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5分でわかる中国の新越境EC制度。押さえておくべき重要ポイント【最新版】

中国の越境ECの小売り輸入品に関する新制度は2018年から本格スタートとなる予定、その内容を解説

この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。

中国の商務部は越境ECの小売り輸入品に関する新制度(新越境EC制度)の一部を、2017年末までに延期すると発表しました。中国政府は越境ECに関する税制度改革を行うため、2016年4月8日から新たな制度をスタートしましたが、突然の発表だったため中国の現場は大混乱。

保税区を活用した越境ECなどに大きな影響が出てたため、中国政府は5月、一部の新制度は1年の猶予期間を設けるといった内容を公表しました。

新制度は2018年から本格スタートとなる予定。その新越境EC制度について、全容などをまとめてみました。

中国の税の種類と内容

制度の説明の前に、中国の税の種類と内容を理解しておきたい。

新越境EC制度(越境ECの小売り輸入品に関する新制度)中国の税の種類と内容
中国の税の種類と内容

中国の税の種類と内容を踏まえた上で、制度内容を、「保税区モデル」(中国の保税倉庫を活用した越境EC)と「直送モデル」(日本から商品を個別配送する越境EC)にわけて説明していきましょう。

直送モデル

直送モデルの税制は、制度変更前と同様に行郵税通関によるものと、保税区モデルと同様の税率が適用される三単合一との2つがあります。

行郵税方式の場合、税率は「10%、20%,30%、50%」の4段階から、「15%、30%、60%」の3段階へと変更。また、従来通り50元までの行郵税は免税となっています。

後者の三単合一による直送モデルは、後述する保税区モデルと同じ税率が適用されます。三単合一とは、「オーダー情報」「支払い情報」「輸送情報」の3つの情報がデータ連携された通関システムのこと。主に大手越境ECプラットフォームを通した注文に対してデータ連携された直送方式として使われます。

今回、中国現地の消費者が越境ECで1回あたりに取引できる限度額が、1000元から2000元に引き上げられました。上限を超える高額商品に関しては、一般貿易と同じ課税の仕組みを適用します。

その他、年間の購入金額上限が20,000元と設定されました。これに関して、直送モデルの場合、もしこの年間上限金額を上回る注文を購入者が行った場合、商品は税関で止められ没収されるか、高額な料金を支払って日本へ返送となります。事業者側は購入者の注文時点での年間累計購入金額がわからないため、通常通りに商品を直送配送するわけですが、先述の様なトラブルに巻き込まれる可能性があります

また、直送モデルでも輸入許可書(通関単)が求められるようになることが新制度の大きな変更点です。

通関単(正式名称は「入境貨物通関単」で、輸入港検疫局が審査し、問題がなければ検疫局が署名する通関証明書)が必要になると、手続きや審査が厳格になる可能性があります。商品によっては、輸入許可証、輸出国の原産地証明書、放射能合格証明書などを事前にそろえなければならないため、大きな手間とコストが必要になるケースもあるでしょう。

また、化粧品、幼児用粉ミルク、医療機械、特殊食品(健康食品など)は、初回輸入時に輸入許可証、登録、届け出が必要になります。ただ、この商材の直送モデルの取引について、2017年5月11日までは必要書類の提出を求めないと財政部は公表しています(2017年末まで延期)。

新越境EC制度(越境ECの小売り輸入品に関する新制度) 代表的な品目の税率について(直送モデル)
代表的な品目の税率について(直送モデル)

保税区モデル

新税制度で大きな変更があるのが保税区モデルです。保税区(越境EC試験区)を活用した中国向け越境ECは多くの日本企業が利用している状況です。上海、重慶、杭州、寧波、鄭州の各拠点で2013年8月に施行・スタートし、現在は中国全土の都市に越境EC試験区が広がっています。

保税スキームを活用した物流は、従来の直送方式(日本から中国に個別配送する方法)や正規通関商品(一般貿易方式)に比べ、コスト面や配送スピードなどで圧倒的な優位性があるのが特徴。国内外の企業がその仕組みを活用し、中国越境EC事業を行っています。

この保税区活用を対象にした越境ECの新制度は2016年4月にスタート。これまでは暫定的な位置付けとして運用していた越境EC試験区でしたが、中国政府は保税区を活用した越境ECを“輸入における一般的な制度”として位置付けました。

新制度は、行郵税による課税スキームではなく、一般貿易と同じスキームで増値税を課す仕組みに変更するもの。

保税区モデルにおいても、輸入許可書(通関単)が求められるようになることが新制度の大きな変更点です。ただ、天津市、上海市、浙江省杭州市、同寧波市、河南省鄭州市、広東省広州市、同深セン市、重慶市、福建省福州市、福建省平潭県の10の試験都市において、越境EC小売輸入商品リストの内、提出が必要とされた「通関単」について、2017年5月11日まで提出を求めないと、財政部は公表しています(2017年末まで延期)。

直送モデルと同様に、化粧品、幼児用粉ミルク、医療機械、特殊食品(健康食品など)は、初回輸入時に輸入許可証、登録、届け出が必要。保税区モデルでの取引についても、2017年5月11日までは必要書類の提出を求めないと財政部は公表しています(2017年末まで延期)。

