メールクリエイティブにおけるABテスト

メールクリティブにおける「ABテスト」を行うことで、日々の運用における効果検証と改善ができ、短期的な指標の向上が可能となります。
※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿のため、編集部の見解や意向と異なる場合があります。また、編集部はこの内容について正確性を保証できません。
この記事はユーザー記事として投稿されたものですが、優れた内容ですので通常記事に格上げされました。

マーケティング施策として活用されるメールの主な目的は、下記の2つに分類することができます。

  • メールからウェブサイトへ誘導し、商品やサービスの購入やセミナーなどへの申し込み(短期的な目的)

  • 継続してコミュニケーションをとることで、自社のサービスやブランドに対して良い印象を持ってもらいたい(中長期的な目的)

当然、メールの効果はこの目的がどれくらい達成されたかによって測定されます。短期的な目的に対する効果の測定には、開封数やクリック数、コンバージョン数といった指標が利用され、中長期的な目的に対する効果の測定には、ブランドイメージの変化などを質問したアンケート結果が利用されるケースが多いかと思います。

メールマガジンの運用担当者は、そのどちらも達成することを目指されているとは思いますが、日々の運用の中では短期的な指標の向上へ比重が置かれることになるのではないでしょうか。
そのため、日々の運用においては短期的な効果の指標である開封数やクリック数の上昇を狙って件名やメールのデザインなどを工夫するなど、クリエイティブ(原稿)の改善を実施されていることと思います。

このような日々の運用における効果検証と改善のためによく用いられている手法が、「ABテスト」です。

■メールクリエイティブにおけるABテストとは

メールクリエイティブにおけるABテストとは、事前にクリエイティブについての改善の仮説を立案し、その仮説に従って2つ(または2つ以上)のクリエイティブを制作し、どちらが反応がよいかを検証するという方法です。

例えば、Aは現状のクリエイティブ、Bは仮説をもとに1ヶ所のみ変更を加えたクリエイティブとし、配信します。
この場合、変更点が1ヶ所のみであるため、結果(開封数やクリック数、コンバージョン数など)に違いがあった際に、それが何の影響によるものなのかを特定することが可能です。
これを繰り返して積み重ねることにより、長期的にメールマガジンの効果を向上させていくことができます。

メールマガジンの効果検証と改善には様々な手法がありますが、ABテストの特徴はこの実施・検証のしやすさ、結果の分かりやすさ、長期的な積み重ねが効くことにあります。

■ABテスト実施時の注意点

ABテストを行う際に気を付けなければならないことは、AとBの結果の違いが何の影響によるものなのかを特定できるようにする必要があるという点です。
特に日々の運用における改善では、違いを1ヶ所のみにしておくとよいでしょう。
例えば、メール内のリンクボタンの色だけを変更し、件名や掲載内容は全て同じにすることで、「結果の違いへ影響したものはリンクボタンの色である」ということを特定できます。

また、クリエイティブだけではなく、配信リストの内容や配信タイミングについても注意が必要です。
一般的にメールマガジンへの登録タイミングが新しいユーザーの方が、古いユーザーよりもレスポンスは良い傾向があります。
そのため、配信リストを登録の古い順にソートした上で2分割してABテストを行うと、片方のクリック数が多かったとしても、それが配信リストに新規登録者が多く含まれていたからなのか、リンクボタンの影響なのかを特定できません。

不適切な検証方法は、間違った取り組みへと繋がってしまう可能性があります。
特にABテストを行う際には、結果の違いが何の影響によるものかを特定できるよう、検証要素以外の条件は必ず同一にしましょう。

■メールクリエイティブ要素のうち、どこからABテストを行うべきか

メールクリエイティブ要素の最適化へ取組もうとした場合に、どの部分からABテストを行うべきでしょうか。
アルトビジョンでは、まずは開封に直結する1.「件名の検証」を行い、続いて2.「テンプレート(基本デザイン、レイアウト)の検証」、最後に3.「本文内の各要素の検証」という順番で検証するべきだと考えています。

  1. 件名の検証

    クリック数を増やすためには、まずクリックする可能性のある対象者の母数を増やすことが必要です。クリエイティブ要素のうち開封に直結するのは件名ですので、開封者の増加を目指し、どのような件名が効果的なのかについて、ABテストを行いながらナレッジを蓄積します。

