[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ChatGPTはマーケティングの仕事をどのように変えたのか、改めて考えてみた

マーケターによるリレーコラム、今回は瀬川義人氏。自分の例を踏まえて、生成AIによって仕事がどう変わったかを考察します。
 

みなさん、こんにちは。
岐阜からB2Bマーケティングに関わっている瀬川(@motoy0shi)です。

2023年を振り返ってみて、世の中に大きなインパクトを与えたものは、おそらく生成AIの台頭ではないでしょうか。特に、2022年末に登場したOpenAIが提供するChatGPTは、テキストを入力することで、かなり的を射た回答を返してくれるので、世の中で大きな話題となりました。

実際、私も使ってみた感想をまとめた記事「ChatGPTは、Webマーケの仕事をどう変えてしまうのか考えてみた」(2023年1月15日)は、多くの反響がありました。

あれからもうすぐ1年。生成AIはますます進化し、また私たちの生活にもじわじわと広がっています。数多くのサービスでAIを使った機能が提供されはじめたり、書店でも生成AIをどのようにビジネスに生かすかについて書かれた書籍が数多く並んだりしています。

実際、私もこの1年、ChatGPTをマーケティングの業務で利用してみて、もはや欠かせない存在になりつつあります。そこで今回は、私が最近どのようにChatGPTを活用しているのか、具体的な例を紹介しつつ、マーケティングの仕事が今後どのように変わっていくか、考えてみたいと思います。

私がChatGPTを業務でどのように使っているのか

普段、私がどのようにChatGPTを業務で使っているか、具体的な例を踏まえて紹介していきます(実際のケースをモチーフにしたフィクションです)。

ある日、今後のマーケティング施策を実施する上で、改めてお客様像をより明確にしようと社内プロジェクトが立ち上がりました。そして私がそのプロジェクトリーダーとして進行することになりました。

そこでまずは、プロジェクトの全体像を壁打ちして整理してみることにしました。ChatGPTに以下の内容を聞いてみます。

私たちはB2Bのクラウドサービスを提供しています。マーケティング施策を進めるために、まずお客様像をより明確にするプロジェクトを立ち上げることになりました。ゴールは、お客様像を言語化して資料にし、その資料に基づいた施策を検討することです。ゴールを達成するために、どういったことをしたらよいか検討してください。

すると、以下のような回答が返ってきました。

 

まずは議論の前提となる調査から始めてみるとよさそうです。そこで、1つ目の市場調査について深掘りして質問してみることにします。

「市場調査の実施」では、どういった調査をすべきでしょうか。具体的な手法を教えてください。

 

回答を見て、デスクリサーチから始めることにしました。実際に検索エンジンにキーワードを入力し、公開されているレポートなどを収集してみました。

とはいえ、お客様像を明らかにするには、やはりインタビューは必要不可欠です。そこでインタビューをするためにどういった準備をしたらよいか、ChatGPTに聞いてみました。

顧客インタビューをするためには、どういった内容の質問をしたらよいでしょうか。具体的な質問案と狙いを教えてください。

すると、以下のような回答が返ってきました。

 

これらの質問例を踏まえて、想定質問集を作ってみました。そして何人かの方にインタビューを行った結果、手元にはインタビューの回答が集まりました。

そこで次は、これらの回答をどのように活用するか聞いてみます。

何人かの方にインタビューを行い、回答を得られました。これらをどのように分析して、役立てたらよいでしょうか。具体例を踏まえて説明してください。

すると、以下のような回答が得られました。

 

まずはデータを整理して、共通点や相違点を見つけ、その上でグループ化していくことで、お客様をより深く知ることができそうです。

お客様像を明確にするプロジェクトを進める中で、「せっかく作っても、うまく活用できなかったら無駄になってしまう……」という不安が出てきました。

そこで、活用に関する悩みを壁打ちしてみました。

お客様像を明確にしても、これをどのようにマーケティング施策に活用すればよいでしょうか。せっかく作っても活用されなくては意味がないため、具体的なアクションにつながる方法を教えてください

