも関与するために戦略を理解し、戦術に強く関わるようになってきているのだ。いわば、実装だけの「ページ作り屋さん」から、実装と戦術作りを担う「企業のビジネスパートナー」へのパラダイムシフトが起きているといえるだろう。

ページ作り屋さん的な制作会社

ページ単位でのページ作成や、サイト構築・リニューアル時のデザインを行う。コストはA4とかXGAの画面を1ページとしたページ単価が基本。

企業のビジネスパートナー的な制作会社

ウェブに詳しい人間としてクライアントの意志決定を支援するためにコンサルティングし、サイトの仕様を決め、運用や効果測定のプランを策定し、実際に開発/制作を行う。
コストは人月計算や人日計算が基本

ウェブサイト制作会社の担当する役割がより上流にシフトしてきているといえる。実際に、実装だけでなく、戦略作りを支援しながら、戦術を厚くする方向に動いている制作会社も増えてきている。

それとともに、制作会社の内部では、ページ単価では計れないコストが発生している。というのも、ビジネスプランを構築していくためには、業界や顧客層など多様な情報を収集して理解し、分析する必要があるからだ。これも制作会社の変化を表す現象だといえるだろう。もちろんウェブには日々新しい仕組みや考えが生まれているため、それらに取り組むためのコストは以前から変わらず発生している。

ただし、どのスタイルの制作会社が適しているかやどれだけコストがかかるかは、企業側の姿勢によっても変わる。企業がシンプルなコーポレートサイトを求めている場合は、制作会社はページ作り屋タイプのスタイルで仕事をするしかない。また、ウェブを活用するためにビジネスパートナー型の制作会社に仕事を依頼する場合でも、企業側にウェブサイトをどう活用するかのビジョンがまったくなかったり、ウェブサイトの目的や目標を明確に設定していなかったりすれば、戦略の策定や意志決定に時間がかかってしまうため、それだけコストがかかってしまう。

図 企業の姿勢と制作会社の関係

ディレクタと一言でいっても

企業と制作会社の関係が変わってきているのに合わせて、「ウェブディレクタ」の役割も変わってきている。

昔はウェブサイト制作会社のディレクタといえばクリエイティブディレクタを指していた。ところが、最近はそれに加えてビジネスを考えてプロジェクトを進め、企業のニーズを引き出したりプランを作ったりする役割のディレクタが増えてきている。こういった現象も、制作会社が実装部分から、より上流の戦術に担当領域を広げていることを示している。

レベニューシェアによる共同事業

企業の戦略→戦術→実装という全体の流れのなかで、実装の部分だけを担当していた制作会社が「ページ作り屋」で、戦術にもかかわるようになってきたのが「ビジネスパートナー」的な制作会社だともいえる。その延長線上として制作会社がさらに戦術のプロセスに深く関わっていくと、「レベニューシェア」という手法が生まれてくる。

レベニューシェアとは、企業と制作会社の間での契約形態の1つだ。ページ単価や人月単価で企業が制作会社にお金を支払うのではなく、サイトから得られる売り上げを企業と制作会社で山分けするのが、これまでの企業と制作会社の関係と異なる点だ(レベニューシェア:収入の分配)。ビジネスパートナーよりもさらに発展して、企業と制作会社が共同事業を行う形だと考えるとわかりやすいだろう。

たとえば、企業側がブランドや情報を提供し、サイトの構築や運用のコストは制作会社側が負担する。そして、売り上げから直接原価として必要なコストを差し引いた粗利を企業と制作会社で分けるといったものだ(ここでいう直接原価とは、たとえばケータイ公式サイトでのキャリアに支払うコストやサーバーのホスティングにかかる費用など)。山分けの比率は、原価があまりかからない場合は制作会社の取り分のほうが多いこともある。もちろん、このスタイルはあくまでも例で、責任分担や収益の計算方法、分配比率などは、業種やサイトの種類によって異なる。

