いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本(全7回)

サイトの良し悪し、どう判断する? 失敗例から正しいKPIを設定する #3

コンバージョンを設定しづらいサイトのうまくいった/いかなかったはどう判定する? よくある失敗例からKPIを考える(第3回)
いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本

この記事は、書籍『いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

自分たちのやっていることは果たしてうまくいっているのか、人は適切なフィードバックがないとやはり不安になります。特にデジタルの仕事は過去の蓄積が社内に少なく、施策の良し悪しがよくわからなくなってしまうことがあります。

Chapter 2 コンバージョン改善の失敗事例に学ぼう
Lesson 07 [判定基準と指標]
うまくいった/いかなかったはどうやって判定するんだろう?

○判定基準が決まっていない……

「コミュニティサイトを開設し、なんとなくユーザー数や投稿数も増えてきているけれど、これでうまくいっていると言えるのだろうか?」……。コンバージョンを決めにくいタイプのサイトは、このように「うまくいっているかどうかの明確な判断基準がない」ことがよくあります。

「何のためにやっているのか」という目的が明確になったとしても、目的に近づいているかどうかを具体的に判断できる基準が必要です。日々取り組んでいることへの良し悪しの判定基準がないと、人はとても動きづらくなります。「物事を良くしていこう」というのは自然な心の動きですが、良し悪しの判定基準がなければ徐々にそのモチベーションは下がってしまいます。

判定基準は客観的に(判定者の恣意性に寄らずに)判断できる内容である必要があります。そのため、数値的な指標として設定するといいでしょう。

レッスン6で述べたように、目標が目標として正しく設定されていると、この問題は避けられます。「会員獲得数1万人」という目標であれば、そのまま判定基準としても明確ですし、それを達成するために何をどうすべきかも考えやすいですね。

判定基準は明確にしよう [図表07-1]

○複数の指標が設定されている……

「うちのKPIは、会員数とPV数です」「どちらが重要なんですか?」「どっちも重要なんです」「なるほど……」。

このようなやり取りは私も何回か経験したことがあります。前の節で述べた判定の基準や指標は、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)と呼びます。よく見かけるのは、複数のKPIが設定されていて互いに優先度が明確になっていない間違いです。

例えば、企業のオウンドメディアであれば全体のPV数やUU数はよくあるKPIですが、ほかにユーザーあたりの訪問回数やPV数といったKPIも重要に思えます。結果、すべてを上げようとしていたり、あるいはすべてを並列に見ているだけだったりするケースも少なくありません。この場合、どのKPIを狙って数値を上げていくべきか、そのためにどんな施策を実施すべきなのかがぶれてしまいます。

それぞれのKPI同士の関連性を明らかにすると、たいていの場合は親子関係が存在するので、自然に優先度が定まります。例えば、PV数についても図表07-2のように関連性を分解できます。こうして分解してみると「何を上げれば何が上がるのか。そしてこのなかのどのKPIの向上を狙う施策なのか」が明確になります。

また、どのKPIとどのKPIの優先度づけを考えるべきかもわかりやすくなります。例えば、PV数を上げようとなったときに、訪問回数や訪問あたりPV数の少ない「薄いユーザー」をたくさん集めて上げていくのか、逆にそれらが多い「濃いユーザー」を育てて上げていくのか、どちらも考えられますが、やり方は大きく異なります。KPIの目標設定も大きく異なります。判定の基準となる指標やKPIは構造を分解し、優先度をつけるようにしていきましょう。

KPIの分解例 [図表07-2]

ワンポイント
KPIは指標。良し悪しの基準を決めよう

厳密には「KPI」とは何を指標にしているかを表したものなので、KPI単体には目標や判定の基準といった概念は含まれていません。KPIを設定したあと、良し悪しの基準(KPIがいくつ以上ならいいとするのか)を定めることになります。「これ以上なら良い」の境目が目標になります。目標を超えていれば良し、達成できていないと悪し、です。

○誤った指標を設定している……

「ウチのサイトのKPIは会員数ですが、店頭でも会員が増えるので結局よくわからないんですよ」。このような指標は、KPIにしてはいけません。

KPIが設定されていても、よく見るとあまり適切でない場合があります。特に気をつけておきたいのは、指標としては正しくても、直接自分たちで計測・入手できなかったり、コントロールできなかったりする指標になっていないかです。

