【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 秋

SEOは何からやるべき? 分析フレームワークと優先順位付けの手法

近年、SEOは変わったと言われるが何がどう変化したのだろうか? SEO分析に役立つフレームワークと優先順位付けの方法を解説。

近年、SEOは変わったと言われるが何がどう変化したのだろうか? 「Web担当者Forum ミーティング2022 秋 」で行われた講演に、ウェブサービス向けのコンサルティングを行うJADEの取締役CSO(最高戦略責任者)の長山一石氏と代表取締役の伊東周晃氏、エクスペディアの田中樹里氏が登壇。講演は伊東氏のファシリテーションのもと、SEO分析に役立つフレームワーク「DCIR QCLS」と優先順位付けの方法などを紹介した。

(左から)
株式会社JADE 代表取締役 最高執行責任者 伊東周晃氏
株式会社JADE 創業者 取締役最高戦略責任者 長山一石氏
エクスペディアホールディングス株式会社 マーケティング部 シニアSEOマネージャー 田中樹里氏

SEOで変わったコトと変わらないコト

まず、長山氏は「SEOについて変わったこと、変わっていないこと」を整理した。変わったこととしては、次の5点を挙げた。

  • 今まで効果的だった手法が効かなくなった
  • ハックをやっても意味がなくなった
  • リンクスパムの時代が終わってコンテンツスパム時代が到来したが、それも終わった
  • アルゴリズムが変わった
  • 機械学習がさまざまなシステムに導入された

続いて、SEOで変わっていないことはどのようなことだろうか。長山氏は「“コアの部分”は変わっていない」と語る。機械学習が導入されたが、たとえば、SEOのインフラ部分であるクロールやインデックスなどは基本的に変わっておらず、「ユーザーと向き合い続けることが正義」であることも変わらない。

SEOで変わっていないこと

ランキングシグナルの処理のされ方は変わっても、コンテンツやリンクなど“Googleが見ているもの”は変わらない。そして、長山氏が最も重要だと話すのは、「SEOは常にプロダクトやエンジニアリングとマーケティングの両方にまたがる領域であること」だ。SEOは、両領域に関わるがゆえ難しさもある。今まではどちらかといえばマーケティング領域でやる施策が多かったが、近年はプロダクトやエンジニアリング領域でやる施策が徐々に増えているという変化を感じるという。

伊東氏は少々雑ながら整理すると、と前置きしたのち以下の図を示した。青く示された「SEOで変わらず重要なこと」は以前も現在も変わらないが、全体に対するシェアの割合が変わってきている。

SEOで変わらず大事なことの割合が以前と現在では大きく変わってきている

田中氏も「ユーザーと向き合うことが大事なのは変わらない。しかし、Googleがキーワードをどう解釈するかは大きく変わった」と語り、例として、地域関連の検索結果を挙げた。たとえば、「カフェ」と検索した場合、以前なら、さまざまなユーザーの意図を考慮する必要があったが、現在はユーザーが赤坂にいれば赤坂のカフェ、ニューヨークにいたらニューヨークのカフェが検索結果に表示されるようになっている。Googleの解釈のアップデートに伴い、どうやって適切なランディングページを作っていくかは変わってきたと田中氏。

施策の優先順位付けに役立つ検索インタラクションモデル「DCIR QCLS」

このような整理を踏まえて、伊東氏は「SEO施策の優先度付けの難しさ」をテーマに掘り下げていった。

まず、長山氏が紹介したのが、JADEの検索インタラクションモデル「DCIR QCLS」だ。優先順位付けや、施策の目的を理解する際に、SEOをより立体的に捉えるためのモデルで、「検索エンジンに対してサイトを理解させるためにやること」と「検索ユーザーに向けてより良い検索体験を提供するためにやること」を分けて、それぞれのフレームワークの中で考えるというわけだ。

JADEの検索インタラクションモデル

前半の「DCIR」は、URLやサイトが検索エンジンによってどのように処理されるかをモデル化したもので、Googleが以前から唱えているものだ。検索エンジンはまずサイトを発見する必要がある。リンクやサイトマップなどでそのサイトを発見し(Discover)、次にそのサイトにどのようなコンテンツがあるかクロールし(Crawl)、中身を理解して検索エンジンのインデックスに入れる(Index)、そして検索ユーザーからクエリが入力されたときに、どういうサイトを表示するのがよいのか順位付けをする(Rank)、この一覧の流れが検索エンジンとサイトの触れ合い方だ。

検索ユーザーは検索エンジンを通してどのようにサイトと触れ合うかをモデル化したのが、後半の「QCLS」だ。検索ユーザーが検索エンジンにクエリを打ち込み(Query)、表示された検索結果の中から1つ選んでクリックし(Click)、クリックしたサイトにランディングして(Land)、次のページに回遊する(Surf)という流れだ。

