企業ホームページ運営の心得

Web担当者の憂鬱。うつは治る? 治らない?

社内の無理難題にさらされ、孤独になりがちなWeb担当者は心の病にかかりやすい可能性があります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百六

春なのに、春だから

花粉症の人は春が憂うつだといいます。そして同じく春に憂うつ……もとい「鬱(うつ)」になる人が増えるのをご存じでしょうか。就職、転勤、配置換えなどの環境の変化から発症する人がいるのです。また「ポカポカ陽気」も、寒い冬からの「環境変化」としてストレス要因になることがあるといいます。かつて私が発症したのも春でした。

うつ病はプログラマやデザイナに多く、社内の無理難題にさらされるWeb担当者も例外ではないでしょう。先日も知人の会社のスタッフが「出社拒否」になり対応に追われていました。

うつ病は個人差があり、本稿の結論を述べれば心療内科を受診することを推奨します。そして、早期の対応でうつは治るのか……についても医者の判断に委ねますが、私は上手に付き合っております。

ドリフターズの幽霊がいた

20世紀の終わり、2か月以上の不眠に悩まされました。毎晩布団にはいってから2~3時間は寝付けず、寝ても30分ほどで目が覚めてしまうのです。深酒をして床についても、2時間もせずに目覚めます。飲酒は睡眠を浅くすることを当時は知りませんでした。

毎夜遅くまで残業し、朝は4時から自宅で仕事を始め、昼食は自動車での移動時に運転しながら頬張るおにぎりのみで、土日祝日も休まず出勤していました。たまの休みも溜まった書類を整理し、身体を動かせば眠れるだろうとボーリングをするも、筋肉痛による苦痛が安眠を妨害します。そしてある朝、鏡の中の自分に驚きます。目の下にできたクマの青さは、ドリフターズがコントで演じた幽霊です。それが今頃の春の朝のできごと。

うつ、カミングアウト

「たぶん、病気(うつ)です」と、上司に告げ、勤務時間中に心療内科を受診する許可を得ます。精神疾患のネガティブなイメージへの不安もありましたが、過労による使用者責任を問うための「法廷闘争」への布石です。勤務時間中の受診をカルテに記すことで、後に「言った言わない」の水掛け論を回避するのが狙いです。

心療内科の「診察」は「対話」です。診察室で医者に向かうと、意外なほどすらすらと自分を語る自分に驚きました。誰かに話をきいてほしかったのでしょう。そして、医師が下した病名は「パニック障害」。広い意味で言えば、軽度のうつ病との診断です。パニック障害とは強い不安感に襲われる精神疾患で、薬とカウンセリングが治療の柱です。

寝不足で人は死なない

薬を飲んでも劇的な症状改善はみられませんでした。睡眠導入剤では眠れず、翌週の診察で軽めの睡眠薬を処方してもらいましたが、それでも深夜番組を見続ける生活が続きます。1か月通院してから、もっと強い睡眠薬をほしいと訴えると、ひと呼吸おいて語った医者の言葉が私を救いました。

寝不足で死んだ人はいない

医者の説明はこうです

眠ったという「満足感」を得ていないだけで少しずつは寝ている。睡眠は脳機能を休めるものであり、覚醒状態が限界に達した時に、脳は勝手に「眠る」。つまり、運転や外出時にさえ気をつければ、睡眠不足だけで死ぬことはない

医学的根拠によるのか、私を安心させる「方便」だったのかはわかりませんが、この説にのることにしました。翌週からはゴールデンウィークで、締め切りが迫る仕事はないことから、一睡もしないことに挑戦しました。すると、3日目の朝、爽快に目覚めていました。気づかないうちに眠り、朝を迎えていたのです。眠らなければというプレッシャーも不眠の原因だったようです。

マックからフォークまで

以来、快方に向かいます。初診で医者は「一生治らない」ことも覚悟しなさいと告知しました。私はゴールデンウィークでの経験から気分が軽くなり、一生治らないのならそれを「個性」と開き直ることにしました。漠然とした「不安感」などの症状がすぐに改善されたわけではありませんが、漫然と過ごす日常より楽しいだろうと思いこむことに。いまでも不眠に襲われますが、その時は「時間ができた」と悦び、本を読むなどして不眠を楽しんでおります。

休むようにとも指導されていました。それに従わなかったのは心が病んでいたからです。デザイナが退社し、社内で「マック」を操作できる人間が私だけとなり、それでも営業マンとして仕事は免除されず、同僚の受注した案件の企画を立て、行程管理し、集金にも出かけます。さらにトラックに乗り換え、フォークリフトを使って自分で荷積みまで行いました。営業マンでフォークリフトを操れたのも私だけで、当時のキャッチフレーズは「マックからフォークまで」。

デザイナのおかげ

自分ひとりで会社を背負っているという思いこみもうつ病の症状です。くたびれたら休むのも仕事のうちです。同僚への迷惑は「持ちつ持たれつ」、それが「組織」の強さでもあります。また、変化の早いWeb業界では「取り残される」という恐怖心を持つ人もいるでしょうが、ツイッターがFacebookになり、ネットブックがスマホに置き換わるように、この10年Webは同じ所をぐるぐる廻っているので心配することはありません。

うつは心の風邪と表現しますが、こじらせると周囲に「伝染」する点でも似ています。退社したデザイナは、不眠を訴えていました。その様子から「うつ」とみていました。組織上、私の部下でしたので、会社を休んで病院にいくように指示します。しかし、理由をつけては受診せず、日に日に自分の殻に閉じこもり休みがちとなり、たまに出社してくると特別扱いを求め、叶わぬとわかると逆ギレします。会社は解雇を決めましたが、病気の部下を切り捨てるのは「男の美学」に反するとかばっていると、一言の相談もなく退職届けをだし、私の苦労は徒労に終わりました。そして伝染しました。

自分を含めて何人かの「うつ」を見てきて、初期に自覚し対応する方が、治りが早いように感じます。まさしく「風邪」とおなじです。ただし、しつこいようですが、医者の指導には従ってください。わたしはいまも「治療中」。眠れたゴールデンウィーク以降、足は遠のいていますが。

Web担当者の仕事について、組織全体の理解が進んでいる企業はまれです。特に中小企業の現場では、個人のスキルへ依存することが多く、Web担当者は孤独になりがちです。前回紹介したようにイベントを仕掛けるなど、社内を巻き込み味方を増やすことも、うつ病回避の手助けになります。

今回のポイント

うつは心の風邪

早めのパブロン、ならぬケアが肝心

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