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ネットにつながった鏡「スマートミラー」で宅トレ! 黄皓氏が仕掛ける「MIRROR FIT.」のビジネス戦略

IoTデバイスのスマートミラーを活用した「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」とは、どんなサービスなのか? 実際に体験してみた。

一見すると、普通の鏡。だが、インターネットに接続されていて、鏡の先にいる相手とコミュニケーションが取れる――IoTデバイスのスマートミラーが、近年注目を集めている。

そんなスマートミラーを活用した「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」は、トレーナーが鏡に映し出され、いつでも本格的なトレーニングができる。2020年12月にローンチされ、累計販売台数は約2,000台にのぼる(2023年3月末時点)。

「MIRROR FIT.」とは、どんなサービスなのか。実際に体験してみた。

「MIRROR FIT.」は、豊富なコンテンツを配信するサブスクモデル

「MIRROR FIT.」のトレーニングカテゴリーは、「バレエ」「ヨガ」「ストレッチ」「マタニティ」など15種類以上あり、400以上のビデオオンデマンドクラスが用意されている。

1回数分のライトなものから数十分の本格的なトレーニングまで、好みや目的によって選べる

さらに、人気トレーナーによるライブレッスンやパーソナルトレーニングもある。ライブレッスンでは画面上にコメントを打つことができ、トレーナーと利用者間のコミュニケーションが可能だ。

鏡の前にヨガマットなどを敷き、鏡に映る動画コンテンツを見ながら体を動かすのが基本的な使い方となる。

お手本となる動画を真似てトレーニングする

実際にトレーニングしてみると、鏡に映った動画と自身の姿を同時に見ながら体を動かすのは新鮮な体験だった。軽快な音楽に合わせてトレーナーがアシストしてくれるので、モチベーションを維持しながら続けやすい気がした。

トレーニングを終えると、時間やカロリー、スコアが表示される

鏡の上部にはカメラが付いており、姿勢の正しさをAIによりスコア化するコンテンツもある。正しい姿勢になるほど点数がアップする仕組みだ。また3Dボディスキャン機能も搭載しており、カメラで前面と側面を撮影すると、体のサイズ(胸部、ウエスト、ヒップ、二の腕、太もも)を測定して、部位ごとにおすすめのレッスンを紹介する。

トレーニングを続ける過程で数値が減っていけば、継続の意思が高まるかもしれない。

トレーナーの動きに合わせて体を動かすと、AIが姿勢を判定してくれる

価格は、本体(164,780円)と配送料/保険料(33,000円)のほか、毎月のサービス利用料(6,578円)が発生する。いわゆるサブスクのビジネスモデルだ。本体を購入しない料金プランもある。

※価格は税込
「MIRROR FIT.」は一般的な姿見と比較して、ややワイドな印象
(提供:ミラーフィット)

競合はフィットネスジムではなく、YouTubeやインスタライブなど

運営会社であるミラーフィット社の舛永憲昭(ますなが のりあき)氏に、ビジネス戦略や反響を聞いた。ちなみに代表取締役は、Prime Videoが配信する恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」シーズン4に参加した黄皓(コウコウ)氏が務める。

ミラーフィット株式会社 執行役員 舛永憲昭氏

「MIRROR FIT.」はローンチ後、まずは法人向けとしてホテルやジムへ展開。約20のホテル、約50のジムに導入されている(2023年5月現在)。ホテルでは、個室よりも宿泊者用の共有ジムに導入するケースが多いという。

2022年2月にはクラウドファンディングを実施し、その後、一般販売も開始した。クラウドファンディングでは、15万円を超える高価格帯にもかかわらず約400台が売れ、応援購入総額が6,700万円を超えるほど好評だったという。

クラウドファンディングでは、ガジェット好きな男性に多く支持をいただきましたが、現在の利用者層は変化していて約60%が女性です。もっともボリュームを占めるのが30〜40代の女性で、家事や育児、あるいは仕事のスキマ時間に運動する方が多いです(舛永氏)

「ジムに行く時間は取れないけれど、美容や健康のために運動したい」というニーズにハマるようだ

従来のフィットネスサービスと比較した優位性をたずねると、「フィットネスジムは競合ではないと思っている」と舛永氏。

ジムというより、ターゲットとする人たちが自宅で余暇時間に楽しむコンテンツが競合に当たるのかなと。YouTubeやインスタライブなどは、その一つです。それらは基本的に一方通行のコミュニケーションですが、当社はよりインタラクティブなコミュニケーションを重視するサービスだと思っています(舛永氏)

戦略のカギは、他業界とのコラボレーションとLINE活用

2022年8月には、不動産業界ともコラボレーションをした。ケネディクス社の賃貸戸建住宅ブランド「Kolet(コレット)」に「MIRROR FIT.」が採用され、約1000戸に導入されている。同住宅の契約者には1年間、運動コンテンツを無料提供している。新たな仕組みの賃貸物件として注目を集め、入居者にも好評のようだ。

また、アクセルラボが提供するスマートホームサービス「SpaceCore(スペース・コア)」とも連携しており、スマートホーム化を実現している。

通常はスマートフォンで操作するところ、「MIRROR FIT.」との連携により、スマートホームの操作を鏡から行えるようにした
(ケネディクス(KDX)のプレスリリースより)

さらにグローバルベイスが提供するウェルネスリノベーション物件ともコラボレーションした。ミラーフィット社がリノベーションプランの監修を行い、自宅でのトレーニングを踏まえた間取りの設計に加え、各部屋に1台ずつ「MIRROR FIT.」を完備している。同物件も、運動コンテンツが1年間、無料提供される。

寝室にフィットネスエリアを設ける1LDKの間取り
(ミラーフィットのプレスリリースより)

舛永氏は、「今後もリノベーション領域を攻めたい」と意欲を見せる。

リノベーション市場は非常に大きく、リノベの対象になる築年数を迎える住宅は毎年3,700万戸にのぼるといわれます。この領域に入り込めれば売上規模の拡大が見込めるはずです。物件を通じてMIRROR FIT.の認知が拡大することも、当社にとってはメリットです(舛永氏)

またミラーフィット社が注力しているのが、LINEの「オープンチャット」を活用したサブスク会員向けのコミュニティ形成だという。「オープンチャット」は、LINE上で友だちになっていなくてもトークをしたり、情報をキャッチしたりできるサービスで、これを使って会員同士でコミュニケーションを取っているそうだ。

たとえば、『明日はこのレッスンをやります』と各自が宣言したり、『今日は一緒にこのレッスンをやりましょう』と誰かが提案したりして、盛り上がっています。現状は運営側が呼びかけることで流れを作っていますが、自発的に『ヨガ部』などの部活が生まれるような発展を目指しています(舛永氏)

蓄積した健康データを今後の事業に生かす

現在の新たな取り組みとして、「MIRROR FIT.」と連動して“専属トレーナー”のような役割を果たす「スマート体組成計」のクラウドファンディングを実施中だ。

体重などの計測データを管理する「スマート体組成計」

スマート体組成計は、体重、体脂肪率、筋肉量、水分量、タンパク質など12項目のデータを測定し、管理・分析ができます。当社はその属性データを蓄積して、健康食品や化粧品、ファッションアイテムを開発するなど、今後の事業に活かす予定です。この点もまた競合との差別化ポイントだと考えています(舛永氏)

フィットネス事業者の枠にとどまらず、不動産、食品、美容、ファッションなど、さまざまな領域とフィットしてサービスを提供していく。「それが社名に込めた思いであり、事業を通じてユーザーの自己実現につなげたい」と舛永氏は締めくくった。

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