レベニューシェアは特徴の理解が必須

受託と比べるともちろんレベニューシェアには特徴的なメリットとデメリットがある(図)。ただし、こういったメリットやデメリットよりも、制作会社を「外注」として使うのではなく、一緒にビジネスをする共同事業としてサイトを考えられるかが、レベニューシェアにするかどうかの判断では大切だ。「発注者←→受注者」という利害の対決する関係ではなく、同じリスクと成功を共有する共同事業であるという意識を双方がもつことが、レベニューシェアを成功させるために必要な考え方だ。

  • サイト構築の初期コストが軽減される、またはゼロになる。
  • サイトが成功すれば収入が増えるため、制作会社がより積極的になる。
  • 相手を信頼できるかの目利きの力がないと、何かあった場合に企業側のリスクになる(ビジネス、ブランディング、セキュリティなど)。

図 受託と比べた場合のレベニューシェアのメリットとデメリット

ただし、どんなサイトでもレベニューシェアで成功できるわけではない。レベニューシェアが向いているサイトと向いていないサイトを次に示す。

レベニューシェアが適したサイト

ランニングで売り上げがあり、売り上げの規模やその増加がある程度読めるもの。

  • ケータイコンテンツ
  • ケータイ有料課金会員
  • EC(物販)
  • 資料請求がゴールなど

レベニューシェアが適さないサイト

ランニングで売り上げが上がらないもの。

  • 単なるコーポレートサイトやIRサイト
  • 短期的な戦略のプロジェクト
  • 効果測定しづらいもの
  • サイトが媒体として魅力がないものなど

図 レベニューシェアは万能ではない

成果報酬ではあるという点では、レベニューシェアはアフィリエイトに似ている。しかし、レベニューシェアは制作会社側から見るとよりハイリスク・ハイリターンである点や、商品単位での宣伝・集客をするだけではなく、最終的なコンバージョン率に関係するサイトの実装までコントロールできる点がアフィリエイトと異なる。

また、契約に関してもその内容には注意が必要だ。個別の発注ではなく業務委託契約となり、契約のなかで作業分担や権限の所在、利益分配の条件などをしっかりと決めておく必要がある。ここがしっかりしていないと、制作会社側があれもこれもすることになり、作業量が青天井になってしまう危険性がある。また、たとえば基本は50%/50%の収益分配だが、収益が一定額以上になった場合にはしきい値を超える部分に関しては制作会社側の取り分が60%になるなどの契約も考えられる。

ただし、契約はある程度柔軟に変更できるようにしておくことをお勧めする。ウェブではビジネス環境の変化が早く、当初は想定されなかったプランが発生する可能性があるからだ。

レベニューシェアでウェブサイトを運営する場合の特徴や注意点を理解してうまく適用すれば、従来のやり方では1,000万円以上かかっていたサイト構築費を50万円どころか0円に抑えて、かつ制作会社とよりよい関係でビジネスを進められるかもしれない。

責任範囲と役割分担は明確に

レベニューシェアでサイトを運営する場合には、レベニューシェアの対象範囲とそれぞれの役割の分担を明確にすることは非常に大切だ。

たとえば、ある有名人のファンサイトをレベニューシェアで運営する場合、ファンクラブのDBの構築や管理はどちらが行うのかといったことだ。サイトからファンクラブに申し込めるようにするとユーザー利便につながるが、本来ならばそのDBはサイト以外でもCRMとして幅広く積極的に利用するために企業が整備しておくべきものだともいえる。

また、レベニューシェアの場合、制作会社側は、多くの場合専属スタッフを割り当て、場合によっては企業側に常駐する形でサイトを運営していくことになるだろう。その場合に常駐にかかる地代家賃をどうするかなども問題になるだろう。

こういったことは、事前に綿密に打ち合わせをして領域分けを明確にする必要がある。例に挙げたファンクラブDBの場合、DBが未整備ならばレベニューシェアとは別の予算で制作会社が構築を請け負うといった解決策も考えられる。