すると、こういった回答がありました。

 

お客様像に合わせて顧客リストを作り、それぞれに向けたメルマガを出すのは良さそうです。またメルマガに合わせてホワイトペーパー(お役立ち資料)を作り、一緒に送ってダウンロードしてもらうと、お客様の興味度合いも推察できそうです。そこで社内メンバーに協力してもらい、コンテンツを作ることにしました。

このようにChatGPTに相談しながら業務を進めることで、スピード感を持ってプロジェクトを進めることができました。

今後マーケティングの仕事はどのように変わっていくのか

ここからは、ChatGPTをはじめとする生成AIによって、私自身が関わるマーケティングの仕事がどのように変わっていくのか考えてみました。

単純作業はAIによって代替され、より高度な専門性が求められていく

1つ目に、おそらく今後、単純な作業はAIによって代替されていくはずです。

たとえば、かつてWeb広告運用は専門的な知識が必要で、一般の方が出稿するにはハードルが高かったように思います。しかし、近年AIの進展により、専門的な知識がなくても広告を出稿できるようになり、ある程度のパフォーマンスは出せるようになってきています。

また簡単なプログラミングやコーディングなども、そこまで知識がなくても、ChatGPTに聞きながらできてしまいます。

すると、マーケティングの仕事は必然的により高度な専門性が求められていくでしょう。この専門性とは、マーケティングの業務のみならず、組織づくりや予実管理など、より経営に近い部分にも及んでいくのではないかと思っています。

「外れ値」な思考が求められる

2つ目に、外れ値的な思考が求められていくのではないかと思います。

私も専門家ではないのですが、ChatGPTのアルゴリズムは、コンテクストにおいてもっとも確率の高いフレーズを組み合わせて文章を生成しているようです。すなわち、もっとも平均的な答えを出していると言えます。

ChatGPTを誰もが使うようになれば、おそらくアウトプットも似たものになっていくはず。最近では、記事作成をAIでできるサービスも増えていますが、工夫しない限りはそれっぽいコンテンツが簡単に大量生産できてしまいます。そうすればもはや差別化することは難しくなります。

だからこそマーケティングにおいては、実際に行うかは別として、外れ値的な考え方をしていく必要があるのではないでしょうか。ちなみに外れ値思考については、山口周さんの記事で解説されているのでぜひお読みください。

情報の取捨選択と意思決定がますます重要に

3つ目に、AIが進化するにつれ、人間の役割が重要になるのではないかと思います。

ChatGPT関連のプロダクトには、よく「Copilot」(副操縦士)という言葉が出てきます。辞書によると、主操縦士の手助けをするパイロットのことを指します。

これは私の解釈ですが、「ChatGPTはあくまで人間の手助けをするだけで、操縦桿は人間が握っている必要がある」というメタファーではないかと思うのです。

ChatGPTは、確かに便利なツールですが、時には間違えることもあります。だから人間が最後はチェックして、その回答を受け入れるかどうかを意思決定する必要があるのです。

飛行機でオートパイロットが当たり前になっても、パイロットには厳しい勉強と訓練が必要です。同じように私たちも回答内容の良し悪しを判断できるよう、引き続き知識とスキルは磨き続けないといけないのかもしれません。

おわりに

ChatGPTのおかげで、少なくとも私は仕事の進め方が変わりました。これまで一人で悩んでいたことが多かったですが、ChatGPTと壁打ちすることで悩む時間が減り、より生産性が高く仕事を進められています。

もちろん賛否両論あるかと思いますが、私はこの流れはもはや止められないと思うので、うまく活用しながら、自分なりのポジションを見つけていきたいなと思っています。

みなさまのご意見などあれば、ぜひ私のX(旧Twitter)アカウント(@motoy0shi)などにお知らせください。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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