保税区モデルについては、税関に輸入許可証を提示する必要のない商品リストを公表しています(2016年4月)。4月8日と18日の発表で公表された商品カテゴリリストは1293種類。2回目の公表で、現状の越境ECで売れ筋となっている商品ジャンルはカバーされました。

一方、化粧品、健康食品、粉ミルクなどはリストアップされましたが、書類の用意など販売のための高いハードルが設けられています。

税率の変更は大きな注目点。主な変更点は次の通りです。また、代表的な商品ジャンルの新制度における税率もまとめています。

  • 1度の購入金額上限は2000元までに引き上げる(以前は1000元)
  • 購入金額の上限以下の購入商品に関し関税率は0%にする。ただし、上限金額を超える場合は、一般貿易と同じ税率を適用する
  • 年間購入金額(累計)上限は20,000元
  • 輸入に関する増値税を30%減額し、全てに適用(増値税17%×70%=11.9%)
  • 消費税がかかる場合(商品によっては消費税がかかるケースがある)、30%減額で適用する(消費税30%の商品の場合、30%×70%=21%)
新越境EC制度(越境ECの小売り輸入品に関する新制度) 代表的な品目の税率について(保税区モデル)
代表的な品目の税率について(保税区モデル)

たとえば、従来制度では「行郵税」が適用されない課税金額50元以下の取引について、新制度の下では値上げとなる可能性が高いでしょう。個人輸入関税50元までの免税措置が廃止され、その分、他の「関税」「増値税」などが適用されるためです。

2016年10月から化粧品類の税制に新しい動き

2016年10月から、化粧品分野で減額調整が行われ、新越境EC制度の下で、化粧品消費税の調整政策を施行しました。

一部の化粧品の消費税が取り消され、関税は15%に増えるものの、全体的な税率は低くなりました。また、「化粧品」の税目名称を、「化粧品」と「高級化粧品」に分けています。消費税を15%とし、高級スキンケア化粧品、高級メイクアップ化粧品、高級美容品などを対象にしました。

新越境EC制度(越境ECの小売り輸入品に関する新制度) 化粧品の税率 10元/ml(g)あるいは15元/枚(ピース)未満
化粧品の税率 10元/ml(g)あるいは15元/枚(ピース)未満
新越境EC制度(越境ECの小売り輸入品に関する新制度) 高級化粧品の税率 10元/ml(g)あるいは15元/枚(ピース)に等しい、またはそれ以上の化粧品
高級化粧品の税率 10元/ml(g)あるいは15元/枚(ピース)に等しい、またはそれ以上の化粧品

新越境EC制度の影響について

保税区モデルから直送モデルにシフトした方がいいのではないかという意見も一部からあがっていました。ただ、新制度は、課税や商品検閲を免れる直送モデル、中国で巨大な市場(流通量)となっている個人が行う「代理購入(代購)」の排除が目的であることから、今回の新制度によって、保税方式が越境ECの主流から外れることはないだろうと思われます。

また、2016年6月1日から、中国向けEMSの料金値上げ(例:1kg1800円⇒2100円)が行われています。また、従来までは最軽量が300g⇒900円の料金であったものが廃止となり、現在では最軽量が500g⇒1400円と変更。売れ筋の化粧品・健康食品にみられる「小さくて軽い商品」は、かなりのコスト高となってしまっています

今までは手軽な直送方式として使われていたEMSですが、高い送料や長い配送日数(最近、特によく税関で止まる)を考えると、全てが保税区活用から従来のEMS直送へ戻ってしまうとは考えにくいでしょう。

中国政府(税関)は、直送による税金逃れを防ぐための解決策として、保税区など越境ECスキームにおける各制度を施行してきました。その仕組みの認知度が上がり、利用企業も拡大。インフラとして完全に定着したこのタイミングで、もともと志向していた「海外からの越境ECに対しての全課税」という目的を実行したと思われます。

これまで行われていた、低い行郵税率と行郵税免税制度(個人輸入関税50元までの免税措置)に関しては、国からの一次的な施策であったため、いずれは見直しになると当初から想定されていました。導入当初は、その認知度向上と利用率の向上のために、低い税率と免税制度(行郵税50元以下免税)を提供していたわけです。

あくまで、中国政府の越境ECにおける制度は、「課税を免れる直送モデルおよび、中国で巨大な市場(流通量)となっている代理購入(代購)の排除」であるという立場から考えると、今回の制度によって、今後、行郵税通関や三単合一による直送方式や保税方式が越境ECの主流から外れることは考えにくいでしょう。

そのため、一律課税を行うことで、税逃れにつながる直送商品に対する検閲の強化が実施されることが予想されます

中国は一般貿易における検閲制度・申請制度が大変厳しいことで有名。中国政府の一連の政策には、正規通関での海外からの商品流入に対しての検閲・審査基準を下げるのではなく、回避策として、中国政府自身が越境ECという新たなビジネスを活用して、税関の検閲がきちんと届く範囲内で暫定的に海外商品を国内に流通させる仕組みを提供するという側面があります。

今後、中国への商品販売の拡大をめざす日本企業は、こうした仕組や中国政府の目的を把握しておく必要があります。

オリジナル記事はこちら:5分でわかる中国の新越境EC制度。押さえておくべき重要ポイント【最新版】(2016/12/05)

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