[事例]プロ野球球団のケータイサイトを
レベニューシェアで365日運営

ウェブサイト制作会社のコスモ・インタラクティブでは、プロ野球球団の横浜ベイスターズとオリックス・バファローズそれぞれのサイトを、球団側とレベニューシェアの形で契約して企画・運用している。野球好きのメンバーでこのプロジェクトを担当しているクリエイティブチーム3モバイルユニットのマネージャーの余語氏とリーダーの佐藤氏に話を伺った。

佐藤 雄紀氏
株式会社コスモ・インタラクティブ
クリエイティブ チーム3
モバイルユニット リーダー/ディレクター
http://www.cosmo-int.com/

「ケータイ3キャリアの公式サイトを、ベイスターズとバファローズそれぞれと共同で企画・運用していてレベニューシェアになっています」(余語氏)

ケータイサイトは月額有料のコンテンツなので、その月々の売り上げ(月末時点の登録ユーザー数×月額利用料−キャリアに支払うコスト)を元にレベニューシェアにしているということだ。

「オンシーズンには公式戦全試合の結果を毎イニング毎打席リアルタイムで更新しています。試合情報をメールで配信するサービスもあります。オフシーズンは楽かというとそうでもなく、次シーズンへのサイトインテグレートや各種問題点の解消、球団からのニュースリリースや契約更改、トレード、キャンプ情報などさまざまな情報が出るため、ほぼ毎日作業があります。

選手の待ち受けや球団歌の着メロ、選手日記や各種コラムなども更新していますよ。選手の写真などは肖像権の関係で公式サイトでしか使えませんから大切なコンテンツです」(佐藤氏)

これがレベニューシェアではなく受託だったならば、人日計算で相当なコストがかかることだろう。日々の更新を球団側で行えば、さらに人件費がかかることになるだろう。

コスモ・インタラクティブが担当し始めたのは2002年末からだが、時代に合わせて毎年コンテンツを増やしているため、4年前と比べるとサイトの内容は大きく進化しているということだ。

「会員数を増やすことが弊社の売り上げ増にもつながりますから、そのために計画的にコンテンツを強化しますし更新頻度も高めています。利用者さんからのメールの問い合わせへの対応も弊社で行ってどんなコンテンツのニーズがあるのかを探ったりしながら、利用者さんが喜ぶコンテンツを考えています」(佐藤氏)

もちろんどんなコンテンツを掲載するかの決定権は球団側にあるが、コスモ・インタラクティブから企画を提案する形で進め、必要な素材や権利関係も都度明確に定めている。

実は、コスモ・インタラクティブが担当する以前にも、他社が同じくレベニューシェアで球団サイトを運営していた。しかし、サイトやシステムの仕組みやそのノウハウは制作会社に帰属する契約だったため、担当がコスモ・インタラクティブに切り替わる際に、以前の担当社からの引き継ぎはほとんど何もなかったという。

「ドメイン名も変えてシステムもデータベースも作り直してゼロから構築しました。利用者さんには非常に申し訳なかったのですが、サイトの利用登録もしなおしてもらったぐらいです」(余語氏)

レベニューシェアでの運営は未来永劫続くとは限らないため、システムやデータ、運用ノウハウなどがどこに帰属するのかを明確にしておくのが大切だろう。その内容によって、一緒に運営する制作会社を変更する際のコストも変わってくる。

また、システムを作ったりなどの大きな追加コストが発生するようなコンテンツを追加する場合は、別途スポットの費用を請求する形で進めることもあるという。レベニューシェアという形にこだわらずに、共同事業として両者が収益を上げていけるようにバランスをとることが、レベニューシェアを成功させる秘訣なのかもしれない。

「制作会社側としても、受託とレベニューシェアでは感覚も考え方もが違いますよね。自分がサービスしたことに市場が反応して、さらに直接的に報酬が上がったり下がったりするのは、昔ながらの制作会社の仕事ではあり得なかったことですから。市場を体感できるのはおもしろいですよ」(余語氏)

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.5』 掲載の記事です。

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

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