    件名を考える際には、大きなポイントが6つあります。
    これらを活用してどのような件名のパターンで開封率が高くなるのかを検証します。

    *件名を考える上での6つのポイント

    1. 数字を利用する
    2. インセンティブを押し出す
    3. キラーワードを入れる
    4. 単語を羅列する
    5. メールマガジンタイトル・社名・ブランド名などを含める
    6. 広告・雑誌コピーの手法を取り入れる
  2. テンプレート(基本デザイン、レイアウト)の検証

    アルトビジョンでは、本文の検証は、リンク文言や画像サイズといった細部に着手せず、テンプレートから行うべきと考えています。
    これは、まずは全体の方向性(=テンプレート)を決めた後に、個別要素(=リンク文言や画像サイズなど)を検証していく方が、効果向上へ向けた効率がよいためです。
    仮に、個別要素から検証し、その後に本文のテンプレートを検証すると、せっかくそれまで検証してきた内容がリセットされ、再度個別要素をテストする必要があります。

    そのため、まずは掲載内容が全く同じで、かつ本文のテンプレートのみが異なるクリエイティブを制作し、どのような本文のテンプレートであった場合に最もクリック数やコンバージョン数が大きくなるのかを検証します。

  3. 本文内の各要素の検証

    ここでいう個別要素とは、例えばコンテンツの数、本文の長さ、リンクボタンの形や色、文字の色、画像の大きさなどといった、メールの本文を構成する各要素のことを指しています。

    検証対象となる個別要素は無数にあるため、まずは目的となるアクションの喚起や状態変化に対して影響が大きいと考えられる、画像やファーストビューなどの要素から着手すると良いでしょう。

    個別要素のABテストは、テンプレートのABテストと比較すると反応の差は小さくなる傾向がありますが、日々の運用の中で検証を実施しやすい部分であり、これらの積み重ねが長期的な効果向上へと繋がりますので、手間は掛かりますが継続的に実施していく必要があります。

このようにクリエイティブ要素の最適化を行うには、1.件名→2.本文のテンプレート→3.本文内の各要素の順番でABテストを行うことが効率的と言えます。
ぜひ、みなさんのメールマガジンの効果向上を目指して、クリエイティブのABテストに取り組まれてみてはいかがでしょうか。

■ABテストで重要なのは事前に作成する改善仮説の質と十分な検証

これまでABテスト実施にあたっての注意点や、どういう順番でクリエイティブの最適化を進めるべきか、について記載しましたが、ABテストを実施するにあたって最も重要なことは、テーマ(開封率やクリック率の向上、など)に対する改善仮説の質と、結果についての十分な検証です。

ABテストを日々実施していると陥りやすいパターンの1つが、ABテスト自体を目的化してしまうことです。
本来は開封数やクリック数、コンバージョン数といった数値を向上させるために取り組んでいたものが、「ABテストを実施する」ということに力点が置かれてしまい、しっかりとした改善仮説なしにAとBの2つのパターンのクリエイティブを作成し、配信してしまうケースがあります。

その結果、ほとんど意味のない細かい文言の違いなどについてABテストを実施し、その配信自体では反応に多少の違いがみられたとしても、その後のメールクリエイティブの制作にどのように反映していくべきかという示唆が得られないケースがあります。

これを避けるためには、そもそものABテスト実施目的に従って改善仮説を立案し、その仮説に従って2つのパターンのクリエイティブを作成する、ということを常に意識しなくてはなりません。

また、結果を十分に検証することも重要です。例えば、しっかりと改善仮説を立てたABテストの実施結果として、ほとんど反応が同じであったり、想定とは逆の結果が出たりするケースがあります。

このようなケースでは、その結果が出た理由について、より深く検証する必要があります。
特に、想定とは逆の結果が出たケースでその因果関係を明らかにしておかないと、その後のABテスト同様のことが繰り返され、ABテストに継続的に取組んでも、長期的に効果が向上しない可能性があります。
また、これまで想定していなかったユーザーの興味・関心や行動傾向など、今後のメールマガジンの企画においての重要な示唆が隠されていることも多いため、ABテストは仮説を立てて実行するだけでなく、結果を十分に検証することも意識しましょう。

ABテストを行うには制作・配信業務で通常の業務に+αの業務が発生します。しっかり改善仮説を作成して結果を十分に検証することで、実施内容が無駄にならないよう注意しましょう。

アルトビジョンでは、ABテストのプランニングからクリエイティブ制作、配信設定オペレーション代行、検証結果のレポーティング、今後のアクションの提示までをご支援しています。
自社内でのメールマーケティング施策に行き詰った際には、ぜひお問い合わせいただければと思います。

2012年5月16日
(執筆者:長沼 晃司)

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