「直接計測・入手できない」というのは、その指標が今どんな値になっているかを自由に入手できないということです。例えば、「数値は他部門(やベンダー)が管理していて頼まないと確認できない」や「毎回依頼するのは気が引けてしまう。コストがかかる」といった状況は直接計測できないに近いと言えます。

また、指標がデータとして丸められた形(合計値、平均値など)でしか入手できない場合もあまり嬉しくありません。ここでいう直接性には濃淡があるのでゼロかイチかの話ではありませんが、なるべく自分たちで計測して生データが手元にあり、見たいと思ったときに最新のデータが手に入る指標を選びましょう。

「自分たちでコントロールできない」指標を選ぶのも、実はあまり適切ではありません。コントロールできないというのは、自分たちでその指標を向上させる施策を行っても、大して影響を与えられないということです。自らコントロールできなければ改善施策が打てないので、改善がうまくいくかどうかを他者に委ねてしまうことになります。こうなるとなかなか主体的に動けなくなるので、私の経験から言うと、8割程度は自分たちでコントロールできる指標を選択するようにしましょう。

「その指標の増減は自分たちの責任だ」とチームメンバーが納得できる指標を選ぶことが重要です。

ワンポイント
「ロイヤリティを高めるためのサイトなんです!」

上記のタイトルのような言葉を何度か聞いたことがあります。目的としてロイヤリティを高めるというのはわかります。ではロイヤリティが高まったかどうかはどうやって判定しましょう? 訪問頻度? 訪問あたりのPV数? 訪問頻度が高い人は果たしてロイヤリティが高いと言えるのでしょうか? たくさんページを見てくれる人はロイヤリティが高いと言えるのでしょうか?

言えるかもしれないし、言えないかもしれません。これ以上に説明できる指標や、計測可能でコントロール可能な指標を考えつかない場合もあるでしょう。こうした状況は少なくありませんが、最終的には決めてしまうしかありません。ここを決めてしまえるかどうかで、改善のスピードが大きく変わってきます。仮に決めた指標が間違っていたとしても、決めないよりははるかにいいです。間違いに気づいたときに見直せばいいのです。

事例研究
あるECサイトのリニューアル

あるECサイト事業者を訪れたときのことでした。大規模なサイトのリニューアルのプロジェクトを進めている最中で、バラバラだった複数のサイトの会員IDを1つに統合し、なおかつドメインも1つにまとめるという取り組みをしていました。印象的だったのは、統合によるメリットもさることながら、リニューアル直後にいろいろなKPIが下がらないようにということに非常に気を配っていた点です。

サイトのUIが大きく変わると、たいていは既存のユーザーから「使いにくくなった」という声が出てきます。これは実際にUIが良くなった/悪くなったということではなく、変わったことに対する見慣れなさや、使い方を覚え直さないといけない手間によるものです。したがって、本当に良かったのかどうかを判断するには、少し長い時間軸で見ていく必要があります。

ただプロジェクトが大型であるがゆえに、実施直後の結果にどうしても注目が集まります。そしてその良し悪しでプロジェクトの成否の第一印象が強く定まってしまうことも少なくありません。

この会社の場合、役員クラスの方から現場の方まで共通してこの懸念をもっており、実態をよく理解されたサイト運営をしているのはすばらしいなと感じました。組織全体としてこのような考え方が共有されていれば、仮説検証のサイクルはとても回しやすいだろうと思います。

ちなみにリニューアル後にうかがうと、心配されていた各種KPIは特に下がることはなかったということでした。

Facebookも大小問わずデザイン変更をしばしば行いますが、そのたびにユーザーから「使いにくくなった」という声があがります。しかし、数週間もすればほとんどのユーザーが以前と変わらなく使うようになります。

  • 著者:深田 浩嗣
  • 発行:株式会社インプレス
  • ISBN:978-4-295-00015-0
  • 価格:1,780円+税

いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本
人気講師が教える実践デジタルマーケティング

どんなサイトでも必ず改善します!

大好評「いちばんやさしい教本」シリーズから、全デジタルマーケターの悩み「コンバージョン最適化」の実践書が登場です。コンセプトは「どんなサイトも必ず改善します」!

ECサイトだけでなく、コーポレートサイトやコミュニティサイトなど、どんな種類のサイトでも必ずコンバージョンを改善するためのPDCAの考え方などを丁寧に解説しています。

KPI/KGIの適切な定め方、課題の抽出方法、施策の優先順位の付け方なども実践的に紹介しているので、本書を読めば自社サイトを改善する具体的な道筋がハッキリ見えるはずです。

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