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HPでのマーケ推進へ――ヒューレット・パッカードへの統合と今後の方針を伝えたオートノミーユーザー会レポート

HP(ヒューレット・パッカード)への統合で、オートノミーの体制やCMS製品などの提供はどうなっていくのか?

HP(ヒューレット・パッカード)への統合で、オートノミーの体制やCMS製品などの提供はどうなっていくのか?

大手企業の多くで導入されているコンテンツ管理システム「TeamSite」を中心とした製品群を提供するオートノミーが6月に開催した「オートノミー2013年ユーザ会」から、同社の現状と今後についてレポートする。

オートノミーは、同社のユーザー企業やビジネスパートナーを対象に毎年開催しているユーザー会を今年も開催した。毎回豪華なホテル会場での開催が特徴のこのイベントだが、今年はザ・ペニンシュラ東京(有楽町)での開催だった。同社ユーザー会としては、通算24回目のイベントだ。

会場のザ・ペニンシュラ東京「ザ・グランドボールルーム」

7月には日本HPに統合、
オートノミー事業本部として新しいものを、どんどん進めていく

日本では2000年8月から「インターウォーブン・ジャパン」として活動している同社は、本社の買収によって2009年にオートノミーとなった。そして2011年にヒューレット・パッカード(HP)に買収され、これまでHPへの統合を進めていた。

熊代 悟 氏

ユーザー会冒頭で、オートノミー代表の熊代氏が、HPへの統合が日本でもこの夏に完了することを報告した。

熊代氏によると、北米では2013年1月1日付けでオートノミー北米地区の社員がHP社員に転籍していた。その後、6月1日には、北米地区以外の拠点の社員もHP社員への転籍が完了したとのことだ(ヨーロッパ・アジア、一部除く)。

日本ではオートノミー株式会社から日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)へと統合・転籍という形になる。社員や法人の統合はほぼ完了している。

同社の日本オフィスは2013年4月に日比谷に移転したところだったが、事業の統合にともなって、江東区大島にある日本HPの社屋に7月末~8月頭を目処に移転することになるという。

HPには「サーバー・ストレージ」「サービス」「PC・プリンタ」「ソフトウェア」の4つの事業があるが、オートノミーが所属するのは「ソフトウェア事業」。「オートノミー・インフォメーションマネジメント(Autonomy IM)統括本部」の「オートノミー事業本部」となる。

HPに完全統合されたあとのオートノミー事業に関して、熊代氏は次のように語る。

「HPになったら、CMSやマーケティングの製品開発に力を入れなくなってしまうのではないか」という声もあるが、HPはこの分野に力を入れており、CEOもコミットしている。

そのため、これからもオートノミー的な新しいものを、どんどん出していく。

TeamSiteやOptimostといった製品の既存ユーザーにとっても、変わることはない。製品がなくなったり、サポートに影響が出たりすることはない。

それどころか逆に、オートノミーの社員は数十名だったが、日本HPの5000人の社員が味方になっていく。サポートもHPの品質になっていくので、明るい未来が待っていると思ってほしい。

HPとしてマーケティングオプティマイゼーションの
プラットフォームを推進へ

ユーザー会では続いて、6月にラスベガスで開催されたHPのイベント「HP Discover 2013カンファレンス」での発表内容が伝えられた。

同イベントでは、北米地域でオートノミーがHPに統合されてからの活動と今後の展開が語られている。

オートノミー関連全体としては、今後は大きく次の2点がポイントになるという。

  • デジタルマーケティングプラットフォーム(統合的マーケティングプラットフォーム)
  • マーケティングクラウド

モバイルが浸透しているいま、企業はさまざまなデバイスやタッチポイントにおいてマーケティング最適化を進めていかなければいけない。そのために、

  • 情報やコンテンツの配信
  • テストによる最適化
  • 分析
  • ダッシュボード
  • コンタクトセンター
  • ソーシャルモニタリング
  • SEO

といったことを統合して行えるようにする環境が「マーケティングオプティマイゼーション」のプラットフォームだ。

その周辺には「CRM」「マーケティングオートメーション」「キャンペーン管理」「EC」「制作チーム」などがあるが、そういう部分と連携しながら進めていく仕組みを目指すのだという。

同社の主力であるコンテンツ管理システム「TeamSite」に関しては、次期バージョン7.4で、次のような機能を強化する予定だという(ただし、7.4の日本でのリリース時期は未確定)。

  • ユーザビリティ
  • モビリティ
  • Eコマース連携
  • リッチメディア
  • クラウド
  • CRM
  • キャンペーン
  • ソーシャル

そのなかでも特徴的な機能が「キャンペーン管理」だという。これは、見込み客を個別にターゲットしたりセグメント分けしたりして、コミュニケーションしていくための機能。SalesForceなど既存の顧客管理システムと連携でき、