「DCIR QCLS」の各フェーズに指標を紐づけ、施策の目的を明らかにしていこう

JADEでは「DCIR QCLS」のそれぞれのフェーズに指標を紐付け、たとえば、「クエリに問題がありそう」となれば、クエリに紐づく指標として「インプレッションを上げる」「クエリポートフォリオの多様性を上げる」「検索のフィーチャーにより多く表示してもらう」などを考え、よりさまざまな人のクエリに引っかかるようにするという取り組みがなされる。ゴールがどこなのかが決まっているので、「この施策はこのためにやりましょう」と言いやすくなるという使い方だ。より詳しく知りたい場合はJADEのこちらのブログを読んでみよう。

施策のインパクト×労力で考える。SEO施策の優先順位の付け方

続けて、田中氏は、ロンドンで開催されたSEOカンファレンス「Brighton SEO」でシェアされた施策の優先順位付けの手法を紹介した。まず、SEO担当者がやりたいことをリストアップする。たとえば、タイトルタグ、ページスピード、サイトマップという施策があった場合、それぞれを改善した場合のSEOへのインパクトをS・M・Lで分ける。

続いて、自部署だけで実施できない場合、他部門の時間的コストや労力(エフォート)を鑑みて、S・M・Lをつける。その両方を合わせて優先順位をつけていくというわけだ。シンプルに言えば、SEOのインパクトが高く、労力が低いものほど優先度が高くなる。

SEOカンファレンス「Brighton SEO」でシェアされたSEO施策の優先順位の付け方

上記の手法に加え、「DCIR QCLS」の各フェーズで影響のある指標を付け加えると、ステークホルダーと「この施策は、売上があがることまでは期待できない」といったことを握ることができるのではと田中氏。SEO施策のインパクトと、労力をスコアリングし、さらに「DCIR QCLS」のどのフェーズのどの指標に効果があるかを反映すると優先順位と施策の目的が明確になる。

優先順位の付け方がわかり、かつ全ての部署が理解できるKPIが明白になれば、SEO施策の優先順位がつけやすくなるはず(田中氏)

長山氏も「提案時に施策一覧に『影響フェーズ』という項目があるが、施策によっては複数フェーズに影響があることもあり、複雑に絡み合っているため、1つのフェーズをターゲットにしても他が良くなることも悪くなることもある。その際にこうしたフレームワークがあれば、優先順位がはっきりして、今はこのフェーズをやることが重要といった話ができる」と語った。

たとえば、『D:ディスカバリー=サイトの発見」の改善のために内部リンクを精査した際に、ページにリンクが増え過ぎるとユーザー体験が悪くなり、『L:ランディング』の価値が下がるのではといった議論がある。この場合、フレームワークがあれば、『今はそもそもサイトがまだGoogleにインデックスされていない。まずはサイトを発見してもらうことが大事』といった話ができるようになると思う(長山氏)

伊東氏は「近年のSEOでは『良いコンテンツを作りましょう』と、コンテンツ作りに関するノウハウが流通していて、『Googleの性能がいいからDCIRは気にしなくてもいい』という風潮がある」と指摘するが「DCIRに問題があることは割とある」と述べた。

長山氏もクロールログを分析したり、インデックス率をトラッキングしたりすると、意外と問題があることが多いと同意する。特にクロールに関しては、機械学習がマイナスに働いていると思われることもあり、大規模サイトならDCIRをしっかり行うことが非常に重要になる。ページ数が100ページ以内の小規模サイトにおいては、DCIRでの問題は生じにくいので、QCLS、あるいはLSに注力するのが望ましいという。

他部門を巻き込んだSEO施策の推進には丁寧なコミュニケーションが不可欠

最後に伊東氏は「施策を実施するための裁量がないという問題は残り続ける」と指摘。「それをどうやって乗り越えていくのか」と質問を投げかけた。

田中氏は、「人と人とのコミュニケーション、本当にそれに尽きると思っている」と述べ、「まず自分たちの優先順位を理解した上で、言語化しなければならない。たとえば、『サイトマップを作りたいのは、KPIがこれで、この数字を伸ばしたいから』というように語って、可視化する。言語化することによって、『でも、売り上げ伸びてないよね』などといった声からガードしつつ、自分たちのやりたいことを伝えていく。あとは関連する他部門が何をKPIとしているかを理解するようにしている」と語る。他部署の協力を得ながら施策を進めていくために田中氏が行っているのは、マンスリーミーティングや他部門のキーマンとの1on1、日常的なSlackでの投げかけなどだという。

長山氏も「めちゃくちゃ同意」とうなずき、「Googleの在籍時は、1on1で仕事を前に進めていた。他のチーム、他のプロダクトがどういう意識や優先順位、タイムラインで開発をしたいのかを把握するようにしていた。自分たちがやりたいことと、その部署のやりたいことの方向性が一致していたら、協力し合うなどして実現に結びつけることは重要だと思っている。どんな会社であっても人の集まりであり、人と人との繋がりを大事にすることが何かを成し遂げるためには一番重要なのではないか」と語った。

伊東氏は「相手のKPIに興味を持ち、理解し、共通項を探すことが、他部門を巻き込んでSEO施策をすすめていくときのポイントかもしれない」と語り、講演のまとめとした。

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