「優れたツールと100万人の会員」でも成功しないコミュニティ

※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。

ウェブサービスを提供するにあたって、ユーザーの目線に立ったサービス企画はとても重要だ。

ニュースサイトなどの一方から情報を発信する類のサービスとは違い、ユーザー同士のコミュニケーション、ユーザーからの情報発信によるところが多いコミュニティサービスには、それが顕著に現れる。

優れたツールを提供し、その結果100万人の会員が集まったとするならば、それはある程度よいコミュニティになっている証拠だろう。だが、運営側が考えるサービスの方向性と、ユーザーの実際の利用方法が同じ方向を見ていなければ、「成功するコミュニティ」にはなりづらい。

ほとんどのコミュニティサービスは、企業による営利を目的としたものであるから、直接的な収益ではなくても、なんらかの成果物を得なければならない。コミュニティの成功を、その「想定した成果物」を得ることと定義するとするならば、運営側が意図するものと全く違った利用をされてしまっては、どんなに活発に利用されたとしても、成功とは言えないだろう(もちろん、有料登録制のサービスはこれには当てはまらないし、単純な広告収益モデルのコミュニケーションサービスなら、100万人規模の会員がいれば一定の収益にはなりえるが)。

100万人は大げさとしても、数十万人規模のコミュニティサービスは多くある。私が携わってきたサービスの中にもいくつかあるが、恥ずかしい話、その内情は決して成功しているサービスとは言えないものもあった。

極端な例を挙げれば、企業のブランディングのために構築したコミュニティが荒れ放題であったり、口コミ情報を蓄積していく類のサービスで、チャット的な雑談ばかりが投稿される……といった場合を想像すれば分かりやすいだろうか。前者は、逆に企業イメージを損なってしまうし、後者は単なるコミュニケーションサイトとしての価値しかなくなってしまう。

コミュニティサービスは、その価値をユーザー自身が作り出してくれる分、上手く行けば非常に有益なあるものになりえる。

言ってみれば、数万人、数十万人という人間(ユーザー)が無償でサービス作りに参加してくれているようなものであるから当然だろう。情報蓄積系のサービスであれば、10人の社員が必死に情報を収集するよりも、数万人・数十万人のユーザーから提供してもらった方がはるかに効率がよい。また、成功しているサービスは、こういった仕掛け作りが非常に上手くできているものだ。

しかし、当然ユーザーは、それぞれコミュニティに求めるものがあるわけで、けっして「自分達でよいコミュニティサービスを構築しよう」という意識をもって、コミュニティに参加するわけではない。そのサービスが提供してくれているものが自分にとって有益であるから利用するのであって、けっして運営側の意図など考えないはずだ。

「コミュニティはユーザーによって作られるものだ」とはよく言うが、必ずしも、「会員さえ集めればサービスが成功する」というものでもないということだ。

運営側が求める情報を、自然な導線・遷移でユーザーに提供してもらえるようなサービスの見せ方。コミュニティが成功するための方法論はいくつもあるだろうが、私がもっとも重要視する中の一つがこれだ。

さて、頭で考えるのはたやすい。だが、自分がサービスを提供する側に立ったとき、そのサービスにさまざまな可能性・将来性があればあるほど、多くの企画要素が入り込み、最終的に「ユーザーから見える入口」と「サービスの成果物としての出口」がまったく異なるものになってしまうことはないだろうか。

少し漠然とした表現だが、成功するサービスというのは、この「入口」と「出口」が非常に分かりやすい形で連携している。

たとえば、大手口コミ情報系サービスである、アットコスメを例にとってみよう。

入口は、誰もが一目でわかるように(この入口の分かりやすさも重要ではあるが)、化粧品の口コミ情報を投稿するサイト、あるいはその情報を自分が購入する際の比較・検討に役立てるためのサイトである。

そして、出口はといえば、化粧品に対する有益な口コミ情報を蓄積することで、化粧品に興味のある層をより多く集めることだ。化粧品を利用する層にターゲッティングして会員さえ増やせば、会員登録や情報の閲覧自体は無料であっても、美容にターゲッティングした広告やその他化粧品となんらかのシナジーを持つ収益モデルによる成果を得られることになる。

ユーザーが増えれば、さらに情報が蓄積され、良質の情報サイトという認知がされれば、さらにユーザーが増える。バイラルでの相乗効果も期待でき、良い成功事例だと言えるだろう。

成功事例であるから、誰が見ても当然のように思えるはずだ。しかし、いざ実際に、さまざまなコミュニティサービスを見た際に、入口と出口が不自然に見えることは少なくない。

運営側が求める「成果物」に繋がる情報を、ユーザーが自然な遷移で提供してくれるような構造なのか、そうしたくなる動機を与えられているのか、そういう見せ方になっているのか。サービス提供側は、サービスイン後も、何度でもそれを確認するべきだ。

面白い企画があり、優れたツールを提供し、その結果多くの会員が集まったとしても、コミュニティとして成功するとは限らない。

自分自身、今後も忘れることなく胸に留めておきたい。

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