  1. リスト(セグメント)を作成し、対象者を整理し、
  2. キャンペーンを作り、
  3. チャネル(メールとかTwitterとか)を定義して、
  4. キャンペーン用のコンテンツをWYSIWYGで作り、
  5. プレビュー(モバイルからの見た目もエミュレータで)し、
  6. キャンペーン開始

といった流れ全体を管理する機能なのだという。

ほかにも、次のような機能が予定されている。

  • 各種デバイスに対応したプレビュー ―― さまざまなデバイスの情報をTeamSite内にデータベースとしてもっていて、各デバイス向けのプレビューをTeamSite内でエミュレーションできる機能や、実機確認用URLのQRコードを管理画面に出す機能。

  • タブレットでのワークフロー ―― コンテンツ承認をタブレットから行えるようにするiPad用TeamSiteモバイルアプリ。

  • サーバー側レスポンシブ(RESS:Responsive Web Design with Server Side Components) ―― サーバー側でデバイスを検知して、適切なHTML・JS・CSSをサーバー側で作ってデバイスに送出する仕組み。

  • ソーシャル対応 ―― ページ公開と同時にFacebookやTwitterに自動的に投稿するなどの機能。

  • アセット管理との統合 ―― 同社のデジタルアセット管理システム「MediaBin」とコンテンツ管理システム「TeamSite」の統合インターフェイスを提供。

スマホ対応、クラウド、ソーシャルなどユーザー企業同士の情報交換

ユーザー会では、この後、参加しているユーザー企業の担当者による基調講演やディスカッションが繰り広げられた。

増井 達巳 氏

基調講演は、キヤノンマーケティングジャパンの増井氏による「canon.jpモバイルファースト リニューアル」。

増井氏は2011年のユーザー会で話された「モバイル対応やスマホ対応どうするのか」をふりかえり、その後キヤノンWebサイトをモバイルファーストへと対応させていった流れを語った。

なぜ同社では、レスポンシブWebデザインを採用するのでもなく、スマホ向け表示への自動変換サービスを利用するのでもなく、モバイルファーストという、モバイル環境を最優先に考えた(コンテンツも含め)サイト構築へと舵を切ったのか。

増井氏は、モバイルファーストありきではなく、デバイス特性から検討していって結論として落ち着いたのだという。

方針を決定するにあたっては、増井氏がリーダーとして方向を決定するのではなく、社内で多くのスタッフを巻き込んでSWOT分析などを進め、その結果を集計してたどり着いたのが「モバイルファースト」だったのだという。

何を捨てて何を採用したのか、その過程における議論がWeb担当者として価値をもつ。

その議論があったから、事業部の人に話すときやパートナーに話すときにも、「なぜこういう決定に至ったのか」を説明できる。各メンバーが過程を理解していなければ、ちゃんと説明できない。

(増井氏)

また、2013年1月には、組織名も変更している。これまで「ウェブマネジメントセンター」としていたチーム名を、「ウェブマーケティングセンター」と変えたのだ。

「ウェブマネジメントセンター」というチーム名にはガバナンス系の印象があるが、実際にそのチームが行っていたのはマーケティング系のことも多いことから変更したものだ。

さらに、チーム内でこれまで「コンテンツマネジメントグループ」という名称だったチームも「コンテンツマーケティンググループ」と変更した。

コンテンツを作って、それが正しく表示されればコンテンツグループの仕事が終わるわけじゃない。お客さんがほしいコンテンツをちゃんと提供できたのか、それがビジネスに貢献したのかまで含めて考えるための変更。

組織名を変えるということは、それで仕事の進め方や会議の進め方も変えることを意味する。

(増井氏)

また、増井氏は、この基調講演の最後に驚きの発表を行った。

6月いっぱいでキヤノンマーケティングジャパンを退職します。今後は「合同会社フォース」を立ち上げて、WebマネジメントやWebマーケティング、コンテンツマーケティングなどのサービスを提供していきます。

基調講演のあとには「ラウンドテーブルディスカッション」が開催された。

三菱電機の粕谷俊彦氏、花王の田中剛氏、サッポロビールの森勇一氏が司会役となり、自社の事例を話しながら、参加ユーザー企業にも話を聞くスタイルの全体ディスカッションだ。

口の字型に配置された会場で、各ユーザー企業が施策の状況やその意図をそれぞれ話し合った。

トピックとしては「スマホ対応」「クラウド利用」「ソーシャル連動」「アドテク連動」「ワンタグサービス利用」といったものが挙げられたが、そこで語られた内容には各社の内情まで明かすものも含まれていたため、ここでは詳細なレポートは割愛する。

左から、森氏(サッポロビール)、粕谷氏(三菱電機)、田中氏(花王)
◇◇◇

毎回、多くの有名企業の担当者が集まり、それぞれの事情やノウハウを明かし、また、イベント後の懇親会でネットワーキングやさらに突っ込んだ情報交換をする、貴重な場としてのユーザー会だ。

日本HPへの完全統合のあとも、こうしたユーザー企業にとって価値をもたらすオートノミー(インターウォーブン・ジャパン)の文化を保ってほしいと感じた。

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