初代編集長ブログ―安田英久

F&B良品から474万円の赤字で脱退した三島市が、ECの本質を市議会で述べていた

ネットショップ(EC)の本質が、三島市議会という意外な場所で述べられていました
Web担のなかの人

今日は、ネットショップ(EC)の本質の話を。三島市議会という意外な場所でECの良い教訓が述べられていましたので、その情報をお届けします。

某地方自治体の一部の人が率いて開始した、自治体の特選品を販売するECサイトのグループ(協議会)があります。

冒険的な地方自治体が参加し、サービス名やプラットフォームが転々とするなかECを行っていたようですが、そこからの脱退を決めた地方自治体があります。三島市です。

要は、初期費用184万円、平成25年度に350万円を支出したにもかかわらず、約1年間(8月末まで)での売上が59万1526円と、大きな赤字だったため、脱退したということです。

しかし、この記事のポイントはその赤字ではなく、そこから得られた教訓について、三島市議会で報告された内容です。

市議会では、「高い授業料を払って得たものは何か」という質問に対して、次のような内容の答弁がありました(発言そのままではなく、安田が意訳しています)。

  • 自分のECサイトに顧客をどうやって誘導するかは、そのサイトを運営する者が主体的に考えなければいけない。

  • ECをやれば商品が売れるというものではない。購入してもらえる魅力的な商品であるためには、ブランド力や話題力が必要。

どうでしょう。ネットやECに関する、当たり前といえば当たり前、でも、たまに頭から抜けてしまうことがある本質ではないでしょうか。

どんなプラットフォームを使っていようが、共同販売の仕組みに乗っかろうが、それだけでトラフィックが増え、販売が増えるということは、めったにありません。

ショップの存在を知ってもらい、お客さんに来てもらわなければ、売上には決してつながりません。

ネットでは、駅前のリアル店舗のような人の流れが目に見えるわけではありません。そのため、ネットに慣れていない人は「ネット」という1つの場所だと思ってしまうのかもしれません――しかも、「世界につながっている場所」だと。

たしかにネットは世界につながっていますが、どれだけ道がつながっていても、それで人が来るわけではないのです。

私の自宅の前の道路は、たどっていけば霞ヶ関界隈につながっていますし、もっとたどっていけば、山口県や青森県にもつながります。しかし、だからといって、霞ヶ関の役人さんや山口県や青森県の人が、私の家まで来てくれるわけではありません。

リアルの道路に人通りが多い場所とそうでない場所があり、若者が多い場所と高齢者が多い場所があるといったような違いがあるのと同様に、ネットにも、人通りの違いがあります。

ただ、その違いが物理的な場所ではなく、「誘導経路」というもので変わるだけなのです。

何かサイトを立ち上げても、何もしなければ、そのサイトは、たとえて言うならば270万店舗ほどあるショッピングモールの1テナントに過ぎません。

もちろん、たまたまそのお店を訪れる人がいるかもしれませんし、人に聞いて尋ねてくる人もいるかもしれません。

でも、それに頼っていては、来店者数が増えるはずもありませんよね。ほかに人気の店があるのですから、何も知らない人はそちらに行ってしまいます。

私は、セミナーなどで、よくこういうことを言います。

サイトを作っても、集客の手段を考え、予算を確保して、施策をまわさなければ、そのサイトはジャングルの密林にあるようなもの。だれも来てくれない。

ソーシャルメディアで何かキャンペーンをやるにしても、どうやってそれを知ってもらうか考えて実行しなければ、無人島でつぶやいているようなもの。

すでにネットで何か事業を行っている人には当然のことですが、「サイトを立ち上げたけど、全然人が来ないなー」と頭を抱えたことのない人には、なかなか気づきにくい点なのかもしれません。

もし、これから「ネットでECを」という方が周りにいたら、この記事や三島市議会の情報とあわせて、「ネットだからって、やりゃ売れるというものじゃないんだよ、実店舗でやるのと同じぐらい、商材の良さと集客手段を考えなきゃいけないんだよ」というのを教えてあげてもらえると助かります。

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